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子ブタ亭をプロデュースにゃん

 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル ペントハウス


 久し振りにリーリを連れて自分のペントハウスに戻って来た。

 もう日没の時間だ。

「「「おやかたさま♪」」」

 四歳児たちが猫耳たちと一緒にジャグジーに浸かっていた。ビッキーとチャスは寄宿学校で帰還の報告会をしてるらしい。

「にゃあ、オレも入っていいにゃん」

「「「いいよ♪」」」

 オレもジャグジーに入れてもらう。

「いい気持ちにゃん」

「「「いいきもち!」」」

「お館様、森の拠点にもジャグジーが欲しいにゃんね」

 猫耳のひとりが提案する。

「プリンキピウムの森にジャグジーにゃん?」

 命がいくつ有っても足りない感じの野天湯になりそうだが。

「にゃあ、森の露天風呂とか、お館様も入りたくないにゃん?」

「入りたいにゃん、ただ獣がひっきりなしに来てゆっくりできる気がしないにゃん」

「にゃあ、獣や魔獣にそれと虫も入れないように対策は十分するにゃんよ、ウチらだって捕食動物と混浴は嫌にゃん」

 風呂の周りをデカいホワイトマッシュルームに囲まれて太鼓を叩かれるのも嫌だけど、それは入浴時に限らないので黙っておく。

「にゃあ、お館様、ウチらだって油断はしないにゃん」

「それなら安心にゃん」


 心ゆくまでブクブクした後は、土禁エリアでゴロゴロする。

 シア、ニア、ノアの四歳児たちは、シャンテルとベリルが迎えに来たのでリーリも連れて寄宿学校に夕食を食べに行った。

 オレは、アトリー三姉妹の試食から時間が経ってないので遠慮した。四歳児たちはそのまま寄宿学校で就寝だ。

「「「にゃあ♪」」」

 猫耳たちも一緒に転がってる。

「おまえらは、ご飯を食べなくていいにゃん?」

「ウチらは、ラウンジでパフェを食べたにゃん」

「おいしかったにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

「それは良かったにゃん」

「お館様、明日はどうするにゃん?」

「デニスが来るから、宿屋を買い取りに行くにゃん」

「三軒目のホテルにゃん?」

「子ブタ亭はホテルと言うより宿屋って言うのがピッタリにゃんよ、ざっくり改装して直ぐにオープンにゃん」

「仕事が早いにゃん」

「にゃあ、しばらく閉まってたらしいから、再開はなるべく早いのがいいにゃん、冒険者のおっさんたちを野ざらしには出来ないにゃん」

 子ブタ亭は宿泊したことがあるから内部構造もわかってるから改築は直ぐに可能だ。

『お館様、魔獣の森前衛拠点が完成したにゃん、続けて明日から黒恐鳥の牧場造りを始めるにゃん』

 プリンキピウムの森と魔獣の森との境界に派遣した猫耳から念話が入った。

『お疲れにゃん』

 魔獣の森前衛拠点はプリンキピウムの森の南の端、魔獣の森との境界に造られている。近いうちに始める魔獣の森探検の最前線基地になる予定だ。

『ウチらもパフェを食べたいにゃん』

『にゃあ、順番に食べにくればいいにゃん』

『ジャグジーも入りたいにゃん』

『順番に入っていいにゃんよ』

『お館様を抱っこしたいにゃん』

『一人ずつにゃん』

『『『にゃあ♪』』』

 念話で歓声が上がった。

「「「にゃあ♪」」」

 ここにいる猫耳たちが群がって来た。

『『『ニャア』』』

 無論、ネコ耳ゴーレムたちも続いた。


「わあ、ネコちゃんがいっぱいいる」

「本当だ、しかも全員、可愛い」

 セリアとデニスがペントハウスにやって来た。

