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猫耳にゃん

 箱の中は水で満たされてる。実際には水ではなくオレが生成した液体エーテル体だ。その中で行われてるのは魂の漂白。

 浄罪の炎で焼き清める。

 実物に触れてもオレが作り出せないモノ。それが魂だ。

 魂を再利用するためにすべての罪の根源を洗い流し再構成する。平たくいえば性根を叩き直す。

 これもすべてリーリに妖精魔法寄りの精霊魔法を教えて貰ったので可能になったことだ。魂を加工する技術は人間の魔法にはない。

 人間の魔法では魂を壊してしまう呪法止まりだ。呪法は紛れもなく人間の研究が最も進んでる分野だ。これは間違いない。


「にゃあ、皆んな、起きるにゃん!」


 箱を消し去るとザバっと水のような液体エーテル体が流れた。それらは次々と身体を起こす。

「うん、ちゃんと出来てるみたいだね」

 リーリは満足げに頷く。

 そこにいるのは魂をリサイクルした二四一人の全裸の少女たち。

 十五歳程度で何故か髪型はそろってショートボブだ。

 オレは何もしてないにゃんよ。

「にゃあ!」

「「「にゃあ!」」」

 オレの声に全員が返事をした。

 むくつけき男どもの面影は皆無で、どちらかといえば華奢な身体つきだ。そしてオレと同じく猫耳と尻尾を装備してる。

 ほぼ稀人といっていい肉体を与えた猫耳たちはオレと思考共有を行っている。善悪の判断はオレに倣う。

 同時に魔法を扱うオレの演算能力も跳ね上がった。オレが二四一人に増えたみたいなものだから当然だ。

「にゃあ、服を着るにゃん!」

 素っ裸の猫耳たちに声を掛けた。

「「「にゃあ」」」

 一瞬でキャリーとベルが着ていたみたいなデザインの戦闘服に編み上げのブーツを装着する。要はドクサ騎士団と同じモノだがこちらは迷彩を採用している。

 銃や魔法馬の装備品は拡張空間に格納済みだ。

「おまえらは前世で迷惑を掛けた償いのために世のため人のために働くにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

 全員、拳を突き上げた。

「ウチらは、お館様の為に働くにゃん!」

「「「そうにゃん!」」」

「にゃ、お館様?」

 誰だそれは?

「にゃあ、お館様はお館様にゃん!」

「かわいいお館様にゃん!」

「「「お館様にゃん♪」」」

 猫耳たち全員が駆け寄って来た。

「「「お館様、大好きにゃん!」」」

「にゃ!?」

 あっと言う間に取り囲まれ、猫耳たちに抱え上げられ次々と抱っこされてスリスリする。いったい何が起こってるんだ?

「にゃあ、お館様ってオレのことにゃん!?」

「「「そうにゃん!」」」

 猫耳たちが声をそろえた。

「にゃあ」

 そのままオレは二四一人の猫耳たちに揉みくちゃにされた。

「予定よりマコトが好き過ぎる感じに仕上がったみたいだね」

 横ではリーリが冷静に分析していた。

『『『ニャア』』』

 いつの間にか猫耳ゴーレムたちも混じっていた。


 少ししてやっと落ち着いた猫耳たちがオレの前に整列する。

「にゃあ、ウチら二四一名全員、お館様に忠誠を誓うにゃん!」

 代表して元アール・ブルーマー男爵のアルが代表して宣言した。前世の面影は茶髪っぽい髪の色だけだ。

「「「誓うにゃん!」」」

 続いて全員が声を上げた。

「にゃあ、よろしく頼むにゃん」

 猫耳たちの熱量に圧倒されまくりだった。



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 中庭


「「きゃあ」」

 お馬の練習から戻ったビッキーとチャスが、猫耳たちに捕まって餌食もとい抱っこされまくってる。

「にゃあ、ビッキーとチャスは可愛いにゃん」

「「「にゃあ、可愛いにゃん」」」

 最初はビッキーとチャスもスキンシップ過多な猫耳たちに驚いていたが、すぐに慣れてしまった。

「「ねこみみちゃん?」」

「「「にゃあ」」」

「ウチらはビッキーとチャスの仲間にゃん」

 猫耳たちは抱っこしたビッキーとチャスに何か語っている。

「「なかま?」」

「そうにゃん、ウチらはお館様をお守りする仲間にゃん」

「「おやかたさま?」」

 抱っこされたまま首を傾げるビッキーとチャス。

「マコト様のことにゃん」

「「マコトさま!」」

「そうにゃん、マコト様がウチらのお館様にゃん」

 お館様の呼称は男爵家由来なのだろうか?

