5/50? 死霊
アラクレスの一抹の不安
今のままでは、間違いなく愛するコノハナサクヤアオイヒメを、兄弟子のケイロンに奪われてしまう。
「クソ!」
悪魔侵攻
「悪魔族の大群が王都に向かってくるぞ!」
王宮監視兵は、王都郊外の山岳上空から王都に向かい飛来してくる悪魔獣を視界に捉えた。
その事態を監視兵から伝達された王宮広報隊は、王都に緊急事態を知らせるサイレンを流した。
「キュイーン、キュイーン……」
王都に響き渡るサイレンに、王国の民は王都内に数カ所設置された緊急避難所に続々と逃げ込んでいった。
悪魔獣の大群の侵攻は予想より速く、上空から悪魔嬢の操る悪魔獣たちがラグーン王国王都を蹂躙し始めた。
王宮には緊急事態の発生の知らせに、ケイロンを始めとする勇者や、古参の王国騎士たちが集結した。
国王に命を受けた侍従が統制を図る。
「王命である。勇者、騎士らに告ぐ。王都に蹂躙する悪魔族を一掃するのだ。国王軍の指揮は勇者ケイロンに一任する」
「御意」
ケイロンは大役を抜擢されたのだ。
勇者ケイロンVS悪魔嬢パパンドラ
「お前たちにはここで死んでいただく」
「何を! 悪魔嬢め!」
「お前の仲間のアラクレスはどうした? バジリスクの毒で死んだか?」
「悪党とお前には関係ないことだ」
「まあ、そうだな、所詮奴もそのまでの命だったと言うことだ、ふふふ」
「喚くな悪魔め!」
「まあ、同じこと。お前もここで毒を喰らえ! 行くのだ、バジリスク!」
「グオオー」
バジリスクは勇者ケイロンに襲いかかった。
「コイツ大蛇なのになぜ中に浮いてるんだ?」
悪魔嬢が「そんな細かい説明は必要ない。これは一つのご都合主義なんだから」とかました。
「ご都合主義? そんなことで大蛇が空を飛ぶのか?」
「あゝ飛ぶさ。なんせご都合主義なんだからな」
「悪魔嬢め、まあいい、バジリスクをやればいいんだから」
「お前も毒まみれにしてやる、さあ行けバジリスクよ」
勇者ケイロンは今回の王国軍の大将なのに、なぜにいきなり両軍の大将同士が絡んでいるのか?
そんな疑問も抱えながら、勇者ケイロンとバジリスクの戦いが始まった。
「グオオー」
バジリスクが勇者ケイロンに巻き付くように絡みつく。
「フォルティ・フィアーマ!」と叫び、双剣に炎を纏わせ、奥義の業火双撃剣でバジリスクを斬りつけ焼き払った。
「グオオー」
「バ、バジリスクよ。貴様、なんてことをしてくれるんだ」
「悪魔を勇者が倒す。これは正しき行為だ。悪魔のお前に非難される筋合いはない」
「筋合いではない! 筋書きが変わってしまったのだ」
「はっ?」
「全軍退却だ!」
「何? もう退却なのか……」
「勇者ケイロンよ、お前にはバジリスクの死霊が取り憑いた。これからはその死霊が全世界の悪魔獣を呼び寄せるだろう。その悪魔獣にいずれお前は喰われて、お前自身がバジリスクになるのだよ」
「なんだって?」
「もうお前は時期にバジリスクとなって生まれ変わり、世界を悪魔に捧げることになるのだ」
そう言って悪魔嬢が退却するその背中に向かい、ケイロンはこう言い放った。
「そんな話、デタラメだ! 逃げるのかコラ!」
悪魔嬢が振り返りこう言った。
「おバカさん」
当然、そんな会話は誰も知る由もなく、国王をはじめすべての王国の民までもが、バジリスクを切り捨て、悪魔嬢を退却させた勇者ケイロンを讃えた。
一方、勇者ケイロンはこの戦いの直後から、喩えようのない不安に心底震えていた。
「俺、本当に、バジリスクになっちまうのか……」




