猫耳とプリンキピウムに出発にゃん
○帝国暦 二七三〇年〇八月十九日
○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 車寄せ
オレはついにプリンキピウムに帰還の日を迎えた。
ホテルの地下にある車寄せに四頭立ての馬車を横付けする。
トレーラーも接続されてるのでかなりの長さだ。
そこにオレと一〇人の猫耳、それとビッキーとチャスの五歳児にシアとニアとノアの四歳児が乗っている。
四歳児たちに広い世界を見せる第一歩だ。
「いってらっしゃいませ、マコト様、皆様」
支配人のアゼルと仕事を抜け出せた従業員たちが見送りに来てくれた。
「にゃあ、休憩所と宿泊所を作りながら行くから、あっちには一〇日後に到着予定にゃん、用事が有ったらいつでも呼んでくれていいにゃんよ」
「かしこまりました」
「にゃあ、行って来るにゃん」
「また、来るからね!」
リーリがオレの頭の上で手を振る。
「「「にゃあ!」」」
猫耳たちも手を振る。
オレたちはクリステル・オパルス・オルホフホテルを出発した。
○プリンキピウム街道
州都の門を通過して田園地帯に入る。
「はたけだ!」
「わあ!」
「スゴい!」
シア、ニア、ノアは初めて見る風景に大はしゃぎだ。
州都で生まれた庶民は、ほとんど街から出ること無く一生を終える。それが平穏でいい人生なのだ。
プリンキピウムの人も州都に住むことに憧れてる人が多い。都会に憧れるのは何処も同じなのだろう。特にオパルスは領主のカズキのおかげで便利で清潔な街だから余計にそうなのかも。
いや、アルボラ州の領主なんだから全部どうにかしろよと思う反面、オレもちゃんとやってるかと言えば微妙か。
王都辺りだと華やかな反面、一部にスラムが形成され貧富の差がとてつもなく大きい。宮廷貴族と犯罪ギルドの結び付きを放置してるのがスラム拡大の要因の一つになっているのは周知の事実らしい。
ハリエットは頑張ってるけど、その辺りを改革する力は持ってない。まずは王国軍の改革をやり遂げて欲しいものだ。
「プリンキピウムは、もりのなかにあるんだよ」
「おおきなけものが、いっぱいいるの」
ビッキーとチャスの話にシアとニアとノアのおチビたちが聞き入っていた。
○プリンキピウム街道 旧道
馬車は街道から外れていよいよ旧道に入った。この道に入るのはオレたちだけだ。風景も畑が消えて森ばかりになる。
「きのうのもりとはちがうね」
「ちゃんとみちもあるし」
「おやかたさま、かりをしてもいい?」
おチビたちが御者台の後ろに取り付いておねだりする。
早くも飽きて来たか。そういうところはビッキーとチャスと違って普通の幼児っぽい。ふたりはおねだりとかしないし。
「にゃあ、この辺りではシアたちが狩りたくなるような獲物は出ないにゃんよ」
オレは御者台から荷台に移動した。
「探査魔法で確かめてみるといいにゃん」
「にゃあ、それがいいにゃんね」
「魔力切れを起こさないように注意して探るにゃん」
猫耳たちもアドバイスする。
「やってみる」
シアが力みつつ頷き、最初に探査魔法を打った。魔法式はすでに伝授済みだ。
「ちょっと範囲が大きすぎるにゃんね」
数キロ四方に飛んだ。
「もうダメぇ」
シアはあっと言う間に魔力を使い果たして身体の力が抜けて猫耳の一人に抱きかかえられる。
「にゃあ、魔力切れは実際に起こさないと加減が掴めないにゃんね」
「つぎは、あたし!」
ニアが力強く宣言した。
「頑張るにゃん」
ニアが探査魔法を打つ。
「ひゃあ」
シアと同じく数秒で魔力切れを起こしてやはり猫耳に抱えられる。
「にゃあ、魔法使いになるのは簡単じゃないにゃんね」
「普通の魔法使いは何度も経験するにゃん」
