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おともだちにゃん

 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 最上階


 地下の車寄せから専用エレベーターを使って最上階のオレの部屋にフレデリカ第一王女の一行を案内した。

「わぁ、ひかってる!」

 姫様が透明な壁に駆け寄った。

 すっかり日も暮れてホテルの最上階からオパルスの街の明かりや、THE異世界なオパルス城の幻想的な姿が見える。

「きれー!」

 姫様が声を上げる。

「姫様、そんなに近付かれては危険です!」

 イライザは腰が引け気味だ。

「にゃあ、別に危なくないにゃんよ」

 透明な壁をコツコツと指で叩いて見せる。青みがかってるので何もないと勘違いすることもない。

「しかし、外から狙われませんか?」

 少女騎士たちは周囲を警戒する。

「それも大丈夫にゃん」

 魔法で補正されたら狙撃は可能だが、材質を透明な生きてる金属に変更+マナ変換炉の投入でパワーアップしているピラミッドの防御結界と外壁を抜くだけの力があるならどこに隠れても無駄だ。

「これは見事なものだ」

 アーヴィン様も夜景を眺める。

「さすがネコちゃん」

「この夜景だけでもお金を出す貴族がいますね」

 エステを堪能したキャサリンとエラも合流している。

「にゃあ、ここより王城からの眺めの方がスゴいと違うにゃん?」

「確かに絶景であるが、残念ながら王家の方々が暮らすエリアからはこのような眺望は望めぬ」

「それはもったいないにゃんね」

「仕方ないわ、王家の人々は安全第一だもの」

「王族の生活空間は城内の奥にあって外には露出してないそうです」

「タリス城は対魔獣の要塞でもあるからな」

 夜景を眺めながらアーヴィン様たちの話を聞いていると聞き覚えのある小さな足音が三人分こっちに駆け寄って来た。

「「「おやかたさま!」」」

 シア、ニア、ノアの四歳児たちだ。

「にゃあ、来たにゃんね」

「「はしっちゃだめだよ」」

 姫様と同じ五歳児のビッキーとチャスがその後を追ってきた。

 チビたち五人はいずれも寄宿学校の制服姿だ。

「マコト様、この子たちは?」

「後から来たビッキーとチャスはネコちゃんが面倒を見てる娘よ、最初の三人はお初だけど皆んな可愛い」

 シャルロットの問い掛けにキャサリンが中途半端に答える。

「三人の娘も魔法使いみたいですね」

 エラは四歳児たちの実力を見抜いたらしい。

「ネコちゃん、このこたちは?」

 姫様はオレの後ろに隠れた。

「にゃあ、オレたちの家族みたいなものにゃん」

「ネコちゃんたちのかぞく?」

 首を傾げる姫様。

「ネコちゃんたちの家族ってことは全員、私の妹みたいなものね」

 近くにいたノアがキャサリンに抱き上げられて頬ずりされる。

「きゃ!」

 声を上げて喜ぶノア。

「「つぎ」」

 シアとニアはキャサリンの足にくっついて順番待ち。

「きゃあ、ちょと待ってね」

 うれしい悲鳴を上げるキャサリン。

「妹より娘って感じです」

 エラがそれを見てボソっとつぶやく。

 四歳児たちがキャサリンにハグされるのを待ってチビたちに声を掛けた。

「にゃあ、皆んな、姫様にご挨拶にゃん」

「「「はい」」」

 チビたちが声をそろえて返事をした。

「ビッキーです」

「チャスです」

 五歳児ふたりはペコリとお辞儀した。

「あたしはシア」

「あたしはニア」

「あたしはノア」

 四歳児たちは名乗りながらひとりずつ手を挙げた。

「にゃあ、皆んな偉いにゃん」

 おチビたちがうれしそうに微笑む。チビさ加減はオレも負けてないけどな。

「にゃあ、姫様もご挨拶にゃん」

 オレの背中に貼り付いてる姫様に声を掛ける。

「フレデリカ」

 姫様は恥ずかしそうに顔だけ出して名乗った。

「「「おともだちだね」」」

 チビたちは物怖じせずこの国の第一王女をお友だち認定した。

