本日の宿泊場所にゃん
「終わったらしいな、上手く行って何よりだ」
ハリエットが安堵の息を吐く。
「まさか、本当に五分程度で終わってしまうとは恐れ入ったぞ」
「にゃあ、大変なのはこれからにゃんよ」
復興にはレークトゥスと比べ物にならない規模の資金と労力が必要とされるはずだ。
「なに、ここから先は魔法が無くてもどうにかなるから問題ない、それに俺たちの仕事はこれで終わりだ」
ドゥーガルド副司令がリーリが不在のオレの頭を撫でた。
妖精はいま焼きそばを食べに飛んで行ってる。
「ただいまを持ちまして外縁部東部封鎖地区の管理を引き継ぎいたします」
王都守備隊の隊長っぽい人が敬礼した。
「ああ、後は頼んだ、王国軍は作戦終了、撤収!」
ドゥーガルド副司令が号令を出した。
「「「作戦終了、撤収!」」」
伝令が走り、王国軍の兵士たちが撤収を開始する。
王国軍の兵士と入れ替わりで役人らしき人たちがどやどやとやって来て杭を打ってロープを張り始めた。
「直ぐに封鎖地区の再開発が始まるそうだ、新たな都市計画も策定されてるらしい」
ハリエットが教えてくれる。
「にゃあ、随分と早いにゃんね」
「王都に余ってる土地は無いからな、しかも洗浄と聖魔法で聖別された土地だ。自前の浄化の失敗で浮いた金を注ぎ込むんだろう」
ドゥーガルド副司令は既に他人事だ。
「にゃあ、まるでオレが来て洗浄と浄化をするのがわかってたみたいにゃんね」
「わかっていたさ、親父が情報をリークして各方面に情報と恩を売ったからな」
「アーヴィン様もしっかりしてるにゃんね、どうせなら、王国軍がガタガタになる前にその手腕を発揮してもらいたかったにゃん」
「そうは言っても、マコトがいてくれて初めて出来ることだ」
ハリエットが言うならそうなのだろう。
オレがちょっかいを出す前の王国軍がどんだけ酷かったんだってことだが。
「マコト、明日は王国軍司令部に来てくれ、追加の魔法馬の納品について協議したい」
「にゃあ、そう言えば魔法馬を二〇〇〇頭なんて話が有ったにゃんね」
「おいおい、忘れないでくれよ」
ドゥーガルド副司令が心配そうにオレを見る。
「大丈夫にゃん、いま思い出したにゃん」
「キャリー・バックス並びにベル・ベリー、両者も明日マコトと一緒に来い、今日は隊に戻らなくていい」
ドゥーガルド副司令がキャリーとベルにも指示した。
「「了解しました!」」
キャリーとベルが敬礼した。
「じゃあ、明日にゃん」
オレはジープに乗る。
「ところでマコトたちは何処に泊まるんだ、ホテルだったら用意するぞ、それとも自分の家に行くのか?」
「にゃ、自分の家にゃん?」
首を傾げるオレ。
「お館様、前に王国軍から王都の家を貰ってるにゃん」
猫耳の一人アルがコソっと教えてくれた。
「にゃあ、そう言えば王都にそんなものが有ったにゃんね」
「登記も完了してる、おい、マコトに鍵を渡してやってくれ」
「はい、鍵はこちらになっております」
ダリアが大きくて重い鍵を取り出した。
猫耳のロアがそれを受け取った。
「場所はエラが知ってるから案内してさせるといい、マコトたちなら直ぐに使える様に出来るだろう」
「にゃあ、確かヤバい物件だったにゃんね」
「ああ、王都でもとびきりのヤバい物件だ」
ニヤリとするドゥーガルド副司令。
「もしかして我が家の近所にあるアレか?」
馬上のハリエットがまた眉間にシワを寄せる。
「そうです、人喰い大公の館です」
「にゃあ、怖そうな名前にゃんね」
「ええ、三〇〇年以上人の生き血を吸ってる妖怪の様な館です」
ダリアが補足してくれたし、猫耳たちの記憶にも有った。
「いくらなんでもアレはマズいだろう?」
ハリエットが呆れつつ心配している。
