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第三騎士団の五人にゃん

 フレデリカの護衛を務める第三騎士団の五人ともいい娘なのだが、オレは彼女たちの中に違和感が拭えず猫耳たちに調査を命じていたのだ。

『そうにゃん、五人全員を精査したところエーテル器官に細工がされていたのを発見したにゃん、丹念に偽装されていて普通ならまずわからないにゃん』

『さすがお館様とウチらも感心したにゃん』

 褒められても嬉しくない事象だ。

『呪いではないにゃん?』

『呪いと言えば呪いにゃん、濃いマナに触れるといずれも特異種になる刻印が打ち込まれていたにゃん』

『にゃ、特異種にゃん?』

『にゃあ、研究拠点でついさっき魔法式の解析が終わったところにゃん』

『刻印だけでグールになるにゃん?』

『にゃあ、理論的には可能みたいにゃん、ただ実際には濃い目のマナがトリガーとして必要にゃん』

『グール化の刻印は騎士見習いのシャルロット・アシュフォード、ユージニア・バートウィッスル、クリスティーナ・バーネット、エレオノーラ・ベルナップの四人に打ち込まれてるにゃん』

『魔法使いのグリゼルダは違うにゃん?』

『グリゼルダ・ボスフェルトはカロロス・ダリと同じく魂を食う特異種、吸精鬼になるにゃん』

『早急に手を打つ必要があるにゃんね』

『現在、五人はケラス軍司令部に造った隔離空間の中にある医療用カプセルに収容しているにゃん』

 ケラス軍司令部は四つのピラミッドのひとつだ。

『エーテル器官から刻印を完全に排除するのにちょっと時間が掛かるにゃん』

『仕方ないにゃんね』

 エーテル器官は人間の魔力を司る器官だ。

『にゃあ、どんなトラップが隠されてるかわからないから細心の注意を払って修正するにゃん』

『『『了解にゃん』』』

 最悪エーテル器官を交換するしかないだろう。

 ただそれは最後の手段だ。

 魔力特性が変わるといろいろ弊害が出る。

『にゃあ、グリゼルダとカロロス・ダリのエーテル器官に刻まれた魔法式は比較したにゃん?』

『それはまだにゃん』

『にゃあ、こちら研究拠点にゃん、すぐに比較するにゃん』

『頼むにゃん』

 研究拠点の研究室で猫耳たちが二つの魔法式を重ね合わせる。

 思考共有してるので結果はすぐに伝わった。

『にゃあ、これはかなり似てるにゃんね』

『同じ術者にゃん?』

『もしくは同じ魔導書を見ていたかにゃん、多少の差はあるけどそれは最適化された結果にゃん』

『これだけでは術者まで同一かどうかはわからないにゃんね』

『にゃあ、そうにゃんね、使われてる刻印の魔法式が全部オリエーンス連邦時代の形式だから、当時の魔導書から丸写しの可能性が高そうにゃん』

 現代魔法の構文がまったく混じってない。

『これで三〇年前カロロス・ダリを特異種にした魔法使いとグリゼルダのエーテル器官に細工したヤツが同一人物だったら厄介にゃんね』

『にゃあ、お館様、オリエーンス連邦時代の禁呪に精通してるヤツが二人いるのも厄介にゃん』

『それもそうにゃんね、両方敵だとしたら目も当てられないにゃん』

『少なくてもウチらの味方ではないにゃん』

『そうにゃんね』

『お館様、第三騎士団の五人についての報告がまだあるにゃん』

『にゃ、まだあるにゃん?』

『五人全員の身元が不明にゃん』

『どういうことにゃん?』

『第三騎士団には五人に該当する人間が存在しないにゃん、ついさっきアーヴィン様を通じて確認して貰ったにゃん』

『にゃあ、よくいままでバレなかったにゃんね』

『正確には二年前に盗賊に襲われて死んでる人間の名前だったにゃん』

『死んでるにゃん?』

『盗賊討伐の任務の最中に逆襲されて惨殺されたそうにゃん、たぶんその時に何らかの方法で記憶を奪ったにゃんね』

『……』

 猫耳たちの報告に思わず鳴き声が漏れそうになる。

『死人に守らせて姫様を送り出したにゃんね』

 ハリエットの時といい変に凝ってるのが犯行の特徴だ。まるでわざと複雑にして遊んでるみたいだ。

『書類が巧妙に偽装されていたにしても死んだ人間の名前に気が付かないのは間抜けすぎにゃんね』

『アーヴィン様の情報では王宮は責任をなすり合いで大騒ぎになってるみたいにゃん』

『そんなことより黒幕をさっさと探して欲しいにゃんね』

『『『にゃあ』』』

 王宮の人間からしたら自分の首がかかってるから黒幕どころではないのだろう。誰かが詰め腹を切らされないことには落ち着かないか。

『死んだ第三騎士団見習い騎士たち五人の記憶と名前をここにいる五人が受け継いでるにゃんね』

『にゃあ、ウチらから見ても役を演じてる感じは無かったにゃん、でも可能にゃん?』

『記憶のすり替えなんて特異種を作り出すことに比べたらずっと簡単にゃん』

『二年前から仕込んでたにゃんね』

『五人のエーテル器官を直に見てみるにゃん、こうなると入れ替えられてる可能性が高いにゃんね』

 オレは椅子から降りた。


 オレは会議室を出て五人を収容してるケラス軍司令部の隔離エリアに赴いた。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス軍司令部 隔離エリア