「「おやかたさま!」」

 ビッキーとチャスが走ってきたオレに抱きついた。早速、猫耳たちに影響を受けてる。

「お館様でもいいけど、なんかこそばゆいにゃんね」



 ○州都オパルス オパルス・オルホフホテル 従業員寮


「こちらのお嬢さんたちが、マコト様のお作りになる私設守備隊の隊員さんですか?」

「そうにゃん」

 猫耳たちが勝手にうろちょろする前に支配人のアゼルを始めとするホテルの従業員たちに紹介した。

「「「よろしくにゃん!」」」

「こちらこそよろしく、マコト様と同等の魔力をお持ちとは恐れ入りました」

 アゼルは直ぐに猫耳たちの実力を看破した。

「にゃあ、ホテルもお館様もウチらが守るにゃん!」

「「「にゃあ!」」」

「「まもる!」」

 ビッキーとチャスも猫耳たちに同調していた。

「我々も皆さんの仲間です」

 アゼルたちホテルの従業員も猫耳たちと握手していた。



 ○州都オパルス 冒険者ギルド ロビー


 オレはリーリを連れて州都の冒険者ギルドにやって来た。

「ネコちゃん、妖精さんいらっしゃい」

 職員のアレシアがいちはやくオレを見付けてカウンターから出て来てくれた。

「にゃあ、久し振りにゃん」

「元気にしてた?」

「ええ、元気よ、今日のご用件は何かしら?」

「ギルマスに会いたいにゃん」

「フリーダ様ね、ちょっと待っててね」

「にゃあ」

 アレシアはオレの頭を撫でると直ぐにフリーダの執務室へ知らせに行った。

 内線電話がないのは不便にゃんね。

「マコト、まだこんなところにいたのか?」

 いきなり後ろから抱え上げられた。

「にゃあ、デリックのおっちゃんにゃん」

 プリンキピウムの冒険者ギルドのギルマス、デリック・オルホフだった。

「にゃあ、なんでデリックのおっちゃんがここにいるにゃん?」

「州都の冒険者ギルドで、明日ギルマスの会議が有るんだよ、マコトは早くプリンキピウムに戻って無事な姿を皆んなに見せてやれ」

「にゃあ、州都での用事があったにゃん、プリンキピウムは変わりないにゃん?」

「大丈夫だ、マコトのホテルもちゃんと稼働してるぞ」

「それなら安心にゃん」

 デリックのおっちゃんをマジマジと見る。

「どうかしたのか?」

「にゃあ、王都の王国軍の駐屯地でドゥーガルド少将に会ったにゃん、そっくりにゃんね」

「兄弟だからな、兄貴は元気にやってたか?」

「元気だったけど忙しそうだったにゃん」

「王都だからな、そいつは仕方あるまい」

「ご無沙汰していますデリック様、ネコちゃんと妖精さんもいらっしゃい!」

 執務室からフリーダが出てきた。

「フリーダ、久し振りだな」

「にゃあ」

 オレはデリックのおっちゃんの手からフリーダによって引き剥がされ、そのまま抱えられた。

「さあ、こちらにどうぞ」



 ○州都オパルス 冒険者ギルド ギルドマスター執務室


 リーリを頭に乗せたまま執務室のソファーに降ろされた。

「デリック様、確認なのですがプリンキピウムでは特異種の被害はないのですよね?」

「ああ、今年はマコトが狩りまくったからいまのところ被害は出てない、買い取った数からするとかなり増えてるのは間違いないだろう」

「他の場所では去年の倍の被害が出ています」

「ああ、聞いてるぞ、やはり諸侯軍が無くなったのも痛いな」

「ええ、父もそう申しています、特異種は冒険者には手に余る存在ですから」

「他所でも個体数が増えてるのか?」

「間違い有りません」

「マコトは何かわからないか?」

「プリンキピウムの森は深く潜ったらあんなものと違うにゃん?」

「いや、紛れもなく多いぞ」

「ネコちゃん、対策はどうすればいいと思う?」

「森の深いところには入らないようにするのがいちばんにゃんね」

「深いところね」

「獣避けの結界の中から出ないのがいちばんだよ」

 リーリもアドバイスする。

「にゃあ、それと魔力の強い人間はそれを外に漏らさないようにする必要があるにゃんね、魔力は特異種を呼び寄せるにゃん」

「魔力の強い人間を獣避けの結界の中に留めて置くんだな?」

 デリックのおっちゃんがオレに訊く。

「そうにゃん、特に魔法使いを食べると普通の獣でも特異種に変質する可能性があるから気を付けるにゃん」

「マコトいま何て言った?」

「魔力を外に漏らさないようにするにゃん」

「いや、獣が魔法使いを食べると特異種になると言うところだ」

「にゃあ、魔法使いのエーテル器官を取り込むと体内のマナの濃度が増して肉体を変化させることがあるにゃん。もちろんアポリト州のグールとオーガの大量発生の原因は違うにゃんよ」

