プロローグにゃん
「にゃあああああああああああ!?」
いまオレの身体は猛烈な勢いで落下していた。
紛れもなく空だ。
空から落ちている?
……夢?
スゲー風だけど?
一旦、目を閉じた。
……ほんの少し前。
○某市 市道
「あ~片側交互か」
ハンドルを指でポンポンと叩いた。
新車の販売契約を終えた支店への帰り道。近道が裏目に出て工事現場のちょっとした渋滞に引っ掛かった。
既に注文書は流してあるので慌てる必要もないけど。
今月は、これで支店的にもノルマをクリアした。
いや、ノルマって言うな販売目標って言えって通達が来てたっけ。
支店長から『ありがとう、アマノちゃん』のメッセージが入りまくってるが、お礼ならオレじゃなくて車を買ってくれたお客様にな
景気がいまひとつなのに社長さんが無理してくれたんだから。
前の車が通り抜けたところで警備員の兄ちゃんの指示で停まる。
丁寧にお辞儀してくれるのでこっちもお辞儀した。
今日のオレはいつにも増して優しいぜ。
優しいと言えば優しい伯父さんはJKとJCの姪ふたりの誕生日プレゼントだって忘れないぞ。
何が良いって聞いたら『『現金!』』て元気に声を揃えられたとき、伯父さんちょっと悲しかったぞ。
既に発注済みだからどっちも来週のそれぞれの誕生日に届くはずだ。
実に便利だ。
「「▽×○×△×□××!」」
「……っ!」
突然耳に飛び込んだ大声にビクってしちまった。
頭上で金属のぶつかり合う重い大音響が耳をつんざく。
「なっ!?」
激しい衝撃にオレの視界が一瞬途切れた。
息が苦しい。身体が動かない。辛うじて目を開けた。
……車がひしゃげているのか!?
追突? いや上から潰れてないか?
「ハ×ク! ×ゲ×クダ×イ!!」
さっきの警備員の兄ちゃんが、ガラスが弾け飛んだウインドウの隙間から覗き込んで何かを叫びながら手を伸ばしてくれる。
車のボディが激しく変形してドアが開かない。
今度の新型ならボディが変形したら簡単にドアが外れるんだけど、失敗した買っとけば良かった。
「……兄ちゃん、危ないから離れてろ」
辛うじて搾り出したオレの言葉に警備員の兄ちゃんが後ずさる。
それでいい。
前から炎が上がった。
炎があっという間に大きくなり、視界全体が赤くなる。
激しい熱と同時に目を閉じてないのに視界がブラックアウトした。
走馬灯を見る暇もなく身体が軽くなる。
ああ、やっぱり死ぬのかオレ?
車の中で死ぬなんて車屋冥利に尽きるってか。
いや、勘弁して。
ああ、意識が……。
意識までも闇に飲み込まれた。
・2021年06月05日改稿
・2021年12月31日改稿