表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
140/357

プリンキピウム遺跡にゃん

 オレが乗る魔法馬を中心に猫耳たちヨウとホタルとミアの三騎が取り囲んだフォーメーションで森の中を走らせる。朝露に濡れた苔が滑って普通なら走れない場所もオレたちの魔法馬なら関係なしで安定した走りを見せた。

 魔法使いには効果が弱いとされてる認識阻害の結界だが、オレと猫耳三人が四重に掛けてるので、プリンキピウム遺跡に宮廷魔導師がいてもそう簡単に見付けられないはず。

「お館様、遺跡にはどれぐらい近付くにゃん?」

「探知されない程度の距離は取りたいにゃんね、探査魔法を打たれても簡単にはバレないけど、結界には気を付けないといけないにゃん」

 バレるというより遺跡の結界に自動的に反撃されるのが怖い。

「すると遺跡の結界に触れないようにすればいいにゃん?」

「そんなところにゃん」

 これまで実際にプリンキピウム遺跡に近づいたことがないので、どんな状態になってるかまったくわからない。

 大公国やアポリト州の件がなかったら、これまで同じく無視で良かったのだが、確認はしておきたい。なんたってプリンキピウムの街が直ぐ近くなんだから。魔獣が埋まっていたらヤバいにゃん。


「にゃあ、魔力の気配だけで遺跡の場所がわかるにゃん」

 ヨウが遺跡の方角を指差す。

「これはかなり強いにゃん」

 ホタルが耳をピクピクさせる。

「前よりも発掘が進んでる証拠にゃんね」

 ミアも遺跡の方向を見据えた。

 猫耳たちはオレと記憶を共有してるので以前の状態の知識も持ってる。

「まずはプリンキピウム遺跡の下に魔獣が埋まってるかどうかを確認するにゃん」

 オレたちの重要任務だ。

「魔獣はいないんじゃない? いたら地面の下でもわかったはずだよ」

 リーリがオレの頭の上で語る。

「真横ではないにしろ、林道で近くは通っているけど、ピザ生地魔獣ぐらいの認識阻害の結界に隠れていたらわからなかったと思うにゃん」

「「「確認は必要にゃん」」」

 猫耳たちは声を揃えた。

「前はいなかったのに、いまはいたりしてね」

「にゃあ、それもあり得るから困るにゃん」

 現にアポリト州の超大型ゴーレムからは魔獣が湧き出してる。同じ仕掛けがプリンキピウム遺跡にないという保証はない。

 遺跡から感じる魔力の気配は大きさを増す。まだ走り出したばかりなのに以前との違いを肌で感じた。


 トゲトゲだらけのヤブを切り開いて木々の間を魔法馬で駆け抜ける。認識阻害の結界が効いてるので、クロブタの真横を通り抜けても気付かれなかった。

 狩ったけど。

 獣に邪魔をされなくても直線距離は五〇キロだが山あり谷あり川あり沼ありで、あの林道でさえこれに比べれば高速道路なみの走りやすさだ。

 アポリト州の森でやったみたいに魔法馬を浮かして速度を上げる手もあるが、あれはそれなりに魔力を使うのでせっかくの認識阻害の結界を張った隠密行動には不向きだ。

「「「にゃあ♪」」」

 魔法馬で崖を下ったり登ったりは、なかなかおもしろい。猫耳たちと一緒になって楽しんでしまった。

「お館様の魔法馬はスゴすぎにゃん」

「どこでも走れるにゃんね」

「昔の人の技術はスゴいにゃん、それにお館様がエーテル機関を突っ込んだのもあり得ないレベルでスゴいにゃん」

 猫耳たちが褒めてくれるが、初めて作ったときからオレの魔法馬はこのぐらいのことはできたのでいまいちピンと来ない。

 この辺りの感覚がこちらの世界の常識と大きくかけ離れていたらしい。いまさら改めろといわれても困るが。


 林道に出たところで一気に距離を稼ぐ。一〇キロほど遺跡に向かって走りそこから峡谷を越えてプリンキピウムの遺跡がある森に入った。



 ○プリンキピウム遺跡 近衛軍 監視地域


「ここからは近衛の監視地域にゃんね」