「にゃあ、アーヴィン様もスゴいのを用意してくれたにゃんね」
「親父は中途半端は嫌いだからな、それに大公の屋敷だったのは本当だぞ、一等地に広大な庭付きの大邸宅だ」
「確かに我が家より大きい」
ドゥーガルド副司令の言葉にハリエットが頷く。王弟の公爵家の館より広いってどんだけあるんだか。
「緩衝地帯も全部まとめてしまいましたから上級貴族の大邸宅三軒分の敷地です、しかも一等地です」
ダリアが更に補足する。
「にゃあ、それって大きすぎと違うにゃん?」
「侯爵になるんだからいいんじゃないか?」
ドゥーガルド副司令は清々しいほど他人事だ。
「新興貴族のくせに生意気だとかいじめられそうにゃんね」
「いや、それはないな、下手なことをされてマコトにヘソを曲げられると困る貴族どもがいっぱいいるからな、誰も余計なことは言わないさ」
「にゃあ、誰がオレがヘソを曲げると困るにゃん?」
「例えば先ほどの王都外縁東部地区はマコト様の所有になります。それを王国軍が管理委託を受けて王宮の国土管理局に貸出し、更に王都の商会などに又貸しされます」
ダリアが説明してくれる。
「にゃ?」
「マコトの一言で莫大な利益が吹き飛ぶヤツもいるってわけだ」
「にゃあ、いま初めて知ったにゃん」
「宮廷魔導師も凌ぐ魔法使いのマコトに正面から喧嘩を売るバカもおるまい、そんなことをすれば国王派の貴族も黙っていないはずだ、無論、私も黙ってはいない」
「にゃあ、ハリエット様が守ってくれるなら安心にゃん」
「マコトは私の友だちだからな」
照れ気味なところが可愛いと思う。
「何はともあれマコトのお陰で王国軍の台所が一段と潤う、感謝するぞ」
ドゥーガルド副司令に感謝される。
「にゃあ、良くわからないけどお役に立てて何よりにゃん」
「やはりマコトには、王国軍の軍籍を与えた方が良いな、後から伯父上にかき回されると厄介だ」
「にゃあ、だからオレは忙しいにゃん」
「なに軍籍だけを持つ貴族は少なくないぞ」
「それ、王国軍にゃん?」
「近衛軍と騎士団だな、細かいことはいいだろう、副司令、マコトには中将を授けてはどうだ?」
「いきなり中将ですか? しかし爵位と軍の貢献度からすると適当でしょうね、いざという時に司令部機能の一部をマコトの屋敷に移すことも可能になるでしょうし」
「にゃ?」
「ああ、それは名案だ、ではその方向で頼む」
「頼んだぞ、マコト」
「にゃ!?」
○王都タリス 外縁部 環状線
仕事を終えたオレたちはハリエットたちの乗った王国軍の馬車に先導され、王都の城壁内に向かった。
沿道には黒い結界が消えて安堵した人々であふれていた。対向車線は解放されたばかりの外縁東部に向かう馬車で渋滞気味だ。
「この人たちが助かったのもマコトたちのおかげだね」
「偉業なのです」
キャリーとベルに褒められるとくすぐったい。
今度はちゃんとふたりの間に収まっている。この安心感は他では得られないにゃん。オレの六歳児の部分が、もっとキャリーとベルに甘えたがっているが、そこは理性で抑え込む。
あまり親しいところを往来で見せるとふたりが狙われる可能性が大きくなる。既にそれなりに情報が流れてしまっているだけに注意が必要だ。
○王都タリス 城壁門
オレたちの乗ったジープの車列は、前回入れなかった王都の城壁の門で王都守備隊の隊員たちに敬礼されて入城する。
前回は猫耳ゴーレムを連れていたからダメだったのだが、今回はもっと戦闘力の高い猫耳を連れていたがOKだ。
「にゃあ、王都の絶対防御結界はロマーヌのご先祖様の作にゃん?」
刻印の傾向はレークトゥスの州都スマクラグ見た刻印と良く似ていた。ただしこちらのほうが更に複雑で緻密だ。それに刻印が実に美しい。
