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魔獣の森に侵入にゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇九月〇三日


 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森前衛拠点


「にゃあ、やっと魔獣の森前衛に到着にゃん」

 翌日、猫耳と猫耳ゴーレムをぞろぞろと引き連れてオレは、午前中のうちに魔獣の森の境に作った前衛拠点にたどり着いた。

「いろいろ有って遅れたにゃん」

「にゃあ、あれだけの収穫にゃん、遅れて当然にゃん」

 プリンキピウム魔獣開発局は丸ごと分解してオレの拡張空間に仕舞ってある。

 現在、球形の殻の中に入った招き猫の形に作り変えてる最中だ。

「招き猫の設置は、なるべく魔獣の森の深い場所がいいにゃんね」

 濃いマナが吸い放題と言うことで、研究施設は魔獣の森の地下に埋設することが決定済みだ。

「前線基地に繋ぐからあまり遠いとトンネルが大変と違うにゃん?」

『……!』

 魔法蟻が口をカチカチさせる念話が来た。

「問題ないそうにゃん、既に試し掘りは終わってるそうにゃん」

『にゃあ、お疲れにゃん』

 魔法蟻はいつものように前脚を片方挙げた。



 ○プリンキピウムの森 南エリア(危険地帯) 魔獣の森前衛拠点 大食堂


 拠点の大食堂でカレーライスを食べながら午後からの魔獣の森潜入に付いて話し合う。

「にゃあ、今日は観察を中心に行きたいにゃん」

「それだと少数にゃんね」

「おかわり!」

「当然、大人数で森に入ると早い時間に魔獣どもに発見される可能性が高いにゃん」

「にゃあ、最近ベイクウェル商会から手に入れた記録に依ると、過去の諸侯軍による魔獣の森の軍事行動は、いずれも早い段階でたくさんの魔獣に囲まれてるにゃんね」

 猫耳が州都で手に入れた情報を共有する。大人数で魔獣の森に突入すると魔獣が大発生するという話はただの都市伝説では無かったわけだ。

 ベイクウェル商会が優れているのはその情報収集能力だが、同時にオレたちのネタも流されている可能性が高いので要注意ではある。

「にゃあ、魔獣が仲間を呼ぶって話の元ネタにゃんね」

「フィーニエンスでも似た事例が多数にゃん、目の前で見たから確かにゃん」

 ギーゼルベルトが教えてくれる。フィーニエンスがいろいろやらかしたせいで道が森に沈んだのではないだろうか?

「おかわり!」

「お館様は何人連れて行くにゃん?」

「魔獣の森には三人にゃん、おまえらはここにマナ変換炉を四基増設して、地下の生産施設を拡充させるにゃん」

「「「にゃあ、了解にゃん!」」」

「生きてる金属もどっさり使って魔獣の森のマナを消費しまくるにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

「おかわり!」

 リーリはまた皿を出した。



 ○魔獣の森 外縁部


 オレはリーリと猫耳のメル、ハル、ギィの三人を連れてまがい物じゃない本物の魔獣の森に足を踏み入れた。

 メル、ハル、ギィは前世がいずれも山林を縄張りとした盗賊だ。魔獣の森も浅くなら潜ったことがあるらしい。

 今回はテキトーに選んだのではなく、魔獣の森経験者ということで選抜している。

「にゃあ、三人は何で魔獣の森に潜ったにゃん?」

「賞金稼ぎに追われて仕方なく逃げ込んだにゃん」

「首を撥ねられるよりはマシにゃん」

「魔獣の森で死にそうになったにゃん」

 魔獣の森はアナトリ王国のあちこちにあるので、足を踏み入れること自体はそう難しくはない。

 逆にプリンキピウムからは間にヤバい森を挟んでいるのでアクセスは困難だ。


「にゃ」

 まるで結界を越えたみたいにマナの濃度が跳ね上がる。飛び地とは一味違う感触だ。ここまで境界がハッキリしているとは思わなかった。あちらはもう少しグラデーションが効いていた。