 以前にアール・ブルーマー男爵の手下が入り込んで消息を絶った地域だ。

「速度を落として行くにゃん」

「「「にゃあ」」」

 まだ近衛軍の関係者は見ていないが、そう遠くない場所にいる。


 オオカミの特異種が率いる群れが連続して二組も現れた。気付かれる前にサクッと狩って回収する。

「にゃあ、こんなところに特異種がいるにゃん」

 猫耳たちが周囲を見回す。

「遺跡の周辺にかなりいるにゃんね」

「お館様の記憶からするとプリンキピウムの森でも、南西エリアの危険地帯並の特異種の濃さにゃん」

「遺跡の魔力に引き寄せられたにゃん?」

「オレもそう思うにゃん、猿蟲みたいなのに追い駆けられて北上したのならヤバいけど、流石にそれは無さそうにゃん」

 天災レベルの群れにちょくちょく来られても困る。

「マナが濃いね」

 リーリが最初に気付いた。

「この先が普通の人間だと具合が悪くなる濃度にゃん」

「お館様、また特異種がいる群れにゃん」

 ホタルが声を潜めて報告する。

 真っ黒くてデカくて口が耳まで割けて牙がびっしり生えてるオオカミの特異種だ。早くも三組目が現れた。

 普通の獣ならともかく特異種をそのまま見逃したりはしない。

「にゃあ、ここから攻撃には魔法じゃなくて銃を使うにゃんよ」

 猫耳たちに指示する。

「「「了解にゃん」」」

 銃を構えた猫耳たちは群れを率いる特異種を含めてすべてのオオカミの額を撃ち抜いて回収した。

「にゃお、普通は特異種を引き寄せているだけでも、遺跡をぶっ壊す理由になると違うにゃん?」

 もう探査魔法を打たなくても遺跡から魔力とマナが漏れてるのがわかる。

「お館様は、王宮と事を構えるにゃん?」

「王宮を敵に回すと厄介にゃんよ」

「やっぱり下剋上にゃん?」

 猫耳たちはオレが遺跡をぶっ壊すのを止める。

「全面戦争にゃんね」

「腕が鳴るにゃん」

「ついでにバカ貴族も血祭りにゃん」

 止めてなかった。

「王宮と戦争するつもりは無いにゃん、遺跡をぶっ壊すのは本当に魔獣が出た時だけにするにゃん」

「お館様がそう言うからには仕方ないにゃんね」

「にゃあ、暴れるのは我慢するにゃん」

「プリンキピウムの森で好きなだけ暴れればいいにゃん、街の近くじゃなければ好きにしていいにゃんよ」

「「「にゃあ」」」

「美味しいところを頼むよ」

 リーリが注文を入れていた。


「にゃあ、ここからは速度を落として行くにゃん」

 魔法馬の速度を落とす。この辺りは下草が刈り取られ森の中にしては見通しがそこそこいい。

 近衛軍の兵士たちが刈ったのだろうか? ご苦労様にゃん。

「この辺りからもう一段マナの濃度が上昇するにゃん」

 立ち止まって計測しなくてもマナの濃度が上がってるのがわかる。

「ウチの尻尾にビリっと来るにゃん」

「「にゃあ」」

 魔獣の森ほどではないが長時間浴びると人間のエーテル器官に悪影響を及ぼすレベルの濃度だ。


「お館様、この先何かあるにゃん」

 先頭を行くヨウが馬を止めた。

「にゃ、侵入者を探知する系統の結界が張られているにゃん」

 遺跡まで一〇キロのところで最初の結界を見付けた。

「にゃあ、この程度ならオレたちの認識阻害の結界で大丈夫にゃん、でも慎重に進むにゃんよ」

「「「了解にゃん」」」

 猫耳たちは銃を持ったままオレを囲んで馬を進める。

「にゃあ、こんな場所まで警戒してるにゃんね」

「この用意周到さは注意にゃん」

 近衛なのか王宮なのか知らないが自分たちがヤバいものを扱ってる自覚はあるようだ。

「お館様、これは侵入者というより犯罪奴隷の逃亡防止の為のモノにゃん」

 ミアが教えてくれた。

「にゃ、逃亡者防止にゃん?」

「そうにゃん、逃亡を図ってもこの結界に触れると犯罪奴隷は身体の自由を奪われるにゃん、仲間が手引きしても結界の外に運び出された時点で破裂するにゃん」