「ネコちゃん、どうしてそんなことを知ってるの?」

「にゃあ、魔法使いのことだったら図書館の記憶石板の情報にゃん、自然に増加してるのは森の中のマナの濃度が上がってるのかもしれないにゃんね」

「マコトはわからないのか?」

「オレは、前を知らないから比較ができないにゃん」

「それもそうか」

「ネコちゃんの説が正しいとして、私たちに特異種の増加を防ぐことは無理なんでしょうね」

「にゃあ、領主様ならなんとかしてくれると違うにゃん?」

 ペーペーのオレより異世界歴三五年の領主様の方が頼りになるんじゃないだろうか? エロいけど。

「おお、カズキ様か!」

「えっ、そうでしょうか?」

 実の娘が疑問を呈す。

「にゃあ、領主様なら朝飯前にゃん」

 たぶん。

「そうだね、朝ごはんは大事だよね」

 リーリも同意する。何か違ってる気もするが。

「決まりだな、明日のギルマス会議はマコトの話を参考に最後はカズキ様にどうにかしてもらう方向でまとめよう」

「そうなりますね」

「そういやマコト、こっちでもホテルを始めたんだって?」

「にゃあ、まだプレオープンの状態にゃん」

「おう、だったら今晩泊めてくれるか?」

「いいにゃんよ、これを支配人に渡してくれればいいにゃん」

 デリックのおっちゃんにホテルの宿泊チケットを渡す。

「場所はわかるにゃん?」

「いや」

「冒険者ギルドを出たらお城の方向に見える青くて大きな三角の建物がそうです」

 オレに代わってフリーダがデリックのおっちゃんに教えた。

「おお、アレか、見慣れないモノが有ると思ったらマコトが作ったのか?」

「そうにゃん、またアーヴィン様の名前を借りてるにゃん」

「ホテルの名前だったら親父殿がマコトに許可したんだから好きに使え、じゃあ、またな」

 デリックのおっちゃんが出て行った。

「それで、ネコちゃんたちのご用事は何かしら?」

 改めてフリーダがオレに向き直った。

「にゃあ、冒険者ギルドに登録して欲しいヤツらがいるにゃん」

「登録ってネコちゃんの関係者?」

「マコトの家来だよ」

「家来って、大公国から連れて来たの?」

「違うにゃん、こっちで雇ったにゃん」

「今日は来てないの?」

「ちょっと人数が多いからまずは知らせに来たにゃん」

「何人なの?」

「全部で二四一人にゃん」

「二四一人て、まさかあの盗賊? ダメよ、賞金首もいるんだから登録の魔導具に弾かれちゃうわ」

「違うにゃん、全員可愛い女の子にゃん、人数はたまたま同じだったにゃん」

「女の子なの?」

「そうだよ」

 リーリも証言する。

「盗賊じゃなくて?」

「ぜんぜん違うにゃん」

「わかったわ、明日、冒険者ギルドの裏手に登録の用意をしておくからそっちに直接連れて来てね」

「にゃあ、午前の内に連れて来るにゃん」

「ネコちゃん、盗賊はどうしたの?」

「知らないにゃん」

「確認だけど、死体をネコちゃんの拡張空間に隠してるなんてことはないよわね?」

「オレでもそんな気持ちの悪いことはしないにゃん」

「じゃあ、ネコちゃんのホテルを見て恐れをなして逃げちゃったのかな? 盗賊って状況が不利になったら直ぐに逃げちゃうから」

「そうにゃん?」

「本当は捕まえるのってかなり難しいの、捕まえても死体になってることが多いし」

「魔法がないとそうにゃんね」