「にゃあ、これにゃん、この感覚にゃん!」

「前はもっとガツンと来たけど、今回はそうでもないにゃんね」

「前世は、エーテル器官が足を引っ張っていたにゃん」

 三人もマナの違いを敏感に感じ取った。


「まずは、いちばん近くにいる魔獣を見に行くにゃん」

「「「にゃあ」」」

 オレたちは魔獣を刺激しない様に薄い探査魔法を打った。

 反応は距離にして五キロほど先。

「大きいのはわかるにゃん、でも、形がはっきりしないにゃん」

 紺色の髪のメルが首を捻った。

「魔獣も認識阻害の結界を使ってるみたいにゃんね」

 金髪のハルが感じ取った様だ。

「にゃあ、蛇とはシルエットが違うみたいにゃん」

 黒髪のギィは目を凝らす。

 猫耳たちは薄い探査魔法から情報を引き出す。

「そうにゃんね、蛇ほど長くないにゃん」

 何度かお目に掛かっている鎧蛇ではないみたいだ。

「長さが一五、幅が七、高さが五って感じの大きさにゃん」

「にゃあ、やっぱり魔獣はデカいにゃんね」

 観光バスを二台を横に並べたよりもデカい。

「いまはじっとしているみたいにゃん」

「そのまま動かないでいてくれると助かるにゃん」

 動かないヤツはそれはそれでヤバい何かがありそうだが。

「にゃあ、距離を詰めるにゃん」

「「「にゃあ」」」

 オレたちも認識阻害の結界を重ね掛けして魔法馬を進ませた。

 下草を消して獣道を作りながら魔獣の反応に近付く。

 本物の魔獣の森は、飛び地ほど魔獣が濃くないし、マナの変化も少ない。

 飛び地は数メートル進んだだけでマナの濃度が上昇した。あれは埋まっていた猫耳ゴーレムのせいだけど。

「リーリは、魔獣の森のマナが、いったい何処から来てるか知ってるにゃん?」

 頭の上に乗っている妖精に問い掛けた。

「マナ? 何処からっていうより濃いところが魔獣の森になったんじゃない?」

「にゃあ、なるほどマナが先にゃんね」

 ゆっくりとした足取りで魔法馬を進ませる。

「何でマナの濃い土地が出来たのかわかるにゃん?」

「理由はいろいろじゃない、あたしも気にしたこと無かったから、マナは少ないより多いに越したことはないからね」

「にゃあ、妖精は魔獣の森の方がいいにゃん?」

「マナは嫌いじゃないけど、魔獣の森は美味しいものが無いからね」

「にゃあ、魔獣は料理しないと食べられないのが難点にゃんね」

「だよね」


「お館様、月光草はどうするにゃん」

 メルが地面を指差す。

「にゃあ、他の人間に入り込まれても困るから魔獣の森の縁はそのままにするにゃん」

「そうにゃんね、下手に入り込まれたら危ないにゃんね」

 ハルが頷く。

「それに例の宮廷魔導師には知られたくないにゃん、魔獣の森に潜ってる最中に呪いが飛んで来るとか面倒くさいにゃん」

「魔獣の森で呪いは嫌すぎにゃん」

 ギィが渋い顔をした。

「魔獣が近いよ」

 リーリが教えてくれた。

「にゃあ、いたにゃん」

 双眼鏡で魔獣を捉えた。

「にゃ?」

 思わず目を疑う。

「あれが魔獣にゃん?」

「いきなりスゴいのが出たにゃん」

「お館様、あれってどこまでが魔獣にゃん?」

 猫耳三人がオレを見る。

「にゃあ、たぶん全部にゃん」

 自信ないけど。

「うん、魔獣で間違いないよ」

 リーリが断言した。

 双眼鏡で捉えたのは上半分がカエルで、下半分が戦車みたいなキャタピラだった。

 特撮の怪獣に似たようなのが居たが、こっちはヌメヌメとした両生類だ。

 金色の大きな目玉を長い舌で濡らしてる。

 無限軌道がヤブを踏み潰しキュルキュル音を立てて進む。下半分は完全な魔法車だ。ハイブリッドな魔獣を生み出す技術とか舌を巻く。