「にゃあ、破裂にゃん!?」

「見せしめの意味合いもあるにゃん」

 スプラッター映画か。

「お館様、破裂させるのは良くあるタイプの結界にゃん」

 ヨウが教えてくれる。

「そうにゃん?」

 現代社会についてはまだまだ知らないことが多い。

「にゃあ、犯罪奴隷とセットで使うにゃん」

「犯罪奴隷を逃がすのは重罪だから逃げられるぐらいなら殺すにゃん」

 ホタルとミアが情報を追加してくれた。

 犯罪奴隷が安易に逃走可能では制度そのものが揺らいでしまうか。

「侵入者の位置特定の結界も重ね掛けしてあるにゃん、侵入も見逃すつもりはないみたいにゃんね」

 ヨウが結界を解析する。

「ここからはもっと慎重に進むにゃん」

 更に魔法馬の速度を落とす。より認識阻害の効果を上げる。

「例え見付かってもウチらがお館様を守るから問題ないにゃん」

「にゃあ、遺跡ごとぶっ飛ばすにゃん」

「「にゃあ!」」

「だから王宮とは事を構えないにゃん、いまは情報収集に徹するにゃん」

「「「了解にゃん」」」


 更に進んで二キロ圏内に入り込んだところで、近衛軍の見張り台が設けられてるのを発見した。

「あのカエルの被り物みたいな変な帽子の兵士がいるにゃん」

 近衛軍の兵士が森を監視している。

「にゃあ、ここからは魔法馬はヤメた方が良さそうにゃん」

 認識阻害を使っているが小さいほうが有利なのでオレたちは魔法馬を仕舞ってコソコソ進む。

 下草が綺麗に刈り取られてるので、オレたちみたいな魔法使いじゃなかったら即発見される。

 マッチョなシカの特異種を発見。

 オレは、見張り台の根元に魔力の塊を発生させた。

 直ぐにシカの特異種が反応し走り出した。

「「「うわあ!」」」

 見張り台に頭突きを食らわせ上に居た近衛の兵士を慌てさせる。

 オレたちはこの隙に先に進んだ。


「にゃあ」

 二〇〇メートル先に複数の人の気配がしてる。強い魔力はその下、かなり深い部分に感じられる。マナは遺跡への出入口と思われる坑道から漏れ出していた。

「あそこがプリンキピウム遺跡にゃんね」

「間違いないね」

 リーリもすぐにわかった。

 目の前にかなり強力な結界が張ってある。

「新しいタイプの結界にゃん、おまえらも触っちゃダメにゃんよ」

「「「にゃあ」」」

 下手に触れると警報が鳴り響くタイプか。

 しかも術者の五感と直結してる。

 オレたちは横一列に腹ばいになって結界には触れずに遺跡の様子を伺う。

「近衛軍の騎士にゃん」

「金ピカにゃん」

「間違いようが無いにゃん」

 金色の鎧を着た男たちが、犯罪奴隷と思しきヨレヨレの男たちに何か指示を出して作業させていた。

 その周囲を兵士たちがうろちょろしている。

「いくら給料が良くてもあの変な帽子は被れないにゃん」

「金ピカの鎧も微妙にゃん」

「ウチも恥ずかしくて無理にゃん」

 近衛軍のファッションセンスはこっちでも世間一般的に微妙な評価らしい。

「気付かれない範囲で浅く探査魔法を掛けるにゃん」

 猫耳たちに指示を出した。

「「「にゃあ」」」

「薄く広く行くにゃん、間違ってもまだ地中の遺跡に飛ばしてはダメにゃん」

「「「了解にゃん」」」

 結界と繋がってるだろう相手に気付かれないように注意を払って探査魔法を打つ。

 相手の魔力の波動に合わせて魔力をチューニングし、遺跡を覆っている結界を利用して中の情報を読み取った。

「にゃあ、表にいるのは近衛の騎士二〇人、兵士三〇〇人、犯罪奴隷三〇〇人って感じにゃん」

「お館様、宮廷魔導師が見当たらないにゃん」

 ヨウが報告する。

「ウチも見付けられなかったにゃん」

「にゃあ、ウチもにゃん」

 ホタルとミアも同じだ。

「外には出てないみたいにゃんね、まったく反応がないにゃん」

 オレも猫耳たちと同じ結果だった。

「遺跡の中に入ってるにゃん?」