「猫耳はオレの仲間にゃん、可愛くて当然にゃん」

「私たちもジャグジーを使ってもいい?」

「いいにゃんよ」


「「「お館様、ふたりとも大きいおっぱいにゃん!」」」

「にゃあ、知ってるからオレに報告しなくていいにゃんよ」



 ○帝国暦 二七三〇年〇八月二九日


 ○プリンキピウム マホニー武器店


 翌朝、デニスと待ち合わせしている子ブタ亭に向かう前に寄宿学校とマホニー武器店に顔を出した。

 シアとニアとノアは寄宿学校の子どもたちと楽しそうに遊んでるし、ビッキーとチャスも子どもたちの輪の中にいた。

 リーリはオレに付いて来ないでアトリー三姉妹と厨房に篭っている。

 マホニー武器店のアンは相変わらずだが、チャックの腕が確かなのでそこそこ繁盛していた。オレも新しい武器を卸して地域振興を図る。



 ○プリンキピウム 子ブタ亭 前


 昨日デニスと約束した時間になったので子ブタ亭の前に行った。

「おはよう、ネコちゃん」

「おはようにゃん」

 デニスは子ブタ亭の女将さんを伴って小さな馬車でやって来た。

「女将さん、この子がお話したマコト・アマノ様です」

 デニスがオレを抱き上げて紹介してくれる。

「あら、この子が買ってくれるのかい? 確か六歳で冒険者だった」

 女将さんは相変わらずの貫禄だ。

「にゃあ、そうにゃん、憶えててくれたにゃんね」

「女将さん、このネコちゃんはプリンキピウム・オルホフホテルのオーナーですよ、州都にもホテルを持ってて、最近は銀行もやってるんです、そしてこの街を治める騎士様でもあるんです」

 デニスがオレのややこしい肩書を説明してくれる。

「銀行って、この前できたマコト銀行のことかい?」

「そうにゃん」

 以前に市長の屋敷が有った場所に巨大な三毛の招き猫の形をした建物が鎮座している。それがプリンキピウムのマコト銀行だ。

 以前のように通りに出っ張ってないので交通の邪魔にならないのも市民から好評を得ている。

「買ってくれるのが騎士様なら問題無さそうだね、安心して任せられるよ」

「女将さんはこれからどうするにゃん?」

「旦那と一緒に州都に戻るよ、元々あっちの人間だからね」

「道中、危ないからお金はウチの銀行に預けた方がいいにゃんよ、州都でもちゃんと下ろせるにゃん」

「じゃあ、今回の代金はネコちゃんの銀行に預けるとしようかね」


 買収の話は直ぐに済んで現金と書類をやり取りして、子ブタ亭はオレの所有になった。デニスはそのまま女将を銀行に送って行き、オレは建物と敷地を見聞する。


 買い取った子ブタ亭は、三階建の木造のがっしりした建物だが、いかんせん古くてあちこちガタが来てる。

「特に屋根がやばいにゃんね、もうプリンキピウムの雨には耐えられない感じにゃん」

 ボロボロと言った状態で応急処置を繰り返していた様だ。

「お館様、これは建て直した方が早いにゃんね」

 後から合流した猫耳たちもあちこち見ていた。

「お館様、地下に隠し部屋みたいなのがあるにゃんよ」

「にゃ?」

 地下に子ブタ亭の建物の地下に四角い物体があるのが探査魔法で見付かった。子ブタ亭とは物理的に繋がってないので、女将たちも知らなかったと思われる。

「遺跡と違って、浅い場所にあるにゃん」

「浅すぎて魔法蟻のトンネルにも引っ掛からなかったにゃん」

「とりあえず危険はないみたいにゃん」

「お館様、埋まってるのは地下室じゃなくて金属の塊みたいにゃん」

「「「にゃあ」」」

 二〇メートル四方の立方体の金属で作られた塊が地下五メートルの位置に埋まってる。

「これはいったい何にゃん?」

 大きさと重さから運ぶのはかなり困難と思われる金属の塊が、何でこんなところに埋まってるんだ?

