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ツリーハウスにゃん

 ○帝国暦 二七三〇年〇八月二六日


 ○プリンキピウム街道 旧道


 代わり映えしない風景に飽きてきたオレはショートカットしたくなる気持を抑えて馬車を進ませる。

「おやかたさま、あたしたちおウマにのりたい」

「のりたい」

「アンコではしりたい」

「にゃあ、馬車から離れないで乗るならいいにゃんよ」

 シアとニアとノアの四歳児も飽きたらしい。半径一〇キロ圏内には危険は無さそうなので許可した。もちろん猫耳たちの護衛付きだ。

「ビッキーとチャスも魔法馬を走らせていいにゃん、ついでにシアたちを頼むにゃん」

「「はい」」

 ビッキーとチャスはお行儀と聞き分けがいいので、ワガママというか自分のために意思を優先させることはあまりない。

 チビたち五人が馬車から飛び出して馬を再生させる。

「お館様は乗らなくていいにゃん?」

「にゃあ、オレの乗り方を見せるとチビたちに悪い影響を与えそうだから止めておくにゃん」

 既にチビたちは、あぐらをかいて乗ってる。まだ逆立ちは見せてないから真似はされてないが、一度でも見せたらすぐに真似されそうだ。

 あぐら程度でオレの魔法馬で落馬とか有り得ないが、将来、他の馬に乗ることを考えると基本はしっかり憶えた方がいい。

「にゃあ、お館様にも自覚は有ったにゃんね」

「「「にゃあ♪」」」

「皆んな心配性にゃんね」

「にゃあ、大好きなお館様が危ないことしてると気になって仕事が手に着かないので、ヤメて欲しいという意見が多数寄せられてるにゃん」

「気を付けるにゃん」

 チビたちが楽しそうに馬に乗ってるのを横目でちょっと羨ましそうに見つつオレは今後の計画を練っていた。

 行き先は二つある。うっかり入るとグールになるアポリト州か、魔獣の森に沈みかけてるケラス州のいずれかだ。

 どちらもオレが領主になることがほぼ決まりの領地だ。

「アポリトとケラス、どっちを先に行った方がいいと思うにゃん?」

 オレたちがいるアルボラ州の北隣がアポリト州で、ケラス州が東隣になる。

「どっちでもいいんじゃない?」

 妖精は興味なしだった。

「領民のいないアポリトを後回しにしても問題ないと思うにゃん」

「にゃあ、するとケラスを先にするのがいいにゃんね」

「「「にゃあ」」」

「ケラスの情報を集めるにはどうするのが手っ取り早いにゃん?」

「にゃあ、ベイクウェル商会に依頼するのがいいと思うにゃん」

「あそこならケラスにも出張所があるので、そこそこ正確な情報が集まるはずにゃん、ウチらが自分たちで調べるよりも早いにゃん」

「わかったにゃん、ベイクウェル商会に依頼を出すにゃん、報酬は相場で頼むにゃん」

「了解にゃん、近くにいる猫耳に行って貰うにゃん」

『にゃあ、納品のついでに依頼して来るにゃん』

 小麦の納品に行く猫耳から念話で返答があった。

『よろしく頼むにゃん』


 現時点でオレたちが知ってるケラスの情報は以下の様になる。


 一.だだっ広い上に人が少なくて盗賊が商売にならない。

 二.獣が強すぎて冒険者が森に入れない。

 三.王国軍の演習地があるが、利用料をここ一〇年踏み倒している。

 四.演習に来る王国軍が盗賊より酷い。

 五.行政はほぼ機能していない。

 六.本当の州都は一〇〇年前に魔獣の森に沈んだままで、現在の州都は未だ仮の状態。


 まとめると州として既に壊滅状態だ。


 猫耳たちは話を続ける。

「人がいないけど、遺跡は有りそうにゃんね」

「にゃあ、森はずっと手付かずみたいにゃん」

「まず、あそこが独立した州だということに衝撃を覚えたにゃん」

「特異種どころかたまに魔獣が出るらしいにゃん」

「去年、王国軍に村を幾つか焼かれて、もう州都以外には人がいないみたいにゃんよ」

「略奪まがいの徴発にゃんね」

「盗賊より酷いにゃん」

 猫耳たちの情報だけでもう十分な気がする。

「にゃあ、どこまでが本当にゃん?」

「「「全部にゃん」」」

「森は魅力にゃん、でも領地としてはハズレにゃんね」

 領地というよりただの森だ。

「にゃあ、お館様、値段からするとこんなもんにゃん」

「贅沢を言っちゃいけないにゃんね」

「人が少ない代わり獣と魔獣は獲り放題にゃん」

「遺跡も掘り放題にゃん」

「トンネルを伸ばしても良さそうにゃん、まずは州境までって、にゃあ、もう伸びてるにゃんね」

『『『……』』』

 魔法蟻からも州境までのトンネルが開通済みの念話が入る。仕事が早い。

「後はお館様のGO!を待つだけにゃん」

「もう行っちゃっても問題ない気がするにゃん」

「お館様のモノにならなくても狩り放題の掘り放題にゃん」

