そのいち。 しきがみ。
今回はあまり趣味がないです。
次回から本気(で女装ネタ)だす
「疲れた……」
少年は疲れていた。
――少年の名は神崎 裕一。
低身長、高音域、童顔、愛くるしい表情や行動から裏でファンクラブができるほどの人気である。
なお、頭脳と運動神経はトップクラス。
(なお、当作の主人公であり不憫ポジションであることは内緒です。)
「裕一、お疲れ。」
背の高い少年が裕一に声をかけた。
――彼の名は龍神 不知火。
龍神流という古武術が代々継承されており、運動神経はピカ一。
ただ、頭も決して悪い訳ではないが、運動神経のよさに全部持ってかれることも少なくない。
見た目はいかついが、心優しい少年。
「不知火……逃げたよね?」
「ごちゃごちゃしてるのは嫌いだからな。あと、逃げたのはこいつのせいだ。」
「それを僕に言うかい?」
不知火は長髪の少年に話を振る。
――彼の名は犬走 亮平。
頭はいいが、運動神経は残念。
なお、裕一を気にかけているが、大体役に立っていないようす。
見た目は校内1、2を争うイケメンでチャラいが、たまに真面目になる。
「そもそもいつもくらいの人数なら逃げ道用意したさ。僕が見る限りでは増えたようだけど……」
「ああ、そういうことね。つまりは不知火も亮平も結果的には僕をおいて逃げたんだね?」
「まあ、逃げ道作る前に塞がれたらさすがに俺らでもどうしようもないわ」
「そうだね、僕達でも限界はあるからね」
二人は開き直ってるようで、少し裕一は憤慨しているようだ。
「だからって見捨てることないじゃんかぁ……」
裕一がそう呟いた瞬間だった。
「おい、いたぞ!」
(自称)親衛隊の一人が教室で声をあげた。
「ゲ、やっべ!」
「おい、いくぞ!なんだってこんなときに……」
「やれやれ、懲りない人たちだなぁ……」
「裕一、ここから飛び降りれるか?」
「三階だからきついかな……」
「僕に任せて」
亮平が親衛隊の方を向く。
「な、なんだよお前…「喰らいな」
パンパンパーン!
親衛隊サイドの付近で爆竹が快音をあげる。
「うぁっ!?」
「キャッ!?」
「今だ、いくぞ!」
「亮平ってこういうときは頼りになるよね。チャラいけど。」
「だが爆竹はさすがにやりすぎでないかい?」
裕一と不知火が言葉を漏らす。
「ひどい言い方だなぁ……特に裕一が。」
「誰が見てもチャラいと思うぞ。」
「右に同じ。否定する要素がねぇ。」
「……しまいにゃ泣くよ?」
3人は学校を無事あとにした。
――神崎家。
「父上、母上、ただいま帰りました。」
「お帰りなさい」
「お帰り、裕一」
「おかえりー」
明らかに返事の数がひとつ多い。
「……その女の子に見覚えはないんだけど?」
「ああ、この子ね。説明していなかったわね、そう言えば」
「そうだな、うっかりしていた。悪い悪い。おい、あやめ!」
「なんでしょう、雄平様。」
裕一の父があやめ、と呼ばれる耳と尻尾のある少女を呼ぶ。
「あやめ、この子が私の息子だ。話は聞いてるだろう?」
「はい、裕一様……我が主ですね。」
「ちょ、ちょっとまって!」
あまりの展開に裕一がストップを入れる。
そりゃぁいきなり我が主だ、といわれても困惑するのも無理もないだろう。
裕一は回らない頭で精一杯理解しようとした。
「神崎家のしきたり、かな。お前も明日で15になるだろう。当家では15の誕生日に式神がつくんだ。」
「そういえば父上の式神って……」
「ああ、一緒に紹介しよう。タンポポ!あれ、タンポポ?」
「はいなんでしょうかごしゅじんさま!」
机の下からちょこんと小さい女の子が現れた。
「タンポポ、何かあったらサポートしてやってくれ。困ることも一杯あるだろう。」
「わかりました!がんばります!」
タンポポは元気一杯にとび跳ねた。
「あらあら、タンポポちゃんも元気一杯ねぇ」
「まあ、こんななりで強いからな。元気じゃなかったら困る。」
「昔タンポポちゃんに私も助けてもらったのよね」
