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埋まってたにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇九月三〇日


 明け方、猫耳に埋もれて目を覚ました。この時間に吹き飛ばすのも可哀想なのでニョロニョロと身体をくねらせて猫耳たちから抜け出す。

 昨夜、ユウカと念話したせいか、軍隊蜂の襲撃もオリエーンス連邦の禁呪で仕組まれたのではと思えてきた。

 禁呪が山のように収められてる封印図書館ならばオレたちに気付かれることなく蜂を操る魔法があってもおかしくはない。

 あのタイミングで姫様を襲わせるべく群れを誘導したとしたら、術者はリアルタイムでオレたちを監視していたことになる。

 あの時、まったくそんな反応は無かったのだが。

 監視をせずにすべてを予想で動かしていたのか?

 だとしたらそれは既に予知のレベルで、見られるよりも怖い。


 いずれにしろ封印図書館をどうにかしないとオレの疑心暗鬼は収まらない。王宮に忍び込める機会があったら、マジでかっぱらいたいが、バレたらそれもヤバいにゃんね。オレが一連の事件の黒幕にされそうだ。


 早起きついでにロッジの外にテーブルを出して、サンドイッチをどっさりこしらえた。

「最高だよ!」

 さっきまでオレのお腹に貼り付いていたはずのリーリがローストビーフを山盛り挟み込んだ自分より大きなパンにかぶりついてる。

「にゃあ、野菜も食べるにゃんよ」

「もちろん食べるよ!」


 それから少しして猫耳と騎士団の面々が起きて来た。

「にゃあ、お館様の手作りサンドイッチにゃん」

「これはうまそうだな」

「美味しいに決まってるにゃん」

「マコト様の手料理を味わえるなんて最高ですわ」

「このレシピを譲っていただくことは可能ですか?」

 ロマーヌとエラも起きて全員が揃った。

「マコト様の魔導具のおかげで今朝はいつになく調子がいいですわ」

 ロマーヌはベッドの治癒魔法が効いて最初に顔を合わせた時よりも元気になっていた。

「俺もそうだ」

「私もそうです」

 チャドとガスパールもうなずき合う。それに騎士団の面々も同じ意見だった。

「全員、瘴気でやられていたにゃんね」

「俺たちが瘴気を吸っていたのか?」

「にゃあ、封印前に空気中に拡散してた分にゃんね」

「まったく気付きませんでしたわ」

「にゃあ、軍隊蜂の毒がいやらしいのはそういうところにゃん、知らない内に身体を蝕むにゃん」

「これは、普通の治癒師でも治せると思うか?」

「イケるはずにゃん、それほど難しくはないにゃん」

「わかった、親父にすぐ手配させる」

 チャドは通信の魔導具を取り出した。


 オレたちはサンドイッチを食べながら浄化する順番を地図で確認しつつ決める。

「ここから大きな街はなく小さな集落だけになるから、もっと手分けしてもいいんじゃないか?」

 チャドの提案にオレも頷く。

「にゃあ、そうにゃんね、昨日も実際にはジープがバラけて浄化をしたにゃん」

「だろう、だからここから先は二台ずつ五つに別れて集落を回るのはどうだ? さすがに一台では心もとないだろう」

「効率と安全を鑑みるとそうなりますね」

 団長の意見に副団長のガスパールも同意した。

「それで決まりだな」

「にゃあ、いいにゃんよ」

 猫耳たちなら一台で回っても問題ないと思うが、クライアントであるチャドたちの意見を優先する。


「出発!」

「「「にゃあ!」」」

 オレの頭の上でリーリが号令を発し猫耳たちが声を上げた。



 ○レークトゥス州 北東部 州道


 ジープが二台ずつ組んでレークトゥスの大地を走る。未舗装の道を突っ走りながら洗浄と浄化を行った。

