一章/八話『また会おう』
彼方の自供を聞き届けて、警察は彼方を連行した。その時点で、理人たちは無罪放免。お忙しいところありがとうございました、と店の外に出された。それもそうだ。ここは事件現場なのだから。
「今日はありがとうございました。いろいろありましたけど、お話が聞けて良かったです」
「こちらこそ、有意義な時間でした。ありがとう」
詩杏は理人に別れを告げ、そうそうに現場を去っていく。このネタを売り込むのだろうか。詩杏が書くタイプの記事のネタではないから、どこか別のルートに流すのかもしれない。
「ねえ、和弥。このあとディナーの予約入れてたよね?」
「……あ、次の電車間に合わなかったらヤバいかも」
「急ご!」
カップルは足早にこの場を離れていく。向かう先は駅だ。殺人事件があったからといって、この先の予定は待ってくれない。本人たちもナシにはしたくないから、そうやって走っていくのだろう。きっと大事な約束だ。
大学生たちは良かったね、と言い合いながら店を出ていった。
「あ、結局課題終わってねぇ!」
その和気あいあいのムードも翔馬の発言で一変し、課題が終わっていなかった物は焦り出す。それに射鹿と颯はため息をついた。
「今日だけ、次は無い」
「灰里今日家入れてくれる?今からそこで終わるまで付き合ってあげるよ」
なんだかんだ、彼らは上手くやっているらしい。そのまま歩く方向をクルッと変え、早足で進んでいく。灰里は家が片付いていたか気にしていたが、きっとある程度は誰も気にしないのだろう。
「じゃあ、オレは衣紋先生のことを上司に伝えなければならないので、ここで失礼します」
「そう、じゃあこれでお別れだね。また会おう」
「はい、また機会があれば」
縁はそのまま道路を挟んだ向かいのビルへ向かう。理人は今日、星彩社に用は無いのでこれでお別れだ。縁はこの話を上司にするのは気が重いのだろう、足取りが重い。
理人とはもう会うことがないと思っているのだろう。それとも、会ったところで、これだけ近くにいることはないと思ったのか。扱いが他人だ、さっきまであれだけ仲良くしていたというのに。
理人も理人で、そのまましばらく道を進む。警察の近くというのは気が抜けない。
信号を渡り、曲がり角を曲がって。カフェの外に止まるパトカーが完全に見えなくところで、理人の背後から声がした。
「特にヘマはしてねぇな」
「天下のオマワリさんの前でそんな下手なことはしないよ。鴉羽こそ、見られてないよね?」
それは理人の部下である。
名を鴉羽。裏社会でそこそこの知名度を持つ、理人のシナリオを動かす実務役。理人的には拾ったカラスに他ならないが、役に立つ。
「あ、次の“検証”、探偵役を変えたいんだけど」
「本当に唐突だな、もとの探偵役はどうすんだ?」
「片付けといていいよ、使い道無いし」
「それで、神巫縁を僕の担当にしといて。次の探偵役は彼にするから」