 エーテル機関からこのキャタピラ付きのカエルが生まれるのだからスゴい。

 先史文明の連中はその力をもう少し文明存続のために割り振ってくれればこんな中世一歩手前まで後退せずに済んだのに。

「オタマジャクシミサイルといい、カエルはミリタリー系にゃんね」

 カエル戦車の探査結界はレジストしたので、こっそり近付いてじっくり観察する。

「魔獣が千差万別でも、アレはやり過ぎにゃん」

 メルが意見ももっともだ。

「あのキャタピラ、なかなかいい動きをしてるにゃん」

 ハルが見ているのはそこか。

「確かに魔獣の森の凸凹した地面を難なく走ってるにゃん」

 ギィの言う通りサスの動きが秀逸だ。

「上はいらないけど下半分が欲しいにゃんね」

「にゃあ、お館様、カエルが大口を開けて何かするみたいにゃん」

 魔力が大口に集まってる。

 ニュルっと出てきたのはさっき目玉を舐めていたピンク色の舌だ。

 真っ直ぐ突き出された舌が筒状に丸められる。


『ゲコ』


 舌から光の塊が撃ち出され、カエル戦車の正面の巨木を貫通した。

「にゃ!?」

 次々と光の玉が撃ち出されて、その一発で進路を塞ぐ巨木が倒された。

「にゃあ、なんと主砲まで付いてたにゃん!」

「完全に戦車にゃん!」

「あの主砲も、ヌメヌメして無かったらちょっと欲しいにゃん」

「お館様、カエル戦車を倒すにゃん?」

「当然、倒すにゃん」

「仲間を呼ぶ可能性があるけどいいにゃん?」

「にゃあ、仲間を呼ぶ前に倒せばこっちの勝ちにゃん」

「カエル戦車の仲間って、ちょっと気になるにゃんね」

「オレもそれは思うにゃん」

「仲間を呼んでもらっちゃう?」

 リーリがいい笑顔を浮かべる。

「にゃお、魔獣の森に入って一発目で大発生はマズいにゃん、オレたちにはまだ迎え撃つ準備ができてないにゃん」

 伝説の大地を埋め尽くす魔獣とかやらかすとカズキに超怒られる。たぶんそれだけじゃ済まないだろうし。

「お館様がいつになく慎重にゃん」

「オレはいつも慎重にゃん」

「えっ?」

 リーリが何か素で驚いた顔をしてる。

「にゃあ、とにかくエーテル機関を一撃で撃ち抜けば仲間は呼べないはずにゃん」

 オレは銃を取り出した。

 ガトリングガンは正確に狙いを付けるのが難しいので、今回は小銃を使う。

 カエル戦車と並走しながら馬上で銃を構えエーテル機関の在り処をサーチする。

「見付けたにゃん!」

 カエル戦車のエーテル機関は頭にあった。

「撃つにゃん」


『ゲッ……』


 引き金を引いた次の瞬間、カエルの頭に着弾し、キャタピラが滑走して止まった。

「やったにゃん、分解にゃん」

 カエル戦車を分解し、拡張空間に収める。

 オレたちの前にはキャタピラで荒らされた地面だけが残された。それとなんか生臭いのも残ったにゃん。

「にゃあ、仲間は呼ばれなかったにゃんね」

「当然にゃん」

 隙を与えなかったので、周囲に変化はない。

「カエル戦車がいっぱい見れないのは少し残念にゃん」

「カエル戦車軍団にゃん」

「それはちょっと見たいけど、勝てる気がしないにゃん」

 カエル戦車の集中砲火とか嫌すぎる。


 収納したカエル戦車を解析しつつ次の魔獣を探す。

「見付けたにゃん、次の魔獣に行くにゃん」

「「「にゃあ」」」

 次は距離にして三キロ。姿ははっきり見えないが直ぐにわかった。

「この感じは蛇系にゃん」

「この辺りの魔獣は蛇が多いにゃんね」

「にゃあ、森で大きな身体を動かすには有利にゃん」

「それと街中も難なく進むらしいにゃん」

「ウチは形が苦手にゃん」

「オレもどちらかと言うと蛇は得意じゃないにゃん、でも魔獣の大きさになると蛇感が希薄になるにゃん」