 隔離エリアは空中刻印の応用で部屋の床、壁、天井を封印結界の刻印が流れている。普通の人間が入り込んだら目を回すこと請け合いだ。

 流れてる刻印は聖魔法の青なので、本物の空中刻印みたいなおどろおどろしさは無いのが救いだ。

 カプセルの中で眠ってる五人を眺める。服も下着も取り去り裸で横たえられてる。シャルロットはおっぱいが大きいにゃんね。


「人工エーテル器官にゃん」

 オレは五人全員のエーテル器官が置き換えられてることを確認した。

「「「にゃ?」」」

「お館様、これが人工エーテル器官にゃん?」

 猫耳たちもカプセルの中の五人の中にあるエーテル器官を探査魔法で見る。

「にゃあ、オレも初めて見るけど間違いないにゃん」

 人工エーテル器官の情報は図書館情報体にあった。あちらは純粋な医療行為の産物だがこちらは禁呪の塊だ。

「お館様じゃなかったら見付けられなかったにゃんね」

「「「にゃあ」」」

「おまえらも直ぐにわかるようになるにゃん」

「にゃあ、エーテル器官自体がグールを造る道具だったにゃんね、やりたくは無かったけどこれは移植するしかないにゃん」

「仕方ないにゃん」

「贋の記憶もこの人工エーテル器官が一枚噛んでるにゃんね、これを取り除くと元の記憶が表に出るにゃん」

「にゃあ、どうやら王都のスラムを根城にしていた盗賊の一味だったみたいにゃん」

 猫耳たちが五人の本当の記憶を覗き見た。

「普通に犯罪奴隷行きの罪状があるにゃん」

「にゃあ、この罪状ではこのまま復活させるわけにはいかないにゃんね」

「近いうちに王宮から五人の引き渡し要求もあるだろうと、アーヴィン様が仰っていたにゃん」

「にゃあ、はいそうですかと渡すわけにはいかないにゃんね、殺されるのは目に見えてるにゃん」

「猫耳にするにゃん?」

「それもひとつの方法にゃんね、できればこの子たちはこのまま……って、にゃ!? ちょっと待つにゃん!」

「お館様どうしたにゃん?」

「わかったにゃん」

 オレはカプセルの中の五人を凝視する。

「にゃあ、やっと五人に感じていた違和感の正体がわかったにゃん」

「違和感の正体にゃん?」

「そうにゃん、違和感の正体は刻印でも人工エーテル器官でもなかったにゃん、本来そこに複数あってはいけないモノだったにゃん」

「にゃ、複数あってはいけないモノにゃん?」

 猫耳たちが首を傾げた。

「にゃあ、ひとりの身体の中に魂が二つあるにゃん」

「「「マジにゃん?」」」

 猫耳たちが目を見開く。

「マジにゃん、おまえらもわかるはずにゃん」

「「「にゃ、にゃあ」」」

 猫耳たちは五人をじっくり見る。

「にゃあ、確かに二つあるにゃん」

「片方はほとんど動いてないにゃんね、お館様に言われなかったらまずわからないにゃん」

「「「にゃあ」」」

「オレもじっくり見て初めて気が付いたにゃん、魂が二つとかオリエーンス連邦時代の禁呪はエグいのばかりにゃん」

「お館様、禁呪は大概エグいにゃんよ」

「それもそうにゃんね」

 休止状態になってる二つ目の魂を精査する。

「どうやら人工エーテル器官に紐付けされていたのは、殺された第三騎士団の見習い騎士たちの魂にゃんね」

「見習い騎士たちの記憶を上書きするためにゃん?」

「それは二次的なものにゃん元の身体にあった魂が排除されずに残された理由は、人工エーテル器官に刻まれた魔法式が関係してるにゃん」

 刻印の魔法式からその理由を読み取った。

「この子たちを特異種化させる刻印に元の身体の魂を使って魔力を供給する仕組みになってるにゃん」

「お館様、魂から魔力を作れるにゃん?」

「そうにゃん、この魔法式を見ると魂を分解して魔力に変換するにゃん、しかも瞬発的にかなり強い魔力が発生するにゃん」

「魂が分解できること自体が初耳にゃん」

「それはオレもにゃん」

「やっぱりオリエーンス連邦時代の禁呪はエグいにゃん」