「誰にもお館様は止められないにゃん」

「にゃあ、そうにゃん、止められないにゃん! まずはケラスの仮の州都に向けてGOにゃん!」

 猫耳たちに煽られてオレも拳を突き上げた。

「「「にゃあ!」」」

『『『……!』』』

 地下にいる魔法蟻たちも口をカチカチさせながら片方の前脚を突き上げた。



 ○プリンキピウム街道 旧道 プリンキピウム巨木群


「「「おおきい!」」」

 プリンキピウム巨木群を初めて見るシアとニアとノアの四歳児たちはその大きさに圧倒される。

「プリンキピウムきょぼくぐんっていうんだよ」

「きょぼくぐんだよ」

 ビッキーとチャスが四歳児たちに教えてる。



 ○プリンキピウム街道 旧道 プリンキピウム巨木群 休憩所


 そのプリンキピウム巨木群に入り込んでも休憩所の設置は滞りなく続く。世界遺産ぽい巨木を伐採するのもなんなので休憩所の一部をツリーハウスに変更した。

 巨木にくっついたツリーハウスは、幹に生えたキノコみたいだ。ツリーハウスにしてはかなり大きいのだが遠目からは全然そうは見えない。

「「「スゴい!」」」

 チビたちも気に入ってくれたみたいだ。

 早速、ツリーハウスに続く階段を駆け登って行った。

「「「おやかたさま!」」」

 チビたちがツリーハウスのバルコニーから手を振った。

「にゃあ♪」

 オレも手を振り返した。


 猫耳たちにも思いの外ツリーハウスは評判が良かった。プリンキピウム巨木群だけあっておとぎ話みたいな風景になる。

「お館様のデザインはどれも面白いにゃん」

「にゃあ、一からオレが作ったわけじゃないにゃんよ、情報体の中から使えそうなのをチョイスしただけにゃん」

「ウチらだとそのチョイスができないにゃん」

「にゃあ、情報を持っていても的確に使えないとダメにゃんね」

「一発で正解を出すのは難しいにゃん」

「にゃあ、経験が重要にゃん」

「失敗もいい教訓にゃん」

「にゃあ、致命的な失敗は避けたいにゃんね」

「おまえら、行くにゃんよ」

 猫耳たちに声を掛ける。

「「「いくよ!」」」

 チビたちもそれぞれ馬に乗っていた。

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちを馬車に乗せて次の休憩所に向けて出発した。



 ○プリンキピウム街道 旧道 プリンキピウム巨木群 宿泊施設


 ツリーハウス付きの休憩所の次は、いよいよホテル&簡易宿泊所の設営予定地に到着した。

 森の中なので既に周囲は薄暗くなっている。

「にゃあ、ここもツリーハウスで行くにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 巨木を四本も抱え込むツリーハウスのホテルだ。

 簡易宿泊所は巨木に張り付いてるタイプのを幾つも作って部屋数を稼いでいる。

 どちらもファンタジーにゃんね。


 夜の帳が下りて、街灯に灯りがともり、完成したホテル&宿泊所にも灯りが点く。

「夕飯は何がいいにゃん?」

「「「まるやき!」」」

 チビたちにリクエストされる。

「にゃあ、暗くなったから建物の中でならいいにゃんよ」

「「「やった!」」」



 ○プリンキピウム街道 旧道 プリンキピウム巨木群 ホテル


 ツリーハウス型ホテルのレストランで小振りなブタを丸焼きにする。

 チビたちとリーリは目を輝かせて油の滴り落ちる肉を眺めていた。

 目を輝かせているのは猫耳たちも同じだ。

「野菜もちゃんと食べるにゃんよ」

「「「はい!」」」

「いい返事にゃん」


 夕食の後、ツリーホテルのバルコニーで幻想的な風景を眺めながらジュースを飲む。

 いかにも異世界にゃん。

「また霧が出て来たにゃん」

「高濃度のマナを含んだ霧だね」

 リーリもソフトクリームから顔を上げた。

 悪霊みたいな危険は感じないが警戒は必要だ。高濃度のマナを含んだ霧はいろいろヤバいものを運んで来る。

「にゃあ、お館様、マナの濃度が上がってるにゃん」

 猫耳にも報告を受ける。

「そうにゃんね、何かいるにゃん?」

 この前のような危ない予感はないが油断は禁物だ。

「精霊にゃん、こっちに来るにゃん」

 教えてくれたのはギーゼルベルトだった。

「にゃあ、今日は姿が見えそうにゃん」

「たぶん見えるにゃん、精霊の中でも実体に近い森の精にゃん」

 大公国で見た森の精霊とはまた違う存在のようだ。

「危険はあるにゃん?」

 大公国のに似てるなら問答無用で聖魔石にするけど。

「にゃあ、精霊の霧よりも濃いマナをまとっているから普通の人間は近付かない方が無難にゃん、魔獣の森より濃い濃度にゃん、野営地の結界を出なければこれといった危険は無いにゃん」

