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結論から述べるなら、慎は生きていた。

イロハに酷く殴打され、嬲られ、果てはゴミのように棄てられたはずなのに、慎はこの謎の暗い部屋で息を吹き返した。先程の地球っぽいオブジェがあった部屋ではなさそうだ。どうやら別室に移動しているようであったが、誰が何のためにこの部屋に移動させたかはわからない。そして慎は今は何かぶよぶよとしたものに凭れている。暗くて見えないが。


「…頭いてぇ…いてぇけど、血が止まってる…?」


自分の頭を右手でまさぐって、一切の傷が無いことに気付いた。額から出血があったのに、そもそも怪我をしていないかのような快復をしている。己の体であるのに、なんだか恐ろしくなった。


「ここ何処だ…?暗くて見えねぇ…」


慎は恐る恐る立ち上がり、もはや体に一切の問題がないことがわかって、また恐ろしくなった。心中穏やかではないが、命がある有り難みと言うべきか、とにかく今は自分が措かれている状況を確かめる方が先決であると考えるに至った。暗闇に大分目が慣れてきたが、それでも何があるのかはわからない。ゆっくりと足を一歩踏み出して、床がぬるぬるしていることに気付かされた。元々自分が立っているところはそんなことないのに、前に一歩踏み出しただけでぬめり気がある。嫌なぬめり気である。が、慎はその場に膝を付きそのぬめぬめを手で触った。暗いので何となくしかわからないが、赤黒いような気がする。よく見れば、慎が目覚めた所からずっと直線にこの赤黒い何かが続いている。とても嫌だったが、慎はそのぬめぬめの臭いを嗅いだ。錆び鉄の臭いがする。慎は眉をしかめながらもこれが血液であることを確信した。では誰のか。状況的に自分のだろう。ならば、先程の傷や出血は現実?考えれば考える程わからなくなっていった。頭が痛い。脳が思考を拒否している。そもそもアイツは、イロハは俺のことを殺さないとか言っていたのに、俺は多分死んでいた。約束を違えて、俺を殺して、何処かに行きやがった。…待てよ?俺を置いて何処に行ったんだ?いや、アイツに縛られるより自由な方が俺としては助かるが、何だか嫌な予感がする。思考を止めろ。部屋を出るべきか?そんな恐ろしい事が出来ようか?いややるしかない。ここで燻っていても仕方がない。恐ろしいことを考えるな。


慎は覚束無い足取りで扉を探した。

よく見ると、光が漏れ出ている場所を見つけてそこが扉だと判断できた。

扉を開けた慎は注意深く辺りを窺い、そして恐る恐る部屋を出た。部屋の外の廊下は相変わらず白一色で、しかし床に赤い何かが線状にへばりついている。恐らく先程の部屋で見つけたそれと同じだろう。

つまり、これを辿れば元いた場所に戻れるだろう。


(行く宛もない。とりあえず最初に戻って色々と探ろう) 


慎は歩き始めた。希望はまだ見えないが、きっと良い方向に進んでいると、慎は内心思っているだろう。


何かが近づいて来ていることには、ついぞ気付かなかった訳だが。


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