「魔力切れを起こした方が魔力の成長が早いにゃん、ただ、彫像病のリスクが高まるって言われてるから一般的じゃないにゃんね」
「あたし、ちょうぞうびょうになっちゃうの?」
ノアが心配そうな表情を浮かべる。
「実際には魔法切れを起こしても彫像病にはならないにゃん、迷信にゃん、それにシアもニアもノアもビッキーもチャスもオレがエーテル器官を弄ったから大丈夫にゃん」
エーテル器官のエラーを全て修正したおチビたちに彫像病の発生はない。
「それに彫像病になったとしてもオレたちが治療できるから問題ないにゃん」
「あたしもやってみる!」
最後にノアが気合を入れて探査魔法を打った。
「あぅ、ダメっ」
結果はシアとニアと同じく魔力切れを起こしたノアも猫耳にキャッチされた。
「にゃあ、仕方ないとは言え探査魔法が使えないのは痛いにゃんね」
「わたしがやってみる」
「わたしも」
ビッキーとチャスが手を挙げた。
「にゃあ、そうにゃんね、お手本を見せてあげて欲しいにゃん」
「「はい」」
ビッキーとチャスが探査魔法を打った。
精霊魔法と通常魔法のミックスだ。こちらで指定しなかったので両方使ったのだろう。ビッキーとチャスは制限を大幅に解除してあるので魔力切れは起こさない。
「探査魔法ならウチはチビたちの制限を解除してもいいと思うにゃん」
「そうするとなし崩し的に制限なしになりそうにゃんよ」
「にゃあ、四歳児に全てを預けるのはどうかと思うにゃん」
「それはないにゃん」
「いい年をして、人間としてどうかと思う魔法使いもいるにゃん」
「にゃあ、宮廷魔導師はだいたいそんな感じにゃん」
猫耳たちが議論している。
「にゃあ、チビたちにはできるだけ今使える力を工夫して欲しいにゃん、例えば探査魔法はいま無制限で使える防御結界で代用可能にゃん」
「お館様のいうとおりにゃん」
「可能な限り薄くした防御結界を一瞬だけ大きく張るにゃんね」
「そうにゃん、もちろん相手によっては探査魔法より簡単に気付かれる可能性はあるにゃん」
「にゃあ、簡単と言ってもちゃんとした代用探査魔法に気付くのは、手練の魔法使いか魔獣ぐらいにゃん」
「どっちも逆探されるとヤバい相手にゃん」
「にゃあ、そいつら相手に探査魔法を使わざるを得ない状況に追い込まれてる時点で十分ヤバいにゃん」
「そんな特殊なヤツらは、相手にしないでさっさと逃げるのがいちばんにゃん」
「「「異議なしにゃん」」」
魔力切れで猫耳たちに抱っこされていたチビたちが復活した。
「甘いモノだよ」
リーリが気付けにドーナツを食べさせる。
「「「おいしい」」」
四歳児たちと妖精が砂糖とチョコと生クリームにまみれた。
オレの頭もな。
その点、ビッキーとチャスは綺麗に食べていた。チビたちにも後でふたりに教えて貰おう。
「ぼうぎょけっかいをつかうの?」
ウォッシュで綺麗になるとシアは早くもやる気になっていた。
「そうにゃん、できるだけ薄いのを一瞬だけ打つにゃん」
「わかった、やってみる」
「待って、あたしもやりたい!」
ニアも手を挙げた。
「あたしも!」
ノアも手を挙げる。
「いいにゃんよ、三人で協力して防御結界を使って近隣を探査するにゃん」
「くれぐれも一瞬だけにゃんよ」
「薄くて柔らかくするにゃん、薄ければ薄いほど逆に発見される可能性が低くなるにゃん」
猫耳たちがアドバイスする。
「まずはやってみるにゃん」
「「「うん」」」
オレに促されたシアとニアとノアの三人は立ち上がって防御結界を張った。
「「「にゃあ!」」」
探査魔法の代用にしてはちょっと厚いか。
「もういいにゃんよ」
防御結界が消えた。
「何かわかったにゃん?」
「こっちにおおきなクマがいたよ」
