表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
138/357

猫耳のこだわりにゃん

 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 専用道


 夕方になってお城からの専用道をホテルへ向けてパカポコと本日二回目の移動だ。


「にゃ?」

 ガサガサっと音がして猫耳たちが両脇の藪から飛び出して来た。

「「「にゃあ!」」」

 何も前回オレを襲った場所を選ばなくてもいいのに。

「お館様ゲットにゃん!」

「「「にゃあ♪」」」

 猫耳たちがぞろぞろ出て来る。

「出迎えご苦労にゃん」

 馬に飛び乗った猫耳に抱え上げられオレはブランとしてる。

「お館様をお守りするのはウチらの当然の義務にゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 ビッキーとチャスがオレも出したことのない速度で魔法馬を飛ばしてきた。

「「マコトさま!」」

 急制動で馬からポンと投げ出されクルクル回転してるところを猫耳たちにキャッチされた。

「にゃ!?」

 ビッキーとチャスはキャッキャッと喜んでるので大丈夫か。そもそも防御結界があるわけだし。でも心臓に悪い。

「スピードの出しすぎは危険にゃんよ」

「「はい!」」

 返事はいいのだが、改める気はなさそうだ。


「にゃあ、皆んなホテルに戻るにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 猫耳たちの魔法馬が動き出す。オレは馬上で抱っこされたままの移動開始だ。

「次はウチが抱っこするにゃん」

 近くにいる猫耳のひとりが手を挙げた。

「了解にゃん!」

 放り投げられたオレは次の猫耳にキャッチされてた。

「ウチも抱っこしたいにゃん!」

「「「ウチも」」」

 猫耳たちの間を次々と放り投げられるオレ。

 オレは本当に守られてるのだろうかと疑問に思わないでもない。

「「きゃあ」」

 ビッキーとチャスも猫耳たちの間でパスされてるが、仏頂面のオレと違って大喜びだった。


「皆んなでお館様とお風呂にゃん!」

「お風呂にゃん?」

「「「にゃあ♪」」」

 オレは、そのまま猫耳たちの施設守備隊の本部になる予定の第三ピラミッドに連れて行かれた。

「マコトは愛されてるね」

 妖精がひとりごちる。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 第三ピラミッド 大浴場


「にゃ?」

 作った覚えのない大浴場が第三ピラミッドの地下の一階と二階に出来ていた。しかも空堀まで作られている。

「オレが出掛けてる間に造ったにゃん?」

「お館様の作ったお風呂を広げたにゃん、全員で入るにはこの大きさが必要にゃん」

「にゃあ、全員で入るにゃん?」

「当然にゃん、ウチらは全員お館様と入りたいにゃん」

 オレのお風呂好きが猫耳たちにも影響していたか。

 当然といえば当然だが。

 オレは改築された風呂を見て首をひねった。

「ところで、このお風呂ってオレたちぐらいの身体能力か魔法が使えないとまともに入れないと違うにゃん?」

 地下一階と二階の大浴場、地下三階の脱衣所から階段無しで上の階にジャンプもしくは飛翔しないと入れない。

 オレは放り投げられたけど。

 リーリはもちろんのことビッキーとチャスも飛翔が使えるから問題はない。

「このピラミッドはウチらとお館様専用にゃん、他の人のことは考慮してないにゃん」

「大浴場だけじゃなく、ピラミッド全体に手を入れたにゃんね」

「「「にゃあ!」」」

 全員で風呂に入ったのはいいが、オレは最初から最後まで誰かに抱っこされていて一度も床に足を付けることは無かった。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル ラウンジ


 風呂の後はホテルに戻って領主夫妻が見繕ってくれたゲストたちに挨拶に出向いた。

「当ホテルのオーナー、マコトでございます」

「にゃあ」

 紹介は支配人のアゼルがやってくれるので、オレは隣で「にゃあ」と鳴くだけの簡単なお仕事だ。

 今回の招待客は、領主様の家臣団や町長など州を動かしてる人々だ。それに大商会の支店長などもいる。

 家臣団は厳密には全員が貴族ではなく地方公務員的な官吏が大半だそうだ。オレはてっきり全員が貴族かと思っていたが違っていた。

 とはいえアルボラに限定すれば、豊かな州なので家臣団の上級職になると貴族ではなくてもその辺りの貧乏領主より金持ちだったりするそうだ。そもそも一般市民からしたら貴族と何ら違いはないので、それらしく扱えば問題はない。


