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高校デビューできずに異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 500年待ち続けた約束
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74話 笑って否定する

 ニュースなどで帰省ラッシュの最盛期と放送されてますな。

 バイブルですか? 近場で遊んでただけですお?

 徹と共に懲罰室に放り込まれた当日の夜に遡る。



 何度も徹に呼び掛けても反応がなくなり嘆息するジャフではあったが徹の気持ちにも気付いており、苦笑をして横になると物音がしなくなる。


 隣から聞こえる寝息に釣られるようにジャフも寝ようとした時、人の足音に気付き、注意をしているとジャフの懲罰室前に男がやってくる。


 そちらを見つめたジャフが眉を寄せる。


「俺を馬鹿にしにきたのか? それとも笑いに来たのか? パテル」

「どちらでもない。少し、話をしようと思ってね」


 そこに現れたのはミントを人身御供にしようとする代表のパテルは、そう言いつつも口許に笑みを浮かべる。


 パテルは懐から鍵を取り出すと解錠する。


「どういうつもりだよ?」

「少し込み入った話になるからね、隣の彼が目を覚まして聞かれるとお互い面白い事にはならないのでね」


 そう言いつつ、扉を開けて出るように道を開けるパテルに不審そうに顔を向けるジャフであったが、徹を巻き込みたくないという想いから渋々出てくるとパテルに先導される形で外に出る。


 外に出て、少し歩くと村が一望できる場所にやってくる。


 もう、だいぶ遅い時間のようで村に明かりを点けている家はないようで真っ暗であった。


 前を歩いていたパテルが振り返ると「この辺りでいいだろう」と呟くとジャフを見つめてくる。


「話って何だよ?」

「そう喧嘩腰なのは勘弁してくれないか? まあ、勘違いしている君からすれば、そういう態度になってしまうのだろうけどね」


 口をへの字にするジャフが噛みつくようにパテルに言うと、おっかないとばかりに肩を竦めるパテルがジャフに一冊の本を差し出す。


「これは?」

「まあ、読んでからにしよう。2つ付箋してる場所があるだろう?」


 ジャフを古臭い本を嫌そうに受け取り、言われた付箋の場所を開く。


 明かりはなかったが、幸い、月明かりが強くて文字は読めた。


 そこにはこう書かれていた。




 蛇、役目を待ち続ける。


 しかし、暴走する可能性否定できず。


 暴走を止める手段を残そう。


 巫女の血の中に蛇を殺す毒を宿す。


 その役目終える日まで子々孫々と引き継がれる。


 捧げよ、蛇に巫女の血を人一人分。


 さすれば、蛇は霧の如く消えるであろう。




 本を読むジャフは蒼白な顔になり、瞳孔が開いた目でパテルを見つめる。


「て、手の込んだ細工だな」

「自分でも分かってる癖に私を悪者にするのはどうだろう? まあ、だいぶ話を聞く気にはなっただろうが、最後の付箋のページも読んでみてくれ」


 そう言われたジャフは震える手で2つ目の付箋のページを開く。


 開いたページには、沢山の名前が書かれているのを見て首を傾げるジャフ。


「この名前に何の意味が?」

「一番端の名前を読んでみてくれるか? その真新しい字だよ」


 指される場所に目を這わせるジャフは大きく目を見開く。


 そこには『セージ』という名前があった。


「どうしてミントのオヤジさんの名前がここに? 筆跡もオヤジさんのクセがある……」

「それはミントの父、セージから私が預かったモノだからね」


 ジャフから本を取り上げるようにして背表紙を見せながら話す。


「正確に言うなら死期を悟ったセージが私にミントの目に入らないうちに始末して欲しいと頼まれたモノだけどね」

「どうして、アンタに頼ったんだよ! オヤジさんが頼むなら家の父さんだろ?」


 やっぱり嘘だったとばかりに睨むジャフに余裕の笑みを浮かべるパテルは本を持つ手で振って否定してみせる。


「やはり、その様子だと聞かされてないようだな。同じ村に住んでた事もあるが、私達、セージ、クラスタと私はトリオと認識され、いつも一緒に何かをしていたよ」


 驚くジャフに苦笑するパテルは「私とクラスタは水と油でお互い嫌い合ってたがセージに間に入って保たれた関係だったよ」と言ってくる。


 被り振って驚きを振り払うジャフは詰め寄るようにしてパテルに詰問する。


「昔は知らないが、そういうのを頼むのはやっぱり父さんにじゃないのかよ!」


 少なくともジャフが物心付いた頃にはパテルとの親しい付き合いはなかったように見え、家族同士の付き合いのあった自分の父親が適任だと主張する。


 噛みつかれるように言われるが浮かぶ笑みは余裕があり、パテルは言う。


「まあ、普通はね。だが、少し考えて欲しい。セージがクラスタにミントに見られる前に捨ててくれ、と言われて素直に捨てただろうか? あの感情に流され易い馬鹿は何だかんだ言いながらミントに手渡したとは思わないか?」