「にゃあ、丸ごと分解してオレの格納空間で解析するにゃん、おまえらは空いた空間を埋めて欲しいにゃん」

「「「了解にゃん」」」


 地中の金属の塊を分解し、オレの格納空間に入れた。


 金属の立方体はツルンとしていて、表面は鏡のようで明らかな人工物だった。比較的簡単に時間を戻せることから何かしらの部品ではなくこれで完成形らしい。

「にゃあ、これもオリエーンス連邦時代後期のものにゃんね」

 年代はそれで決まりだ。

「にゃ、こいつちゃんとシステムがあるにゃん」

 金属の塊が何故かいっちょ前にシステムを持っていた。解析をするには好都合だ。魔力を供給してシステムを再起動させる。同時にマスターの名前を書き換えた。

 システムからこれが何なのかを推測する。これは取扱説明書が添付されてるようなもので直ぐに何なのか判明した。

「わかったにゃん、これは生きてる金属にゃん」

「にゃあ、マジで図書館情報体に記載のある『生きてる金属』にゃん?」

「それにゃん、柔らかくかつ恐ろしく硬い自由自在に形を変えられる金属にゃん、実物を手に入れられたのはラッキーにゃん」

 記録に拠れば非常に高価でほとんど量産できなかったものだ。

 空中刻印に近い技術なので目が眩むような技法が叩き込まれてる。オレはそこにエーテル機関をぶっ込んで更に性能を上げてみたりして。

「お館様、これで魔法馬を作ると恐ろしく頑丈なのができるにゃんね」

「にゃあ、何にでも応用が効くにゃん」

 魔法馬の場合は乗り手が露出してるから生きてる金属の恩恵は限定的なものになると思われる。手触りが本物の馬みたいに柔らかな感じになるのはポイントが高いけど。

「猫耳ゴーレム辺りに最適にゃんね」

「にゃあ、そうにゃんね、柔らかボディになるにゃん」

「戦闘力も半端なさそうにゃん」

 オレの中にいる魔法龍のディオニシスにも良さそうだ。生きてる金属ならばバカ食いする魔力を多少節約できるから短時間の飛行なら耐えられるはずだ。

 これで十分な魔力さえあれば大空を自由に飛べるのだが、現状では供給を消費が大きく上回っていて長時間の飛行は現実的ではない。魔力炉の発見が急がれるにゃんね。

「にゃあ、お館様は純粋な軍事用ゴーレムは作らないにゃん?」

「いかにもなのを作ると間違いなく各方面からクレームが入るにゃん」

「猫耳ゴーレムみたいな可愛い形にすればいいにゃん」

「にゃあ、汎用型の猫耳ゴーレムですら王都では物言いが入ったにゃんよ」

「あいつらビビリ過ぎにゃん」

「にゃあ、それに猫耳ゴーレムを生きてる金属でバージョンアップするだけで軍事用どころの騒ぎじゃなくなるにゃん」

「そうにゃんね、軽くシミュレーションしただけでヤバさがわかるにゃん」

「生きてる金属は魔力が強ければ強いほど強化できるから、専用のエーテル機関を追加するにゃんね」

「お館様、そこいらの魔獣よりもヤバいにゃん、流布されてる軍事用ゴーレムのスペックシートと比べても足りてないのは大きさと重さだけにゃん」

「猫耳ゴーレムは最初からそうにゃんよ」

 しかも魔法が使えるので、本物の軍用ゴーレムが出てきても負けることはないと思う。王宮の判断は間違ってないわけだが、あれは正当評価じゃなくてただの嫌がらせだ。

「お館様が天下を獲るのはそう遠くないにゃんね」

「同感にゃん」

「天下より魔獣の森でお宝を探した方が面白いにゃんよ」

「「「にゃあ、それも同感にゃん」」」


 猫耳ゴーレムのバージョンアップの内容が決まり、猫耳たちとの思考共有のおかげで設計図も直ぐに出来上がる。後は実行するだけだ。


『各拠点及び猫耳ゴーレムに通達するにゃん、これより猫耳ゴーレムのバージョンアップを開始するにゃん』

『オパルス拠点OKにゃん』

『オパルス前衛OKにゃん』

『中間拠点OKにゃん』

『プリンキピウム前衛OKにゃん』

『プリンキピウム拠点OKにゃん』

『プリンキピウムの森OKにゃん』

『魔獣の森前衛OKにゃん』

『クリムト拠点OKにゃん』

『プロトポロス拠点OKにゃん』

『パッセル拠点OKにゃん』


『バージョンアップ開始するにゃん!』


『『『ニャア!』』』


 全ての猫耳ゴーレムが生きてる金属で作り変えられた。柔らかボディと強靭な肉体の両方が与えられた。


「続けて本題にゃん、子ブタ亭の建て直しにゃんね」

「にゃあ、デザインはいまと同じ感じがいいにゃん」

「それは言えるにゃん」

「にゃあ、お館様、敷地も有ることだしもっと大きくしたらいいにゃん」

「安い部屋が欲しいにゃんね」

「にゃあ、怪我をするとお金が無くなって野宿してる冒険者も珍しくないにゃん、そいつらを保護したいにゃん」

「大部屋はダメにゃんよ、あいつら直ぐ喧嘩するにゃん、狭くても個室にゃん」

「シャワーとトイレは部屋に欲しいにゃんね」

「にゃあ、武器を置くロッカーも欲しいにゃん」

「盗賊並に臭いやつがいるからウォッシュの魔導具をありったけ配置した方がいいにゃん」

「冒険者割引が欲しいにゃんね」

「騒いでもいいように食事処は地下にゃんね」

「大浴場も欲しいにゃん」

「それも地下にゃん」

「大浴場と部屋の治癒効果は他の施設より強めの設定がいいにゃんね」

「にゃあ、冒険者は身体が基本にゃん」


 建物は現在の三階建てから敷地いっぱいに広げた地上六階、地下三階建てに変更。

 安い部屋は狭いことは狭いが空間拡張で倍になってる。

 どの部屋もシャワー&トイレ付きだ。

 裏庭の代わりは屋上を使ってもらう。素振りでも何でもやってくれ。

 食事処はビュッフェスタイルの飲み放題食い放題。でも高級品は出さない。

 騒ぎ過ぎたら宿の外に叩き出すスタイルは踏襲する。


 そして子ブタ亭を造り変えた。


「建物の意匠は受け継いだけど大きくなったせいで子ブタ感が無くなったにゃんね」

「「「にゃあ」」」

「にゃあ、ただのブタ亭にゃん」

「言い得て妙にゃん」

 木造からコンクリート製に変わってるし、煤けた感じもない。収容人数も実に一〇倍になってる。

「猫耳ゴーレムの準備もできたから、後は従業員にゃんね、おっ、来たにゃん」

 猫耳が馬車にジェドを乗せてやって来た。

「マコト、何だ話って?」

 ジェドを呼び出したのはオレだ。

「にゃあ、ジェドに子ブタ亭の料理長をやって欲しいにゃん」

「俺が料理長だって!?」

「にゃあ、料理の基礎は昨日の内に伝授してあるにゃん、にゃあ、猫耳ゴーレムもいるから大丈夫にゃん」

「そうは言っても俺にアニタたちみたいな凝った料理は無理だぞ」

「にゃあ、冒険者相手の宿でそんなモノを出してどうするにゃん? 冒険者料理とモツの煮込みでいいにゃんよ、それにソーセージとフライドポテトにビールがあれば文句をいうヤツはいないにゃん」