シアが教えてくれる。
「クマにゃん!?」
「ぼうぎょけっかいにはじかれて、もりのおくににげちゃった」
ニアが報告する。
「強力な結界だからヤバいのが来たと思われたにゃんね」
「もっとじょうずにできる?」
ノアが質問した。
「にゃあ、練習すれば、やっただけ上手になるにゃん」
「わかった、れんしゅうする」
シアはやる気まんまんだ。
「練習は人のいない森に向かってやるにゃんよ」
「ほかのひとのめいわくになるから?」
ニアが尋ねる。
「にゃあ、それもあるにゃん、もう一つは例の金ピカにゃん」
「きんピカ?」
ノアが首を傾げる。
「使えるとわかったら四歳児でも連れ去るから用心するにゃん」
「「「ひとさらい?」」」
チビたちはビクっとした。
「にゃあ、似たようなモノにゃん、だから気を付けるにゃん」
「「「うん」」」
三人は身を寄せ合ってうなずいた。ビッキーとチャスも人さらいと聞いておチビたちにピッタリ寄り添った。
○プリンキピウム街道 旧道 休憩所予定地
「お館様、あそこが予定地にゃん、ウチらがロープを張っているにゃん」
御者を務める猫耳が前方を指さした。
「ロープだけじゃなく結界も張ってるにゃんね」
トンネルを使って先行した猫耳たちが、昨日購入した休憩所や宿泊所の土地に印を付けてくれていた。
休憩所の建設予定地前に馬車を停めた。
「早速、始めるにゃん」
最初の休憩所は旧道に入ってからきっかり全長の四〇分の一の位置にある。
州都の門からだと乗合馬車で三時間ぐらいの距離だ。富裕層の馬車ならもう少し速いとは思うが短縮しても三〇分程度だろう。
「まずは富裕層向け休憩所を作るにゃん」
「「「にゃあ」」」
設計は昨夜のうちに終わってるので後はここで再生するだけの簡単なお仕事だ。
「わあ」
「スゴいね」
「おうちがはえてきた」
シアとニアとノアの三人は瞬く間に出来上がる休憩所を驚きの眼差しで見ていた。ビッキーとチャスは何度も見てる光景だろうからさほどでもない。
休憩所と言っても富裕層向けなので小さなホテルといった感じで、個室を用意する。猫耳ゴーレムの給仕でゆったりお茶を楽しめる。トイレもゆったり。
こちらは有料だ。料金は既に決めてあり州都のホテルで案内するときに使用権を売っている。
道路を挟んで対面には無料の休憩スペースを作る。こちらはまんま道の駅で食べ物屋とトイレと休憩スペースからなる。休憩はいいけど住むのはNGだ。
身分制度が有るので仕方がないし、貴族と相席なんて庶民が迷惑する。以前の大公国にいたバカ貴族みたいなのが王国でも皆無ではないわけだし。なにより庶民からしたら落ち着かない。
いずれも入口と出口に門があり強固な塀で囲まれてる。日本の道路と違って凶暴な獣の群れや武装した盗賊が徒党を組んで出るから仕方ない。
『『『ニャア』』』
猫耳ゴーレムを二〇体出してここの管理運営に当たらせる。付随する地下施設とトンネルの接合は魔法蟻がやってくれる。
オレは猫耳ゴーレムたちにスリスリされた。
「にゃあ、次に行くにゃん」
休憩所建設の所要時間は三〇分ほどだった。
馬車に猫耳たちとチビたちを乗せて次の休憩所建設予定地に向けて出発する。
そして順調に合計三つの休憩所を作り終えてやって来たのは宿泊施設の建設予定地だ。
○プリンキピウム街道 旧道 宿泊施設予定地
「薄暗くなって来たのでさっさとやるにゃん」
「「「にゃあ!」」」
宿泊所はこちらの重圧な石造りの建物を参考にした高級な建物。休憩所は二階建てだがこちらは五階建てだ。
「これはもう高級ホテルにゃんね」
「「「こうきゅう!」」」
猫耳の感想にチビたちが声をあげる。たぶんよくわかってない。
道を挟んだ向こう側には、庶民用の簡易宿泊所を併設した休憩所を作る。
