102話 ロキの正体
なんとか高校デビューだけは書けた……
祭はやってる時より終わった後の打ち上げの方が大変かもしれないと実感したバイブルでした(笑)
ロキに向かって飛び上がった俺はカラスとアオツキを上段に振り上げて全体重を載せて振り下ろす。
それを口の端を上げて眉もピクリともさせないロキに簡単に受け止められ、腹を蹴っ飛ばされて吹き飛ばされる。
滑るようにして耐えてみせた俺がロキに叫ぶ。
「いきなり姿を消したと思えば……どういう事だっ!!」
「どういうもこうもないなぁ……元から俺はこうするのが目的だったってだけさぁ?」
体勢が整ってない俺に長剣を振り上げるロキに対応出来ないと判断した俺はカラスとアオツキを掲げて耐える選択をしたが横手から飛び蹴りを入れる少女がいた。
「ルナ!」
「徹! すぐに距離を置いて下がるの!!」
不意打ちとも言えるルナの攻撃にも変わらぬ笑みを浮かべたまま、左腕で受け止めて振り払う。
ルナもまともに入るとは思ってなかったようで空中で廻ってみせ、冷静に着地を決める。
「やるな、ルナ? 俺もてめぇだけはちょっと一目置いてたぜぇ?」
「ロキ、悪ふざけが過ぎるの!」
「ルナさん、悪ふざけで済む領域を越えてます……ですが説明して頂けますか、ロキさん?」
顔を強張らせるルナはいつでも魔法を打てる体勢でロキを見つめ、美紅は俺とロキの間で盾を構えて顔色を悪くしながらも必死に睨みつける。
2人がロキの名を呼んだ瞬間、露骨に嫌悪を滲ませた表情を浮かべた。
クソッ!! 俺はロキに歯牙もかけられないうえにルナと美紅に守られるのか……
しかし、今、2人に名を呼ばれて胸糞悪そうにしたように見えたのは気のせいか?
情けない自分の立場を再認識した事で冷水を被せられた気分になり、少し冷静さを取り戻した俺はフレイが立ち上がってる事に気付く。
フレイの無事を知って喜んで俺が名を呼ぶ前にロキが苛立ちげに叫ぶ。
「俺をロキと呼ぶんじゃねぇ!! そう呼んでいいのは2人だけだ……ッ!」
「では、我はお前をなんと呼べばいい?」
そうフレイが言うと同時にブレス、真っ白な純白と呼んで差し支えがない閃光のようなブレスがロキに襲いかかる。
フレイが起き上がっていた事はロキも気付いていたようだが、フレイのブレスから発する力は予想外だったらしく舌打ちをして長剣で斬り裂こうとする。
だが、完全に斬り裂けなかったようで余波をモロに食らうロキは粉塵で姿が見えなくなる。
「凄いの!」
「なんて強いブレスを……」
ルナと美紅がフレイをビックリして見つめ、我に返ったルナが俺と美紅がいる場所へと戻る。
ロキがいた場所を凝視する俺の傍にフレイが刺された場所を押さえながら近づく。
「フレイ、無事なのか!?」
「無事、とは言えんが言ったであろう? これでもレジェンド級のドラゴンだと。この程度でくたばったりせん。それより、まだ終わってない。アヤツはあの程度で傷を負うような者じゃない」
フレイにそう言われて、一度、視線を外した先を見つめると高笑いが聞こえてくる。
「そうだった、そうだったなぁ。ちゃんと名乗りしてなかった」
粉塵舞う、その場を一閃して斬り払い、姿を現すロキに俺達は身構える。
そこから現れたのは間違いなくロキであったが、見覚えがある格好ではなく、青いライダースーツのようなものを身に付け、胸元を開いてみせるといった姿に俺は威圧されたように生唾を飲み込む。
緊張する俺達を小馬鹿にするような笑みを浮かべるロキが告げる。
「じゃ、自己紹介と行こうか? 俺の名は轟……同じと認めるのは癪だが、サブレと同じ魔神の加護を受けたモンだ。そして……」
俺とルナと美紅は顔を強張らせて、信じられないという思いを隠せずに身を硬くするが、フレイは「なるほどな」と、どことなく納得した様子を見せる。
「お前等、アローラの住む者達にはこう言えば分かりやすいか? 俺はこう呼ばれてた。2代目……2代目勇者と500年程前になぁ」
これにはフレイも驚いたようで俺達と一緒に目を見開く。
だが、俺達とは違う驚き方をする者がいた。戦闘が始まった瞬間からこっそりと物影に身を潜ませていたコルシアンさんであった。
「轟だって!? 本当に500年前の2代目勇者だというならシンシヤと……」
「……おい、そこのピンクのオッサン。何を知っている」
俺達に向いていた注意が全部、コルシアンさんに向けるロキ。
苛立ちを含めた視線をコルシアンさんに向け、俺達を小馬鹿にしていたようなフィルターもなく素の感情が出ているように俺には見えた。
ロキほどの達人の視線に晒されたコルシアンさんは失神してその場で引っ繰り返る。
苛立ちが隠せないらしいロキがゆっくりとコルシアンさんに向けて歩き始める。
やばい、コルシアンさんが殺される!
そう思った同時に飛び出した俺をルナと美紅が慌てて止めようとするが間に合わずロキに斬りかかる。
「ロキ、止めろ! コルシアンさんは戦える人じゃない……お前にとって重要な人の名前なのか、シンシヤという人は?」
「ちぃ、さっきはちょっとイイ面し始めたと思ったら、トカゲが生きてると分かって元通りかよ? それとな、轟さんは詮索されるの好きじゃねぇーんだ!」
また簡単に受け止められた俺はロキに腹を拳で殴られる。
くぅ!! 今まで訓練やなんだかんだで殴られたが比べ物にならねぇ!!
