欺けないアザ
全身アザだらけでどこか挙動不審な小学生の正体は?
ある晴れた日、俺は歩道の向かいから歩いて来る全身アザだらけの小学生男子に釘付けになった。
靴も左右反対だし、歩き方も不安定だし、何かに怯えるように目を忙しなくキョロキョロ動かしている。
──まさか、虐待?
ゾワッと寒気が走り、俺は思わず声を掛ける。
俺の声に男の子はビクッと身体を震わせた。
「えーっと、ごめん。ちょっと様子がおかしかったから声掛けちゃったんだけど…。」
俺が男の子を怖がらせないようになるべく穏やかに話を進めようとした時。
「何デ、分かッた?」
男の子は瞬きもせず、不思議な虹色の瞳を真っ直ぐ俺に向けて話し始めた。
カタコトの二重音声のような不思議な声で。
「まサか、こんナに早くバレるとは。」
???何言ってんだ?
頭が追いつかず、俺は声も出せないまま固まる。
そんな俺の動揺をよそに、男の子はアザだらけの身体を眺めながら苦々しく呟いた。
「“歩く”事がこンナにも困難だトは思ワナかった。」
そして自分の正体を早々と見破ったらしい俺を悔しそうに見つめた。
「…我々ガ地球ノ侵略を始めルにはまだ早かっタヨうだ。」
そう言い残し、男の子はあっという間に光の柱に包まれて消えた。
え?え?どういう事?
宇宙人との邂逅は、ものの数分。
あまりの展開の速さに『宇宙人侵略の危機から地球を救ったらしい俺』という事実を噛み締める程の余韻もない。
やったぜ!と一緒にハイタッチして喜ぶ仲間も、今は周りにいない。
SNSに投稿してもきっと「嘘松乙」とか書かれて終わる。
俺は暫くその場に呆然と立ち尽くしていたが、この何とも言えない感情を一人で何とか噛み砕き、頭を切り替えて本来の目的であるコンビニに行く事にした。
いつもの弁当、売り切れてないと良いなぁ。
何となく地球を救ったっぽい俺は、宇宙人より大事な今日の昼飯の心配をしながら、またありふれた日常へと戻る。
あの擬態のヘタな宇宙人が、出来ればあと一万年くらいは地球侵略に来ませんようにと願いながら。
〈終〉




