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「突然だが、君の惑星は滅びを迎えた。」

「え?」


寝覚めの一言目がこれだったから、凛の口から気の抜けた声が出てしまった。目の前のテーブル越しに座っている黒服の…男?が変なことを言うからである。変な白い文字が書いてある真っ黒な覆面を被っていて、それでも普通露出するはずの目や口の部分すら縫い合わされていて情報がほぼない。ただ黒服が発した心地よいバリトンボイスから男だろう、と仮定することしか出来ない。


ゴウン…ゴウン…という重低音と共に下がっていく空間。寝起きの頭に重く響きかなりの不快感を覚えた。所謂エレベーターのそれだ。見渡すだけで扉は三枚ある。全部外に繋がっているのだろうか。いやそもそも動いているのだからどうやったって出られないのだろうが、それにしてもこのエレベーターに窓がない。扉の他には、電源が点いていない液晶と目の前の机…四角いポーカーテーブルのような、文字が書かれている机があるだけである。

どうにも理解が追い付かず、凛は寝覚めの眼を擦ろうとして両手が手枷に封じられていることに気が付いた。それと同時に両足も同じく枷が嵌まっていることに気付いた。逃げ出せないようにか、椅子に縛り付けられてもいる。


「……おかしいな、君は日本人だよな?言葉が通じていないか?」

黒服が顎に手を当てて考える素振りを見せた。黒いスーツに黒い手袋をしていて、凛はそれを(タクシーの運転手さんみたいだなぁ)と思っていた。それにしても、惚れ惚れする声をしている。こんな状況でなければきっと凛は惚れていたに違いない。少し間を置いて凛はハッとして答えた。


「あ、いえ、聞こえてますし通じてますけど、理解が追い付かないです。」

「聞こえているならば返事をしてくれ。全く、こんなことに時間を使えない…と言いたいところだが。」

「あっ、待ってください拘束だけ解いてくれませんか」


黒服が凜を無視して立ち上がると凜が拘束されている椅子の左側にゆっくりと歩みを進め、液晶の電源を点けた。

液晶には、荒んだ大地が延々と映し出されている。雑草一本生えていない完全な荒野。ナレーションも、BGMもない。ただただ荒れた風景を淡々と写し続けている。


「なんです、これ?オーストラリアか何かの特集番組ですか?」

「君の住んでいた日本の君の住んでいた街の君の住んでいた家の映像だ。これから時間をかけて君が措かれている状況を説明しよう。」


エレベーターはまだ重低音を奏でている。

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