 騎士団員の案内とレークトゥスの地理に明るい元盗賊の猫耳の知識を共有してるので、効率よく走り回って瘴気で汚染された集落を洗浄して浄化する。


「この調子なら思いの外、早く洗浄も浄化も終わりそうだな」

「マコト様たちの魔法の賜物ですわ」

 チャドとロマーヌの兄妹はオレたちの魔法を見ながらしみじみ語る。

「マコトを呼んだ親父が偉いわけだ」

「そうですわね、マコト様方に来ていただけなかったらレークトゥスは廃領になって王宮の直轄領になってましたわ」

「州都が無傷なのに廃領なんてあるにゃん?」

 オレも話に加わった。

「マコトたちがいなかったら、親父も王宮に頼るしかないわけだ。そうなりゃ領地の洗浄と遺体の処理に莫大な対価を要求される」

「王都外縁部で動いた金額がベースですから、州都も丸ごと差し押さえられて、私たち一族も破産でしたわ」

「まったく危なかったぜ、王宮の奴らは隙あらば私腹を肥やそうとするからな」

「今回は当てが外れて地団駄を踏んでますわね」

「にゃあ、王都でも被害が出てるのにのんきな奴らにゃんね」

「被害を受けたと言っても、スラムでは喜んでる奴らの方が多いんじゃないか?」

「いきなり火を放つぐらいですからね」

「困った奴らにゃん」

 世界の狭い連中には、この国の現状が見えてないらしい。


『お館様、ヤバいものを発見したにゃん』

 他のジープの猫耳から念話が入った。

『何があったにゃん?』

『また、地下構造物にゃん』

『蜂の巣にゃん?』

『そこはまだわからないにゃん、どうやら犯罪ギルドのアジトみたいにゃん』

『了解にゃん、オレたちもそっちに行くにゃん』


 オレとチャドにエラとロマーヌとお客さん満載のジープが、進路を変えた。

「どうしたマコト?」

 チャドが進路変更に気付いた。

「にゃあ、ちょっと危ないものを発見したからいまから確認するにゃん」

「地図だとこの先には何も無いはずだが」

「にゃあ、本当に何も無ければそれに越したことはないにゃん」

 ジープは小さな荷馬車がやっとの細い道を突っ走る。

「この先には犯罪ギルドの奴らがたむろしてる地域だな」

 チャドは何度も地図と周囲の風景を見比べる。

「捕まえなかったにゃん?」

「表向き何もしてなきゃ、しょっぴくわけにも行くまい」

「にゃあ、意外とちゃんとしてるにゃんね」

「必要悪な部分もあるからな」


 倒木を偽装したバリケードは助手席の猫耳が分解し、ジープは速度を緩めることなく進む。


「この先、蜂がいるね」

 最初に気付いたのはリーリだった。

 オレの胸元から顔を出してドーナツを齧る。

『ヤツらのアジトは地下だから、蜂にも格好の住み場にゃん』

 この先のアジトに詳しい猫耳から連絡が入った。

『地下で何をしていたにゃん?』

『人身売買にゃん、レークトゥスは王都より取締が緩いし交通の便もいいから何処に出荷するにも都合がいい場所だったにゃん』

『取り締まりが緩いにゃん?』

『奴隷の調達を他所でやってちゃんと税金さえ払えば、あまりうるさいことを言わない土地柄にゃん』

『にゃあ、レークトゥスらしいにゃんね』

『また新しい巣を作ってるかも知れないよ』

 何故かリーリからも念話だ。

『にゃあ、お館様、探査魔法を打ってみるにゃん』

『了解にゃん』

 先行してる猫耳が探査魔法で地下のアジトを探った。

『『『にゃ!?』』』

 これまでにない反応が返って来た。オレにも同時にその情報が伝わる。

『お館様! これってエーテル機関にゃん! アジトにいるのは魔獣にゃん!』

『にゃあ、やっぱりそうにゃんね』

『お館様、いまの探査魔法で魔獣にウチらのこと気付かれたみたいにゃん! 認識阻害の結界を使ったにゃん』

