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高校デビューできずに異世界デビュー  作者: バイブルさん
4章 500年待ち続けた約束
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63話 きっと摩訶不思議パワー

 双子の親が完結して次のアリア達の物語は最短で9月と言いましたが高校デビューは通常営業。


 週1~2回は更新していきますのでよろしくお願いします。

 次の日の早朝、城壁を沿うように流れる小川の傍で俺と眠そうに頭を掻きながら大きな欠伸をするロキが向き合ってた。


 気合いの入った俺が口をへの字にしてロキを見上げて、2人が黙り続ける事、数分の時間が流れた。


 欠伸を噛み殺したロキ、掻いた頭の髪の乱れを乱暴に手櫛で直しながら明後日に視線をやる。


「昨日はハッスルし過ぎて、ねみぃ、今日はやめだぁ……」


 あっさりと背を向けて去ろうとするロキの腰をタックルするようにして抱きつく。


「待ってぇ! 昨日からスゲー俺は楽しみにしてたんだぞ!! ついに『重ね』の練習ができるって……それと、ハッスルの内訳も詳しくYORO!!」



 もう、昨日の夜は『マッチョの集い亭』の自分の寝床にはいつもより早くに入ったのになかなか眠れずに目をギンギンにしてたら、ムクリと起き上がった美紅に「いい加減に寝なさい!」と鳩尾に拳を入れられて強制睡眠こもりうたをして貰ったんだぞ!?


 目を覚ましたら歯を磨くのも適当にダッシュでここに来たぐらいに気になって、気になって……ハッスルの内訳がっ!! あれぇ!?



 どこかがおかしい、と首を傾げながらロキの腰にぶら下がる俺に嫌そうな顔を向けるロキは俺の顔を突き離すように手で押してくる。


「分かった、分かったからよぉ、離せや、トオル? 野郎に抱き着かれても気持ち悪いだけだろうがぁ? 『重ね』だろ?」


 そう言われた俺は素直に頷きながらロキから離れる。



 わ、忘れてなんかないんだからねっ!



 俺は誰にツンデレしてるのだろう……と悩み、首を傾げているとロキが口の端を上げて言ってくる。


「昨日の話は、童貞君には刺激が強過ぎらぁ? 当然、内緒だな?」

「ロキィィィ!!!!!!」


 カラスとアオツキを抜刀する俺はロキに斬りかかり、いつもの準備体操から始まった。



 えっ? 何に激昂したかって?


 ……当然、童貞君と言われた事ですよ? 15歳の徹ちゃんが綺麗でも普通だし……本当にこっちだからぁぁ!!







 顔中に切り傷をこさえて帰ってきた俺に嘆息したルナが回復魔法をかけてくれた。


 カウンターに顎を載せて拗ねる俺の顔に残る血糊を呆れた顔をしたマイラが濡れた手拭で拭ってくれていた。


 俺の目の前にある紙を真っ二つに折って立てかけてるモノに手刀で突き刺すように指し向け、むむむっ! と唸りながら力を込めている。


 するとそれをカウンターの向こうでミランダと一緒に朝食を用意してた美紅が可愛らしく首を傾げて問いかける。


「トオル君、何をしてるのですか?」

「んっ? 『重ね』の基礎訓練らしい。こうやって触らずに手を翳すだけで紙に穴を開けられるようにしろだって? 勿論、魔法を飛ばしたら駄目だって言われた」


 横に来たルナが何かを言おうとするのを見て、魔法でやればいいの、と言いそうな気がしたので出鼻を挫くと黙り込み、口をへの字にするところを見ると図星だったようだ。


 気を取り直したルナが言ってくる。


「ロキに馬鹿にされてるだけじゃないの?」

「俺もそう思って見本を見せろ、と言ったら……」


 懐から出した穴の開いた紙きれをカウンターの上に置くとルナ、美紅だけでなくミランダと双子も覗き込む。


「こんな事、どうやったらできるのですか?」

「ロキが言うには肉体強化の力を外に伸ばして一気に突き破るらしい。最初は押せるところを目指すように言われた」

「面白い事を考える子ねぇ、その理屈は理にかなってるわよ。色んな応用を利かせる事ができるから、誰かを鍛えようとするなら最初に教えると成長の幅を広げるわね」


 感心するミランダは俺に微笑んでくる。



 そういや、ロキも『重ね』は基礎で使い勝手がいい技だって言ってたっけ?



「じゃ、頑張ってできるようにならないとな! とは言ったものの……どうしたら……そうか! 俺は現代科学チートがあるではないか!!」


 前半の部分は周りにいる面子に聞こえたが後半は口の中で呟いたので誰も拾えずに顔を見つめ合う中、ドヤ顔をする俺は胸を張って言い放つ。


「動かすだけでいいなら、出来る方法を見つけた!」

「本当ですか、トオル君!」


 凄いとばかりに目を輝かす美紅に力強く頷く俺は満を持して披露する。


 左右の頬を割と強めに叩いた手を紙に翳す



 スッススッ



 俺の手を嫌うように逃げる紙を実験に成功した子供のように喜んで指を指す。


「どうだ! できただろ!?」


 嬉しそうに廻りを見渡すとルナとライラは興奮気味に喜ぶと俺の紙を奪うと真似して動くと騒ぐ姿に満足そうに頷く。


 姉のライラの喜びように嘆息したマイラはスタスタとこの場を離れて空きテーブルを拭きに行く。


 正面に顔を向けるとミランダは苦笑し、美紅は眉間を揉む姿があった。


「あの……大変申し上げにくいのですが、それは、ただ手で扇いでるだけですから……」

「嘘っ!! 静電気とか不思議パワーとかじゃないの!?」


 呆れた声を出す美紅が俺に残酷な事実を告げる。



 待って、俺、生まれて15年、初めて知る真実なんですがっ!?


 いやぁ! 美紅とミランダの労わるような視線が痛いっ!!



 テーブル拭きから戻ったマイラが俺の右太ももに小さな手を置く。


「大丈夫、お馬鹿なお兄さんでも私は見捨てないから」


 俺はそう言ってくるマイラの反対側で紙の取り合いから対決するように一枚の紙を挟むように手で風を煽り続けて、キャッキャ、と楽しげにするルナとライラをカウンターに着いた手の上に顎を載せて見つめる。


「今日も平和だな……」


 韜晦する俺を見つめるミランダは、クスッと笑いを洩らしながらコップを磨き続けた。

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