「我が家に残る記録に依ると初代様の弟子だった方が主導されていたようです。女性だったらしくご自分の工房を持つこと無く一代限りだったようです」
「にゃあ、女の人だったにゃん」
「女性の刻印師は珍しくは無いのですが、そこまで高位の方はほとんどいらっしゃいません」
「天才だったにゃんね」
「ええ、そう聞いてます」
○王都タリス 城壁内 市街地区
門を抜けるとそこでキャリーとベル以外の王国軍のメンバーと別れて、オレたちは問題のお化け屋敷に向かう。
「エラ、案内を頼むにゃん」
「かしこまりました」
エラが助手席で、キャリーとベルがオレやロマーヌと一緒に後ろに乗っている。
王都と言うだけあって何処を走ってもオパルスの州都より立派だ。建物もデカい。行き交う馬車はどれも工芸品のようだった。
魔法馬はいいものだが、いかんせんどれも古く新しい物よりも遺跡から発掘された物が珍重されてるようだ。
「これがキャリーとベルの故郷にゃんね」
「残念、私たちの故郷は城壁の外だよ」
「その大半が今回の軍隊蜂の騒動で灰燼に帰したのです」
「ひどい場所だったから愛着はないけどね」
「むしろ滅びろと思っていたぐらいなのです、でも本当に無くなると寂しさを感じるのです」
故郷はそんなものかもしれない。
○王都タリス 城壁内 貴族街 上級地区
二つ目の門を抜けて通称、貴族街に入ると静かな感じになった。
「私たち、貴族街に入るの初めてなのです」
「一般人は仕事でもないと入れないからね」
キャリーとベルはキョロキョロする。
「わたくしのような地方の貴族も滅多に来ませんわ」
ロマーヌもあまり来たことがないらしい。
大邸宅が連なってるわけだが、夜間ということもあって歩いてるのは王都守備隊の人たちばかりで、馬車もたまにすれ違うぐらいで人気がない。
「ずいぶん寂れてるにゃんね」
「上級貴族の邸宅のあるこの地区は、誰でもは入れませんから人は少ないですね、下級貴族の集まる地区はこの時間でももっと賑やかですよ」
エラが振り返って教えてくれた。
「にゃあ、オレも賑やかな方が良かったにゃん」
なんか雰囲気が暗い。
さっきから蔦の絡んでる古い塀の横を走ってる。
塀の向こう側が変に暗い。夕暮れを過ぎてるから暗いのは当たり前なのだが、塀の向こうの漆黒の闇は異常だ。
しかも塀には内向きに魔除けの結界が張って有る。
魔を塀の外に出さない結界だ。
つまり塀の中に良くないものを封じ込めてる。
「にゃあ、問題の屋敷ってこの塀の向こう側にゃん?」
エラに訊く。
「そうです、マコト様も直ぐおわかりになりました?」
「にゃあ、これって誰だってわかるレベルと違うにゃん?」
「うん、私にもわかる、何かザワザワするよね」
「普通は頼まれても近づかないのです」
キャリーとベルもわかった。このふたりの場合は一般人よりずっと鋭いので指針にはならない。
「おまえらはどうにゃん?」
猫耳たちにも訊く。
「当然、ウチらもわかるにゃん」
「「「にゃあ」」」
猫耳たちはオレと基本が一緒だから訊くまでもないのだが。
「マコト様対人喰い大公の館、わくわくしますわ」
目を輝かせているのはロマーヌぐらいだ。
「にゃあ、手に負えないぐらい凄かったらオレも尻尾を巻いて逃げるにゃん」
「その時はアーヴィン様のお屋敷にお泊り下さいとのことです」
エラがアーヴィン様の言葉を伝える。
「それは助かるにゃん」
塀の向こう側の面倒くさい感じがひしひしと伝わる。三〇〇年モノだけあってかなり熟成された怨霊のようだ。
○王都タリス 城壁内 貴族街 上級地区 人喰い大公の館
「こちらです」
土地が逼迫してる王都だけ有って門から屋敷が見えないと言うことはないが、屋敷までは軽く二〇〇メートルは有りそうだ。