 侯爵様の家名を背負ってるホテルにいちゃもんを付けるヤツもいないだろうけど。


 ちなみにアルボラでは州都以外に住んでる貴族はオレだけだそうだ。かつて騎士領があったそうだが領主様が交代する際に消滅したとか。所領を維持するには少なからずお金が掛かるので誰でもが欲しがるシロモノではないようだ。特に辺境は。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 第三ピラミッド


 ゲストへの挨拶を終えたオレは夕ごはんを食べるために私設守備隊本部の第三ピラミッドに戻った。こちらの食堂もビュッフェ形式になってる。収容人数は五〇〇以上六〇〇未満ほどの大食堂だ。

 ベースは巨大温泉ホテルのバイキングだから、ちゃんとお寿司やステーキの屋台も完備してる。

「マコト!」

 先に食べ始めていたリーリがテーブルの上でホバリングして手招きする。

「「マコトさま!」」

 ビッキーとチャスが駆け寄って来る。ふたりは私設守備隊の一員になったつもりらしく猫耳たちと同じ迷彩の戦闘服を身に着けていた。

 シャンテルとベリルのドアマンの衣装みたいにコスプレ感が半端ないがこれはこれで可愛いから良しとしよう。

「「「にゃあ」」」

 猫耳たちがオレを抱っこしたくてウズウズしてるのがまるわかりだが、これから皿を持って歩き回るのを邪魔しない程度の配慮はしてくれてる。

「皆んなも遠慮しないで食べるにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 猫耳たちと食べる初めてのごはんだ。猫耳たちも最初のごはん。

「「「にゃあ! 美味しいにゃん!」」」

 食堂のあちこちで声が上がる。

「みゃあ、美味しいにゃん、 こんなに美味しいごはんは初めてにゃん!」

「「「みゃあ」」」

 泣きながら食べる猫耳たち。美味しいものでおなかが満たされれば心も満たされるとオレは思う。

「にゃあ、好きなだけ食べるにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

 テーブルの間を回って猫耳たちに声を掛けた。全員、問題はなさそうだ。


『『『ニャア』』』

 夕食の後は、猫耳ゴーレムたちに抱っこされて大浴場に運ばれた。どうやら皆んなとお風呂に入るのはオレの義務のようだ。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 頂上


 ホテルの天辺で涼む。転生前なら無理な高さだが、いまはどうってことは無い。それ以前に実際には外の方が蒸し暑いけどな。

 プリンキピウムもプロトポロスも王国軍駐屯地もいまは平和だ。このままみんな幸せに暮らしましたで終わればいいけど。

「ままならないのが人生にゃん」



 ○帝国暦 二七三〇年〇八月十一日


 ○州都オパルス 商業地区


 朝食の後、一〇台の馬車に猫耳たちを詰め込んで冒険者ギルドに向かう。

 オレは先頭の馬車の御者の隣だ。

 ビッキーとチャスは荷台で猫耳たちに抱っこされてる。リーリはホテルの何処かで何かを食べてるみたいだ。

 朝イチで飛んで行ったのでよくわからない。

「いよいよお館様も領主様にゃんね」

「にゃあ、六歳児の下克上が止まらないにゃん」

 御者を務める猫耳とオレを挟んで反対側に座る猫耳がおしゃべりしてる。

「「「にゃあ♪」」」

 荷台の猫耳たちも同意らしい。

「待ておまえら、まだ正式に決まってないんだから口外禁止にゃん」

「にゃあ、ちゃんと日本語で喋ってるにゃん」

「わかるのは転生者だけにゃん」

「それでも用心は必要にゃん」

「心得たにゃん」

「「「にゃあ♪」」」

「それと下克上なんてしないにゃん」

「お館様は成り上がりにゃんね」

「「「にゃあ!」」」

 全員が同意のようだが、オレは成り上がってるのか?