簡易宿泊所はピガズィや大公国で作ったモノが原形で、カーペットに毛布だけの相部屋が基本の宿だ。
その代わり限りなく安い。
最後の仕上げに宿泊所と簡易宿泊所用に猫耳ゴーレムたちを配置した。
『『『ニャア』』』
猫耳ゴーレムたちはオレにスリスリしてからテキパキと働き始める。
「「「にゃあ~ん」」」
他の猫耳たちもスリスリされていた。
最後の仕上げに防御結界を張った。魔獣に囲まれても何とか籠城できるだろう。
「にゃあ、後は明日の出発まで自由に過ごして欲しいにゃん」
「「「了解にゃん」」」
猫耳たちとおチビたちは揃って簡易宿泊所に向かって歩き出す。
「全員そっちにゃん?」
「あの部屋の狭さにウチらの本能は抗えないにゃん」
「「「にゃあ」」」
「おチビたちもにゃん?」
「「「せまいからあんしん」」」
ビッキーとチャスはシアとニアとノアの三人を守るために付いて行くみたいだ。
「わかったにゃん、オレとリーリはホテルをチェックするにゃん、何か有ったら知らせるにゃん」
○プリンキピウム街道 旧道 ホテル ロビー
皆を見送ってオレとリーリはホテルに入った。
『ニャア』
ドアマンの猫耳ゴーレムが扉を開けてくれる。
ロビーもそこそこの大きさで、オパルスのホテルと共通の意匠でデザインしており高級感も十分だ。
「にゃ?」
「こっちにもいるね」
リーリとオレはロビーに別の猫耳たちを見つけた。
「にゃあ、お館様たちがこっちに来たにゃん!」
「賭けはウチらの勝ちにゃん!」
今日一緒に行動したのとは別の猫耳たちが一〇人ほどいた。
「「「にゃあ!」」」
オレを囲んで勝鬨を上げる猫耳たち。
「にゃあ、賭けってどういうことにゃん?」
「あいつらはあの狭い寝床の虜になると予想したにゃん。ウチらはこっちにお館様が来ると信じてこっそり地下で待っていたにゃん」
「にゃあ、だからウチらの勝ちにゃん」
「たかが狭い部屋でお館様を手放すとは馬鹿なヤツらにゃん」
「にゃははは、今頃になって慌てても遅いにゃん」
思考共有で勝鬨が伝わったらしい。
『『『しまったにゃん!』』』
あちらから心の叫びが伝わって来る。
「にゃあ、オレの知らないところで心理戦が行われていたにゃん」
「今夜は、お館様を抱っこし放題にゃん」
「「「にゃあ♪」」」
「にゃあ、誰もそんなことを許可した覚えはないにゃん」
「早速、寝るにゃん!」
いきなり抱え上げられた。
「にゃあ、夕ご飯も食べてないにゃん! レストランの味も確認が必要にゃん!」
「お館様のご命令とあっては仕方ないにゃんね」
でも、抱えられたままだ。
そのまま、レストランに連れて行かれた。
○プリンキピウム街道 旧道 ホテル レストラン
『ニャア』
給仕担当の猫耳ゴーレムが席に案内してくれる。
「ここも含めてレストランのメニューは、完全にお館様の故郷の料理だけになったにゃんね」
「にゃあ、正確にはオレの故郷の料理みたいなオリエーンス神聖帝国とオリエーンス連邦時代の料理にゃん」
「王国の料理はないにゃん?」
「当然ないよ、あたしが厳選した料理だからね、どれも美味しいよ、だから早く持ってきて」
リーリがテーブルクロスの上でソワソワしてる。
「お館様、州都のホテルのメニューを変えたにゃん?」
「にゃあ、違うにゃん、これまでの調査結果を踏まえてクリステル・オパルス・オルホフホテルのグランドオープンに合わせて、プリンキピウム・オルホフホテルのメニューも変更したにゃん」
「同じメニューにゃん?」
「もちろん違うよ、あたしがしっかりセレクトしたから任せて」
リーリが入り浸ってたのは従業員食堂だけじゃ無かった。
「期待してるにゃん」
「楽しみにしてて」