そしてデカい。廃屋ではあるが元がかなりしっかり作られているのだろう、ノーメンテの割には状態は良さそうだ。
門扉には封印の刻印付きのぶっとい鎖が絡みついている。
オレは貰った鍵を鎖に付いてる錠に差し込んだ。
カチンと音をたて解錠されると同時に敷地内にはっきりとした気配が感じられた。
これはただの半エーテル体では無さそうだ。
「いるにゃん」
鎖を消して、朽ち掛けた門扉を強引に開いてジープの車列を敷地に入れた。
「急に暗くなりましたね」
エラが腰を浮かす。
「にゃあ、怨霊はオレたちが退治するから皆んなはジープから降りずに待ってて欲しいにゃん」
「よろしいのですか、私も加勢しますが?」
エラは怨霊相手に斬りかかるつもりのようだ。
「私たちも手伝おうか?」
「怨霊程度なら、多少はイケるのです」
キャリーとベルは銃を出した。
「にゃあ、ここはオレたちに任せて欲しいにゃん」
「かしこまりました」
エラはジープのシートに腰を落とした。
「マコトなら私たちより上か」
「それは間違いないのです」
キャリーとベルは銃を格納した。
「にゃあ、オレたちも危なくなったら逃げるにゃん」
オレと猫耳たちがジープを降りる。
ジープのヘッドライトがいずれもほんの数メートル先までしか照らしていない。
闇が光を飲み込んでいた。
「お出ましみたいにゃんね」
それは漆黒の闇から浮き出るように現れた。
壊れた魔法馬に乗ってる空っぽの赤い騎士の甲冑とその後ろに並ぶこれまた三〇体ほどの装甲歩兵の甲冑。
「生きてる甲冑にゃん」
「にゃあ、お館様、あの甲冑自体がアーティファクトにゃん」
「そうみたいにゃんね、だから三〇〇年も手が付けられなかったわけにゃん」
半エーテル体の怨霊がアーティファクトの甲冑で実体に近い状態を保ってるわけだ。
「うわ、私にもちゃんと見えてる」
「甲冑は通常の物体なのです、ただ普通のシロモノではないのです」
キャリーとベルもしっかり視認した。
「不死の甲冑というアーティファクトをまとってるという話は本当だったのですね、教授に羨ましがられること間違いなしですわ」
ロマーヌは甲冑に付いての情報を持っていた。
「不死の甲冑にゃん?」
「その甲冑をまとうと死ぬことなく戦い続けられるそうですが、伝承と違って肉体は朽ち果てたみたいですね」
「怨霊を強化するアーティファクトにゃんね、平たく言うと呪いの品にゃん」
「アーティファクトの甲冑をまとった怨霊でも、マコト様の相手にはいまひとつですわね」
「にゃあ、そんなことはないにゃん」
『何人モ、我ガ館ニ立チ入ルコト許スマジ!』
『『『許スマジ!』』』
「にゃあ、空っぽなのにちゃんと喋ってるにゃん」
甲冑のせいなのか、どうやら魂だけは変質せずにしっかりしてるみたいだ。これは使える。
「お館様、敷地内のマナの濃度が上昇してるにゃん」
猫耳がそっと耳打ちする。
「にゃあ、光を吸い取る黒い霧のせいにゃん、地面から湧き出してるにゃん」
「なるほど、マナが濃いのですね」
ロマーヌがうなずいてる。
「にゃあ、まずは結界にゃん」
「「「にゃあ!」」」
人喰い大公の館の敷地全体をオレたちの結界で封印する。
『小賢シイ真似ヲ』
赤い騎士の甲冑は空っぽだが苦々しい表情を浮かべてる様なジェスチャーをする。
『にゃあ、全部で三一匹のたわけた怨霊は、甲冑から魂を引っこ抜いて煉獄の炎でこんがり焼いて真っ白になるまでシゴキまくるにゃん!』
念話で指示を出した。
『『『にゃあ!』』』
『我ガ剣デ成敗シテクレルワ!』
赤い騎士の甲冑が剣を抜いた。
「にゃあ、剣までアーティファクトにゃん」
剣が綺麗な青白い炎を帯びる。
「にゃあ、格好いいにゃん」