「術者が結界に繋がってる感じからするとそう考えるのが自然にゃんね」

「魔導師が居なければ中も調べるのに残念にゃん」

「世の中、そう甘くないにゃん」

「もしかしたら、ここにはいないのかもよ」

 リーリが悪魔の囁き。

「その可能性がないとはいえないけど可能性は低いにゃん」

「にゃあ、だったらウチが調べてみるにゃん」

 ミアが立候補した。

「待つにゃん、危ないからオレがやるにゃん、おまえらは、直ぐに逃げられる準備をしておくにゃん」

「お館様、攻撃は最大の防御にゃん」

 ホタルが銃を構える。

「勝手に入り込んで見付かったからって攻撃したらまんま居直り強盗にゃん、こういう時は華麗に逃げるにゃん」

「にゃあ、了解にゃん、ウチらは華麗に逃げる準備をするにゃん」

 ヨウはクラウチングスタートの格好をする。それはオレの知識か?

「始めるにゃん」

 坑道内部に最小限に魔力を絞って探査魔法を使った。

 暗くて狭くて蒸し暑い坑道を下りる。壁も天井も階段も乳白色のすべすべした石で出来ていた。

 切り出した石を積み上げたわけではなく、くり抜いた感じだ。それに平らじゃなくて凸凹していて有機的だ。魔法で作ったのだろうか?

 探査魔法を弾く結界系はないようだ。

 いや、防御結界の類いもない。

 外側が厳重に守られているからここまで入り込む賊は想定してないとか?

 そんなものは必要ないか。

「マナの濃度がヤバいにゃんね、遺跡周辺のマナの濃度を上げてるだけはあるにゃん」

「お館様、坑道に人はいるにゃん?」

「にゃあ、いまのところ見当たらないにゃん、魔導師も留守みたいにゃん、情報を共有するにゃん」

「「「にゃあ」」」

 猫耳たちにも探査魔法を共有させた。

「ウチにも見えたにゃん」

「ウチもにゃん」

「お館様、壁を見るにゃん」

 ホタルが最初に発見した。石の壁に何か刻まれている。こんなところにレリーフか?

「レリーフにしてはちょっと変にゃんね」

「「「にゃ?」」」

 苦しみ悶える人たちが生々しく彫り込まれてる。あまり趣味がいいとは言えない代物だった。

「お館様、これは人にゃん、石化した犯罪奴隷が壁に埋まってるにゃん」

 ヨウが気付いた。

「にゃお、確かに額に犯罪奴隷の紋章が入ってるにゃん」

 坑道の壁の所々に石化した本物の犯罪奴隷が埋まっていた。

「お館様これって彫像病にゃん?」

「にゃあ、違うにゃん、彫像病は身体が金属になるにゃん」

 精霊情報体の知識ではそうだし、ハリエットもそうだった。少なくとも石じゃないし壁に埋まったりもしない。

 いま探査魔法を介して見てるこの壁に埋まった人たちとは違う。

「少なくとも、まとめて石になる病気なんて聞いたことが無いにゃん」

「病気じゃなければ、遺跡のトラップにゃんね」

 ヨウもオレを介してじっくり観察する。

「石化のトラップにゃんね、ありそうにゃん」

 エーテル器官を使えば身体の組織を入れ替えることもそう難しくはないか。ただ魔力をかなり消費する。

「ウチらもこうなっていた可能性があるにゃんね」

「にゃ、ヨハンがこんなところにいるにゃん! ここ暫く見てないと思ったらこんなところにいたにゃん」

 ミアが声を上げた

「友だちにゃん?」

「にゃあ、ただの知り合いにゃん、魔法使いのくせにせこい盗みをするからバカにされてたにゃん、こいつには相応しい最期にゃん」

 ミアは、いまにも叫び声を上げそうな形相で壁に埋まってる男の彫像を魔法越しに眺める。

「持って帰るにゃん?」

「にゃあ、要らないにゃん、こいつはこのままここで眠らせるのがいいにゃん」

 魂も抜けた状態では元に戻すことも出来ない。

「そうにゃんね」

 坑道はまだ続いていた。

 階段を下るが壁に埋まった人の数は減ることがない。大量の犯罪奴隷で遺跡が持つ防御結界を弱めた結果がこれなのだろうか?