「にゃあ、人体実験をやりまくってたことが伺い知れるにゃんね」

 人の尊厳を踏みにじる禁呪の研究にどれほどの犠牲が払われたのかは不明だが、最終的にオリエーンス連邦時代の文明が滅んだのだから少なくない代償は支払われている。

「にゃあ、お館様、五人に使う代替のエーテル器官はウチらで作っていいにゃん?」

「問題ないにゃん」

『お館様、設計はウチらにお任せにゃん』

 研究拠点から念話が入った。

『にゃあ、任せるにゃん』

 代替えのエーテル器官の設計は研究拠点、再生しての移植はネオケラス拠点の猫耳たちが担当することになった。

「第三騎士団の見習いたちは、そのまま復活させてケラスの騎士団に雇い入れるにゃん」

「二年前に盗賊に惨殺されたのは、今回の犯人のカモフラージュで実際には誘拐されたことにするにゃんね」

「そうにゃん、この二年間は魔法で眠らされていたにゃん」

「呪いは、お館様が解いたことにすれば完璧にゃん」

「にゃあ、王都に返さない為にはオレたちで保護するのがいちばんにゃん」

「お館様、元の魂はどうするにゃん?」

「少女盗賊団にゃんね、犯罪奴隷相当の罪状では当然そのままってわけにはいかないにゃん」

「「「にゃあ」」」

 元の魂は全会一致で猫耳化が決定した。


 五人の身体から元の魂を抜き出して煉獄の炎でこんがり焼いてまっさらになるまで鍛え上げ猫耳に生まれ変わる予定だ。

 元第三騎士団の見習いたちも一旦、身体を再調整してから新しく作られたエーテル器官を埋め込むことになる。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス領主公邸 超巨大浴場


 夜は領主公邸の超巨大浴場で子供たちと猫耳と猫耳ゴーレムが一緒になって大騒ぎ。


 子供たちは早々に茹で上がって冷たいジュースのある部屋に連れて行かれる。

「にゃあ」

 オレは浴場に入ってからまだ床に足が付いていない。

「次はウチがお館様を抱っこするにゃん!」

『ニャア!』

 バケツリレーの如く猫耳と猫耳ゴーレムたちの間を次々とパスされて行くオレ。

 皆んな仲良くな。



 ○帝国暦 二七三〇年〇九月二五日


 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス軍司令部 隔離エリア


 日付が変わったところで、研究拠点から第三騎士団の見習いたちの新しいエーテル器官が届いた。

 隔離エリアに戻ったオレたちは早速、治療の仕上げを開始する。

「にゃあ、早速入れてみるにゃん」

 カプセルの中の五人からは既に危険な人工エーテル器官を取り去って肉体の再調整も済ませて元の身体+αの状態にしてある。

 研究拠点で作った人工エーテル器官は魔力性能が上げてあり、今後は魔法剣士として活躍して貰うつもりだ。

「始めていいにゃん」

「「「にゃあ」」」

 オレが見守る中で猫耳たちの手で人工エーテル器官の移植をする。

 治癒の光の中でエーテル器官のあった場所に新しい物を置く。オレたちにとってはそう難しい治療行為ではない。

「「「完了にゃん」」」

「にゃあ、全員成功にゃん」

 人工ではあるが安全で高性能なエーテル器官が彼女たちに魔力を供給する。

「後は身体に馴染むのに数時間掛かるにゃん、それでも朝には目を覚ますにゃん」

 アーヴィン様たちと王宮には同じ説明をする予定だ。人工エーテル器官うんぬんはオレたちだけの秘密にする。

 エーテル器官とグール化について中途半端な情報を伝えても人々を疑心暗鬼にするだけだ。

「にゃあ」

「にゃ?」

 いきなり猫耳に抱っこされる。

「お館様はウチらと寝るにゃん」

「「「にゃあ♪」」」


 そのまま猫耳たちが雑魚寝する広間に連れて行かれた。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス領主公邸 プライベートキッチン


