音声入力
「最近は便利だねえ」
自分は、感嘆の声をあげつつ、その装置を見た。
声を出して、自動的に書いてくれるという装置だ。
これが画期的なのは、次第に勝手に考えて、それらしく書いてくれるということである。
つまりは、ゴーストライターともいうものだ。
「そうそう、考えなくても、こいつが書いてくれるからな」
「いいよなぁ」
自分はそういいながら、友人が持っている装置を眺めていた。
だが、1か月後、見に行くと、友人はぼんやりとしているだけだ。
「どうしたんだよ」
「いや、ボーっとしてた」
「なんでさ」
「こいつが勝手に考えてくれるからさ、何もする気が起きなくてねぇ」
後に、やる気消失症候群と呼ばれる症候群のはしりだったようにおもう。
機械に任せきりになって、本人は何もする気を失うというものだ。
以来、友人とは疎遠となっている。
どうなっているのか、今は恐ろしい。