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商業ギルドにゃん

 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 第三ピラミッド


 朝の仕事を終えたオレたちは、猫耳たちのいる私設守備隊本部の第三ピラミッドに戻った。

「「「お帰りなさいにゃん!」」」

 拠点に残っている猫耳たちが出迎えてくれた。今日から交代でプリンキピウムの森で狩りを始める事になってる。昨日まではその準備だった。

「まずは朝ごはんにゃん」

「賛成!」

 リーリが最初に声をあげた。


 大食堂でいま州都にいる猫耳たちにいつものリーリとビッキーとチャスとで朝ごはんを食べる。

 今朝はビュッフェじゃなくてご飯に味噌汁に鮭に納豆と卵。どこぞの豪華な朝食セットに似てるのは気のせいだ。お味噌汁は豚汁に替えることもできるにゃんよ。

「「おいしい」」

 ビッキーとチャス日本式の朝食をおいしそうに食べてくれる。オレが保護してから日本ぽい食事をさせていたから日本食のわかる舌になったみたいだ。

「にゃあ」

 オレは朝ごはんの味の懐かしさにちょっとウルっとする。こっちと違って平凡で退屈な日々だったが懐かしい愛すべき時間だ。

 塩鮭が最高に美味しい。あちらで食べたものよりも味が濃い。

 魔獣の加工品だけどな。このしょっぱさがたまらない。

「「「にゃあ、最高にゃん」」」

 猫耳たちも気に入ってくれた。

 ネコには魚にゃん。

「このネバネバがたまらないよね」

 妖精は納豆を食べてる。

「にゃあ、お館様、ウチらのピラミッド、いまひとつ可愛くないと思うにゃん」

 隣の猫耳トーコに話し掛けられた。

「にゃあ、ウチもそう思うにゃん」

 反対側からも同意見だ。

「「「にゃあ」」」

 同意の鳴き声が大食堂のあちこちで起こる。

「可愛くないってどういうことにゃん?」

 ホテルよりは小さくて可愛いと思うが。

「にゃあ、ウチらの拠点としてはもっと猫っぽい感じが欲しいにゃんね」

「ピラミッドを猫っぽい感じするにゃん?」

「「「にゃあ♪」」」

 猫耳たち全員が同意の様だ。ビッキーとチャスも挙手してる。ふたりも賛成らしい。

「あたしはごはんがおいしければ、なんでもいいよ」

 リーリはお味噌汁を豚汁に変更済みだ。

「わかったにゃん、食べ終わったら造り変えるにゃん」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちのテンションが上がった。



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 第三ピラミッド 前


 朝食の後、猫耳たちと一緒に第三ピラミッドの外に出た。小ピラミッドといってもホテルと比べての話だからそこそこの大きさがある。

「これから第三ピラミッドの改築を行うにゃん、おまえたちも力を貸すにゃん」

「「「にゃあ!」」」

 あらかじめ猫耳たちの意見を吸い上げたオレは自分の意見も入れて新たに設計図を組み上げる。ベースは精霊情報体の中から選択しホテルよりもゴーレム度を上げる。

「一気に行くにゃんよ、にゃあ!」

「「「にゃあ!」」」

 第三ピラミッドの形が三角から半球状のドーム型に変化する。

 耳が生えて目と口ができる。

 口が入口で当然、目からビームが出るにゃん。

「にゃあ、ネコにゃん!」

「ピラミッドが猫になったにゃん!」

「ピンクのネコにゃん」

 ガラスっぽい材質は変わらず、色が聖魔石の青からエーテル機関混じりのピンクに変わった。巨大なデフォルメされたネコの頭が出来あがった。

「これでどうにゃん?」

「可愛いにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

「でも、お館様の方が可愛いにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 オレはまた猫耳たちに揉みくちゃにされた。

