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面接にゃん

 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 六階 プレミアムラウンジ


「マコトさん、冒険者ギルドのセリアさんが来てくださいって」

 増築した六階部分のプレミアムフロアー専用ラウンジに魔導具を設置しているとドアマンの衣装のシャンテルが伝言を伝えてくれた。

「にゃあ、ありがとうにゃん、ちょっと行って来るにゃん」

「あたしも行く!」

 リーリがドーナツを持ったままオレの頭に飛び乗った。


 道を挟んで向こう側が冒険者ギルドだ。

 ホテルは車寄せを贅沢に取ってるのでドアを開けて直ぐに道路と言うわけじゃない。

 五〇メートルほど走って道路に出る。

 振り返るとオルホフ侯爵家の紋章の入った旗をたなびかせる白亜の巨大で瀟洒な建物。改めて見るとやっちまった感が半端ない。

 田舎町のここだけ高級リゾートだ。



 ○プリンキピウム 冒険者ギルド ロビー


「にゃあ、来たにゃん」

「あたしも来たよ!」

「いらっしゃい、ネコちゃん、妖精さん」

 冒険者ギルドの扉を全身を使ってよっこらしょと開くとセリアが出迎えてくれた。

「オレに何か用事にゃん?」

「ホテルの従業員募集に応募が有ったわよ」

「にゃあ、早かったにゃんね」

「三人の応募が有って、うちふたりは冒険者ギルドから誘ってみたの、もうひとりは最近、この街に来た人ね」

「最近来てホテルで働こうと思ったにゃん?」

「プリンキピウムの森はレベルが高いから直ぐに逃げ出す人は珍しくないわよ、初日から森を満喫してるネコちゃんや軍人さんたちが少数派ね」

「にゃあ」

「今日の午後に面接の予定を入れたけど大丈夫?」

「にゃあ、問題ないにゃん」

「じゃあ、先に応募者のプロフィールを教えるわね」

「にゃあ」

「まず一人目がドゥドゥー・バスク、十六歳の男子、Dランクの冒険者よ」

「冒険者の資質がいまひとつにゃん?」

「頭のいい子なんだけど体格に恵まれてないのよ、弓使いとしての腕も悪くないけど獲物を他の獣に横取りされちゃうことが多いみたい」

「にゃお」

「孤児院出身だから仕方なく冒険者をやってる口ね」

 後ろ盾のない孤児院出身の子には職業選択の自由がないのが現状だ。

「にゃあ、わかったにゃん」

「次がジジ・ラングレ、十八歳の女子でDランク。魔法使いではあるんだけど魔力が低くてウサギを気絶させるのがやっとかな」

「それは大変にゃん」

「そう大変なの、ジジも家庭の事情で他の進路を選べなかったの」

「家庭の事情にゃん?」

 親父が冒険者以外許さなかったとか?