「お、おう、それなら何とかなりそうだ」

 これで料理長は決まりだ。

「基本的に魔導具と猫耳ゴーレムでホテルを回す予定だけど、フロントに人間が一人もいないのは問題にゃんね」

「俺は無理だぞ」

 ジェドは首を横に振った。

「にゃあ、ジェドが厨房から動けないのはわかってるにゃん」

 だいたい厨房と食堂は地下に配置済みだ。

「仕方ないにゃん、冒険者ギルドに行って良さそうなのを調達して来るにゃん」

「にゃあ、お館様、そんなに簡単に見つかるにゃん?」

「冒険者を適当に見繕って攫ってくればいいにゃん、簡単にゃん」

「おい、マジか!?」

「にゃあ、冒険者の扱いがぞんざいでシビレルにゃん」

「「「にゃあ」」」

 冒険者の宿だからお客さんのことを良く知ってる人間が最適だ。

「おお、マコトじゃないか、帰って来てたのか? それにジェドもどうした」

 声を掛けて来たのは世紀末モヒカンのジャックだ。

「にゃあ、ジャックにゃん、子供たちが世話になってるにゃん、特異種のことも聞いたにゃんよ、オレからもお礼を言うにゃん」

「なに、三人とも筋がいいぜ、ちゃんと落ち着いて行動できたからな」

 満足気に顎を撫でる。

「にゃあ、今日はバッカスさんは一緒じゃないにゃん?」

「この前のアレの次の日、腰をやっちまって寝込んでるんだ、おかげで今週はソロ活動で近場でウサギ狩りだ、やっぱ若いときみたいに無理はできないぜ」

「あの体格だから、気を付けないとな」

 ジェドもバッカスのことも知ってるようだ。

「にゃあ、腰をやったのならここの大浴場に入れてやるといいにゃん、直ぐに楽になるにゃんよ」

「ここって、おお!? 子ブタ亭がデカくなってやがる!」

 ジャックはいま気付いたらしい。

「オレたちが建て直したにゃん」

「すげえなマコトたちは」

「にゃあ、そうにゃん、ジャック、ここの支配人をやらないにゃん?」

「支配人、オレが? 無理無理」

 首を大きく横に振った。

「にゃあ、掃除だの何だのは魔導具と猫耳ゴーレムたちがやってくれるにゃん、厨房はジェドが担当するにゃん、支配人の仕事はお客の冒険者と話をすることにゃん」

「話をすればいいのか?」

「にゃあ、そうにゃん」

「でもな、オレだけ冒険者を辞めるわけにはいかないぜ」

 ジャックはいいヤツだから、バッカスを見捨てるわけにはいかないのだろう。

「わかってるにゃんよ、バッカスさんは副支配人でどうにゃん?」

「マジか?」

「マジにゃん、具体的な仕事の内容はこんな感じにゃん」

 猫耳に抱っこしてもらってジャックの額に指を当てた。

「どうにゃん、難しくはないはずにゃんよ」

「お、おう、このぐらいなら俺たちでも大丈夫だ」

「ジャックとバッカスが手伝ってくれるなら助かる」

 ジェドも安心したようだ。

「この中の従業員用の部屋を割り当ててるからジャックたちはそこを使って欲しいにゃん」

「住み込んでもいいのか?」

「にゃあ、住み込みでも通いでもいいにゃんよ、家族がいるならあっちのホテルの家族寮を使っていいにゃん」

「いや、残念ながら俺はヤモメ暮らしだ」

 肩をすくめる世紀末モヒカン。

「バッカスさんはどうにゃん?」

「ヤツは女房に逃げられてるから、やっぱりヤモメだ」

「にゃあ、子供たちの指導は続けて貰うとして、まずは見てみるといいにゃん」

「お、おお、そうだな」

「にゃあ、ジャックを子ブタ亭にご案内にゃん」

「「「にゃあ!」」」



 ○プリンキピウム 子ブタ亭 ロビー


 一度足を踏み入れたら最期、逃がすわけがないのでジャックに支配人を承諾させた。