「おともだち?」

 姫様がオレの背中から離れた。

「「「うん」」」

 大公国のバカ貴族みたいのがいたら身分がどうこう大騒ぎするのだろうが、ここにはそんなヤツはいない。

「にゃあ、フレデリカ王女殿下のことは姫様って呼ぶにゃん」

「「「ひめさま?」」」

「そう、姫様にゃん」

 どこで誰が聞いてるかわからないからな。突っ込まれないように用心をしておく。

「「「ひめさまもいっしょにあそぼう」」」

「あそぶの?」

「「「そう!」」」

「いい?」

 姫様はアーヴィン様を見た。いちばん頼りになる大人に聞いたのだろう。ついでに爵位もこの中では姫様を除けば最も高い。

「構いませんぞ」

 アーヴィン様も笑顔でOKを出してくれた。

「「「ひめさまこっち!」」」

 チビたちはベッドの上で飛び跳ねるべく姫様を最上階のロフトに引っ張って行った。

「お待ち下さい、姫様!」

 慌ててイライザもその後を追った。

 オレもちょっとウズっとしたが我慢した。


「ふわ~」

 姫様は大きな欠伸をした。間に夕食を挟んで遊び倒した姫様はそろそろお眠のようだ。

 オレはトラのぬいぐるみを出した。

 姫様の視線が吸い寄せられる。

「にゃあ、アーヴィン様、これを姫様にあげても問題ないにゃん?」

 王族だとプレゼント一つ取っても面倒くさそうな仕来りがありそうだ。

「防御結界付きのぬいぐるみであるな、問題はなかろう、イライザも良いな?」

「はい、マコト様からの贈り物でしたら問題ございません」

 イライザからもOKが出たので姫様にトラのぬいぐるみを差し出した。

「にゃあ、これはオレから姫様へのプレゼントにゃん、皆んなとおそろいにゃん」

「「「おそろい」」」

 チビたちもぬいぐるみを出した。

「おそろい?」

 ぬいぐるみを手にする姫様。

「そうにゃん」

「ありがとう、ネコちゃん!」

 姫様はトラのぬいぐるみを抱き締めてお礼を言った。

「にゃあ、こいつは姫様を守ってくれるからいつも持ってるにゃんよ」

「うん」

「いま仕舞い方を教えるにゃん」

「しまうの?」

「そうにゃん、姫様がいつでも取り出せる場所に仕舞うにゃん、皆んな、姫様に教えてあげるにゃん」

「「「はい!」」」

 トラのぬいぐるみも魔法馬と同じく魔力を使わず格納できる。チビたちに指導されて五歳児の姫様も直ぐにぬいぐるみの格納を憶えた。

「「「えっ?」」」

 守護騎士たちと側仕えの合計六人が目を丸くしていた。格納空間は魔法使いじゃないと扱えない代物だ。それほど難しい魔法ではないがチビたちの歳ではまず使えない。

「すごーい!」

 姫様は自分でトラのぬいぐるみを出し入れしてキャッキャ喜んでる。

「アーヴィンもみて」

 アーヴィン様の前でトラのぬいぐるみを出し入れさせる。

「おお、これはスゴい!」

 アーヴィン様が大げさに驚いて姫様もご満悦だ。


「にゃあ、皆んなはそろそろベッドに入るにゃん、姫様もにゃん」

「わたしもいっしょ?」

「そうにゃん」

「「「ひめさまもいっしょ!」」」

 チビたちが姫様と手を繋ぐ。

「うん、いっしょ!」

 姫様は仲良くなったチビたちと一緒なのがうれしいらしい。



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 最上階 ロフト


 ロフトにチビたちと姫様を連れて着替えさせる。全員パジャマ代わりのロングTシャツを支給してある。

 側仕えのイライザが着替えさせようとするがオレが止めた。

「チビたちに任せるにゃん」

「ですが」

「着替えも遊びにゃん」


 キャッキャ騒ぎながら着替えてベッドに飛び乗った。

 大きなベッドは六人でもチビたちなら余裕だ。

 そしてベッドに入ったところで明かりを落とした。

「おそとがみえるね」

 姫様が外を眺める。

「うん、キラキラしてる」

「キラキラだね」

「「「キラキラ」」」

 チビたちもベッドから外を見る。

「にゃあ、見えなくすることもできるにゃんよ」

