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101話 繋がる縁、断ち切られた絆

 来週は祭の準備、参加に強制参加が決まっているので更新が止まるかもしれません。

 目を閉じて光の中に飛び込んだ俺は一瞬の浮遊感を感じたすぐ後、足裏に地面の感触と何かが噴き出す音を伝えてきたのでしっかりと踏みしめ、辺りの音に注意しながらゆっくりと閉じた目を開く。


 開いた目に最初に映ったのはゴツゴツとした赤い岩肌であった。


 そこは地下だというのにサウナにいるように熱く、吐く息にも伝染したように熱くなったような気がする。



 くそう、何て場所に転移させやがった、あのクソヤロウ!


 硫黄臭いし、どこからかガスでも漏れてるんじゃねぇ? さっきからシュゴ―って音してるしさ?



 ガスが噴き出す場所か火口があるじゃないかと辺りを見渡すが目の前のほとんどは赤い岩肌で困った俺は先程から聞こえる音の出所を捜し始める。


 聞き耳を立てるとどうやら上から聞こえると思った俺が見上げると俺を見下ろす奴と目がバッチリと合ってしまう。


 目が合った瞬間、思わず鼻水が飛び出した気がしたが、何事もなかったように俺のポリシーのように尖って立つ短い黒髪を撫で上げる。


「やあ、ごきげんよう」


 爽やかに手を上げて挨拶をするが何も反応はない。



 ふっ、どうやらテレ屋さんらしいな……日を改めるか。



 髪を掻き上げる俺が見つめる奴に「また来る」と告げると綺麗なターンを決めて背を向けて去ろうとする。


「まあ、待て。ガキンチョ」


 一瞬、足を止めかけるが止めずに歩を進める。



 いやいや、俺はこう見えてオ・ト・ナ♪



「顔がちょっと残念なガキンチョ、お前だ」


 俺は無意識に歯をギリリと噛み締める。



 待て待て、可哀想な事を言うんじゃない。俺だったら吐血もんだぞ?



 今回も自分じゃなかったと頷く俺が居る方向に低い声音で更に呼び掛けてくる。


「そこの雌にモテた事がなさそうなガキンチョ」

「おい、訂正しろ! モテた事がないという証明はまだされてな……い。あうち……」


 思わず振り返ってしまった俺は片手で顔を隠すようにして溜息を洩らす。


 手の隙間から見える俺を見つめる金色の瞳と目が合い、諦めて認識する事にする。



 もしかしたら、であって違うかもしれないし、むしろ間違いであって欲しい訳なんだが……



 見つめる先にはゲームでは定番の赤い鱗をして火を吐く種類のアレに似てる気がする俺は覚悟を決めてキリリと良い顔をして告げる。


「火トカゲとか? あのモンス○ーボールとかに収納されてる感じの?」

「ほとんど何を言われてるか分からんが馬鹿にされてる事だけは分かるぞ、ガキンチョ」


 シュゴーと苛立ちげに鼻息を荒くする例のアレに「オーケー、オーケー」と落ち着けマイブラザー的に伝えて俺は灰色の脳をフル回転させ、答えを導く。



 うん、きっとアレで間違いないはず!



「分かった! レッドドラゴン……の絵だな!?」

「どこまでも事実を受け入れたくないようだな、ガキンチョ」


 ゆっくりと顔を眼前まで近づけて硫黄臭い鼻息を洩らすアレ。



 ぱぱぁ、お口くさぁーい



 と言えたらいいのにな、と思った俺が居ました。


 馬鹿な事を考えている事を読まれたのか呆れたらしいアレが顔を離して元の体勢に戻る。


 色々と諦めた俺が嫌々告げる。


「生物最強的なドラゴンな訳?」

「やっと認める気になったか……そう我はドラゴン種で頂点に分類されるレジェンド級のレッドドラゴンだ」


 やっと認めたかとばかりに鼻息を吐くレッドドラゴンを眺めて俺は深い溜息を洩らす。



 マジで待ってよ? 俺ってついこないだまでゴブリンを必死に倒してたような初心者冒険者よ?


 それなのに、いきなり最強種のドラゴンってどんな無理ゲ―よ?



「ムリムリ、勝てる訳ないってマジで見逃して!」

「まあ、我もお前と戦う必要があるのかと思い始めておってな……まったくカズヤは何を考えておる」


 和也の名が出た瞬間、自分の顔が強張るのを自覚する。


 俺を見ていたレッドドラゴンが口の端を上げたように見えた。


「おお? カズヤの名を聞いた瞬間、少しはマシな顔をしたじゃないか……我の判断は早計だったかもしれんな」


 そう言うとレッドドラゴンを包むようにして煙が立ち昇る。


 煙に包まれたレッドドラゴンの顔があった辺りを見上げながら声をかける。


「何をしだしたんだ!?」

「なあに、この体では話しにくい。お前も見上げて話すのは辛かろう?」


 見上げてた方向からではなく煙の中心、見上げなくても良い位置辺りからレッドドラゴンの声がする。


 煙が晴れるとその中心には長い赤髪を無造作に後ろに流し、ちょい悪系のダンさんとは違った大人のカッコイイ痩せマッチョが髪に似た色の服を着て現れた。


 首をコキコキとさせる酒が好きそうな3,40代の男が俺に笑いかける。


「これで少しは話し易くなっただろう」


 ゆっくりと近寄るちょい悪オヤジがどうやらレッドドラゴンのようだ。


 俺の目の前まで来たレッドドラゴンが俺の目を覗き込むようにして首を傾げる。


「むぅ、どうしてこんな弱そうなガキンチョをどうして『カラス』と『アオツキ』が認めたのか……まったく分からん」

「ほっとけ!」


 俺が唾を飛ばす勢いで文句を言うとレッドドラゴンが爆笑する。



 確かにこれだけの力を秘めたカラス達が何故か俺に力を貸してくれてるのかは俺自身がさっぱり分からねぇーけど他人に言われるとムカつく!