裕一の父と母が昔話に花を咲かせているなか、裕一本人は気持ちの整理ができていなかった。
「……我が主、どうしました?そんな不思議そうな顔されて。」
「あやめ……さんだっけ?いきなり初めて会った人に『我が主』、って言われたら普通ビックリしません?」
「初対面ではないのです」
「初対面……ではない?」
初対面だと思っていた裕一に対してクールな態度で初対面ではないと返すあやめ。
裕一は余計に困惑した。
「私は主が小さいときに会っているぞ?」
「で、あやめさんはゆーいちさまがあまりにかわいかったので『ひとめぼれ』したのですよ」
「こ、こら、タンポポ!?」
あやめのキャラ崩壊。
タンポポは無意識らしい。
「いつかこのひとにおつかえしてかわ……モゴモゴ」
「そ、それ以上はダメっ!!」
あやめがタンポポの口を押さえる。
「……父上?」
「あー、あやめが裕一を他の式にとられたくないって言う理由で近くにいた式を追い払ったのとあやめが可愛いもの好きだとかいってたからねぇ。」
「……母上?」
「たしかそれで山ひとつやいちゃったのよね。あと、女装させたいって。」
「……は?」
裕一の表情が固まる。
あやめはしまった、という顔を一瞬したが、すぐに取り繕った。
「可愛い子に可愛い服を着せたいと思って何が悪いんですかっ!」
「開き直った!?」
裕一があやめの暴走にストップをかけていると、
ピンポーン
チャイムがなった。
「ちょ、ちょっと出てくるよ。」
裕一は逃げるように玄関へ向かう。
ガチャ
玄関を開けると裕一の知らない女性がいた。
「こんばんわ」
「えっと……あなたは?」
「あなたの友人、不知火様の式の伊吹と申します」
「不知火も式神使いだったのか……」
裕一は驚きの表情を見せながらも話を進める。
「で、なんのご用でしょうか?」
「あなたが明日式神使いになると聞いて、不知火様より伝言を……」
「直接言うという考えは」
「たぶん式を使った方が早いからでしょう。」
「なるほど。」
裕一は妙に納得した。
『裕一、式使いになるんだってな。契約するに当たって、式から主に差し出すもの、主から式に差し出すものの二種類がある。それを明日までに準備しておけよ。 P.S.なお、物によっては相手に逃げられるらしいぞ。』
「だそうです。」
「どう言うものをあげればいいんです?」
伊吹は少し考えてこう言った。
「そうですね、例えば相手の喜ぶもの、例えば好きなもの、なんでもいいです。ただ、形に残るものでなければいけません。」
「ネックレスとか、指輪とか?」
「そうですね、あと。」
伊吹は裕一の耳元まで近づいて、こう言った。
「あやめはこちらの世界では要注意の1人です。実力はありますが、きをつけてください。」
これが伊吹からの最初で最後の忠告だった。
「……はい。」
「よろしい、ではまたの機会に。」
そういうと、伊吹は空を飛んでいってしまった。
「さてもど「キャー!?」は、母上!?」
リビングの方から裕一の母の悲鳴が聞こえる。
裕一は声のした方にすぐ向かった、が。
「な、なんだよこれ……」
裕一の目の前にはよくわからないうねうねした生き物が、裕一の母を補食しようとしているところだった。
「うー……」
生き物……もとい化け物は唸っているようだ。
「ち、父上!?」
「21時……あと3時間も待てんな。タンポポ!」
「はい、ごしゅじんさま!」
そういうと、タンポポは裕一と化け物の間にはいった。
そして、次の瞬間だった。
「……弥生……」
タンポポがそういったか言い終わらないうちに化け物の腕がちぎれ、裕一の母が床に転げ落ちた。
「うごぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
化け物は悲鳴をあげている。
痛いのか、餌を失ったことが辛いのか。
「師走」
タンポポの手刀が化け物を貫く。
「うが……が……が」
バタン。
化け物が崩れ落ちた。
「……今のは?」
裕一はこの一連の流れについていけないらしく、いまだに困惑していた。