 急に魔獣の反応が消えた。

『にゃあ、アジト周辺をまとめて封印結界でくくるにゃん!』

 先行してる猫耳たちに指示した。

『『『にゃあ!』』』


 地下のアジトを結界で隔離した瞬間、林の向こう側で土砂が跳ね上がり軍隊蜂が吹き出すように空に舞った。


 ジープを停める。

「な、何だ!?」

 チャドが声を上げた。

「にゃあ、蜂にゃん! ドッサリ残ってたにゃん!」

「なっ、まだ居たのか!」

「にゃあ、見ての通りにゃん、いまは結界で閉じ込めてるけどちょっとヤバい感じにゃんよ」

「見たまんまってことだな」

 結界でくくられた空間の中を軍隊蜂が飛び回る。

『にゃあ、魔獣のことはチャドたちに秘密で行くにゃん』

 念話を飛ばして注意喚起する。

『にゃあ、大丈夫にゃん、魔獣が地下にいるうちはバレないにゃん』

『そう願うにゃん』

『何で軍隊蜂と魔獣が一緒にいるにゃん!?』

『にゃあ、蜂の数がスゴいにゃん!』

 アジトを囲い込んだ封印結界の中で軍隊蜂があふれそうだ。

『多すぎて数がわからないにゃん!?』

『にゃあ、もっと近付くにゃん』

 オレを含めて猫耳たちも混乱してる。

「答えは土の中だね」

 リーリが腕を組んで語る。

「にゃあ、この先は危ないからチャドたちはロッジで待機するにゃん」

 ロッジを再生した。

「危ないってどう言うことだ!?」

「にゃあ、見ての通りにゃん、結界で押さえてるけど軍隊蜂があふれかえってる状態にゃん、万が一、弾けたりしたら守り切れないからロッジに入ってるにゃん」

「しかし、おまえらだけ行かせるわけには」

「チャド様、ここはマコト様に従うのが良いかと思われます」

「そうですよ、お兄様が亡くなるといろいろ面倒なことになりますから、自重なさって下さいませ」

「お、おう、そっちかよ?」

 エラとロマーヌに諭されおとなしくなりロッジに向かうチャド。

 実際、足手まといなので助かる。

「マコトたちも気を付けろ、ありゃどう考えても変だぞ」

「にゃあ、わかってるにゃん、とにかく全部狩るにゃん」

 三人がロッジに入るのを見届けて二台のジープで結界に接近し、先行していた猫耳たちと合流する。

「ざっと数えたところ三万ちょっといるにゃん、どう考えてもアジトには入りきれない数にゃん」

 結界に接触した蜂が感電して落下する。

 落ちた蜂は回収してるが後から後から湧き出してくる。

「にゃあ、お館様、この魔獣って蜂を産んでるんと違うにゃん?」

「産んでると言うより複製してる感じにゃんね、回収した蜂が全部同じにゃん」

「にゃあ、蜂を消すには魔獣を止めないとダメってことにゃん」

「そうみたいにゃんね」

 オレたちは軍隊蜂であふれかえる封印結界を眺めた。封印結界は直径一〇〇メートルほどの無色透明な球形で半分は地下に埋まってるが、地上に露出した部分は蜂でドーム状の形がはっきり見える状態になっていた。

「結界内のマナは抜いてるにゃん?」

「にゃあ、さっきからガンガン抜いてるにゃん、それでも濃度が低下しないにゃん」

「魔獣が成長してるね」

 リーリは簡単に魔獣の認識阻害の結界を突破したらしい。

「「「にゃ?」」」

 リーリが認識阻害の結界に穴を開けてくれたおかげで魔獣の反応がまた見えるようになった、そしてさっきよりも反応が大きくなってるのを確認した。

「にゃお、これはマジでヤバい系にゃんね」

「お館様、ここで潰さないと、とんでもないことになりそうにゃん」

「にゃあ、オレたちの本気がここで試されてるにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 オレたちは一斉にマナを吸い取る。

