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プロトポロス再訪にゃん

 ○フルゲオ大公国 フルゴル州 ドクサ街道 上空


 空の上から見たプロトポロスに続く道は特に大きな変化は無かった。

「にゃあ、街道ぐらいは直した方がいいにゃんね」

 ざっくり宮廷魔導師が直してくれていたが十分ではない。

 高度を落として街道の石畳を修復しながら進む。

 途中、復路を走行中のドクサの少女騎士たちの馬車を追い抜く。たぶん今日到着予定の娘たちだ。

「にゃあ!」

 真上から声を掛けた。

「「「マコト様!」」」

 少女騎士たちが手を振ってくれる。

「にゃあ、先に行ってるにゃん!」

「またね!」

「「バイバイ!」」

 オレたちも手を振って飛び去った。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス


 パッセルから一時間のフライトで麦畑に囲まれた城塞都市プロトポロスの上空に到達した。


『『『ニャア!』』』

 いつもの発着場には猫耳ゴーレムたちが整列して出迎えてくれた。

「にゃあ!」

 オレも敬礼して応えた。

「ご帰還、お疲れ様であります!」

「「お疲れ様です、マコト様!」」

 ルチアとその後ろにはキュカとファナもいた。

「にゃあ、いま帰ったにゃん、直ぐにミーティングを始めるから残ってる小隊長も集めて欲しいにゃん」

「了解であります」

「あたしは別の仕事をするよ」

 リーリはいきなり不参加を表明した。

「にゃあ、別の仕事にゃん?」

「食堂だよ! 味がちゃんとしているか確かめるのはあたしの役目だからね! じゃあね!」

「にゃ!?」

 止める間もなく飛んでいって行ってしまった。

「「おねえちゃん!」」

 ビッキーとチャスはキュカとファナにくっついた。

「ふたりとも元気にしてたみたいね」

「うん、安心した」

 一緒に過ごしたのは僅かな時間だったが本物の姉妹みたいな絆が生まれていた。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 会議室


 ビッキーとチャスは手の空いてる騎士たちに預かって貰って会議室でミーティングを始める。

 参加者はオレとドクサの執政官ルチア、副官のキュカとファナ、それに城に残っている小隊長たちだ。

「にゃあ、今日の最初の議題は騎士の増員に付いてにゃん」

「増員されるのですね」

 キュカが尋ねる。

「にゃあ、ただ実力がバラバラなので基礎訓練をしてからプロトポロスに連れて来るにゃん」

「マコト様、騎士たちは何人増員されるのですか?」

 小隊長の一人が手を上げた。

「にゃあ、約五〇〇人にゃん」

「いきなり多いでありますね」

 ルチアも驚いたらしい。

「にゃあ、窓口になってるクルスタロスの代官に選抜を頼んでその数字にゃん。正式なメンバーが出揃ったところであちらで基礎訓練を行うにゃん」

「基礎訓練でありますか?」

「基礎訓練はオレに忠誠を誓って貰って魔法馬と銃を配給するまでにゃん、そこまでをクルスタロスの守備隊とネコミミマコトの宅配便が共同で行う予定にゃん」

「かなり大掛かりでありますね」

「にゃあ、教育には魔法も併用するからそれほど時間は掛からないにゃん」

「基礎訓練が終わってるなら受け入れ側の我々も問題もないであります」

「にゃあ、頼むにゃん」

「質問なのですが、今回の入団者には貴族出身者が相当数含まれるのではありませんか?」

「貴族はヤバいですね」

 小隊長たちから心配の声が上がる。旧大公国軍では貴族階級は軍隊内でも特権階級として君臨していた。

 彼女たちも酷い目に遭ってきていたわけだから心配するのは当然だ。

「にゃあ、騎士団内の階級が絶対にゃん、この原則は曲げないので貴族だろうが元奴隷だろうが出身階級に関しては関係なしにゃん、それにオレに忠誠を誓った時点で不埒なマネはできなくなるにゃん」