「にゃふ~」

 猫耳たちに埋もれて朝を迎えたオレは、領主公邸のプライベートキッチンで久し振りに自分で朝食を作る。

 今朝のメニューはトマトとハムとチーズのオープンサンドにジュース。

 子供たちはホテルだしリーリは各食堂巡りに出掛けたので、オレひとりで……と、思ったらテーブルにズラリと二〇人からの猫耳たちが着席していた。

「にゃ?」

「にゃあ、おはようにゃん、お館様の手料理を朝から堪能できるなんてウチらは幸せにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 慌てて二〇人分を追加で作った。

「やっぱり、マコトが作ったご飯は一味違うよね」

 リーリも戻って来たので、オレはキッチンから離れられなくなった。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス軍司令部 隔離エリア


 オレと猫耳たちが見守る中で五人の騎士見習いたちが目を覚ます。


「具合はどうにゃん?」

 蓋を開けたカプセルから身体を起こす少女たち。

「問題ありません」

 リーダーのシャルロットが答えた。

「裸なのがアレですが」

 委員長っぽいユージニアは腕で胸を隠す。

「治療のためにゃん」

「……」

 無口キャラのクリスティーナがコクコクうなずいた。

「魔力が上がってますね」

 魔法に詳しいエレオノーラが自分の身体を眺めた。

「にゃあ、今日から魔法剣士にゃん」

「ちっちゃい」

 騎士団の魔法使いグリゼルダも自分の身体を見る。

「にゃあ、身体の大きさは以前と同じにゃん」

 既に彼女たちの状況はエーテル器官を通して直接伝えてある。

「まずは服を着るといいにゃん」

 猫耳たちが服とブーツを配る。猫耳たちと同じ戦闘服だ。


「一度、死んだとは信じられませんが事実なのですね」

 服を着た自分たちの身体を改めて確かめたシャルロットの言葉に残りの四人もうなずいた。

「にゃあ、事実にゃん、五人が盗賊に襲われてから二年ちょっとが経過してるにゃん」

「死んだはずの人間が姫様の護衛に成り代わったのですから王宮から不信の目で見られるのは仕方ありませんね」

 ユージニアがつぶやく様に言う。

「それ以前に、王宮内での責任のなすり合いに巻き込まれない為にも五人にはケラスの騎士団員になって貰うにゃん」

「……」

 クリスティーナが頷く。

「呪いを掛けられた我々を騎士団員にしてよろしいのですか?」

 エレオノーラは考え込むタイプだった。

「にゃあ、魂以外は全部新しくしてあるにゃん、呪いはひとかけらも残ってないから安心して欲しいにゃん」

「今日から、ケラス騎士団ですか?」

 クリスティーナが喋った。

「そうにゃん、今日からケラス騎士団の一員にゃん」

 いまはまだ五人しかいないけどな。

「お館様の騎士ですね」

「そうにゃん、お館様の盾と剣になるのがケラス騎士団の仕事にゃん」

 エレオノーラの言葉に横から猫耳が口を挟んだ。

「無論、そのつもりです」

 グリゼルダが宣言した。

「「「にゃあ、頼むにゃん」」」

 猫耳たちが激励する。

「にゃあ、そうと決まったら五人に魔法馬と装備を渡してやって欲しいにゃん、それから銃を使った訓練にゃん」

「「「了解にゃん」」」

 猫耳に新生ケラス騎士団の少女騎士たちを任せた。



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス領主公邸 ロビー


「「「お館様にゃん!」」」

 領主公邸に戻った途端、猫耳たちに抱き上げられた。

「にゃあ」

 さっき仕上がったばかりの新入りの猫耳たちだ。

 こちらは元少女盗賊団の五人。危うく魂を刻印のバッテリー代わりにされるところだったが、いまは新しい身体と名前を与えられ猫耳として第二の生を受けた。

「にゃあ、おまえらはしゃぎすぎにゃん」

 もみくちゃなオレ。

「「「みゃあ」」」

 耳をぺたんとさせる五人の新入。

「にゃあ、まあいいにゃん、順番に抱っこしていいにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 パッと五人の顔に笑みが浮かび早速、順番に抱き上げられて頬ずりされる。