「全身が見渡せないほど大きいのはスゴいにゃん」

「にゃあ、早く実物が見たいにゃん」

「すぐに嫌っていうほど見えるにゃん」

 オレたちは細心の注意を払いながら魔法馬を進める。

 プリンキピウムの森に比べると途切れなく襲ってくる獣がいないだけ走りやすかった。


「にゃう?」

 オレは一キロほど進んだところで馬を停めた。

「お館様、どうしたにゃん?」

「にゃあ、あっちからいい匂いがするにゃん」

 進行方向とは違う西側を指差した。

「言われてみると甘い匂いがするにゃん」

「こんなところで変にゃんね」

「また魔獣の罠と違うにゃん?」

 猫耳たちは懐疑的だ。

「これは確かめないと!」

 リーリに至ってはいまにも匂いに向かって飛び立ちそうだ。

「にゃあ、危ないからリーリは先に飛んで行っちゃダメにゃん」

 妖精のリーリが魔獣にどうこうされることは無いはずだが、この森で絶対は有り得ない。過信は禁物だ。

「わかってるよ、だから一緒に行こう」

「にゃあ、そうにゃんね、匂いの元を確かめるにゃん」

 馬を西に向けた。

「いい匂いのする魔獣だったらちょっと嫌にゃん」

「もしそうなら、いい匂いのする部分は再利用するにゃん、デザートに使うにゃん」

「賛成!」

 妖精がビシっと手を挙げた。

「魔獣の気配はないけど警戒は最大で行くにゃんよ」

「「「にゃあ!」」」

 探査魔法を打っても魔獣の反応は皆無だが慎重に馬を進めた。


「にゃ、果物にゃん」

 大きな木においしそうな果物がなってるを発見した。匂いの元はこれだった。

「林檎にゃん?」

 見た目は赤くて形も林檎っぽいが果肉がゼリーみたいな半透明だ。実は幹の部分が魔獣だったとかの面白展開もなく本物の果実だった。

「にゃあ、ウチらも見たことのない果物にゃん」

「プリンキピウムや州都の市場でもないにゃんね」

「食べれらるにゃん?」

 猫耳たちも知らないらしい。

「調べてみるにゃん」

 匂いの強いのを幾つかもいで分解しつつこの半透明の林檎に付いて各情報体に当たる。

 図書館情報体に正解があった。

「わかったにゃん、これは『魔獣の林檎』と呼ばれている果実にゃん」

「にゃあ、これが魔獣の林檎にゃん? 話には聞いたことがあるけど本物は初めて見るにゃん」

 メルが名称を知っていた。

「魔獣の林檎は、本当に魔獣の森にあったにゃんね、てっきりフカシだと思っていたにゃん」

 ひとり感心している。

「情報によれば、マナの濃い場所に育つ食べると魔力と体力を少し回復してくれる果物らしいにゃん」

「高値が付きそうにゃんね」

「にゃあ、最低でも一個で大金貨一枚は堅いにゃん」

 メルは値段も知っていた。

「魔獣の森に潜って探して一攫千金にゃんね、でも、死ぬから前世のウチならやらないにゃん」

「ハイリスクハイリターンにゃんね、前世のウチもまずやらない仕事にゃん」

 ハルとギィは危ない橋は渡らない主義の盗賊だったらしい。オレを襲ったのは完全にリサーチ不足にゃんね。


「収穫するにゃん」

 毒が無いのを確認して魔獣の林檎の木を掘り出して丸ごと回収した。

『にゃあ、これを品種改良して、普通の場所でも収穫できる様にするにゃん』

『『『了解にゃん』』』

 各拠点の猫耳たちに命じた。

「お館様、マナの濃度がいじれる地下農場ならそのままでもイケるにゃんよ」

 ギィの言う通り地下農場なら可能だ。

「にゃあ、マナの濃い空間をオレたちの近くに置きたくないにゃん、それに何処にでも植えられればオレたち以外の人も育てられるにゃん」

「ウチら以外の人にゃん?」

 ギィが首を傾げる。

「にゃあ、そうにゃん、いずれ必要になるにゃん」