 うがぁ、と両手を上げる俺の威嚇も笑いに変わるらしく、目尻に涙を浮かべるレッドドラゴン。


「ああ……おかしい。本当ならここで腕試しをするつもりだったがそんな気も失せたわ」

「まあな、正直、戦って勝てるとは思わないけど、こうやって話して和んでしまうと……なっ?」


 ニカッと笑い、俺は頭の後ろで腕を組んでレッドドラゴンを見つめる。


 そういや、さっきからレッドドラゴンって思ってるけど名前はないんだろうか?


「なあ、ドラゴンのおっちゃん、名前はないのか?」

「お、おっちゃん!? まあ、確かに我は長い時を生きておるしな……フレイドーラだ。特別にガキンチョにフレイと呼ぶ事を許そう」

「そっちもガキンチョは止めてくれ。俺の名はトール。特別にフレイに俺の事をトール様と呼ぶ事を許そう」

「様付けを強要しておるぞ!」


 怒るかと思われたレッドドラゴン、フレイドーラであったが楽しそうに笑って俺の背を叩く。


 一笑いした後、考え込む素振りを見せるフレイドーラに俺は「どうした?」と問いかける。


「ふむ、腕試しをせんのならどうしたものやらと思っておってな?」


 何やら考えに耽るフレイドーラを見つめていると背後から俺の名を呼ぶ声に振り返る。


「徹がいたの!」

「おお、ルナに美紅!」

「本当に急にいなくなって心配したのですよ!」

「……おーい、トール君、誰かを忘れてないかな? かな?」


 ルナと美紅に手を振ってみせる俺に2人も嬉しそうに手を振って近寄ってくる。


 その隣で必死に自己アピールを頑張るピンクの作業着の人もどうやら無事だったらしい。


 そんな俺とルナ達を交互に見つめたフレイドーラがニヤッと笑う。


「こうしよう。我はしばらくトールと行動を共にしよう。カズヤも我の好きにしろ、と言っておったしな」

「おお、マジか! 歓迎するぜ、フレイは強そうだし、なんとなく仲良くなれそうだ!」


 俺に褒められたのが嬉しかったのか少し得意げな表情を浮かべたフレイドーラに苦笑しつつ、これからの旅が楽しくなりそうだと胸を躍らせる俺に近づくルナ達に手を振って新しい仲間が出来た事を告げようとする。


 俺が見たルナ達は驚愕の表情を浮かべて叫ぶ。


「危ないの、徹、逃げて!」

「へっ!?」


 マヌケな声を洩らしたと同時に背中を強く蹴り飛ばされてルナ達がいる方向に吹き飛ばされる。


 転がる俺が体勢を整えて立ち上がる。


「いきなり何をするんだ……」


 俺の背後にいたフレイドーラに蹴られて文句を言おうと振り返った先では目を疑う光景がそこにあった。


 フレイドーラの背後にはボサボサの長い黒髪に深い緑のタンクトップに黒いズボンを紐で縛る出で立ちの大男がいた。


「カハッ、いつの間に我の背後をとった」

「そんな事はどうでもいいだろうがぁ? 俺にとってテメェは邪魔、それ以上でもそれ以下の理由はいらねぇーよ」


 俺が見つめる先には大男の長剣がフレイドーラの胸を貫いて、喀血するフレイドーラの姿があった。


 口の中がカラカラに乾いて声が出ない俺をニタリとイヤラシイ笑みを浮かべる大男が俺を見つめながらフレイドーラの胸に刺した長剣を抜き放つ。


 長剣を抜かれて支えを失くしたように倒れるフレイドーラを目の端に捉えつつも正面にいる大男から目を逸らせない。


 俺は掠れた声で目の前の大男に話しかける。


「ど、どうしてフレイを刺した……」

「このドラゴンがお前の傍に居続けたらトオル、てめぇは強くなれねぇ」


 信じたくないとばかりに首を横に振る俺の耳に後ろにいるルナと美紅の息を飲む音がする。


 1人、事情を分かってないコルシアンさんが「えっ、えっ?」と困惑する声がしているが相手にしてる余裕がない。


 先程から変わらぬ笑みを浮かべる大男は長剣に付いた血を払うように一振りして自然体で俺と向き合う。


「これが俺からのラストレッスンってやつさぁ?」


 口の端を強く上げる大男は一歩前に近づく。


「だから、ど、どうしてだと聞いている……」


 俺の言葉を無視するように大男は告げてくる。


「殺意、悔恨、憎悪……人を強くする」

「そんな事を聞いてねぇ!」


 驚きから復帰して頭に血が昇り、自分の感情が制御が利かなくなっていくのを自覚するが止めれない、止めたくないと心が訴える。


 両手を広げた大男が邪悪な笑みを浮かべて俺を見つめる。


「さあ、思う存分、俺を憎め!」

「ロキィィィィ!!!!!」


 俺は怒りなのか何なのか分からない感情に翻弄されて目の前がチカチカさせながらカラスとアオツキを抜き放つと行方を晦ましていたロキに飛びかかった。

 感想や誤字がありましたら、気楽に感想欄にお願いします。

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