私の隣に変な人が座っていたのですが。 〜Immer kleiner編〜
師走二十八日、木曜日。私、小香袋一郎は某吹奏楽コンサートにやって参りました。
開場時間ジャストに某区民ホールへ入り、二段目、中央の席に座りました。
プロの演奏家や、音楽に携わる社会人、大学生など幅広い層が出演しています。無料で聴けることに、驚きを隠せません。
無料かつ開催場所が区民ホールですので、様々な方が来られます。そう、私の隣には、黄ばんだタオルを肩にかけた無精髭の中年男性が座っていたのです。「よう兄弟」と声をかけられないか、不安でした。
中年男性は、各演奏曲にひと言ふた言言っていました。
「闘牛士みてえだな」
「シスターでも出そうな音楽だぜ」
「本当のヤクチュウは、こんなもんじゃねえぜ」
当たらずとも遠からずなコメントでした。
特に、第二部の「Immer kleiner」に対するひと言は忘れはしません。ドイツ語で「だんだん小さく」という意味のクラリネット曲なのだそうですが、
「楽器の野球拳かあ?」
下品な喩えをするな、クソオヤジ! 失礼、汚い言葉遣いになってしまいました。私でしたら、筒井康隆先生の『残像に口紅を』のようです、と申し上げますね。何が「だんだん小さく」なるかは、伏せておきましょう。世の中、ネタバレほど哀れみを覚えるものはありません。とてもコンパクトにまとまる曲でした、とだけお伝えします。
ほう、第三部は大ヒットアニメソングもされるのですか。隣の人は、何と仰るのでしょうか……。偶像、ですからね。
「ぬおぉ、るるたそ、萌え〜。たぎりますなぁ」
私の左隣で、チェックシャツの裾をデニムパンツに入れて、ペンライトを三本ずつ持った眼鏡青年が鼻息を荒くしてこうつぶやいていました。
おあとがよろしいようで。
あとがき(めいたもの)
改めまして、八十島そらです。
衝動買いならぬ、衝動書きをしてしまいました。音楽を聴きに行くと、いろいろ心から湧いてくるのでございます。視点は演奏者か、観客か、ホール管理者か。どの曲を題材にするか。雰囲気は明るく? 暗く? 実際に現場へ足を運んだからこそ、感じるものがあるのです。
コンサートは、私にとって、創作意欲メーターを回復できる時間です。今年も素敵な曲を聴かせていただきました。