 オレには突発的な事故の跡に見える。

 長い階段を下りきると小さめのホールがあり、扉を壊して縦坑を露出させてあった。ここも人の気配もないし照明もない。

「下も見てみるにゃん」

 自走式のカメラを動かすみたいに縦坑を下りる。

「お館様、これってエレベーターシャフトと違うにゃん?」

「そうみたいにゃんね」

 縦坑を降り切った場所では扉が半分だけ開いていた。

 その先は瓦礫で埋まっている。

「マナが濃いのと石化するトラップのせいで発掘が進んでないにゃんね、それに結界もかなり強力にゃん」

「お館様、遺跡本体はどんな感じにゃん?」

「にゃあ、遺跡はざっと見積もったところ、直径三〇〇メートルで高さ五〇〇メートルの円柱状にゃん、一部ひしゃげてるにゃん、そこが入口みたいにゃんね」

 遺跡の入口と表面を守る結界はかなり強力で、オレも綺麗に剥がせる自信はない。ぶっ壊すだけなら簡単だけど。

「遺跡は球形じゃないにゃんね?」

「こっちは迷宮型にゃん、人が入ることを前提に作られてるにゃん」

「人間が好きなお宝が埋まってるタイプだね」

 リーリが補足する。

「「「にゃあ、お宝にゃん」」」

 うっとりする猫耳たち、オレも嫌いじゃないけど。プリンキピウム遺跡に万人が喜ぶお宝が眠ってるどうかも不明だ。

「お館様、遺跡の中に魔獣はいそうにゃん?」

「瓦礫の向こう側は結界に阻まれてよく見えないけど、エーテル機関の反応はいまのところ無いにゃん」

「それは良かったにゃん」

「まったくにゃん」

「でも、魔獣と手合わせできないのは残念にゃん」

「にゃあ、魔獣だったらいずれ手合わせする機会が来るからそう慌てることはないにゃん」

 魔獣が埋まってるかもしれないという最大の懸案事項は払拭できた。

「時代は円柱の外側の材質から時代を割り出せるにゃんよ、おまえらでもわかるはずにゃん」

「「「やってみるにゃん」」」

 三人の猫耳は探査魔法を遺跡の外側に這わせた。オレの知識も分けてあるからそれほど難しくは無いはずだ。

「にゃあ、わかったにゃん!」

「「ウチもにゃん」」

「この遺跡はオリエーンス連邦末期のモノにゃん」

「「そうにゃん、末期にゃん!」」

「にゃあ、全員正解にゃん」

 濃いマナに人を石化する何か、それに入口を塞ぐ結界。プリンキピウム遺跡が人の手に落ちるのにはまだ時間が掛かりそうだ。

 埋められた魔獣だの、領民をグールやオーガや死霊に変える仕掛けだのが無さそうなのは幸いだ。

「この調子だと遺跡のお宝を王宮の連中が手にするのは、まだかなり先になりそうにゃんね」

「にゃあ、さっさと掘り出して近衛も一緒に王都に帰ってくれると平和になるのに残念にゃん」

「遺跡の発掘はそういうものにゃん、危険な結界が消えれば犯罪奴隷じゃない発掘に携わる人たちの村ができるので、この辺りも賑やかになるにゃんよ」

「それはそれでありにゃん」

「遺跡掘りの連中は金遣いが荒いから近くの街は発展するにゃんよ、その代わり犯罪ギルドもセットで付いてくるにゃん」

「うまい話はないにゃんね」

「世の中そういうものにゃん」

「「にゃあ」」

 世知辛い世の中を嘆いたところで遺跡偵察の目的は果たした。

「見るべきものは見たし、宮廷魔導師が来る前に撤収するにゃん」

「「「にゃあ!」」」


 来た道は戻らず、見張り台の死角になる場所を進む。認識阻害の魔法を使いつつもなるべく肉眼でも見えづらい別ルートを使う。

 見張り台はいまだにマッチョシカとやりあってるから、監視業務どころではないみたいだけど。


「にゃあ、お館様この先に人がいるにゃん!」

 遺跡を守る探知結界を抜けたところでホタルが声を上げた。

「倒れてるにゃん、死んではいないけどぜんぜん動いてないにゃん」

「近くに魔法馬がいるにゃん」

 オレにもすぐにわかった。しかもこの魔法馬は見覚えがある。

「にゃあ、誰なのか確認するにゃん」


 トラブルの臭いがプンプンだが、無視するわけにもいかずオレたちは倒れてる人間に慎重に近付いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