 ○州都オパルス 冒険者ギルド 裏庭


 馬車は直ぐに冒険者ギルドの裏に臨時に作られた猫耳たちの為の冒険者登録会場に到着した。オレが以前にロッジを拡げた裏庭だ。

「わあ、本当にネコちゃんと同じなんだ」

 執務室から出てきたギルマスのフリーダが整列した猫耳たちを眺める。

「本当に盗賊の男たちとは全く関係なかったのね、良かった、ちょっと心配してたのよね」

「小汚いおっさんは勘弁にゃん」

「うん、それは全面的に同意する」

 フリーダは近くにいた猫耳の喉を撫でる。

「にゃあ♪」

 猫耳は目を閉じて気持ち良さそうにする。

「全員、ネコちゃんのお姉さん?」

 二四一人ですか?

「にゃあ、そんな感じにゃん」

 オレもテキトーに答える。

「にゃあ、ウチらは、お館様の忠実なシモベにゃん」

「シモベなの?」

「「「そうにゃん!」」」

 猫耳たちが声を合わせた。

「へえ、そうなんだ」

 フリーダが感心した様な表情でオレを見詰める。

 照れるにゃん。

「この子たちは州都のギルドの登録にしちゃってもいいの?」

「にゃあ、猫耳たちの主な任務はホテルの防衛だから問題ないにゃん」

「プリンキピウムの森で狩りはしないの?」

「猫耳たちがやりたいなら好きにさせるにゃん」

「その時には州都のギルドにも売ってね」

「にゃあ、どうせプリンキピウムの冒険者ギルドでは処理できないからこっちに持ってくることになるにゃん」

「うん、期待してる」


 冒険者のギルドのカードに記録された猫耳たちの年齢は全員が十五歳だった。

 肉体的な年齢に間違いはない。

 前世の年齢も名前もカードに出ることはなかった。

 かつての肉体とは完全に別物になったことが魔導具的にも証明されたわけだ。


 三台の魔導具を使って二四一人分のカードを流れ作業で作ったが、それでも二時間ほど掛かった。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 第三ピラミッド


 また一〇台の馬車を連ねてホテルに戻る。

「お帰り!」

 リーリが飛び出してきた。

 従業員寮の方角から現れたからあちらの食堂のビュッフェを堪能してたのだろう。

「どうだった?」

「問題なく登録できたにゃん」

「マコトの魔法は流石だね、あたしが教えたから当然だけど」

「にゃあ」

「リーリの言う通りにゃん、お館様は最高にゃん」

「「「にゃあ!」」」

 カードを貰った猫耳たちはテンションが高い。

「これでウチらも州都の外に出られるにゃんね」

「出られるにゃん」

 冒険者ギルドのカードがあれば何処にでも行ける。

「にゃあ、お館様、ウチら狩りに出たいにゃん♪」

「そうにゃんね、冒険者ギルドのカードを貰ったら狩りにゃんね」

「プリンキピウムの森がいいにゃん」

「「「にゃあ」」」

 猫耳たちは初陣にプリンキピウムの森を希望した。

「いきなり難易度が高いにゃんね、州都の近くじゃダメにゃん?」

「にゃあ、ウチらはお館様が最初に狩りに出た場所がいいにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 オレと同等の力を持つ猫耳たちならプリンキピウムの森でも問題なく狩りができるか。