「母一人子一人で、お母さんが病弱だから州都に働きに出るわけにも行かなかったのね、ネコちゃんのホテルならふたりで暮らせるでしょう?」

「にゃあ、問題ないにゃん」

「もちろん、能力的には問題ないわよ、お母さんも元気になれば戦力になるわよ、若い時は州都の商会で働いていたらしいから」

「それは素敵にゃん」

「最後がベニート・アルビノ。十八歳でDランクの男子。王都方面から来たそうよ。確かに都会っぽい感じだったわ」

「詳細は不明にゃんね」

「ええ、狩りはあまり得意じゃないんでしょうね、都会に多い雑用系の冒険者ね」

「わかったにゃん、午後になったらまた来るにゃん」



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル ロビー


 ホテルに戻るとベッティとチェリーとエミーの三人が制服を着てコレットとフェイに仕事を割り振って貰っていた。

 知識は持ってるから後は身体を慣らせばそれなりに恰好は付くだろう。


「マコトさん、正式なオープンはいつにします?」

 支配人室でノーラさんと面談する。

「にゃあ、オレとしてはいつでもいいけど、もうちょっとお客さんを入れて練習がしたいにゃんね」

「そうですね」

「冒険者ギルドの職員を泊めて練習するのが手っ取り早そうにゃんね」

「それでしたら職員のご家族も呼ぶのはどうでしょう?」

「にゃあ、それはいいにゃんね」

「明日から数日、都合のいいご家族から来ていただきましょう」

「ノーラさんの知り合いも呼ぶといいにゃんよ」

「いいのですか?」

「にゃあ、幅広いお客様に対応するのと忙しい時の対応を経験して欲しいから人は多いほうがいいにゃん」

 お客さんがあふれるぐらいじゃないと意味がない。

「冒険者の方々は呼ばないんですか?」

「にゃあ、お行儀良くするなら泊めてもいいにゃん」

「ヤメて置いた方が良さそうですね」

「にゃあ、他の人も呼びたい人がいたら呼んでいいと伝えて欲しいにゃん、知り合いなら冒険者でもいいにゃん」

「いいんですか?」

「にゃあ、酔っ払って暴れたらオレが冒険者ギルドまでぶっ飛ばすだけにゃん」

「まあ」

 ノーラさんは笑っていたがオレは本気だ。



 ○プリンキピウム 冒険者ギルド 商談室


 午後一でオレはリーリを頭に乗せてまた冒険者ギルドに向かった。

 面接の為に商談室を貸してもらう。

「何でデリックのおっちゃんがいるにゃん?」

 面接会場にはなぜかデリックのおっちゃんが陣取っていた。

「親父にマコトの面倒を見る様に言われてるからな」

「にゃあ」

 すでに圧迫面接の様相を見せてる。

「いいですか? ドゥドゥー・バスクくんからです」

 セリアが仕切ってくれるみたいだ。

「いいぞ、通せ」

 デリックのおっちゃんが返事をする。

「えっ、ギルマス?」

 ドゥドゥーはビクっとして入口で固まった。

「まあ、そうなるにゃんね、ギルマスは居るだけだから安心していいにゃん」

「あっ、はい」

 ドゥドゥーは聞いていたとおり背は低めで痩せていた。

 十六歳だがいいところ中一ぐらいにしか見えない。第一印象は真面目そうで悪くない。

「にゃあ、知ってのとおり、いまオレのホテルでは正式な営業開始を前に……」

「合格だ」

「にゃ?」

「ドゥドゥーなら問題ない、オレが保証しよう」

 デリックのおっちゃんが断言した。

「あたしも合格でいいと思うよ!」

 リーリからも合格が出た。妖精の勘か?

