小話*へんなひと
一章二話/『コンビ結成の音』までの読後推奨
冷静になると、人が倒れたというのに残っていた抹茶ラテをそのままちびちびと飲み干した理人先生がショックで体調を、というのは勘違いだったかもしれない。
衣紋と縁の座っていた座席から最も遠い理人の席で、理人はとりあえず勿体ないからと残った抹茶ラテに口を付ける様子を、縁は向かいの席に座って眺めていた。
この席に座っていた記者は、自身の手帳にいろいろな書き込みをしている。記者根性というか、なんというか。記者は縁に座っていいと席を譲ってくれたので、良い人ではあるのだろう。
「……何をしてるんですか?」
「なにをって……事情聴取の様子を忘れないように纏めとこうかなって」
抹茶ラテを飲み終えると、理人は持っていたバックからノートパソコンを立ち上げた。変わっているとは聞いていたが、実際の事件を前にしてもこの様子とは。
「あ、良ければ君の事情聴取の様子も教えてくれない?第一容疑者だし、何か違うかも」
そして遠慮が無い。遠慮と配慮が無い。いや、本人なりに気を使おうとはしているのだろうけど、知人を殺したと疑われている人間に掛ける言葉としてはすべて間違えているのではないだろうか。
「…………まあ、言える範囲でなら」
悪意無く、ただ純粋に知りたいという気持ちだけなのは伝わる。だから異様なのだが。正義も理人がやったという可能性はほとんぼ無いだろうと言っていたし、本当にただただ変人というだけなのだろう。
そして、編集者の性というか、作家が作品を作るための行為を無下にはできないので縁もそれに付き合うのだ。理人の担当編集者はさぞ苦労なさっているのだろう。




