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作者: 童貞(39)








__君と僕は、この街に残されたただ二人の生存者。__











今日も騒がしい音で目が覚めた。

奴らは時間に囚われない。





今、この世界ではロボット革命がおきている。

旧型のロボットはこの街にたどり着く。

「ロボットに自由を。」

その名の元に作られたこの街。



そんなものではない。

ここには、壊れたロボットや部品をなくしたロボットが無造作に“捨てられていく”。



週に五回ほど、大型のトラックがやってきて、大量にロボットを捨てていく。



そのトラックを運転するのまでがロボットだなんて。



この街に、僕以外の人間は存在しない。

__恐らく。



僕は、家族に捨てられた。

そして、この街で、生きていく。





ロボットとは不思議なものだ。

人間が命令せずとも集まったロボット達は通路をつくり、水を引き、田を耕す。

そして人間のすむ町と変わらない街をつくりあげた。

家は同じような形が多いが住むのに不足はない。

お手伝いロボットやらなんやらが家を常に磨きあげる。

品物の売れない店があり、誰もこない施設がある。





そう考えると、ロボットでさえも、思考を持っているのでは、と思う。





___そんなはずは、ない。





そして今日も、広場にロボット達が捨てられる。

その殆どは、まだまだ使えるであろう。

中にはメモリーをリセットしていないものもある。



飼い主を失った飼い犬と一緒だ。





ロボットにも、寿命がある。



製造日から○○年、のように書いてあり、そのときを迎えると機能をやめる。

この街にも、そんなロボットが溢れかえる。

そうしたロボットは、街の隅に積み上げられ、トラックが回収していく。



__その後は、僕にはわからない。





トラックがロボットを回収してこの街を出る。



そして僕は、広場へと行く。

メモリーをリセットするのが、僕の日課だった。





広場へ行くと、どこからか聴いたことのない音が聞こえた。





それは、歌だった。





僕は引き寄せられるように、音源へと近づく。

「え…………」



そこにいたのは、僕にそっくりな顔をした女の子だった。








--------------------------------------------------------------------------------






彼女の名前は凛。

僕の名前は、蓮。





僕らは不思議なほどに似ていた。

好むものも、考え方も。





僕らは、この街の、ただ唯一の人間。



この街で僕らがお互いに心を開くのに時間はかからなかった。





凛も僕と同じく、家族に捨てられたらしい。

そして僕と同じように、この街にやってきた。







「死ぬまで一緒。」





それは仕方のないことでもあったし、僕には甘い響きにも聞こえていた。





二人で、色々な事を話した。

話すことがなくても、僕らはきっとどこかで繋がっていた。

凛が居たから。



“日常”は

“幸せ”になった。





僕らはお互いにお互いを必要とした。



それはきっと、この街に生きる人間が僕ら二人だけだから。

僕らは、僕らを、失いたくなかった。













そして、時は流れた。

僕らはこの街で、現実とは無関係に。



僕らの時を生きた。



一生一緒。



それは言葉だけではない。

一分一秒を過ぎるたび、より真実となっていく。











時はいくつ流れたのだろうか?

ロボットの街は今も変わらず

きっと人間たちの醜さも変わってはいないだろう。





そんな時。

そう、時は流れれば



終わりが近くなる。終わりに近付いていく。





僕らにもすぐそこに、終わりが近付いていたんだ。



凛は、それに、気付いていたんだ。





ずっと、ずっと、ずっと前

僕らが出会った頃から__









『私は、ロボットだよ。蓮と、同じ日。同じように作られた。』



凛は言った。





『そして、蓮の方が期間が、長い。』



凛は僕らを現実へと引き戻す。





“僕たちは、ロボット。”

“捨てられた。ロボット。”





僕は凛を愛していた。

——きっと。



僕は凛が好きだった。

——たぶん。





これは感情?

そうか僕は感情を持ったのか。

ロボットだったというのに。



僕もまた、人間につくられたものだったというのに。





僕はロボット

そして僕は、人間だったんだ。











そして

いつしか現実の時に戻ってきたとき



凛はその期間を終わらせた。



僕は、凛をそっと抱きしめ、人間というものを、深く考えた。







 



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