「「きゃあ」」

 ビッキーとチャスもドサクサに紛れて猫耳たちに抱っこされまくっていた。



 ○州都オパルス オパルス城


 猫ピラミッドの細部の仕上げは猫耳たちに任せて、オレは再度じゃんけん大会で勝った猫耳を護衛役としてふたりほど連れて領主様のお城に向かった。

 ビッキーとチャスはまた地下施設を魔法蟻の背中に乗ってパトロールしている。プリンキピウム前衛で乗り回したので、いまでは魔法馬と同じぐらいお気に入りらしい。

 リーリは猫ピラミッドの厨房でいろいろ意見をするらしい。いつの間にかホテルのレストラン部門のアドバイザー的な仕事をしていた。


 領主様のところに行くのは昨日の会議のついでに話し合った内容を実行する為だ。


 顔パスでお城の中を入れてもらいメイドさんに案内された客間で五分ほど待っただけで今回も直ぐに執務室に通された。



 ○州都オパルス オパルス城 執務室


「土地を売って欲しいって?」

 ノーアポで直ぐに会ってくれるのはとてもありがたい。

「にゃあ、ホテルの裏の森と商業地区の土地を売って欲しいにゃん」

「構わないけど、いったい何をするつもりだい?」

「にゃあ、裏の森には牧場を作ってクロウシとマダラウシを飼うにゃん」

「飼うって本気だったの? しかもホテルの隣で」

「にゃあ、本気にゃん、もちろん牧場の外に出さないから危なくないにゃんよ」

 地下農場の人工肉製造機と違って、地上の牧場は野生のまんまを飼う予定だ。

「アポリトで飼うんじゃ無かったんだ?」

「にゃあ、あそこはオレの土地じゃないにゃん」

「近いうちにケラスと一緒に渡せると思うよ」

「にゃあ、牧場が上手く行ったらそっちにも拡げてみるにゃん」

 メインは地下なので地上は偽装の一環だ。

「商業地区の土地は?」

「銀行を始めたいにゃん、土地と一緒に領主様の許可も欲しいにゃん」

「銀行?」

「にゃあ、金は貯め込むよりも流通させるべきと言う猫耳たちの意見を取り入れるにゃん」

「銀行か、言われてみるとないかな、冒険者ギルドに似た機能は有るけど一般向けじゃないからね」

「にゃあ、経済の発展には必要にゃん」

「わかった、許可を出そう」

「にゃあ、ありがとうにゃん」

「そうは言ってもアルボラではちゃんとした金融業の免許は作って無かったからマコトのところを第一号にして新しく創設するよ。マコトも意見してくれるとありがたいな」

「にゃあ、いつでも聞いてくれていいにゃん」

 銀行業務の詳細に関してはオレの知識じゃなくて精霊情報体のだけどな。

「マコトは商業ギルドの会員になった方がいいね、クリステルがギルマスだから相談するといいよ、それに商業地区の土地もマコト好みの無料の物件もあったはずだ」

「にゃあ、クリステル様が商業ギルドのギルマスにゃん!?」

「実務は別の者に任せてるよ、フリーダのいとこだけどね」

「身内で押さえてるにゃんね」

「そうならざるを得ないのが実情だよ。こうして直に会うマコトにしたって同郷の友人だし」

「にゃあ、信用は大事にゃんね」

 オレのところも魔法的に忠誠を誓ってくれてる人間だけを使っている。どこも信用第一ってわけだ。

「ボクのところなんて一時期、毎日の様に暗殺者が来てたこともあるし、領主なんてなるモノじゃないね」

 肩をすくめるカズキ。

「にゃあ、『領主になれ』ってオレに勧めた人が何を言ってるにゃん!?」

「マコトに猫耳たち、ゴーレムだって簡単には死なないだろう?」

「にゃあ、ヤバい魔法使いもいるからわからないにゃんよ、プリンキピウム遺跡に張られた結界とか半端なかったにゃん」

「プリンキピウム遺跡か、宮廷魔導師が絡んでるから厄介な魔法を使っても不思議はないかな」

「にゃあ、オレたちはこれまでどおり近づかないにゃん」

「それがいいね、ヤツらに用事がある時はボクを間に挟んで構わないからね」

「にゃあ、助かるにゃん」

 守って貰える感は思いの外、心地良かった。


 面談の後は別室で城の書記官に手続きを頼んで裏の森を丸ごと買った。もともと龍の躯の近くだったしカズキの口利きもあって格安で手に入れた。



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 専用道


『土地は確保したにゃん、直ぐに牧場を作り始めていいにゃんよ』

 城を出たところで念話で猫耳たちに指示を出した。

『『『にゃあ!』』』


 猫耳たちとは思考を共有してるので、何をしているかそのまま感じられる。魔法馬で猫ピラミッドを走り出た猫耳たちは、まずは頑丈で背の高い塀を敷地いっぱいに張り巡らせる仕事を開始した。