 魔獣の林檎の木を回収したオレたちは改めて蛇型魔獣に接近を試みた。

 下草があまりなく赤茶けた土が露出している。痩せた土地に見えるが、魔獣の森のぶっとい木々はそんなことお構いなしに生い茂っていた。

「にゃ? さっきと違って今回は魔獣の姿が見当たらないにゃん」

 魔獣の魔の字も無い。

「反応のある場所にいないにゃんね」

 メルもキョロキョロする。

「にゃあ、反応からすると見えて良い距離なのにいないにゃん」

 ハルも目を凝らす。

「視覚に対する認識阻害かもしれないにゃん」

 ギィの想定は悪くない。

「ウチら以上の認識阻害の結界を持ってる魔獣の可能性が有るってことにゃんね?」

 メルは攻撃準備に入る。

「にゃ! 上にゃん! 退避にゃん!」


 全員が馬を前に出した瞬間、オレたちの防御結界の上部に金属が跳ねる音と火花が飛び散った。


「にゃあ!」

 オレは馬の背に立ち振り向きざまにガトリングガンを再生してトリガーを引き絞った。

 正確には後方斜め上だ。

 魔獣は、ガトリングガンの銃弾を浴びながらも巨大な杭を撃ち出した。

 オレと魔法馬のいた場所に突き刺さるが、馬は消し去ってオレは後方に飛んだ。

「「「にゃあああ!」」」

 猫耳たちも散開してガトリングガンの銃弾を三方から浴びせる。

 しかし魔獣も後ろに飛んで巨木の影に隠れた。

「にゃお、蛇じゃなくて蜘蛛にゃん!」

「ウチらも確認したにゃん!」

「やっぱり魔獣はデカいにゃん」

「にゃあ、魔獣の森は半端ないにゃん!」

 大型のダンプカーぐらいあるデカい蜘蛛が気配を消して巨木に糸を張り巡らせてオレたちの上に降りて来たのだ。

 認識阻害の魔法ではなく、純粋に音も気配も消していた。

「にゃあ、おまえらは待機にゃん!」

 オレが前に出ると魔獣はデカいのに機敏に動いて巨木の影から杭を飛ばして来る。

 杭じゃなくて爪だ。

「にゃああ!」

 今度は結界で爪を受ける。

 魔獣には杭が突き刺さって見えたらしくチャンスと踏んだのか、間髪入れず飛び出しオレの防御結界を抱え込んで牙を突き立てた。

 残念ながらこれも防御結界が防いだ。

 蜘蛛は確かな手応えを感じたのに防御結界に牙と脚を絡め取られて動けなくなる。

 慌てて逃げ出そうとするが、もう遅い。

「にゃあ、おまえのエーテル機関を見付けたにゃん」

 オレは蜘蛛の胴のくびれた部分にあるエーテル機関を結界で囲んだ。

 そのまま身体から引きちぎるように引きずり出す。

 蜘蛛の動きが止まった。

 オレは蜘蛛の体内に作った結界から電撃を放った。

 ズルズルと蜘蛛の巨体が墜ちた。

 躯は分解して格納する。

 認識阻害の結界は使わず、どうやって不自然なまで気配を消せたのか後で調査だ。


「お館様、蛇がいたにゃん!」

 メルが上を指差した。

 巨木の高いところに初めて見るあまり大きくない蛇の魔獣が蜘蛛の糸にぐるぐる巻きにされて吊り下げられていた。

「魔獣は魔獣を捕食するみたいにゃんね、死にかけているにゃん」

 ハルが魔獣を見上げる。

「死んだみたいだよ」

 リーリが教えてくれた。

「にゃ、お館様、周囲のマナの濃度が上がってるにゃん、たぶんあの蛇から漏れているにゃん」

 ギィが蛇を指差した。

 確かに濃度が急激に上昇している。

「にゃあ、ちょうどいい機会にゃん、距離を取って魔獣の躯がどう変化するか観察するにゃん」

「「「了解にゃん」」」


 オレは魔法馬を出し猫耳たちと一緒に安全と思われる距離を取って、半地下のトーチカを作り観察を開始した。


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