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高校デビューできずに異世界デビュー  作者: バイブルさん
3章 頑張る冒険者家業
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59話 カラスとアオツキ

 えっ? 前回のラスト違う?

 きっとそれは気のせいでつ(笑)

 真っ白な光に視界を奪われる中、両手に何かを握り締めている感覚が伝わる。


 徐々に真っ白な光はおさまり始め、薄らと目を開けて左右の手に握る物に目を向ける。



 ん? カラス? お前の銘はカラスなのか?


 右手に握る漆黒の片刃の長い方の剣から俺にそういうイメージを飛ばしてくるが……もうちょっとカッコイイ名前にならんかったのか? せめて、漢字表記の『鴉』ぐらいにはよ?



 俺が不満を覚えているとカラスに文句をタラタラ言われているような意思がビシバシと叩きつけられてるような気がする。



 名前を伝えようとするところを見ると、やっぱり意思がある?



 珍しく難しい顔をして悩んでいると左手からも意思のようなモノが伝わる。カラスと違って、自己主張が少なくて気付かずに流すところだった。



 なんか、たおやかな? 感じがするところからすると女性ぽい感じがするな? そういう意味じゃカラスは絶対に男だな、扱いが面倒そうな男友達を思い出すしな!


 ふむふむ、伝えてきてる銘は?


 アオツキ? こちらもせめて漢字表記とかカッコ良くいってくれなかったのか?



 などと、不満を垂れていると先程まで寄りそうような感じがアオツキから感じられてたが、急に距離ができて薄ら寒さすら感じる始末である。



 これって、ルナの動物グッズシリーズを買うのを拒否して売り場に戻した後や、美紅の料理を食べて微妙そうな顔をした後の2人の態度とそっくりやん!


 あかーんやん、これって絶対にあかんパターンですやん!



 俺はアオツキという言葉は、優しい月明かりの言葉の響きがありますね? とそれとなく意思で伝えてみる。



 すると、どうでしょう!


 離れて行っていたアオツキの気配が寄りそうようになったではありませんか!



 やっぱり、アオツキの扱いはルナや美紅を扱うようにしないと痛い目に遭いそう!!


 こいつら、めっちゃ面倒臭い!!



 そう思った瞬間、カラスからは文句を言ってるような感じをバシバシと伝えるし、アオツキはまた離れようとするのに気付いた俺は覚悟を決める。



 嘘ですやん? 徹ちゃんの可愛いジョークですお?



 とりあえず、収まりが見えたのを感じてホッと胸を撫で下ろす。


 2人? に気付かれないように心の声を小さくして、使えない奴等だったら質屋に流してやろうと心に決めた事を秘める俺であった。



 更に光が落ち着いて目の前に力の塊と化したオルデールの姿を確認して身構えた瞬間、後ろから声が響く。


「乗り越えた! 初代勇者ですら乗り越えられなかった心の闇を!!」


 インプの声? という事はここはさっきのような場所ではなく、元の場所に戻ってきたようだ。



 つまり、試練というのは乗り越えたらしいが、どれが試練だったんだ?



 乗り越えたはずの俺が認識する前に乗り越えた試練だったようだ。



 こんなのを超えられなかった初代勇者はチョロイ奴だったんだな?



 そう思う俺は何やら言い知れないフラグを立てたような気がした。


 それはともかく、後は目の前のオルデールを倒せば終わりだ。しかし、肌で感じる強さは相当な気がする。


 背後をチラリと見るとルナと美紅が涙目で熱い視線を俺に向けている事に気付く。



 あれ? 俺が変な所でオルデールとデートしてる間に何があったの!?



 オルデールとデートと思った自分の考えを掻き消して、邂逅と言い直す。



 悪いか? ジジイとのデートが初デートにしたくない可愛い少年心を汲めよ!



 それはさておき、マイラとライラの為、そして、姉のマリー……今、思い出すととても素晴らしく大きなお胸様をお持ちだった気がする……


 助けて確認に行った時に元気なら、戦いの疲れで足がもつれたフリで……これだっ!!!



 鼻息と共に口周りに伝う赤い汗を袖で拭う。



 良かった! 服を黒一色にしてて! 白なら致命的だった!



 となれば、善は急げ、とばかりに俺の煩悩おもいが漏れないように意識してルナと美紅に声をかける。


「2人共、力を貸してくれ! 決着を着ける!」

「徹のお願い、喜んでなの!」

「私の力は貴方の為に!」


 凄く感情が籠った声が俺の背後からする。



 あれれ? 何が本当にあった!?


 春奈ちゃんを燃やした罪悪感にしては真摯過ぎる気がするが……


 今はそんな事を悩む時間は惜しい! 俺にはやるべき事があるのだ!!


 俺が考えるべき事はもつれる時に右からか、左からか、それとも男なら冒険して正面からかを悩めばいいだけだ!