 金、黒、銀、茶、青と五人の髪の色はそれぞれ第三騎士団の見習い騎士たちの髪色と合致していた。何でかはオレも知らないにゃん。

「にゃあ、新入り以外が並んじゃダメにゃん」

「「「みゃあ」」」

「悲しい声を出してもダメにゃん、ここで許すと抱っこ会で一日が潰れるにゃん」



 ○ケラス州 仮州都ネオケラス ケラス領主公邸 領主執務室


 新入り五人にオレを堪能させたところで場所を変えて本題に入った。

「にゃあ、おまえらが覚えてる最後の瞬間のことを教えて欲しいにゃん」

 記憶を共有しているが細かなニュアンスは訊くに限る。

「最後の記憶は、王都の城壁内に入り込んだ夜のことにゃん」

 一人目のギーが最初に口を開いた。魂がシャルロットと同居していたせいか金髪になっている。

 名前に関しては、もともと五人全員がスラム育ちなので有って無いようなものだった。それでオレたちが新しい名前を付けてやった。

「城壁内に入り込んだのはいつの事にゃん?」

「日付はわからないけど冬だったにゃん、ウチらは馴染みの情報屋からとある貴族の屋敷がその夜、無人になることを知って忍び込んだにゃん」

 二人目のイオが説明してくれる。ユージニアと同じ黒髪だが委員長っぽさはない。

「罠だったにゃん?」

「にゃあ、ネタのとおり屋敷の中は無人で金貨がザクザクでウハウハだったにゃん、近年にない大収穫で、ウチらは上機嫌で屋敷を抜け出したにゃん」

 三人目のワコがうれしそうに教えてくれる。クリスティーナと同じ銀色の髪になっていた。こっちも無口キャラではない。

「にゃあ、普通にかっぱらって来たにゃんね」

「お館様、問題はその帰り道にゃん、城壁の抜け穴の前で最初にヤコが倒れたにゃん」

 四人目のララが説明する。エレオノーラと同じ茶髪だ。

「にゃあ、あの時は突然、全身の力が抜けて倒れたにゃん」

 五人目のヤコが手を挙げた。グリゼルダと同じ青い髪だがひとりだけちっこいなんてことはない。

「王都の城壁には抜け道があるにゃん?」

「にゃあ、いくつもあるにゃん、たまに塞がれるけど直ぐに新しい抜け道が作られるにゃん」

 ギーが身振り手振り入りで教えてくれる。

「ヤコは何で倒れたにゃん?」

「理由はわからないにゃん、ウチの記憶はそこで途切れたにゃん」

「次にララとイオが倒れたにゃん、ウチもその後にすぐ倒れたにゃん、何があったのかウチもわからなかったにゃん」

 ワコが興奮気味に話す。

「ララとイオは何か見たにゃん?」

「ウチも何も見なかったにゃん、ヤコと同じく身体から力が抜けてそのまま気を失ったにゃん」

 ララは首を横に振った。茶色の髪が揺れる。

「にゃあ、ウチも見てないにゃん、その代わりギーが金貨の入った袋を持って駆け出すところは見たにゃん」

 イオの爆弾発言に全員の視線がギーに集まる。

「とりあえず、緊急避難しただけにゃん、金貨が無ければ盗賊行為は証明されないにゃん」

「モノは言いようにゃんね」

 イオがジト目で見る。

「それにほんのちょっと走っただけでウチも倒れたにゃん」

「にゃあ、過ぎたことにゃん、水に流してやるにゃん」

「「「にゃあ」」」

 オレのとりなしでその件は収まった。

 それに前世のこいつらだったら全員ギーと同じ行動を取っていたはずだ。そうしないと生き残れない厳しい世界なのも事実だ。

「にゃあ、ギーは何も見なかったにゃん?」

「夢か現実かわからないけど、ウチが倒れるまで誰もいなかったはずなのに、気を失う瞬間、黒い服を着た人間に囲まれていたにゃん」

 前世のギーが地面に転がった瞬間、巻き散らかされた金貨が何かに当たる音がした。紛れもなく何者かの靴に当たった音だ。

「ギーが気を失う寸前、認識阻害の結界が解かれたにゃんね、おまえらは待ち伏せされていたにゃん」

 盗賊ならその後の隠蔽も最低限で済む。素材を得るには最適な存在だったのだろう。


『お館様、こちらアウグルにゃん』

 新入りを送り出したところにアウグルの城塞都市建設チームの猫耳から念話が入った。

 元バイネス狩猟団第三軍団の団長エルゲ・コルテスだったエルだ。

『にゃあ、お疲れにゃん』

『お館様、レークトゥス州から避難民が境界門に押し寄せてるにゃん』

『にゃ、避難民にゃん?』

 思わず聞き返した。


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