 それから腰をやったバッカスを猫耳と猫耳ゴーレムたちが馬車で運んで来た。

「マコトさん、久し振り、こんな姿ですんません」

 担架に乗せられたバッカスがロビーに運び込まれる。

「にゃあ、子供たちを守ってくれてありがとうにゃん」

「なに、仕事のうちですよ、それに腰は関係ないですし」

「にゃあ、ここの風呂に入れば楽になるにゃんよ」

「そいつは助かります」


 クマみたいなヒゲモジャの大男にウォッシュを掛けまくって風呂に入れたらキレイなクマになって戻って来た。


「おお、腰が治った!」

 足取りも軽く階段を上がって来た。

「にゃあ、バッカスさんの腰ちょっとヤバかったにゃんよ」

「そう言えば前より軽くなってますね」

 悪化する系統の疾患だったが大浴場だけで治った。

「どうだバッカス、しばらく冒険者を休業してオレと子ブタ亭で働いてみないか? 子供たちの面倒をみる仕事はいままで通りだけどな」

「俺とジャックでか?」

「それにジェドが厨房担当だ」

「よろしくな」

 ジェドがバッカスの肩を叩く。

「でも、俺にそんな細かい仕事できるかな」

 クマがもじもじする。

「にゃあ、仕事の内容はこんな感じにゃん」

 また猫耳に抱っこしてもらってバッカスの額に触れた。

「おお、これは魔法!?」

「にゃあ、そうにゃん」

 仕事の内容と読み書き計算の知識を一緒に突っ込んでやった。

「やります、マコトさん、俺にも手伝わせて下さい!」

「にゃあ、ありがとう、助かるにゃん」

 これで、子ブタ亭の従業員は確保された。


 オレの中では生きてる金属を確保したことで、子ブタ亭の買収は再オープン前に大成功が確定した。


 冒険者ギルドのロビーに子ブタ亭再開のポスターを掲示したのが効いたのか、夕方になってポツポツとお客さんが入って来た。

「本当に子ブタ亭が新しくなってるぜ、いつの間に建て替えたんだ?」

「昨日までは古いままだったよな?」

「建て替えたのは今日だ」

 早速、ジャックとバッカスに冒険者の相手をしてもらってる。

「「「今日!?」」」

「嘘じゃないぜ」

「冒険者割で半額ってマジなんだな?」

「ああ、マジだ、カードを見せてくれたら半額だ」

「飲み食い放題付きってのも本当なんだな?」

「本当だ、ただし騒ぎ過ぎると摘み出すから気を付けろ、ここはお行儀のいい冒険者専用だ」

 バッカスは普通に喋っても威圧感がある。

「お、おお、もちろんだ」

 ビビリながら頷く冒険者たち。

「子ブタ亭もあのマコトの経営になったって本当なのか?」

「ああ、本当だ」

「それで何でジャックとバッカスが小綺麗な格好でカウンターに収まってるんだ?」

「俺たちか? 俺はこの子ブタ亭の支配人だ」

「俺が副支配人だ」

「「「はあ、ジャックが支配人!?」」」

「ジャックのヤツ、マコトと仲がいいからな」

「子供を騙して支配人に収まったのか?」

「だろうな」

 早速、冒険者たちにイジられていた。

「馬鹿野郎! 人聞きの悪いこと言うな! おまえら、いい加減なことをほざいてると泊めてやらねえぞ!」

「あっ、嘘です!」

「「「泊めて下さい!」」」

 どのお客もロビーで一通り騒いで部屋の鍵を受け取っていた。


「問題は無さそうにゃんね」

「そうみたいにゃん」

 オレと猫耳たちは秘密の出入口から地下トンネルに降りて、ホテルのオレの部屋に戻った。


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