 オレと同じ魔法を使う猫耳たちは、わずかな時間で牧場になる森を囲ってしまう。塀には入口がなく牧場への出入りは地下道を使う。これは人間用と猫耳専用の二系統を作る。

 塀が完成して完全に人目に付かなくなったら魔法蟻たちの出番だ。ビッキーとチャスを背中に乗せた魔法蟻も一緒に出てきた。木々を倒す魔法蟻たちに大喜びのふたりだが怪我のないように頼むにゃん。


「次は商業地区の土地にゃんね」

「一等地が欲しいにゃん」

「地上げするにゃん?」

 魔法馬を横に並べた猫耳たちが物騒なことを言い出す。実際その道に詳しい猫耳が何人もいるし、オレが命じれば商業地区の一等地を難なく手に入れてくるだろうが、もちろんそんなことはさせない。

「にゃあ、人様に迷惑を掛けちゃダメにゃんよ、それよりタダの物件も有るらしいからオレたちはそっちを狙うにゃん」

「ただでくれるなんて、龍の躯かプリンキピウムの幽霊ホテル並みにどぎつい瑕疵が有りそうにゃんね」

「にゃお、有りそうじゃなくて絶対に何かあるにゃん」

 猫耳たちの意見にオレも頷く。

「にゃあ、もちろん何かないと面白くないにゃんね、それに危ないものにはたいがいご褒美が付いてるにゃん」

「にゃあ、お館様は最高にゃん」

「可愛いにゃん♪」

「にゃお、こんなところで抱き着いちゃダメにゃん!」


 話に聞いた商業地区の無料の土地は商業ギルドが管理してるのでギルマスのクリステルに相談することにした。



 ○州都オパルス クリステル・オパルス・オルホフホテル 客室


 オレたちはパカポコと三頭の魔法馬を歩かせてホテルに戻り、真っ直ぐクリステルの部屋を訪ねる。


 奥様は本日もツヤツヤだ。

「まあ、今度は銀行と言うモノを作るの?」

 取次のメイドさんに要件は伝えたので話は早い。

「にゃあ、それでオレも商業ギルドの会員になりたいにゃん」

「ええ、ホテルを二軒も持ってるネコちゃんならば問題なく正会員になれるわ」

 商業ギルドは冒険者ギルドと違って個人での登録では無く屋号での登録になるそうだ。

 正会員と準会員、更に協力会員が有り、それぞれやれることが変わって来る。

「正会員は、各種優遇措置が受けられて制限も有りません、ネコちゃんは既にプリンキピウムで準会員に登録されてるみたいね」

 魔導具のタブレットを眺めてる。

 商業ギルドの会員情報を参照できるみたいだ。冒険者ギルドにも似たようなのがあるけど便利そうにゃんね。オレの騎士やネコミミマコトの宅配便の人たちに使って貰うのもいいかも。