「そうにゃんね、間もなくトンネルも開通するから、行って来るといいにゃん」

「にゃあ、お館様は行かないにゃん?」

「オレはホテルのグランドオープンまではオパルスにいるにゃん」

「にゃあ、お館様と一緒に居たいけど狩りもしたいにゃん」

「迷うにゃん」

「「「にゃあ~」」」

 悩む猫耳たち。

「まずは腕を磨くためにプリンキピウムの森で狩りをするといいにゃん、ついでにトンネルの途中に拠点を行くつか作って欲しいにゃん」

「中間施設はもう出来てるもんね」

 リーリが情報を追加する。

「にゃあ、だから皆んなには中間施設の拠点化とそれぞれの間にも拠点を新たに作って欲しいにゃん」

 これまでと違って、猫耳たちの手も借りられるので地下施設を拠点として整備するのがいいだろう。

「確かにプリンキピウムとの間に幾つか拠点が有るとオパルスどっちに行くにも便利にゃんね」

「「「にゃあ」」」

 他の猫耳たちも同意した。

「お館様、新しい拠点にもでっかいピラミッドを建てるにゃん?」

「にゃあ、地下オンリーで頼むにゃん、認識阻害と防御結界をてんこ盛りにするのを忘れちゃダメにゃんよ」

「「「了解にゃん!」」」



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 制限エリア 地下施設


 午後からは猫耳たちとビッキーとチャスを引き連れてホテル直下の地下拠点に下りた。

「ここもオパルス拠点として整備にゃん、各地下施設もトンネルが繋がり次第、拠点化するにゃん」

「「「にゃあ!」」」

『『『……』』』

 そこに魔法蟻たちが報告に現れた。

「プリンキピウムと繋がったにゃん?」

『『『……!』』』

「にゃあ、おめでとうにゃん」

 プリンキピウムから掘り進められていたトンネルが、ホテルの地下施設に連結された報告だった。

『『『……』』』

 魔法蟻たちがうれしそうに口をカチカチさせる。

「魔法蟻もお疲れにゃん」


 オパルス・オルホフホテルの制限エリアである地下施設をオパルス拠点に改めた。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 制限エリア オパルス拠点


 オレたちは魔法蟻の背中に分乗してプリンキピウムに繋がるトンネルの入口まで移動する。

 このトンネルは人員と物資の輸送を行うのでそこそこ大きい。

「にゃあ、お館様、これからプリンキピウムの森に行って来るにゃん!」

「「「ウチらもにゃん!」」」

「気を付けて行くにゃんよ」

「「「にゃあ!」」」

 背中に猫耳を乗せた魔法蟻たちがプリンキピウムに向けて次々と出発する。

「にゃあ、スゴいスピードにゃぁぁぁん!」

 絶叫を響かせて猫耳を乗せた第一陣の魔法蟻たちは、あっと言うまに見えなくなった。

「「はやーい」」

 オレの後ろに乗ってるビッキーとチャスも声を揃えた。

「前に乗った時よりも速いよね?」

「にゃあ、確かにあそこまで速く無かったはずにゃん」

『……』

 魔法蟻が口をカチカチさせる。

「トンネルに魔法を最適化したにゃん?」

 オレたちの乗った魔法蟻が教えてくれた。

「にゃあ、ウチらも続くにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 次々と第二陣、第三陣と魔法蟻に乗った猫耳たちが出発する。