「このままがいい!」

「「「あたしも!」」」

 姫様もチビたちも同意見だった。

「にゃあ、だったらこのままにするにゃん」

「にゃあ、おやすみにゃん」

「「「おやすみなさい」」」



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 最上階


 今夜はアーヴィン様と第三騎士団の守護騎士五人も姫様の護衛として最上階に留まる。

 最上階は三フロア構成のメゾネットなのでそれぞれ寝室は別だ。

 キャサリンとエラはエステ付きの部屋に戻って行った。何者かが姫様を襲って二人のエステを中断させたら、きっと血の惨劇が繰り広げられるにゃんね。

 猫耳たちもホテルの各所で警備に当たってる。地下では魔法蟻がトンネル内を巡回している。

 ホテルの敷地には入れないはずだが特に式神を幾重にも警戒させた。


「式神ですか?」

 第三騎士団の騎士見習いたち四人はピンと来ないみたいだ。

「聞いたことはありますが実物は見たことがありません」

 魔法使いのグリゼルダが小さく手を挙げた。

「あまり知られてないにゃんね」

「宮廷魔導師の秘技の一つと噂されている程度ですから」

 扱い的には都市伝説か。

「にゃあ、こういうものにゃん」

 鳥型の式神を取り出して見せた。

 カラスほどの大きさのそれは、王都の帰りにオレと猫耳ゴーレムを襲ったヤツの再生品だ。

「本当に有ったのですね」

 グリゼルダはオレから受け取った式神を興味深そうに眺めた。

 安い植木鉢みたいな素焼きで作った部品を針金で繋いだような雑な作りだが、刻印がびっしり刻まれてる。

「にゃあ、式神はこういった鳥や小動物を模したモノが多いにゃん、未確認だけど本物の鳥や動物を使う可能性もあるので気を付けるにゃん」

「「「わかりました」」」

 魔法使いのグリゼルダだけは難しい顔をした。

「これって探査魔法に引っかからないんですよね?」

「にゃあ、その通りにゃん、認識阻害も付いてるから発見は難しいにゃん」

「あの、ではどうやって探せばいいんでしょうか?」

 委員長っぽいポニーテールのユージニアが質問した。

「魔法使い以外は、勘に頼るしかないにゃんね」

「勘ですか?」

 シャルロットは目をパチクリさせる。

 銀髪のクリスティーナはコクっと頷く。

 茶髪のエレオノーラは式神の鳥をじっくり見ていた。

「人間の勘はバカにできないにゃんよ、空でも何処でも違和感を覚えたらオレたちに教えて欲しいにゃん」

「「「了解です」」」

「マコト様、魔法使いには何か方法はありませんか?」

「にゃあ、グリゼルダには防御結界での探知をお勧めするにゃん」

「防御結界を使うのですか?」

「にゃあ、防御結界を思い切り薄く伸ばして広げるにゃん、これに触れると認識阻害の結界でも誤魔化しきれないにゃん」

 ウチの四歳児たちに使わせていた方法だ。

「相手にも同時に気付かれるから、その後はスピード勝負にゃん」

「魔力的に大変そうです」

「にゃあ、張りっ放しにしないで調整するのがベストにゃん、それとできる限り薄くするのがポイントにゃん、そうじゃないといろいろ支障が出るにゃん」

「試してみます」

「守護騎士の五人は、ケラスに行くのは問題ないにゃんね?」

「「「もちろんです!」」」」

「にゃあ、遠い上に何もないにゃんよ、それでもいいにゃん?」

「問題ありません、我らは任務をまっとうするのみです!」

 シャルロットが代表して力強く宣言した。

 姫様を守るのは騎士にとってこの上ない名誉なのだろう。


 守護騎士は、アーヴィン様の指示に従って常時三人を警護に置き、二人を休息させるシフトを組んだ。

 姫様の側仕えのイライザには朝までの休息を命じた。彼女には姫様と生活の時間を合わせて貰いたい。

 アーヴィン様はプロテクターを装着したままリビングで特大の人をダメにするクッションに身体を預けて寝入っている。何かあったらすぐに飛び起きるはずだ。キャサリンとエラの間に探知結界が作られてるあたりも抜かりはない。