「デリックのおっちゃんとリーリがOKならオレも合格でいいにゃん」

「い、いいんですか?」

 ドゥドゥー本人がいちばん驚いていた。

「にゃあ、向かいにあるホテルに行って支配人ノーラさんと待遇面の話をして欲しいにゃん、それで問題なければ正式採用にゃん」

「わかりました、ありがとうございます」

 半信半疑な面持ちながらもドゥドゥーは一礼して商談室を出て行った。


「次は、ベニート・アルビノさんです」

 セリアの案内で入って来たのは銀髪の長身のイケメンだ。

「どうも」

 王都方面から来たとあって身のこなしも悪くない。

「プリンキピウムは初めてか?」

 デリックのおっちゃんから質問する。

「はい、アルボラ自体が初めてです」

「いいだろう、ご……」

「ちょっと待つにゃん」

 合格を出そうとしたしたデリックのおっちゃんを止めた。

「にゃあ、ベニート・アルビノ、十八歳はサバを読みすぎと違うにゃん?」

「えっ、何のことかな?」

「にゃあ、誤魔化そうとしても無駄にゃん、人殺しの臭いはおまえが名前を変える様には簡単には消えないにゃんよ」

「そうだね」

 リーリはたい焼きを食べながら頷く。

「あの、それは何かの引っ掛けですか?」

 イケメンが笑みを浮かべる。

「どうした、マコト?」

「にゃあ、こいつの冒険者カードをちゃんと調べればわかるにゃんよ、他人のカードにゃん」

「やだな、そんなわけないじゃないですか?」

「そうだぞマコト、他人のカードを使うなんて有り得ないぞ」

「ええ、有りえません」

「にゃあ、デリックのおっちゃんと違ってオレにその魔法は効かないにゃんよ」

「確かにその様だね、でも」

 いきなり剣を突き出してきた。

「ひっ!」

 素っ裸で床に転がったのは自称ベニート・アルビノくん十八歳だった。

「おっ、おお、どういうことだ?」

「にゃあ、軽い精神支配の魔法にゃん、実際は見せただけなのに魔導具でカードの確認をしたと思わせたにゃん」

 オレは倒れた男の頭を踏み付けた。

 エーテル器官から記憶を読み取る。

「本名はミンモ・ペトーニにゃん。二四歳、通称『顔無しミンモ』にゃん」

「マコト、『顔無しミンモ』って本当か!?」

 デリックのおっちゃんが立ち上がる。

「にゃあ、本当にゃん、ベニート・アルビノは一〇人目の犠牲者の名前にゃん」

「何でまた冒険者殺しの顔無しミンモが、マコトのホテルの従業員に応募したんだ? 足でも洗おうとしたのか?」

「にゃあ、違うみたいにゃん、州都の冒険者ギルドでオレが大金を手にしたってネタを仕入れたみたいにゃんね、それを根こそぎ掻っ払おうって計画したみたいにゃん」

「いま確認を取る、おう、何人か手伝え!」

 騒ぎを聞き付けて集まった職員が裸の男を縛り上げて連行した。

「そいつは魔法を使うから気を付けろ」

「にゃあ、それはもう大丈夫にゃん、魔法は封じたにゃん」

 エーテル器官を書き換えて出力を思い切り落とした。もう魔法は使えない。

「にゃあ、州都の冒険者ギルドには、次からオレの個人情報は慎重に扱うように注意して欲しいにゃん」

「ああ、もちろんだ」

 デリックのおっちゃんは額の汗を拭った。

「いまのは不合格だね」

「にゃあ、そうにゃん」

「あの、次のジジ・ラングレさんはどうします?」

 セリアが開け放たれた扉から顔を出して尋ねた。

「にゃあ、もちろん面接するにゃん」

「ああ、そうだな、次を頼む」

 ギルマスが浮かしていた腰を椅子に落とした。


「ジジ・ラングレさんです」

 セリアの紹介の後に緑の髪の痩せっぽちの女の子が入ってきた。十八歳だがそれより幼く見えるのは魔力のせいだろう。

「ジジです」

 ペコリと頭を下げた。

 なるほど魔力は多いが大半が内向きだから魔法は弱いものしか使えないのか。

「騒がしくしてごめんにゃん」

「いいえ、スゴい魔法を間近で見れたので得をした気分です」

「にゃあ、合格でいいにゃんね?」

「問題ない、合格だ」

「あたしも合格でいいよ!」

 全会一致で合格が決まった。

「ありがとうございます」

「従業員寮はお母さんと家族用を使うといいにゃん」

「本当にいいんですか?」

「にゃあ、いいにゃんよ、細かいことはホテルで支配人のノーラさんと決めて欲しいにゃん」

「わかりました」

 ジジは、またペコリと頭を下げた。


「これで、従業員はふたり追加にゃんね」

「何とかなりそうか?」