「にゃ、オレって準会員だったにゃん?」

 商業ギルドの会員になった覚えはないが。

「ホテルの開業時にデリック様が気を利かせて登録してくれたんじゃない? プリンキピウムでは冒険者ギルドに商業ギルドの業務を委託してるから」

「にゃあ、後でお礼を言っておくにゃん」

 なかなか気の利く筋肉だ。

「正会員は年会費が大金貨一枚になるけどネコちゃんなら問題ないわね」

「にゃあ、問題ないにゃん」

「では、紹介状を書いてあげるわね、商業ギルド副会頭のマイケル・オルコットを訪ねてみて」

「にゃあ、ありがとうにゃん」

「ネコちゃんのホテル、居心地が良くてすっかり長居しちゃったわね、明日は帰るけど、この部屋をキープしていただけないかしら?」

「にゃあ、支配人に申し伝えるにゃん」

 オレのホテルにクリステル奥様専用ルームが誕生した。いったいいくつになるまで若返るつもりなのか。


 支配人のアゼルにクリステル奥様専用ルームの事を伝えたオレはオパルスの商業ギルドに向かった。



 ○州都オパルス 商業地区


「お館様は、働き者の六歳児にゃん」

「にゃあ、話をしてるだけにゃん、こんなの仕事の内に入らないにゃん」

「折衝も大事な仕事にゃん」

 また猫耳たちから次のふたりが選抜されて、護衛と言う名で付いて来た。

 リーリはオレたちと入れ替わりでお城に行きカズキの冷やし中華の開発を手伝ってる。

「商業ギルドの副会頭マイケル・オルコットは今年で二六歳にゃん、巷の評判だとただのボンボンじゃないにゃん」

 彼の情報は州都出身の猫耳が持っていた。

「敵に回すと厄介なぐらい優秀なボンボンにゃん、最近は商業地区から犯罪ギルドの連中を追っ払ってるにゃん」

「にゃあ、犯罪ギルドをやり込めるなら、単に親戚枠でポストに付いてる訳じゃないにゃんね」

「舐めて掛かって大やけどをした連中もいるにゃん、ベイクウェル商会をギリギリ押さえつけていたのも副会頭にゃん」

「にゃあ、それは気を付けないといけないにゃんね」

 敵ではないが油断ならない相手のようだ。



 ○州都オパルス 商業ギルド


 オパルスの商業ギルドは商業地区のど真ん中にある。良く言えば栄えていた時代の名残を残す凝った装飾のなされた石造りの大きな建物だが、実際はすすけた古めかしい建物で、真向かいにあるベイクウェル商会の支店のほうが大きくて立派だ。



 ○州都オパルス 商業ギルド ロビー


 広いロビーは閑散としている。

「直接どうぞ」

 猫耳に持ち上げて貰って自動受付の魔導具を触ろうとしたところ、カウンターから声を掛けられた。

「にゃあ」

 受付のお姉さんはやはり美人だったが、おっぱいは冒険者ギルドの圧勝だ。

「いらっしゃいませ、ご用件をどうぞ」

「副会頭のマイケル・オルコットに会いたいにゃん、これは紹介状にゃん」

 クリステルがくれた紹介状をカウンターに置いた。

「クリステル様がお書きになった紹介状ですね、少々お待ち下さい」

「にゃあ」

 商業ギルドの制服の方がスカートの丈が短いようだ。副会頭の所に行く受付嬢の後ろ姿を見て思った。前世ならもっと視線が引き寄せられたかもしれないが、いまのオレにはその辺りの感動もない。



 ○州都オパルス 商業ギルド 副会頭 執務室


 クリステルの紹介状が効いてオレたちは直ぐに副会頭の執務室に通された。

「いらしゃいませ」

 にこやかに出迎えてくれたマイケルはクリステルに似ていた。物腰は柔らかいが頭が切れるのは間違いない。

「にゃあ、お初にお目にかかるにゃん、オレはマコト・アマノにゃん」

「マイケル・オルコットです、大まかな要件はクリステル様が紹介状に書いて下さったので了解しました」

「にゃあ、では正会員の手続きをお願いするにゃん、それと商業地区の土地が欲しいにゃん」

「マコト様は銀行というものを始めるんですね、大手の商会でも送金は手間が掛かる頭の痛い問題だから安全に代行して貰えるなら利用者は多いと思いますよ。それで土地はどのような場所がご希望ですか?」

「領主様から無料の土地があると聞いたにゃん」

「それでしたら会館のことですね」

「会館にゃん?」

「古くて大きくて立派な建物なのですが結界が張られていて何人も立ち入ることができません」

「呪われてるにゃん?」

「いえ、それはないようですね、カズキ様も確認されています。純粋に入れないだけなのです」

「入れないのでは、呪われた物件と使えなさは同じにゃんね」

「それで何代も前の領主様の時代から結界を解いた人に無料で譲渡すると決められました。挑戦する期間は一週間、保証金として大金貨一〇〇枚を預けてもらうことになっています」