 吸い取ったマナはオレの中のドラゴンのディオニシスに流し込む。

 燃費の悪いディオニシスは喜んでゴリゴリ消費して行く。

「にゃあ、こんなにマナを吸い取ってるのに蜂の生産が止まらないにゃん!」

 このままだと本当に結界がパンクしかねない。

 そんなことになったら大惨事が繰り返される。目も当てられない。

「にゃお! この魔獣、絶対に変にゃん!」

『お館様、それって魔獣じゃないかも知れないにゃんよ』

 研究拠点から冷静な声の念話が入った。

「「「にゃ!?」」」

『生体型の生産プラントの可能性があるにゃん』

「にゃ、生体型の生産プラントにゃん!?」

『にゃあ、蜂の瘴気が休眠中の遺跡を再起動させた可能性があるにゃん、ウチらは全体の洗浄とシステムへの介入を提案するにゃん』

「にゃあ、了解にゃん、直ぐに洗浄を開始するにゃん」

「「「にゃあ!」」」


 結界内の全てを洗浄した。


「続けてシステムへの介入にゃん、でも、これって本当に可能にゃん!?」

「お館様、たぶんイケるにゃん!」

「「「イケるにゃん!」」」

「にゃあ、やってみるにゃん!」

 猫耳たちの声援を受けて、オレは未知のプラントに立ち向かう。

 マナをたっぷり吸ったディオニシスの力を借りて、魔獣なのか生産プラントかはっきりしないそれにアクセスを試みる。

 魔法式が見えた。


 大丈夫、行けそうだ!


「にゃあ! システムが立ち上がったにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちが歓声を上げる。

 直ぐに使用者登録と軍隊蜂の生産の中止を命じた。

「どうにゃん?」

「「「にゃあ、止まったにゃん!」」」

 湧き出していた軍隊蜂が出て来なくなった。

「成功みたいにゃんね」

 結界に捕らえられている出来たばかりの軍隊蜂を電撃で処分して回収した。

「問題は生体型生産プラントにゃん、これはこのままにはしておけないにゃん」

「そうだね、また何か勝手に作られると危ないよね」

 リーリは、状況が落ち着いたところで新しいドーナツを食べ始めた。

「分解は可能にゃん?」

「にゃあ、反応は魔獣そのものにゃん」

 オレはシステムを解読する。

「全終了を掛ければ生産プラントは完全停止するにゃん、それなら死んでるのと変わらないはずにゃん」

『にゃあ、その手順で間違いないはずにゃん』

 研究拠点からもお墨付きをもらった。

「やるにゃんよ!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちのアシスタントを受けて生体型生産プラントに完全停止命令を打ち込んだ。

「にゃあ! プラントの停止確認にゃん」

「分解にゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 オレたちの手を煩わせた生体型生産プラントは完全に分解された。