呻き声も上げられずに吹き飛ばされて壁に叩きつけられる瞬間、フレイが受け止めて一緒に壁に叩きつけられる。
フレイが辛そうな呻き声を上げ、壁を滑るようにして尻モチを付く。
「げほげほ、フレイ、大丈夫か!?」
「少し傷口が開いた程度だ。問題ない」
少しとフレイは言うが蛇口が壊れた水道のようにロキに刺された場所から血が噴き出す。
ゆっくりとこちらにやってくるロキに俺はカラスを杖代わりに必死に立とうとする。
駄目だ、これ以上、フレイに傷を負わせたら……いくらドラゴンだって!
震える足が言う事を聞いてくれずに歯を食い縛る俺を口の端を上げたロキが後、2歩で長剣が届く距離にやってくるとルナが飛びかかる。
「ロキ! いい加減にするの!」
「相変わらず、マイペースな奴だな?」
ルナの乱打する拳を片手で受け止め、呆れた顔をするロキは受け止められて意地になったルナの大ぶりになった拳を流すと廻し蹴りを放ってくる。
それをモロに受けたルナが短い悲鳴を上げて吹き飛ばされて壁に叩きつけられる。
痛そうにするルナが片膝立ちしながらロキを睨みつける。
「言っただろう? 俺をロキと呼ぶな、と。この場で俺をそう呼んでいいのはトオルだけだ」
「インフェルノ!」
ルナに意識を向けていたロキにインフェルノを放つ美紅。
背後から襲いかかるインフェルノを一瞥もせずに背後を切り払うと掻き消される。
「――――ッ!」
「前々から言おうと思ってたんだがよぉ?」
いつの間に移動したのかすら分からないが気付けばロキは美紅の目を覗き込む距離に居り、恐怖した美紅が咄嗟にバスターソードで薙ぎ払おうとする。
だが、腰が入ってない攻撃だったからか、空いてる手で刃を掴まれて止められる。
「おめえ等、3人の中で美紅、てめぇがイットウ嫌いだったぜぇ? ウジウジと怯え、自分の力を振るうのを怖がり、自分の適性に気付いていながら……言ったよな? ドワーフの鍛冶師と話をしてる時によぉ?」
「い、いやぁ……」
「止めろ、ロキぃ!!」
怯える美紅が危ないと震える足を叱咤して俺が叫びながら立ち上がる。
しかし、一歩踏み出すとこけそうになる俺の視線の先で美紅の胸倉を掴んで持ち上げ、苛立ちげに眉間に皺を寄せるロキの姿があった。
美紅が危ない!!
ルナも漸く立ち上がろうとするところで間に合うように見えない。
美紅の鼻とロキの鼻を当てるようにして睨みつける。
「断言してやらぁ、歴代勇者で最低で情けないのはてめぇだ、美紅。てめぇはトオルの傍にいる資格はねぇ!!」
そう言われて目尻に涙を浮かべる美紅に更に苛立ちを募らせたロキは遠慮のない力で美紅を壁に投げ放つ。
「美紅っ!!」
声も上げれない程の凄まじい速度で飛ばされた美紅は背中から壁に埋め込まれるようにして叩きつけられ、意識を失ったようで身動き1つしない。
「生きてる価値のねぇ、てめぇの命を俺が刈り取ってやらぁ」
「止めろぉぉぉ!!! ロキぃぃぃ!!!!」
ロキをなんとかしないと美紅が殺される!!
必死に両手を振り回すようにしてカラスとアオツキでロキに乱撃を入れる俺に口の端を上げた笑みを浮かべる。
「くっくく、やりゃできるじゃねぇーか……美紅は使えねぇ、と思ってたが……トオルをマジにさせるぐらいには使えそうじゃねぇーか? トカゲじゃなくて、やっぱり傍にいるこいつ等の方が効果的か」
「やらせない、絶対にやらせはしない!!」
乱撃をいなしながらも蹴りや拳を入れてくるのを俺はかわし、時には足や腕を使って受け止める。
どんどん上がるロキの手数に何発かの攻撃は貰うが有効打以外は無視して攻撃を続ける。
「そうだ、そうだ、もっと俺を憎め。そうすれば、お前はもっと高みにいける!」
「ロキぃぃ!!!」
斬りかかるというより、カラスとアオツキを鈍器のように殴るようにする俺を見つめるフレイが犬歯を見せて唸る。
「いかん、トールがまた我を見失い始めた」
フレイはどうするべきかと必死に頭を回転させると和也に言われた言葉を思い出す。
「フレイ、君がカラスとアオツキを携えた者と邂逅した時にしたいと思った事をしてくれたらいい。それが俺からフレイにする願いだ」
そう、和也はフレイに言った。
「我がしたいこと……」
ロキに斬りかかる俺を凝視してフレイは考える。
和也が待ち望んでいた者。
カラスとアオツキに認められた者。
魔神の加護を受けし2代目勇者である轟が執着を見せる者。
色々と思い付く事があるがフレイは被り振る。
「そんな事はどうでもいい。我はトールを死なせたくない。何より、憎しみに染まったトールを見たくない」
和也に言われたからではなく、そう……強くフレイは思う。それと同時にそんな自分の心情に苦笑いを浮かべる。
「我が友と認めたカズヤですら、認めるまでに数ヶ月の時間を要したのにな……トールは1日どころか……我は尻軽だったのだな」
苦笑を浮かべながらフレイは守りたいものを守る為に祈るように精神を集中し始めた。
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