リーリは、プリンキピウムのアトリー三姉妹にも指示を出していたらしい。
「昔は美味しい料理がいっぱいあったにゃんね」
猫耳がメニューを眺める。
「そうにゃん、それなのにどうして過去に有った美味しい料理が消えて、マズい料理が残ったのか、そこが謎にゃん」
「いまでも食うや食わずの人が多いにゃん、味付けどころの騒ぎじゃないにゃん」
「庶民はそうにゃんね」
「貴族も地方のヤツらは貧乏人が多いから、庶民と食べてるものはそう変わらないにゃんよ」
「別なのは王都の上級貴族ぐらいにゃん、これは例外として扱っていいにゃんね」
「雲の上の人間は美味しいものを食べてるにゃん」
「あくまで推測にゃん」
「にゃあ、でも市販のルーを使ったカレーぐらいしか作れないユウカのレベルで天才料理人だから、過度の期待は禁物にゃん」
「たぶん、マコトの料理の方が美味しいよ、だって食材が違うもの」
リーリは運ばれてきたスープにスプーンを入れた。
「つまりプリンキピウムの森は偉大だってことにゃんね」
しみじみ思う。
「あそこは人間に少しも優しくないのが難点にゃん」
猫耳がいう通りだ。
「お館様は王都の城壁の中には行かないにゃん?」
「にゃあ、いまのところその予定は……」
「当然行くにゃん!」
オレじゃなくて猫耳のひとりが勝手に決め付けた。
「にゃ?」
何が当然なのかわからないが。
「にゃあ、つまりお館様は天下を取るにゃんね」
「にゃ、にゃ?」
天下?
「ハリエット様を担いで革命にゃん!」
「「「にゃあ!」」」
猫耳たちが声を上げた。
「ウチらはお館様に最後まで付いて行くにゃん」
「「「にゃあ、付いて行くにゃん!」」」
オレを置き去りにして猫耳たちが盛り上がる。既に付いてきてない。
「にゃあ、王都よりオレは魔獣の森に興味が有るにゃん、人間同士の陣取りゲームには興味ないにゃん」
「にゃあ、お館様、王都の連中は陣取りゲームじゃなくて椅子取りゲームにゃん」
「上級貴族は、やっぱり仲良くないにゃん?」
「王族同士でも殺し合いをするにゃん、ハリエット様の件もそうにゃん、その早逝したご両親も殺されたって噂にゃん」
「まだ王族が黒幕と決まったわけじゃないにゃんよ」
「にゃお、ハリエットが誘拐されたのに黙って見てるだけなら同罪にゃん」
「それは言えるにゃん」
少なくとも積極的にハリエットを救出に動いた様子はない。第二王子が魔導師を寄越したぐらいだ。
カズキが「王様になりたくない」のは身内での殺し合いが現実だからか。
「美味しい物もないんじゃ無理して行くこともないけどね」
天下には興味のないリーリはサラダを食べる。
「キャリーとベルそれにハリエット様には会いたいけど、城壁の中には用事はないにゃんね」
「お館様は既にハリエット様の有力な後援者だから、王都に行ったら間違いなく狙われるにゃん」
「面倒くさいことになるにゃんね」
「にゃあ、それは間違いないにゃん」
「三人が無事なうちは、オレもプリンキピウムの森に潜ってるにゃん、それがいちばん平和にゃん」
「うん、プリンキピウムの獣は美味しいもんね」
妖精はブレない。
○プリンキピウム街道 旧道 ホテル 客室
夕食の後はお風呂だが、大浴場は無いので部屋の備え付けに入る。
「にゃ、全員で入るにゃん?」
猫耳たちが次々と入って来る。
「当然にゃん、ウチらの権利にゃん」
「「「にゃあ」」」
広いとは言えオレ+リーリ+猫耳一〇人で入るのには狭すぎる。猫耳たちとみっしり湯船に入るというより詰まった感じだ。
その後は、全員が一つのベッドで寝たので狭いどころの騒ぎじゃない。
天蓋付きの大きなベッドだが、全員で寝るのには無理がありすぎる。
でも折り重なって寝るのが悪くないのは猫の本能だろうか?