「にゃあ、お館様たちも途中まで行くにゃん」

「そうにゃんね」

 オレたちを乗せた魔法蟻もトンネルに入って滑り出した。



 ○州都オパルス プリンキピウム間 魔法蟻トンネル


「にゃあ、本当に速いにゃんね」

 本物のリニアには及ばないが、魔法馬では到底出ない速度で移動する。

「この速度ならプリンキピウムまで三時間ちょっとで到着にゃんね」

「お館様、プリンキピウム側の出口はホテルの地下にあるプリンキピウム拠点と森の中に秘密の出口が有ればいいにゃん?」

 トンネルを魔法蟻でぶっ飛ばしても連結された防御結界のおかげで、オレは念話を使わなくても前後の猫耳たちと普通に会話ができる。

「そうにゃんね、出口はそれで問題ないにゃん、ただプリンキピウムの森はともかく街の門を通らないでホテルに顔を出すのはマズいにゃんよ」

「にゃあ、了解にゃん、辺境のプリンキピウムでは見ない顔がウロチョロすると面倒なことになるにゃんね」

「お館様の知行地だから誤魔化すのは簡単にゃん、守備隊はウチらも食い込むからプリンキピウムに関しては大丈夫にゃん」

「それもそうにゃんね」

 オレの街だからオレの都合が優先されるわけだ。

「ただ、近衛軍が近くにいるから目立つのは良くないにゃん、いつの間にか浸透するのが理想にゃん」

「にゃあ、確かに近衛軍はヤバいにゃん、頭のイカレたヤツの集まりにゃん」

「「「にゃあ」」」

 同意の猫耳多数。

「そういうわけだから、慎重に頼むにゃん」

 猫耳たちに指示した。

「すると州都でも多少出入りした方が良さそうにゃんね」

「そうにゃんね、カズキ様には話してあるけど、変な噂が流れるのはマズいから最低限のことはした方がいいにゃん」

 これ以上の悪目立ちは避けたいところだ。

「でも、お館様の場合は大公国とハリエット様の件で、もう十分に目立ってると違うにゃん?」

「現にウチらが目を付けたにゃん、不正確だった噂もウチらが消えたことでもっと大きな尾ひれが付くと思うにゃん」

「そうだね」

 オレの頭の上でリーリが頷く。

「面目ないにゃん」

 元アール・ブルーマー男爵のアルが謝罪する。

「オレに関しては仕方がないにゃん、ただ近衛軍と宮廷魔導師にもトンネルのことは知られたくないにゃん、いずれもハリエット様の事件の黒幕と繋がってそうにゃん」

「にゃあ、事件の黒幕はお館様の呪い返しで始末されたと違うにゃん?」

「呪いを返した感触からすると一回目と二回目では実行した魔導師は別人にゃん、たぶん使い捨ての手下にゃん」

「宮廷魔導師級の魔法使いをふたりも使ってるにゃん?」

「そうにゃん、どちらも術者も呪い返しに反撃するほどの技量を持って無かったにゃん、たぶん提供された術式を実行したにゃんね」

「お館様は、黒幕は実際に手を下していないと考えているにゃんね」

「にゃあ、ただ、彫像病を悪化させる『王族殺し』の呪法に関しては、黒幕もしくはそれに親しい人間だと思うにゃん、これはオレの勘にゃん」

「『王族殺し』の呪法って本当にあったにゃんね」

『王族殺し』はその筋でも存在が眉唾な都市伝説的な扱いをされている。王族は魔力過多な者が多く彫像病を患う者が多かったことから囁かれるようなったが、真実を含んでいたわけだ。

「でもターゲットがハリエット様とか、いまいち狙いが良くわからないにゃん」

 オレが思うにハリエットを殺してもいまの王宮には益がない。特に貴族派は王国軍が崩壊すると美味しい搾取先が消滅する。

「ぼんくらの国王よりハリエット様が有能だから、さっさと潰そうとしたと違うにゃん?」

「にゃあ、国王はぼんくらでもハリエットは十二歳にゃんよ、誘拐してわざわざプリンキピウムの森に捨てるほどの手間を掛ける意味がわからないにゃん」

「六歳のお館様のセリフじゃないにゃんね」

「ハリエット様は、お館様と結びついたことで本当の脅威になったにゃん、黒幕は間違いなく慌てているにゃん」

「黒幕がお館様にびびって手を引いてくれると助かるにゃん」

「それは期待しない方がいいにゃんね、敵の正体が掴めない以上は、オレの大切な仲間を守るためにもこちらの手の内は明かさないに限るにゃん」

「にゃあ、お館様の仲間ってウチらも入ってるにゃん?」

「当然にゃん」

「あたしは?」

「「おやかたさま、わたしたちもなかま?」」

 頭の上と背中側から問い掛けられる。

「もちろん全員入ってるにゃん、皆んなオレの仲間にゃん!」

「にゃあ、お館様、大好きにゃん♪」

 横付けした蟻からぎゅうっと猫耳に抱き締められる。

「にゃあ! ウチもお館様を抱っこしたいにゃん!」

 別の魔法蟻に乗った猫耳が反対側に横付けした。

「仕方ないにゃんね」

 抱っこしていた猫耳が高速でぶっ飛ばしている魔法蟻の上からオレをポイと投げた。

「にゃあ!」

 オレは一回転して反対側の猫耳にキャッチされた。

「にゃあ、お館様にゃん♪」

 だから大好きなら、もうちょっと大事に扱え。



 ○州都オパルス プリンキピウム間 魔法蟻トンネル オパルス前衛拠点


 オパルスと中間施設の間に猫耳たちが魔法蟻たちと一緒に拠点の建設を開始する。

 オパルス前衛拠点だ。

 魔法蟻たちの防御陣地+地下農場にオレたちの生活空間とトンネルの駅の機能を持たせる。設計図はあるので再生するだけでほぼ出来あがりだ。

『『『……!』』』

 不意に魔法蟻たちが口をカチカチさせる。

「にゃ?」

 魔法蟻たちから報告だった。

「向こうに何かあるにゃんね」

 どうやら近くで何かを発見したらしい。

「ちょっと待つにゃん、いま確認するにゃん」

 魔法蟻の教えてくれた方向に探査魔法を打った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