第14話 アランの実力
「それじゃあアランの実力を知りたいし、訓練所に行こうか!」
「まあ、パーティーとして動くし、互いの実力を知る必要があるもんな」
「私、アランさんの魔術をもう一回見てみたいです! とっても楽しみですよ!」
なんか、少し緊張するな……。
まあS級冒険者だし、これくらい余裕でこなさないとな。
そうして俺らは訓練所に向かう。
訓練所に入ると、そこにはたくさんの冒険者達がいた。
どうやら皆、訓練をしているようだ。
すると冒険者が俺らに気が付いたのか、驚いたような表情を浮かべていた。
まあS級の冒険者が訓練所にいるのは珍しいからな、驚くのも無理はないだろう。
俺たちはそんな視線を無視して、訓練所の奥にある広場に向かう。
「それで……俺と模擬戦するということだが、誰とやるんだ?」
「私なのよ」
「メロディアか、相手に不足はないな」
俺と模擬戦をする相手は、S級冒険者の中でも最強と言われている、メロディアだった。
まさかメロディアと模擬戦をすることになろうとは……。
しかしこれは良い機会だ。
メロディアとの勝負に勝利することができれば、俺を認めてくれるようになるだろう。
そう思い、俺は拳を強く握りしめる。
リアンとティナの2人は、その場から少し離れた場所で観戦するようだ。
そして俺とメロディアは数メートル程の間を開けると、お互いを見て緊張感を走らせる。
「それじゃ、始めようかしら」
メロディアがそう言うと魔法陣を展開する。
俺はそんなメロディアの姿を見て少し驚いた、メロディアは詠唱をせずに魔法を発動しようとしている。
普通冒険者は詠唱をしてから魔法を放つ、逆に無詠唱で魔法を発動すると魔力が制御できずに暴発してしまうからだ。
しかし彼女はそれを平然とやってのけている。
これはかなりの練度がないとできない芸当だ。
俺はメロディアの実力がS級の中でも群を抜いていることを確信し、拳を握りしめる。
《火槍》
そしてメロディアが魔法を放つ。
その魔法陣から放たれたのは無数の炎槍だ。
俺も魔法陣を展開し、暗黒魔法を発動する。
《暗黒波動》
魔法陣から黒き波状の攻撃が放たれると無数の炎槍と衝突する。
メロディアはそれを少し驚いたような表情をしたが、すぐにいつもの余裕そうな表情に戻る。
「なかなかやるじゃないかしら」
「お前もな」
俺はメロディアの言葉に嬉しさを感じていた。
そして自然と口元が緩んでしまう。
初めてまともな勝負ができそうだからだ。
正直、前のパーティーでは全然戦いがつまらなかったからな。
それにメロディアはS級の中でもかなり上位に入る程の実力者、そんな相手に褒められるなんて嬉しくないわけない。
「それじゃあ一気に行くのよ」