「恐らく契約していない野良の式神だろう。さっきみたいに人間を補食するやつもいるからな。……それにしても最近は物騒になったもんだ。少し前はそんなこと全然なかったのにな。」
「ほんとうにこまってしまうのです。わたしたちみたいなたいまようのしきがみのかずがあっとうてきにたりないのです……!」
「それで、神崎家では毎年15の誕生日に退魔師になるって言うのがしきたりであり、ルールであり、もうひとつ言うとお願いなんだよ。」
要は悪いことをする式神、人を懲らしめてくれ、ということらしい。
「で、パートナー……その式神に当たるのが私、あやめというわけで。」
「なるほど。」
ここまでの話を整理して、ようやく裕一は納得がいった。
「ところで、先ほど伊吹さん、という方が来て、契約の際になにか必要だ、ということでしたが。」
「ああ、なんだっていいんだ、お互いが納得すれば。」
「ちなみにわたし、タンポポはいつもゆけてるこのネックレスなのです」
「代わりに俺はこの数珠を貰ったんだ。」
「いたた……これはいったい……」
裕一の母の目が覚めた。
「……野良の式神だ。また襲われるかもしれんな。」
「私にも力があれば……!」
「力、ねぇ。」
裕一の父は小さくため息をついたあと、こう言った。
「力があっても式神がつかない人はいくらでもいる。逆に式神が力のすべてではないのだよ。」
「というより、ひとみさまのじっかのほんけのほうはそこそこゆうめいなしきつかいのかけいですよ?」
「……知ってるわ。私にも分家とはいえ力があるもの。それに……」
そういって裕一のほうをチラッと見る。
「裕一だって覚悟を決めているんでしょう?お母さんとして、負けてられないわ。」
「ハハハ!相変わらず瞳は負けず嫌いだなぁ。実の息子ですらライバルか!」
「ひとみさまらしいですね。」
そうである。裕一の母は負けず嫌いであり、努力家であり、常識人である。
そうでなくても、立派な人間である。
「母上……」
「まあ、式神が自分から来てくれるのを待った方がいいかもな、このご時世だと。」
「そうね、さすがにそのままだとまた食べられちゃいそうだし。」
「母上、それよりも、自分の体を大切になさってくださいね?」
それを聞いて裕一の母はクスッと笑った。
「やっぱり裕一は優しいわね。」
「ああ、裕一だもの。」
裕一の両親は自分の子を改めて誇らしく思った。
――龍神家。
「ただいま戻りました。」
「おう、お疲れ」
不知火が伊吹を迎え入れる。
「いいんですか?あの娘で。」
「いいも何も、少なくとも俺らが決めることじゃねぇよ。裕一の好きなようにすればいい。まあ、あの家なら拒否権はないだろうがな。」
「はぁ。」
伊吹は腑に落ちない様子で不知火の方を見る。
「伊吹、行くぞ。」
「行くって……ええ、そうですね、行きましょうか。」
そうして、2人は夜の街に消えていった。
――再び神崎家。
時計は23時58分を指していた。
「あと2分か……」
「そうね、いよいよ裕一も一人前になるのね……」
「修行は……この夏休みにでもするか。」
「父上、お言葉ですが学校の勉強合宿はどうなさるんですか?」
「ああ、それまでには帰ってくる。」
休みでもいいのに、と思う裕一であった。
「さて、あと30秒ほどだな。」
その時だった。
ドーン!
外から爆発音が聞こえた。
「何事!?」
「ごしゅじんさま、たいへんです!」
「どうした、タンポポ。」
「なにものかがこのいえのけっかいをこわそうとしています!おそらくゆーいちさまのけいやくをじゃまするものとおもわれます!」
「そうか……向こうの数は?」
「すこしずつふえていっていまは50をこえています!はわわっ、どうしましょう!」
裕一の父がチラッと時計を見る。
時間はちょうど12時を指していた。
そのに へ つづく。
さて、本気で暴れますよ。
そしてフラグもいくつか……
さて、どうなるんでしょうね!(制作者がその場の乗りと勢いだけで書いてるため未定)