 小隊長たちはほっとしたようだ。

「マコト様、新規入隊者の中に男性はどれぐらいいるのですか?」

「「「男性!?」」」

 うれしそうなのはルチアとキュカだけで他は一応に緊張した面持ちをしている。

「今回は全員女性にゃん」

「「「全員女性」」」

 緊張が解けたが何となく残念そうなオーラを感じた。

「男性はいずれ受け入れることにはなると思うにゃん、時期についてはルチアと話し合うにゃん

「了解であります」

「次に今後の騎士の訓練内容についてにゃん、いま送るにゃん」

 今日、掘り出したばかりの魔法騎士育成マニュアルにオレが手を加えたモノをエーテル器官を通して直に送った。

「「「えっ!?」」」

 全員が驚きの表情を浮かべた。

「マコト様、これは何でありますか?」

 代表してルチアがオレに訊く。

「にゃあ、魔法騎士の育成マニュアルにゃん」

「我らを魔法騎士にするのでありますか?」

「そうにゃん、オレは今回、王国のクプレックス州で魔法騎士の活躍を見たにゃん、今後のことを考えると魔法を使える意味は大きいと思うにゃん」

「ですがマコト様、我々は魔法を使えませんが」

「そこはちょっとしたズルをして全員に渡してある魔法馬の魔力を使うにゃん」

「「「魔法馬の?」」」

「にゃあ、銃と同じにゃん、厳密に言えば普通の人間には使えない銃を使ってる時点で皆んなはすでに魔法騎士と言えるにゃん」

「あの銃は普通の人間には使えないのでありますか?」

「にゃあ、引き金に指を当てただけで卒倒するにゃん」

「「「……!」」」

「これから幾つかの攻撃魔法、それに生活魔法と治癒魔法、それに聖魔法を授けるにゃん」

「マコト様に授けて戴けると、その魔法が使えるのですか?」

「にゃあ、でも、悪いことには使えないにゃんよ」

「マコト様、我々にそれだけの魔法が必要なのでありますか?」

 ルチアがじっと見詰める。

「にゃあ、魔獣と戦うにはこの程度の魔法は必須にゃん」

「我々は魔獣と戦うのでありますか?」

 緊張の色を見せる面々。

「にゃあ、この世界で生きているかぎり遭遇の可能性はゼロじゃないにゃん、それにグールもオーガも魔法がないとヤバいにゃん」

「グールとオーガはマコト様が討伐されたと聞きましたが」

「にゃあ、また王国のアポリト州に入り込んだバカがいるにゃん。グール化した可能性が濃厚にゃん。しかもオレの領地になることが内定してるにゃん」

「するとグールとオーガの討伐に我らが派遣されるのでありますか?」

「それは無いにゃん」

「いえ、むしろ我々を使って下さい」

「にゃあ、グールとオーガはオレの獲物にゃん、これは譲れないにゃん」

「「「失礼しました」」」

「にゃあ、グールとオーガを完全に片付けて平和になったら遠征も有るかもしれないにゃん、いまのところわざわざ危ない場所に連れて行く予定はないにゃん」

「マコト様は過保護すぎます」

 小隊長のひとりが苦言を呈した。

「だったらオレと一緒に魔獣の森を探検するにゃん?」

「い、いいえ、それはちょっと」

 腰が引ける。

「にゃあ、皆んなにはもっと強くなって欲しいにゃん」

「強くならない限りマコト様の過保護は直らないと言うことですね?」

「にゃあ、そういうことにゃん」


 ミーティングが終了したので、オレは騎士全員に念話を送った。

『にゃあ、オレにゃん』

『『『マコト様!?』』』

 半信半疑みたいなざわざわとした反応が返って来た。

『そうにゃん、マコトにゃん』

『『『マコト様!』』』

 ちゃんと名乗らないとダメみたいだ。

『にゃあ、これから皆んなに魔法を授けるにゃん』

『『『魔法!?』』』

 戸惑い混じりの反応だ。

『全員を魔法騎士にするにゃん、魔法は直ぐに使えるけどちゃんと練習してから発動させるにゃんよ』

『『『はーい!』』』

 元気な返事が返って来た。

『にゃあ、行くにゃん!』

 一斉に魔法騎士のマニュアルと各種魔法の詰め合わせを全員のエーテル器官に送る。