「にゃあ、明日から冒険者ギルドの職員とその家族にお客さん役をやってもらって試してみるにゃん」

「おお、そいつはいいな」

「デリックのおっちゃんもまた奥さんとバートを連れて泊まって欲しいにゃん」

「いいのか、って勝手に今夜も泊まるつもりでいるぞ」

「にゃあ、構わないにゃん」

「マコトのホテルに慣れると家に帰るのが面倒になりそうだ」

「にゃあ、家に帰ったら帰ったで落ち着くものにゃんよ」


 面接を終えて一〇分ほど経ったところでザックがタブレット片手にやって来た。

「マコト、今回も大当たりだったぞ」

「にゃ?」

「あいつは間違いなく『顔無しミンモ』だ、殺しの裏も取れた」

 真実の首輪を使って洗いざらい吐かせたのだろう。

「にゃあ、当然にゃん」

「賞金と報奨金合わせて大金貨六枚だ」

「従業員を募集しただけで儲かったにゃん」

「モノは言い様だな」

「なあ、マコト、今夜からオレもホテルに泊まらせてくれないか?」

「にゃあ、いいにゃんよ、でも今夜はまだ体制がちゃんと整ってないから、多少サービスが行き届かないところがあるかもしれないにゃん」

「オレは酒と美味い食い物が有れば文句はない」

「にゃあ」

「マコトのところだったら放って置かれても州都の高級ホテルより上だぞ、なんたって魔導具の数が桁違いだ、しかもゴーレムまでいる」

「そんなにあるんですか?」

 ギルマスの言葉にザックは半信半疑な様子だ。

「部屋に入ったら度肝を抜かれるぞ、全部が魔導具なんだからな」

「はぁ、何ですかそれ?」

「行けばわかる」

「はぁ」

 ザックは気の抜けた返事をした。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 金庫室


 オレはホテルに戻ると今日稼いだ大金貨六枚をATM風金庫に入れた。

「マコトさんは狩りに出ていたんですか?」

 ノーラさんが不思議そうに訊く。

「にゃあ、獲物がオレの前までわざわざ歩いて来てくれたにゃん」

「それはスゴいですね」

「お客さんを泊めなくても自分で稼いでくれるいいホテルにゃん」

「不思議ですね」

「ドゥドゥーとジジはどうにゃん?」

「ふたりともいい子ですね」

「にゃあ、オレもそう思うにゃん」

「働く条件を決めてドゥドゥーは男子寮、ジジは家族寮に案内しました」

「ありがとうにゃん、これから仕事を教えて来るにゃん」

「ええ、お願いします」

「ノーラさん、冒険者ギルドの何人かが家族を連れて今日から泊まるから、準備を頼むにゃん。アトリー三姉妹に余ってもいいから料理を多めに作る様に言って欲しいにゃん」

「わかりました、伝えておきます」


 ノーラさんに伝言を頼んでオレはドゥドゥーのいる男子寮に行った。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 男子寮


「にゃあ、どうにゃん?」

「魔導具がいっぱいで戸惑ってるよ」

「にゃあ、手を出すにゃん」

「手?」

「にゃあ」

 オレはドゥドゥーの手を握って各種情報を流し込む、ベッティたちに渡した知識と同等の内容だ。

「えっ、これ魔法?」

「にゃあ、これで直ぐに働けるにゃんよ」

「うん、働けると思う」

「にゃあ、今日は男子寮の引っ越しをするといいにゃん」

「引っ越しってほどの荷物もないけど」

「働けるなら明日から頼むにゃん」

「うん、大丈夫」

「それと女の子ばかりの職場だから注意するにゃん」

「わかってる、俺だって子供じゃないんだから気をつけるよ」

「にゃあ、だったら安心にゃん、頑張るにゃん」

「うん、住むところも飯も、それに金まで貰えるんだ、追い出されないようにがんばるよ」


 オレの基準ならそれほど高待遇ではないのだが、こちらでは破格になる。常識を外すのは混乱の元なのはオレも理解してるつもりだ。

 でも、ノーラさんが提示したお給金が小遣いに毛が生えた程度なのはちょっと戸惑ったけどな。

 衣食住を保証した場合、見習いには給金がないのが普通らしい。

 たまに本当の小遣いが出て屋台で買い食いする程度だとか。

 そう言えば武器屋で働いていたチャックも給金が無かったようだし。

 さじ加減がわからないのでノーラさんに任せるしかなさそうだ。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 家族寮