「いくぞ、ルナ、美紅!」


 俺は2人の返事を聞かずにオルデールへと特攻を開始した。





 飛び出した俺は自分の動きにびっくりする。


 まだ肉体強化のダブルを使っていないのに既にダブル以上に動けている事に……


 すると、ドヤ顔が連想されるイメージがカラスから伝わり、距離があるのにオルデールに向かって振り抜け、という急かしてくる。


 なんだろう? と思いながら軽く振るとカラスから衝撃波が飛び出し、石畳の切り裂きながらオルデールに向かい、オルデールを覆うシールドを押して後ろに吹き飛ばすようにする。



 カラス、お前はそういう武器なのか!?



 俺の挨拶代わりになってしまった攻撃に怒り心頭になったオルデールが火球を放ってくる。


 それをジャンプで避け、天地が逆転した視界に興奮した俺が心で喝さいを送る。



 カラス、名前はともかく、お前は使える剣だな!!



 一瞬、喜びの感情が伝わるが、すぐに何か聞き逃したらいけないものを聞き逃した奴と同じような顔をしてそうな雰囲気が伝わるが当然のように相手にしない。


 カラスを褒めているとそれが不満とばかりにアオツキから拗ねるイメージとオルデールに自分を使って斬りかかれ、とイメージを飛ばしてくる。


 アオツキはカラスと違って扱いが大変そうなので逆らわずに斬りかかるとカラスの衝撃波を受け止めたシールドを何の抵抗もなく切り裂く。


 その脅威的な力を間の辺りにした俺は勿論、オルデールですら慌てる様子を見せる。


 製作に関わったオルデールからしても予想外の性能なのであろう。



 アオツキ、お前は対魔法に特化した武器なのか!? 魔法使い泣かせだな!



 そう褒めていると気分を良くしたらしいアオツキが、どんどん使え、とイメージを飛ばしてくる。


 カラスも衝撃波で魔法を斬り裂けると騒ぐが当然、スル―する俺は大人対応。



 アオツキ > 俺 > カラス



 の図式が出来上がった瞬間であった。



 それから30分戦い続けているが、オルデールにアオツキを徹底的に警戒され、アオツキから距離を取られて戦われる。

 ルナや美紅の魔法は打ち消されたり、流され、攻撃は物理な為、効果的なダメージは入れれずにいた。


「くそう、ジリ貧だな……」


 確実に俺達の体力は削られていき、このままだといつ逆転されてもおかしくはない。


 ルナと美紅が肩で息するところなんて滅多に見れない光景が見れてる時点でかなりマズイ。


 効果的な攻撃ができるアオツキで斬りかかる為には今の俺には突進力が足らない。



 どうしたら……そうか!



 俺は思い付いた事を実践する為にルナに質問する。


「ルナ、オルデールの足を5秒でいいから止められるか?」

「えっ? 一瞬でもいいから動きが止まる時間があれば……」


 俺の質問の意図が分からずに首を傾げるルナから美紅に視線を向ける。


「良し、分かった、その時間は俺が作る。美紅、インフェルノを何時でも打てるようにして待機して俺が指定した場所に撃て!」

「どういう事ですか? 説明を……」


 そう言ってくるが俺は敢えて無視する。


 事前に教えたら美紅はきっと尻込みする。


「それじゃ、作戦スタート!!」


 俺がそう叫んで飛び出すとオルデールにカラスで斬りかかるとシールドを弛ませるが斬り込めずにカラスから生まれる衝撃波で俺は後方に吹き飛ばされながら叫ぶ。


「ルナ、今だ!」

「分かったの! 『ダウンバースト』」


 ルナの魔法により頭上から襲いかかる気圧により、オルデールの動きが抑えつけられ止まるのを見た俺は吹き飛ばされている状態で美紅を見る。


「それで俺を撃て!」

「トオル君がただでは……」

「いいから、撃てぇぇぇ!!」


 俺の叫びにビクついた反動で思わずという感じで溜めていた魔法を放つ美紅。


 インフェルノの凶悪な力に汗を滲ませながらも笑みを浮かべ背を向けた状態で叫ぶ。


「炎の翼!!!」


 俺の生活魔法の裏技、炎で天使の翼のようなモノを生み出す。


 その翼でインフェルノを受け止め、それを推進力に使ってアオツキを突き出す格好でオルデールに向かって跳ぶ。


 飛び込んでくる俺を見開いた目で見つめるオルデールの顔は醜悪に歪み、口の動きから怨嗟の言葉を吐いているように見える。


「オルデール! 俺の、俺達の勝ちだっ!!」


 オルデールのシールドは和紙を切り裂くように突き破り、オルデールの体を突き抜ける時、核のよう物を切り裂く手応えが俺に伝わる。


 地面に叩きつけられた俺が慌てて振り返るとオルデールが光の粒子になって天に昇る姿であった。


 俺の心配して涙目の2人が駆け寄ってくるのを視界に収め、背中から焦げる匂いに眉を寄せながら2人にサムズアップした後、気が遠くなり意識を手放した。

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