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル ミーティングルーム


 オレはひとつ下のフロアで猫耳たちとミーティングだ。

「にゃあ、まずはケラスの毛虫についてにゃん」

 説明してくれるのはベイクウェル商会の支店長ドリスタン・バーロウだったドリだ。

「ウチらは毛虫の毛皮と繭から作る糸をケラスの特産品として売り出すのがいいと思うにゃん」

「にゃあ、それは問題ないにゃん、でもプリンキピウムの森と違って無尽蔵には居ないと思うにゃん」

「研究拠点で例の青いエーテル機関を解析した結果、瘴気を出さない毛虫に改造することが可能みたいにゃん」

「にゃあ、するとオレたちで飼えるにゃんね」

「そうにゃん、繭は作るが毛虫のまま出てくるという良くわからない生態をしてるにゃん」

「蛾にはならないにゃん?」

「ならないにゃん」

「たまに作る繭の中で脱皮した毛皮も残すので、糸と毛皮と肉を取るために作られた生物と考えると納得が行くにゃん」

「食べられるにゃん?」

「美味しいみたいにゃん、でも人懐っこいからウチらには食べられないにゃん」

「そうにゃんね」

 ウシみたいに全力で襲ってくるなら仕留めても心が痛まないわけだが、つぶらな瞳で寄って来る毛虫は無理だ。毒は吐くけど。

「にゃあ、毒を吐く機能を魔力に変換する魔法式に書き改めれば繭を作るサイクルが早くなるみたいにゃん」

「毛虫は元々は家畜だったっぽいにゃんね、それを毒を吐く魔獣に作り変えられたにゃんね」

「研究拠点の猫耳たちもそれで一致してるにゃん」

「にゃあ、毛皮だけでもかなりの値段になるらしいにゃんね、領主様が早くもクリステル様とフリーダに全部取られたって嘆いてたにゃん」

「ケラスの毛虫の毛皮は幻の素材なので値段があってないようなモノにゃん、過去には一枚で大金貨一〇〇枚で取引された例があるにゃん」

 ドリはケラスの毛虫の毛皮について造詣が深い。

「にゃあ、毛虫の繭から取れる糸もなかなか高そうにゃんね」

 品質は既に姫様のドレスで確認済みだ。

「それもメチャクチャ高いにゃん」

「この手の高級な商品はベイクウェル商会にでも任せるといいにゃんね」

「にゃあ、ダドリーのヤツが泣いて喜ぶにゃん」

 ダドリー・ボウマンは失踪したドリスタン・バーロウの後を継いでベイクウェル商会オパルス支店長になったイケメンだ。

「ギラギラした青二才にゃん、身に余る幸運に自滅しないことを祈るにゃん」

 ドリは元部下に辛辣だ。

「お館様の信頼を裏切ったらウチが始末するにゃん」

 元ダリオのダリは前職の影響がまだ残ってる。

「にゃあ、殺すのはダメにゃんよ」

「当然お館様のために有効活用するにゃん、それに調子に乗ったらウチらより先に本店の連中に始末されるにゃん」

「抜け目ないヤツだから、そんなヘマはせずに本店の経営会議のメンバーにはなりそうにゃんね」

「既にケラス支店の設立に動いてる辺りなかなかいい嗅覚をしてるにゃん」

 元アウローラ・バイネスのローが腕を組んで頷く。バイネス狩猟団もベイクウェル商会の動きを掴んでいた。

「にゃあ、オレとしてはダドリーにいまのまま良き協力者でいてくれることを希望するにゃん」

「明日にでもヤツにお館様のお言葉を伝えるにゃん」

 ドリが請け負いダリもうなずいた、

「にゃあ、ケラスの毛虫たちはエーテル機関を改修していまの生息地を牧場化するのがいいにゃんね」

「毛虫はおとなしいから、毒さえなければ一般人でも扱えるにゃん」

「デカいから押し潰されない様に気を付ける必要はあるにゃん」

「にゃあ、まずは飼育方法を確立にゃんね」


 毛虫の毛皮と糸だけでも直ぐにケラスを黒字化できそうなのは良かった。



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