 同時にエーテル器官を弄って最適化した。

『『『わわわわ!』』』

 予告したけど初めての魔法を使える感触に驚いていた。

 早速、使おうとするヤツが何名か。

『にゃお! ちゃんと練習しないと怪我をするにゃんよ!』

『『『す、すいません!』』』

『にゃあ、わかればいいにゃん』



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 地下 魔法専用演習場


 魔法騎士の下地作りが終わったところで、城の地下に魔法専用の演習場を作った。

 それと騎士が増えるに当たって教育施設と宿舎を城内に増設する。

 プロトポロスは城が都市そのものなので、三〇~四〇万人が生活可能だったりする。

「新規入団者にも魔法馬は支給されるのですか?」

 ルチアに増改築のアドバイザーとして付き合ってもらってる。

「にゃあ、基礎訓練完了時に銃と一緒に支給するにゃん」

「ふるい落としはされますか?」

「にゃあ、できない子はできるようにするから心配いらないにゃん」

「了解であります」

 地下の魔法訓練場には月光草を敷き詰め思い切り広くする。空間圧縮魔法の二重掛けも使用してこの中で魔獣と猫耳ゴーレムが戦っても問題のないように防御結界で覆った。

「これは大公国の第一騎士団の上を行く設備ですね」

「あっちの騎士団の設備もいずれ良くなるにゃん」

「それもマコト様のおかげでありますね」

「オレは魔法馬を売っただけにゃん。後のことは宮廷魔導師もいることだし大公陛下が上手くやるはずにゃん」

「マコト様はプロトポロスが魔獣に襲われるとお考えでありますか?」

「今回の旅でオレは魔獣と二回遭遇したにゃん」

「二回もでありますか?」

「にゃあ、どちらも人為的に出現させてるにゃん、だからプロトポロスが魔獣の森が遠くても安心はできないにゃん」

「魔獣を人為的でありますか」

「にゃあ、城は防御結界で固めてあるから籠城すれば魔獣に食べられることはないと思うにゃん」

「籠城戦でありますね」

「にゃあ、そうは言っても騎士たちが無理に戦う必要はないにゃんよ」

「やはりマコト様は過保護でありますね」

 ルチアはニコッとした。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 大食堂


「食べたよ!」

「「「おおお!」」」

 その頃、リーリはフードファイターの如く数々の大盛りメニューを完食して拍手喝采を浴びていた。

 ビッキーとチャスは騎士たちの他にもキュカとファナにも遊んでもらってご満悦な感じだ。


「マコト様」

 声を掛けてきたのは騎士のデビーだ。一四歳にしてはチビっちゃいのは相変わらず。その隣にはオレよりちょっと大きい女の子を連れていた。七歳ぐらいか。

「にゃあ、その子がデビーの妹にゃんね」

 デビーによく似てるその子が引き取りたいと言っていた妹なのだろう。

「そうです、マコト様に許可をいただいてすぐに呼び寄せました。ネコミミマコトの宅配便の方々が連れて来てくれたんです」

「にゃあ、よかったにゃんね」

 報告はルチアからもらっている。

「お姉ちゃん、この子がマコト様なの?」

「そうよ、マコト様のおかげで、私たちは美味しいものが食べられて、こんなにいい生活をさせてもらってるんだからね」

「ありがとう、マコト様」

 デビーの妹に頭を撫でられる。

「にゃあ」

「……っ!?」

 デビーが青くなってるので妹を怒らないように言っておいた。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 市街地区


 城壁の中に商店街に追加で幾つか店を開店させた後、城の見晴らしのいい場所に露天風呂も作った。やはりこれがないとオレが収まらない。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 屋上露天風呂