「お館様、アジトが崩れるにゃん」

「にゃ!? 退避にゃん!」

 ジープを全速でバックさせる。

 地下構造物が消え去ると同時に地盤を固めていた魔法も消え去って地鳴りとともに地表が陥没した。

 森が一気に沈む。

「にゃあ! 急ぐにゃん」

『『『ニャア!』』』

 猫耳ジープたちが返事をする。

 バックするジープを追う様に地面が木々ごと沈んで行く。前輪が落ちそうになるが猫耳ジープが踏ん張って逃げる。

 直径三〇〇メートルの大穴が空いたところで崩落が止まった。

「にゃあ、いまのは危なかったにゃん」

「マコトたちだって、飛べるんだからそんなに慌てなくてもいいんじゃない?」

 リーリから冷静なツッコミが入る。

「にゃあ、すっかり忘れてたにゃん、車に乗ってると車で逃げたくなるのが人間の悲しい性にゃん」

 大穴は周囲の崩落で埋まって一番深い場所で三〇メートルほどになってる。

「何で犯罪ギルドの下に遺跡が埋まってたにゃん?」

「にゃあ、埋まってた生産プラントはゴーレムタイプだから犯罪ギルドの連中は遺跡には気付いて無かったと思うにゃんよ」

「生産プラントの上に大昔の倉庫みたいな空っぽの遺構があったにゃん、それをアジトに流用してたにゃん」

「そこを今回、蜂に襲われて瘴気が充満して生産プラントのスイッチが入ったわけにゃんね」

「にゃあ、犯罪ギルドの連中はともかく売られそうになっていた人たちの魂は天に還してやるべきにゃん」

「そうにゃんね」

 オレたちは聖魔法で魂を送った後に穴を埋め戻した。


「にゃあ、何とか片付いたにゃん」

 ロッジまで戻ってチャドたちに報告した。

「軍隊蜂は何匹いたんだ?」

「全部で三万ちょっといたにゃん」

「良くまあ、あれだけいたもんだな」

「にゃあ、ちょっと危なかったにゃん」

「まさか他にも似たような巣穴が有るんじゃなかろうな」

「それは今後の調査次第になると思うにゃん、有ったとしても猫耳たちが対応するから問題はないと思うにゃん」

「マコト様たちがいてくれれば安心ですわ」

 ロマーヌに抱き上げられる。

「にゃあ、次に行くにゃんよ」


 オレたちは、また浄化と聖魔法で瘴気の排除に戻った。


『にゃあ、お館様! 生体型生産プラントはスゴいにゃんよ!』

 研究拠点から興奮した念話が飛んで来た。

『にゃあ、何処がスゴいにゃん?』

『複製特化型の生産施設にゃん、何でも複製できるにゃん、魔法蟻も猫耳ゴーレムもイケたにゃん』

『猫耳はどうにゃん?』

『猫耳はダメだったにゃん、魂の複製ができないにゃん』

 試したみたいだ。

『生活用品の大量生産ができるにゃんね』

『にゃあ、地下の生産施設の一つとして殻に収めてから各拠点に設置するにゃん』

『そう言えば、殻が無かったにゃんね』

『にゃあ、エーテル機関を内蔵している関係にゃん、殻が有るとエーテルを大量に取り込めないからないにゃん』

『新しいのは殻付きにゃんね』

『にゃあ、内部にエーテル機関が無くても濃厚な魔力がパイプラインを通して送られるから殻に収めても問題ないにゃん』

『製造業殺しのプラントにゃんね』

『他人様の領域を侵さないように十分注意して使うようにするにゃん』

『にゃあ、よろしく頼んだにゃん』


 今日やばかったのは生体型生産プラントの一件だけで、後は蜂に遭遇することもなく粛々と浄化と聖魔法を使うだけの作業だった。

 気分的には魔獣と戦ってる方がずっと気楽にゃんね。



 ○レークトゥス州 北東部 州道 野営地


 暗くなってから今夜の野営地にジープが集合した。


 テーブルに地図を広げてチャドと進捗状況をチェックする。

「ほぼ予定通りにゃんね」

「ああ、マコトたちが来てくれたおかげでなんとかなりそうだ」

「にゃあ、大変なのはこれからにゃんよ」

「それもわかってるつもりだ」

「ロマーヌは大丈夫にゃん?」

「わたくしは問題ございませんわ」

 最初はゲロってたロマーヌもすっかり慣れたらしい。ちゃんと祈りを捧げてから調査活動をしていた。

「わたくしも領主の一族ですから出来うる限りのことはいたします」

「オレもアポリトとか有るから本当は、他人の領地を構ってる場合じゃないにゃんよ」

「アポリトな、またグールとオーガが湧いてるそうだが、あれはどうにかなるものなのか?」

「にゃあ、追々どうにかするにゃん」

 焼きそばのいい匂いがしてきた。

 今日の野営地の近くに避難民のキャンプが有るので猫耳たちが炊き出し代わりに焼きそばを作っている。

「にゃあ、オレも作るにゃん」

 エプロンを付けて鉄板に向かった。

「あたし、大盛りね」

 リーリが胸元から這い出て来た。

「にゃあ、了解にゃん」


 数分後、口元を油でツヤツヤにした妖精が出来上がった。


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