「迂闊に近付くと精霊に連れて行かれて死ぬパターンにゃんね」

「そうみたいだね」

 リーリも同意した。

「マナが濃いからチビたちは外に出さない方がいいにゃんね」

 防御結界に守られてるが危険は避けるべきだ。

「チビたちは寝てるので大丈夫にゃん」

「それなら安心にゃん」


 濃い霧の中を何かが道をやって来る。

「来たにゃん」

 太鼓の音がしていた。まぎれもなく太鼓だ。

「にゃ!?」

 身長一メートルぐらいの手足の生えたマッシュルームたちが、横三列に並んで軽やかなスティック捌きで太鼓を叩きながら行進している。

「にゃあ、キノコにゃん!?」

「あれが森の精にゃん?」

「キノコのお化けにゃんね」

「レベッカとポーラの言ってた精霊に似てるにゃん、あっちは笛を吹いてたらしいにゃん」

「森の精の姿は様々にゃん」

 ギーゼルベルトが教えてくれる。

「にゃあ」

「ところで何でホワイトマッシュルームが太鼓を叩いてるにゃん?」

「にゃあ、叩きたいからと違うにゃん?」

「哲学にゃんね」

「森の精の正体は完全なエーテル体にゃん」

「半エーテル体と違って触れないにゃんね」

 触るとそれはそれで大変だったりする。

「にゃあ、実際のところ良くわからない存在にゃん」

 五分ほど掛けて森の精は太鼓を叩いて行進し、それが終わると霧も消えた。



 ○帝国暦 二七三〇年〇八月二七日


 ○プリンキピウム街道 旧道


 巨木群のエリアが終わって普通の森になった。

「獣の気配が濃くなってるにゃん」

「プリンキピウムが近いからね」

「にゃあ、帰って来たって感じにゃん」

 さっさとプリンキピウムの街に入りたいところだが、やることはちゃんとやらなくてはならない。

 にゃあ、でも早く帰りたくて尻尾がムズムズするにゃん。

「お館様、飛ばすにゃんよ」

「「「おーっ!」」」

 オレじゃなくて隣にいたチビたちが声を上げた。

「慌てなくていいにゃんよ」

「にゃあ、ここまで来たら早くプリンキピウムに行きたいのは皆んな一緒にゃん」

 馬車の速度が上がった。

「もちろんちゃんと仕事はするにゃんよ」

「にゃあ、当然にゃん」

「ウチらも頑張るから心配いらないにゃん」

「応援を呼んで効率アップにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちが声を上げる。

「応援にゃん?」

「にゃあ、直ぐ来るにゃん」


 五分と経たずに後ろから馬車が追い付いて二台になった。

 更にもう一台追い付いて全部で三台の馬車が爆走する。

「皆で走るのも楽しいにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 馬の背中に飛び移りたかったが、チビたちが真似したら猫耳たちに怒られるので自粛した。

 無論、隣の馬車に飛び移るのも我慢したにゃん。


 総勢六〇人の猫耳たちは、休憩所を協力して設置する。

「「「すごーい!」」」

 チビたちも驚きの声を上げた。

 夕方前に宿泊所の設置が終わったので、今日はもう少し先に進むことにした。

 明日の分の休憩所を一つ作って本日の移動は終了だ。

 ここは普通の休憩所なので、地下にオレたちの宿泊施設を作った。



 ○プリンキピウム街道 旧道 休憩所 地下


 チャプンと猫耳たちが勢いで作った地下の大浴場でお湯に浸かった。

「にゃあ、いい湯にゃん」

 尻尾で身体を持ち上げる。人間にはできない荒業だ。

 尻尾をコントロールして前進する。

「にゃああ」

 思わず感動の声を漏らしてしまう。

 ビッキーとチャスがオレの後をシッポの代わりに魔法を使って身体を浮かせて付いて来ていた。何でも真似したくなるお年頃だ。

「「「おやかたさま」」」

 シアとニアとノアの三人が見事な平泳ぎを披露してオレの前を横切る。

「にゃあ、いつの間に覚えたにゃん?」

「ねこみみのおねえちゃんがおしえてくれた」

「すぐにおよげるようになった」

「あついけど」

 ノアがそのままコポコポと沈没した。

「にゃあ!」

 慌てて引き上げた。

 湯船で泳ぎ過ぎて湯あたりしたらしい。

 お風呂で泳ぐのはもっと大きくなってからにゃんね。


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