『露天風呂を作ったにゃん、手が空いた人は入っていいにゃんよ』


 念話で城内にいる全員に呼びかけた。

 いちばん風呂はオレとリーリだ。

「にゃあ~」

 夕日に染まった麦畑を眺めながらチャプチャプする。

「私たちもご一緒して本当によろしいのですか?」

 キュカとファナがビッキーとチャスを連れてやってきた。

「にゃあ、もちろんにゃん、ここの露天風呂は皆んなで入るために作ったにゃん」

「マコトは皆んなでお風呂に入るのが好きなんだよ、だから遠慮しなくていいよ」

 リーリが説明してくれる。

「そういうことにゃん」

 少女騎士たちもやってきて、Kaz★Pon!先生が泣いて悔しがりそうな風景が広がる。

 途中で追い抜いて来た騎士たちも到着して一緒にお風呂だ。

 こちらも大きいのから小さいのまで各種取りそろえてある。

 それに皆んな健康そうで何よりだ。

 残念ながら昨日に引き続きエッチな感情は湧いて来ない。やはりオレのメンタルは六歳の女の子で固定されてしまった。


『マコト、ボクにも見せてよ』


「にゃ!?」

「どうかしたの?」

 リーリがオレの声を覗き込む。

「にゃあ、何でもないにゃん」

 いきなりカズキから念話が入ってドキッとした。

『何でいまお風呂ってわかったにゃん?』

『時間的にそうかなと思って』

『にゃお』

『マコト、ボクにもちょこっと見せて欲しいなあ』

『お断りにゃん』

『えー、本当にちょこっとだけでいいからお願いだよぉ』

『無理にゃん』

『……あぅ』

『領主様のところも女の子だけの騎士団を作れば良かったにゃんね』

『いや、作っても直ぐにクリステルたちに取られちゃうし、そもそも混浴のイベントが発生しないよ!』

 なんか心の叫びだ。

『にゃあ、森の奥に温泉でも作ったらいいにゃん、野営の時に漫画みたいなラッキースケベ発生にゃん』

『たぶん、温泉を作った時点で取られちゃってるんじゃないかな』

『諦めて奥様と入ればいいにゃん』

『そうさせていただきます』

 女の子の裸にそこまで執着できるカズキがちょっと羨ましい様なキモいような。

 オレには失われてしまったリビドーだ。

『ところで、領主様はオレになんか用事があったと違うにゃん?』

『そうだ、プリンキピウムに帰る前にオパルスに寄ってくれない?』

『いいにゃんよ』

『クリステルがフリーダ経由で王都の冒険者ギルドのマティルダ様からマコトの美容魔法の話を聞いてね、誘拐してでも連れて来いってご命令なんだよ』

『みゃあ、なんか怖いにゃん』

『女はね、美容が絡むと鬼になるんだよ』

『にゃあ、領主様の奥様は焦らなくても十分に若さを維持してるにゃん』

『あれは純粋に持って生まれた魔力のお陰だよ、後はボクの作ったシャンプーと石鹸ぐらいかな』

『なんとも貧弱にゃんね』

『王国と言えどその辺りの文化は非常に貧弱で胡散臭いものばかりなんだよね』

『にゃあ、マティルダ様の喰い付きからすると容易に想像できるにゃん』

「マコトがオパルスに造るホテルは美容方面に力を入れるといいよ、クリステルもきっと喜ぶと思う』

『需要があるなら美容と健康に特化してみるにゃん』



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 大食堂


 お風呂の後は騎士たち全員と夕食。リーリはさっきいっぱい食べたらしいのに普通に食べている。いつものことか。

 騎士たちと談笑してからキュカとファナのテーブルに落ち着いた。

「ふたりはここでの生活は慣れたにゃん?」

「はい、慣れないことばかりで最初は戸惑いましたが楽しくやっています」

「殿方がいないのがたまに不思議に感じますが」

「にゃあ、騎士は女性限定だからしばらくは女の子ばかりにゃん、いずれは男も入れることにはなるけどそこはルチアとの話し合いにゃんね」

「たまにネコミミマコトの宅配便の方々は見えますが」

「にゃあ、そうにゃん?」

「皆さん礼儀正しい方たちでした」

「にゃあ、オレに忠誠を誓ってくれた人たちだから、不埒なマネはしないはずにゃん」

「そうですね」

 ちょっと物足りなさそうだぞ。



 ○フルゲオ大公国 ドクサ州 城塞都市プロトポロス 屋上露天風呂


 夕食の後は、猫耳ゴーレムに抱えられまた露天風呂に運ばれて行った。

『『『ニャア!』』』

 猫耳ゴーレムたちとお湯に浸かる。

「にゃあ♪」

 気持ちよくなって鳴き声が出てしまう。

『『『ニャア♪』』』

 猫耳ゴーレムたちも心地よさそうに鳴いた。


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