「にゃあ、部屋はどうにゃん?」

 ジジに割り当てた家族寮の部屋を訪れた。

「魔導具がいっぱいで目眩がします」

「にゃあ、いま教えるにゃん」

 ジジも部屋で戸惑っていたので、ドゥドゥーと同じく握手して知識を与えた。

「えっ、ええっ!」

「もうわかるにゃんね?」

 ジジは驚きの表情のままコクコクっとうなずいた。

「仕事の内容もあらかた送ったにゃん」

「大丈夫です」

 実に魔法は便利だ。

「地下にある馬車を使ってジジのお母さんを連れて来るといいにゃん、それで気に入ったらここに住むといいにゃん」

「もちろん大丈夫だと思います、あっ、でも、大家さんに夜逃げだと思われるかも」

「にゃあ、家賃の滞納でもしてるにゃん?」

「実は半年ほど溜まっています」

「ずいぶんあるにゃんね」

「すいません、大家さんの好意に甘えてしまって」

「にゃあ、それで半年分のお家賃はいくらにゃん?」

「一ヶ月大銀貨三枚ですから一八枚です、って何でこんなに早く数字が!?」

 自分の暗算の速さに驚くジジ。

「魔法で読み書きと計算もできるようにしたにゃん」

「魔法ですか?」

「にゃあ、これから必要になるから覚えて貰ったにゃん」

 オレは唐草模様のがま口から金貨一枚と大銀貨八枚を出した。

「これで、残りの家賃を払って来るといいにゃん」

「えっ、でも」

「にゃあ、ただでやるわけじゃないにゃん、後で少しずつ返してくれればいいにゃん」



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 六階 プレミアムラウンジ


 ジジを送り出した後は、また増築部分の追加工事に戻った。


 この国の何が高級なのかいまひとつ情報が乏しいので、六階のプレミアムラウンジは精霊情報体にあるオリエーンス神聖帝国調の内装を採用した。

 オレの知ってるシティホテルのラウンジをより豪華にした感じだ。

 自動演奏の魔導具を置いてBGMも流し魔導具の間接照明でより落ち着いた大人の空間を演出してる。

 シャンテルとベリルがソファで仲良く居眠りをしていた。大人の演出も子供には心地良い子守唄なのだろう。

「にゃあ~ん♪ こんな感じにゃんね」

 なかなかな出来にひとり満足げな鳴き声を上げた。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル ロビー


 日が沈んで本日から泊まってくれる先発組の冒険者ギルドの職員が家族を連れてやって来た。

「いらっしゃいませ、カードをお願いします」

 コレットとフェイがチェックインを行ってる。

「カード持ってきてない」

「その場合は、こちらのタブレットに手を置いて名前を仰って下さい」

「わっ、タブレットまであるの?」

「アーヴィン・オルホフ侯爵様のアドバイスでオーナーが用意したと聞いてます」

「タブレットを用意できるなんてネコちゃん、スゴいね」

「はい、スゴいですよ」

 オレにはタブレットの知識があるから出土品を買わなくても自分で作れるのだ。

「「「ご案内します」」」

 ベッティ、チェリー、エミーは客室の案内係をそつなくこなしていた。

 とても今日から仕事を始めたとは思えない動きだ。

「「いらっしゃいませ!」」

 シャンテルとベリルもゴーレムと一緒にちゃんとドアマンをしている。

「皆んな動いて大丈夫みたいですね」

 ノーラさんはほっとした。

「そうみたいにゃん」

 こっちはノーラさんもいてくれることだし、フロント業務は何とかなりそうだ。

 オレは厨房に向かった。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル 厨房


「にゃあ、ここは戦場にゃん」

 アトリー三姉妹が厨房狭しと動き回っていた。

 それをゴーレムたちがアシストしてる。

 リーリも見かけないと思ったらここにいたにゃん。

「あっ、ネコちゃん!」

「にゃあ、手伝うにゃん?」

「お願い!」

「ランチと違ってちゃんとしたディナーをたくさん作るのって思ったより大変だよ」

「にゃあ、人数も多いから当然にゃん」

 魔導具とゴーレムを追加して省力化を図りつつ次々と料理の準備を終えた。あとは夕食開始の時間に調理開始だ。

 ゴーレムたちがアシストしてるがコックさんはアトリー三姉妹しかいないので厨房は改良が必要だね。


 そんなわけで地下に降りたオレは第三厨房を急遽いまある厨房の真下に増設した。

 従業員食堂にある第二厨房と同じくゴーレムが調理する形にする。

 これならレストランがお客さんで埋まっても余裕で対応可能だ。

 正式にオープンしたらアトリー三姉妹は六階に作ったプレミアムフロアーの厨房も担当するから、そのときはこちらのレストランはゴーレムで回す。第二厨房での運用実績があるから大丈夫だろう。それ以前に大公国で動かしてたし。


「夕食開始です!」

「「「はい!」」」

 フェイの声掛けにアトリー三姉妹がいい返事をした。

 スープの寸胴を載せたワゴンを押してゴーレムがテーブルに向かう。

 夕食はお任せコース料理だ。

 第三厨房からの料理もできてくるのでアトリー三姉妹とゴーレムたちで何とかなりそうだ。

 給仕係のゴーレムたちが次々と料理を載せたワゴンを押して厨房を出て行く。



 ○プリンキピウム プリンキピウム・オルホフホテル レストラン


 オレも客席に出向いてノーラさんといっしょにテーブルを回ってプレオープンの無料トライアルに参加してくれたゲストに挨拶をした。

 緊張してる家族たちと談笑してリラックスさせる。そこはトップセールスだったオレのキャリアがモノをいうにゃん。


 嘘にゃん。


 夕食はアトリー三姉妹の頑張りで無事に乗り切った。


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