赤い騎士の甲冑が振る剣に思わず見とれてしまった。オレも欲しいにゃん。
『天誅!』
青白い炎をまとった剣から稲妻が走った。
「にゃ!? なんで電撃にゃん! そこは炎と違うにゃん!?」
電撃は軽く防御結界で弾いた。
濃いマナをエネルギーにしてるのでなかなかの電圧だったがそんな力技がオレたちに通じるわけもない。
『ナッ!? 我ガ雷ヲ弾クトハ、化物カ!』
甲冑の中は空っぽだが動揺してるようだった。
「にゃお、怨霊に化物とか言われたにゃん」
オレも耳がぺたんとしてしまう。
「こんな可愛いお館様を化物呼ばわりとは許せないにゃん!」
「「「にゃおおお!」」」
怨霊どもに猫耳たちが一斉に襲いかかる。
アーティファクトの鎧だろうと関係なしに猫パンチが炸裂してほとんど魔法を使わず成敗してしまった。
甲冑が地面に散乱してる。
「浄化開始にゃん!」
「「「にゃあ!」」」
練度が上がりまくりの洗浄の魔法が敷地にこびりついた三〇〇年からの垢を落とす。
『『『オオオオッ!』』』
地面に転がった甲冑から怨霊どもが狼狽してるのがまるわかりの声がする。
『テッ、後退!』
甲冑の奥に逃げ込もうとする怨霊ども。アーティファクトだけあってそういう効能もあるらしい。
「にゃあ、ダメにゃんよ、おまえらは一人たりと逃がさないにゃん」
既に甲冑は結界で囲ってある。
「おまえらはオレが面倒をみてやるにゃん」
握りこぶし大の聖魔石を掌の上に再生する。
『『『ウォォォォォ!』』』
怨霊の叫びとともにパキン!と甲冑が砕け、引き剥がされた魂が光の粒子となって空中に浮遊した。
すかさずそれをオレが手にした聖魔石に吸い込んだ。
怨霊三一匹分の魂を回収した。
『にゃあ、怨霊以外は全部送るにゃん!』
念話で指示を出す。
『『『にゃあ!』』』
猫耳たちも念話で返事をした。
聖魔法を展開し敷地を青い光が覆う。
こちらも練度上がりまくりで、青い光が地面に染み付いていた怨念を浄化しすべての魂を天に送った。
「スゴい数の光ですわ」
「三〇〇年分でしょうから」
ロマーヌとエラが空を見上げる。
「スラムの浄化もスゴかったけど、こっちもスゴいね」
「マコトたちの魔力は底無しなのです」
キャリーとベルも感心してくれた。
「にゃあ、これで敷地内の浄化は完了にゃん」
「ああ、どれをとっても素晴らしい魔法でしたわ、この後はいかがなされます?」
ロマーヌはまた感動していた。
「オレたちは塀と建物の修復をするにゃん、それと防御結界の張り直しにゃんね」
「すぐに取り掛かられるのですか?」
「にゃあ、当然すぐにゃん、今夜の寝床にゃん」
「それでしたら、わたくしにも見学の許可をお願いいたします」
「ジープから降りなければいいにゃんよ、大きめの魔法を使うから巻き込まれると命に関わるにゃん」
挟まったりすると全身を強く打って死亡にゃん。お預かりしたお嬢さんをそんな目には遭わせられない。
「マコト様の言い付けに従いますわ」
「にゃあ、だったら許可するにゃん」
ロマーヌはジープから身を乗り出して観察を開始する。ちょっと怖い。
オレと猫耳たちは屋敷の再生と塀の再構築を行う。館は時間の引き戻しがメインで魔導具の増設は後からだ。
「スゴすぎますわ!」
それと観察&興奮中のロマーヌに気付かれないように館の構成部材の大半を生きてる金属由来のものに変更した。
地下には猫耳たちが勝手に大浴場を増設している。
同時に地下拠点の設営も開始したが、その存在は客人たちには秘密だ。
二~三〇分ほどの作業でオレの新たな屋敷が稼働を開始した。
「にゃあ、行くにゃん」
三〇〇年振りに息を吹き返し新たに明かりの灯った屋敷に向けてジープを走らせた。




