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タイトル未定2025/05/03 13:49

 足りない足りない足りない_

どれだけ努力してもあの人には追い付けなかった。父も母もあの人に夢中で、あの人のようになりなさいと言った。

 だが、あの人は自分のようにはなるなと口癖のように言っていた。そんなことを言いながら、あの人は強かった。国民から尊敬の眼差しを向けられ、同僚からも仲間として認められているあの人の側にいると世界が眩しく見えた。


「…夢か」


目を覚ますと、相変わらず暗い空間が目に映る。光は差し込むものの、どこか影を含んでいて薄暗く感じる。紅く染まった床にはもう飽き飽きとしていた。

 窓の外は曇天。黒い雨が振り続いていた。何もかも詰まらないこの世界はかつて華やかだった。国民が心から愛する神によって治められた世界は何よりも自慢するべきものだった。私もあの人の後継ぎであることを誇っていた。

 我が家も随分廃れてしまった。毎日手入れされていた絨毯は踏み荒らされ、天井にかけられていた天幕も破れてしまっている。廃屋に相応しい造形だが、ただ壁だけは未だ綺麗さを保っていた。

 壁にかけられた幕を取ると、埃と共にまだ残る微かな色が顔を出した。長い髪を靡かせ、舞うような剣を疲労している瞬間を描いた壁画。名前も無き画家が偶然見かけた様子を描いたものだという。

 この作品名は終わらぬ世永遠。

 全くこちらを見ず突っ走る瞬間が非常に似ている。きっと本人は否定するに違いないが。


「永遠永久様、私はいつまでもお待ちしております。あなた様のお帰りを」


恭しく頭を下げるその姿は、人知を越えた存在を見る尊敬の眼差し。

 既に殺したかつての自分が時折訴える。ここは彼女の御世だと。

 

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