「魔法も本当は簡単じゃないけどね」


 冒険者ギルドの後はそのまま領主様のお城に向かった。



 ○州都オパルス オパルス城 執務室


 本当は領主様とそんな簡単に会えたりはしないのだが、五分と待たされずに執務室に通された。

「やあ、盗賊は蹴散らしたらしいね」

「にゃあ」

「それでボクに話ってなに?」

「にゃあ、事後報告になるけど、私設守備隊を作ったにゃん」

「ずいぶんと急だね」

「守るモノが多くなったので仕方ないにゃん」

「もしかして、盗賊どもを手懐けたのかい?」

「にゃあ、盗賊は無理にゃん、生理的に受け付けないにゃん」

「ふ~ん、その私設守備隊には何人いるのかな?」

「にゃあ、二四一人にゃん」

「ボクが掴んでいたアール・ブルーマー男爵とその手下たちの総数が二四一人なんだけど」

「スゴい偶然にゃん」

「うん、スゴいね」

「それで何をしたのか、怒らないから正直に言ってみようか?」

「にゃあ、捕まえた盗賊どもをちょっと改造したにゃん」

「改造って?」

「オレみたいな猫耳とシッポ付きにしたにゃん」

「えっ、盗賊たちに猫耳とシッポを生やしたの?」

「にゃお、そうじゃないにゃん、ちゃんと十五歳ぐらいの可愛い女の子にしてあるにゃんよ」

「マジで?」

「マジだよ、マコトを元に改造したから、あれはほぼ稀人だね」

 リーリが答えた。

「盗賊にマコトの力を与えて大丈夫なの?」

「その点は心配ないにゃん、魂を漂白した上に思考共有してるから倫理観も価値観もオレがベースになるにゃん」

「危なくないならいいけど、戦闘力は?」

「猫耳ゴーレムより上にゃん、ただオレの魔法はあいつらに効くけどあいつらの魔法はオレには効かないにゃん」

「安全弁は有るとは言え、かなりの戦闘力だね、マコトは世界征服でもするの?」

「基本的にオレたちは人間と戦うつもりはないにゃん」

「マコトならそうだろうね。ちょっかいを出すバカは、けちょんけちょんにして構わないけど」

「もちろん最初からそのつもりにゃん」

 基本的に戦わないのであって、何ごとにも例外があるのだ。

「事情はわかった、アール・ブルーマー男爵たちに関してはボクもロストしたことにしておくよ」

「助かるにゃん」

「いや~、いろいろ助かってるのはボクの方だよ、マコトのおかげで税収は上がってるし、クリステルまで預かってもらってるし」

「奥様ならそろそろお城に帰るみたいにゃんよ」

「自分で提案してあれだけど、クリステルがあんなにハマるとは思わなかった」

「美容魔法がいままで無かったのが不思議にゃん」

「いや、有るには有ったんだけど、効果は推して知るべしだったからね」

「治癒魔法の一種にゃん」

「先史文明ならいざしらず、現代の魔法は貴重なものだからね、治癒師を使って美容なんて軽蔑されるよ」

「にゃあ、貴族でも良識はあるにゃんね」

「バカなことをしてると下克上があるからね、領主個人が圧倒的な魔力でも持ってない限りはそう好き勝手はできないよ」

「にゃあ、領主って面倒くさいにゃんね」

「マコトの場合は好き勝手できる領主だから問題ないんじゃないか?」

「それもそうにゃんね」

 それ以前にたいして領民もいないけどな。


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