「保証金が掛かるにゃん?」

「そう、冷やかし防止の為です。結界を消せたら全額返金いたしますが、解除に失敗した場合、半額が没収されます」

 なかなか厳しい条件だ。

「場所は何処にゃん?」

「直ぐ近くです、担当者に案内させますがどうなさいます」

「にゃあ、挑戦するから案内して欲しいにゃん」

「でしたらまずは正会員の手続きをされるのが良いですね、正会員は半額で挑戦できますから」

「それはお得にゃんね」



 ○州都オパルス 商業ギルド 登録カウンター


 正会員の手続きを終えると冒険者ギルドのカードに商業ギルド正会員の証が浮かび上がった。

「ウチのカードにも印が出たにゃん」

「にゃあ、ウチらも出世したものにゃん」

 オレの配下の猫耳たちのカードも同様の変化があった。

「正会員になるのは出世にゃん?」

「そうにゃん、商業ギルドの正会員なんて大店おおだなにならないと無理にゃん、だからそこの従業員も一流の証にゃん」

 ついでに無料の土地獲得の挑戦の手続きも済ませる。

「現地を確認しなくてもよろしいのですか?」

 窓口の職員が目を丸くする。受付嬢と違って実務担当はベテランぽい雰囲気のおっちゃんだ。

「にゃあ、戻ってきて手続きをするのも面倒だから一緒に頼むにゃん」

「お館様なら問題ないにゃん」

「気に入らなかったらお館様とウチらで作り直すから大丈夫にゃん」

「わかりました、では預り金をお願いします」

「正会員は大金貨五〇枚でいいにゃんね?」

「はい、一週間以内に結界を解除すれば全額お返しいたします、失敗した場合は半額のみの返金となります」

「了解にゃん」

 大金貨五〇枚をカウンターに載せて代わりに書類をもらって手続き完了。

「では、私がマコト様をご案内いたします」

 案内を申し出てくれたのは副会頭のマイケルだった。

「副会頭自ら案内してくれるにゃん?」

「はい、結界の解除を私がこの目で確認するのがいちばん早いですから」

「にゃあ、それは助かるにゃん」



 ○州都オパルス 商業地区 会館


 副会頭自らが案内してくれた場所は、隣のブロックの四分の一は占めてる煤けた感じの大きな建物だった。

 商業ギルドから徒歩七~八分の物件だ。

 石造りでは無くコンクリートの様な材質で、確かに会館という感じだ。

「元は何に使われていた建物にゃん?」

「実は良くわかっておりません、建物の形からすると役所ではないかと推測されますが、はっきりしたことはなにも記録が残ってないそうです」

「にゃあ、少なくともオリエーンス連邦のものではないにゃんね、もっと新しいモノにゃん」

「わかるのですか?」

「にゃあ、結界の魔法式から読み取れるにゃん」

「魔法式が読み取れるのですか、それはスゴい」

 大仰に驚くマイケル副会頭。

「にゃあ、お館様はスゴいにゃん」

「もっと褒め称えるにゃん」

 煽る猫耳たち。

「にゃお、褒め称えるとかは要らないにゃん」

「褒めなくていいにゃん」

「はあ、すいません」

「それで、近衛とかうるさいのは出て来なかったにゃん?」

 会館を指差す。近衛軍とか好きそうな物件だ。

「大昔に王宮から宮廷魔導師が派遣されて調査したらしいですが、そこで価値なしと判断されたようです」

「にゃあ、結界も解かずによく中身がわかったにゃんね」

 会館の結界が解けなかったから、自分たちの威厳を守るために価値なしとしたんじゃないのか?

「街の中にこんなモノが在ったにゃんね」

 地元の人間の記憶もかなりいい加減だ。昔からあるしょっぱい遺跡レベルだから気にもしなかったのだろう。

 前世なら心霊スポットだな。中に入れないけど。

「魔法式がわかるなら結界も解けそうですね」

 マイケルは会館を見上げる。

「お館様はもう解いたにゃんよ」

「ほら、扉も開けられるにゃん」

 ふたりの猫耳が石段を駆け上って正面の大きな扉を開いた。

「えっ、もうですか?」

「にゃあ、ここの結界は単に壊れて暴走してただけにゃん、だから解錠しようとしてもできないのは当然にゃん」

「魔法が暴走!?」

「暴走した魔法は強制的に魔力の流れを止めれば消え去るにゃん、これでこの会館はオレのものでいいにゃんね?」

「もちろんマコト様のものです、あまりにもあっさり解けたので驚きました」

「副会頭も一緒に会館の中を確かめるにゃん」

「もちろん、お供させていただきます」

「状態保存の魔法が掛けてあったみたいだから外側はともかく中は綺麗にゃんよ」

「灯りを点けるにゃん」

 先に扉を開けた猫耳たちが会館の中に入った。


 長年封印されていた会館には何が眠っているのか、興味津々でオレと副会頭のマイケルも後に続いた。


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