「ぐっ!」


 パテルの言うように自分の父親なら悩んだあげく、ミントに手渡す未来が想像できた。


 苦悩するジャフを見つめるパテルは小馬鹿にするよう「ジャフ、お前は若い頃のクラスタと良く似ている」と鼻を鳴らす。


「ミントにはオヤジさん側の血の繋がりのある親族は誰もいない。つまり……」

「そう、巫女の血筋の血が人一人分いる以上、ミントの命が失われる事を意味する。口伝以外で唯一残る書物には継承してきた証として名前が書き込まれるのであろう。ミントがその事実を知らないのは道理だよ」


 本を小刻みに揺らしてジャフに見せつけるパテルは「蛇が暴れ始めるのがもう少し遅ければ本当に捨てていたよ」と口の端を上げる。


「そこでだ、私が次期村長になった時に蛇の悪いイメージが付いて回るのは困る。早急に解決したいと思う。村の外にもほとんど漏れてないようだし、今、来てる冒険者ぐらいであれば噂話程度で時間が解決する」


 パテルはゆっくりとジャフに近づき、耳元で囁くように言い含める。


「もうミントを人身御供にするのは妄言の類ではなく、れっきとした根拠があっての事だと理解してくれただろう?」


 おとなしくしてろ、と言外に告げられたジャフは決意を秘めた目をパテルに向ける。


「俺に1度だけチャンスをくれ」


 そう言われたパテルは口の端を上げて頷いて見せた。





「という話をパテルさんが持ちかけて、見事に筋書き通りになったらしいな」

「アタシは、ジャフを巻き込むのはどうかと思うんだよ……」


 昔から悪ガキだったジャフではあったが小さな村の中では家族同然で少なからず愛情があるらしく困った声音でオバちゃんが言う。



 おいおい、待て待て、体罰程度は想像してたけど、これは笑えない展開じゃないのか?



 更に聞き耳を立てる俺の耳に信じられない言葉が飛び込む。


「パテルさんの思惑通り、ジャフは独力で蛇退治に向かい、それを見送った後、ミントに同じ話をして、ジャフにも知られて蛇退治に向かったと言ったらジャフを追って飛び出したようだ」

「ミントも可哀想だとは思うけど、それ以外で確実に村を救う方法がないしね……でも、やっぱりジャフをエサにするのはどうかと思うよ」


 2人の言葉が信じられずに奥歯を噛み締める。



 駄目だ! そんなの絶対に駄目だ!!


 お互いを想い合う気持ちを利用する方法で助かって幸せになんかなれやしない!



 手枷から手を抜こうと歯を食い縛りすぎて歯茎から血が滲ませながら結界の奥で膝を抱えていた美紅を思い出す。



 誰かの犠牲で救われる世界なんてクソくらえだ!


 俺はハッピーエンドしか認めない!!


 そんな未来はない、と言うヤツには笑って「馬鹿野郎」と言ってやる。


 俺が笑って、ない未来を作ってやる!!



 内外の肉体強化を発動させて手枷から引き抜こうとするが抜ける気配がない。



 くそう! 一応、発動してるけど、思ったより力が入らない!!



 どうしたら? と悩む俺に昨日の実験中の事を思い出す。


 内側の肉体強化をしてる時に生活魔法の水を使った時に一瞬発動した事を思い出すと、それが急に気になり出す。



 あの一瞬の時の方が強い力出てなかったか?



 軽く試してみると常時発動させるより強い力が出ているように感じられる。


 それに賭けろと俺のカンが訴える。


 内側の魔力を循環させながら、精神を集中させていく。


 循環される流れを強く意識し、もっとも強い波が来るのを待つ。


 その波が来た、と思った瞬間、練られてた魔力を一気に解き放つ。


「うおおおおぉぉ!!」


 雄叫びと共に放たれた力を逃さずに腕に込めて引き千切るようにすると凄い音と共に破壊され、両腕の皮が捲れて血がダラダラと流れる。


 奥にいる2人も俺の雄叫びに気付いてビクつく声がするが無視する。


 扉のノブを目掛けて俺は叫ぶ。


「クリーナー!!」


 その言葉と共に綺麗にノブ丸ごと抉れて扉が開く。


 飛び出して2人がいる部屋に飛び込むと目を見開いた牢屋番とオバちゃんが俺を凝視する。


 俺は躊躇せずに牢屋番の胸倉を掴み、壁に叩きつける。


「ジャフがいる祭壇はどこにある!!」

「えっ? あっ?」


 言っていいやら、怖いやらといった様子を見せる牢屋番を無言で殴り飛ばし横の壁に叩きつける。


 倒れる牢屋番を踏みつけ、もう一度問う。


「ジャフがいる祭壇はどこにある!!」

「む、村の西の森の奥に……」


 鼻血と涙に濡れる牢屋番に吐かせた俺は出入り口のところに俺の剣、カラスとアオツキを発見すると腰のベルトに差すと地下から飛び出す。


 昇り始めた太陽を背に俺はジャフがいるはずの祭壇がある村の西の森へと駆け出した。

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