雄弁は銀
背を曲げる。
そこには夕日が射し、時を知らせる。
彼女の手とは冷たかったのだろうか。
彼の舌とは冷たかったのだろうか。
ここに記す。彼らが望む、生活を。
あたしは何だろうか。
金色のまつ毛が黒いノートに混じる。コーヒーカップのように砂糖の無きように。
朝日のさす床もとには米印の影。縦に並ぶ机には白表紙の本。
テレビを点けると午後のチャイムが鳴り、お子さんたちの声がとどろき始める。初めまして、と言うとお子さんたちは一斉に笑うのです。
あなた、と林に口遊めば長い髪ほどかれ毛先に葉の入る。クリームシチューのようと笑うと空が青色になる。
足を組むと腿が温かくなり桃を思い出す。
甘いものはお好き?
朝焼けがね、モルモットみたいだったの。
コーヒーって知ってる? 日本のものじゃないみたいだよ。
似顔絵って知ってる? あたしの顔が浮かぶみたい。
お金って知っている? ここにあるでしょう? 鳥が買えるみたい。
ページって知っている? お花が挿せるみたい。
夕暮れって知っている? ほっぺたに重なるでしょう。
赤いって知っている? 毛布みたいにお腹の上にあるの。
愛しているって知っている?
楽しいって知っている?
俳句って知っている?
ごみ箱って知っている?
俳優って知っている?
さざ波って知っている?
午後って知っている?
口というものを知っている?
テトラポットというものを知っている?
くちなという子の名前を知っている?
あさなという方の名前を知っている?
夕部という名前の先生を知っている?
あの人は誰?
桜の人は誰?
横の人は誰?
2023年とはいつだと思う?
1998年は?
50年前は?
甘いね。
楽器ってなんの為にあると思う?
あなたはなんの為に口を出しているの?
お胸はどうして柔らかいの?
車はどうして猫を避けるの?
耳はどうして奥に行くの?
からあげは美味しいね?
美味しい?
どうして笑っているの?
泣きたいのはあたしだよ?
でも笑っているの?
可笑しいね?
寒いね?
こっちにおいで?
どうして?
冷たいよ?
冬だね?
指が汚いね?
お風呂?
どうして?
なぜ留まるの?
体は青いのに。
指先がきれい。
川辺の砂みたい。
夜のあなたみたい。
朝食のあなたみたい。
カラスのあなたみたい。
食中のあなたみたい。
涙腺後の
あなたみたい。
声が枯れる
あなたみたい。
遅刻する
あなたみたい。
あなたにとって幸せとはなんですか?
夕まぐれに電柱を見ることでしょうか。
朝日を見ることでしょうか。
私にとっては、自身を愛することです。
そうすれば、電柱の烏も、白く見えることでしょう。