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霊感がある2人が避暑地で見たもの  作者: きつねあるき
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第6章~3日目の始まり

 3日目は、ぼくのプランで動く事が決まったので、しっかりと睡眠(すいみん)をとってギリギリまで楽しもうと思いました。


 この日に、運良くサイクリングとテニスの両方出来たとしたら、もう言う事はありませんでした。


 2日目の夜、時間を持て余していた時にガイドブックに目を通しましたが、景勝地(けいしょうち)に行くよりもサイクリングをする事で気持ちがいっぱいでした。


 3日目に関しては長い文章になりますが、その場その場の時間に注視して頂ければと思います。


 朝起きると6時50分でした。


 楽しみにしていた3日目がいよいよやってきました。


 天気も上々で観光日和でした。


 今日は7時30分に出発なので7時丁度にに起きる予定でしたが、ぼくの方が先にリビングルームにいました。


 テレビを点けてから、昨日買っておいた菓子パンとおにぎり食べていると、数分後に中谷君が起きてきました。


「おう、今日は早いな」


「そんなでもないよ、起きたのは10分前だよ」


「今日はガチンコで動くからな」


「OK!望むところだよ」


 中谷君は、朝からガツガツとお弁当を頬張(ほおば)ってお茶で流し込むと、チラッと時計を見ました。


 ぼくも()られて時計を見たのですが7時15分でした。


 出発前にもう一度ガイドブックを見ると、サイクリングのコースは設定時間通りにお店に戻れるように(あらかじ)め3種類のコースが決められているとありましたが、料金については何処(どこ)にも書いてありませんでした。


 (ただ)し、軽井沢に詳しくて時間通りに戻れる自信がある人だけは、自己責任で好きな所に行ってもいいと書かれていました。(その代わり1分でも過ぎると延滞金(えんたいきん)が取られます)


 そうこうしているうちに7時30分になったので、いよいよ満を持して出発する事になりました。


 もしかしたら、軽井沢本通りあるレンタサイクルのお店の前が長蛇(ちょうだ)の列になっているかもしれないと思ったのか、中谷君は段々と()け足になっていきましたが、この時ばかりは全く苦痛だと思いませんでした。


 この辺の道を行き来するのが慣れたのか、7時45分にはレンタサイクルのお店に到着しました。


 8時の営業開始時間までものの15分足らずでしたが、予想に反してお店の周辺には誰も並んでいませんでした。


「あれ?おかしいな…、時間を間違えたかな?」


 ぼくは、シャッターに書かれている営業時間と腕時計を見比べてみましたが、確かに8時~17時と書かれていました。


 2人の不安をよそに、レンタサイクルのお店は8時丁度にシャッターが開きました。


「ガツ、ガッ、ガシャーン!ガラガラガラガラー!」


「おっ!やったぁ、開いた~」


 思わず声が出たものの、その数秒後には現実を知らされる事になりました。


 レンタル料金が思っていたより高額で、1時間で1万2千円でした。


 人気の2時間コースだと2万6千円だったので、軽井沢周辺ではかなりいい商売でした。


 ぼくらでも手が出せるのは、30分で5千円のコースだけでしたが、問題なのは金額云々(うんぬん)よりも全ての自転車が予約済という事でした。


 そこに1台だけあった自転車は、パンクしていて貸出し不可と表示されていました。


 2人が呆気(あっけ)に取られている内に、レンタサイクルのお店の前にはぼくらと同じ事を考えていたお客さんが次々に来店しましたが、けんもほろろに全て断られていました。


 お客さんの1人から、


「何とかパンクを修理出来ないか?」


 という申し入れがありましたが、業者に出さないと修理が出来ないの一点張りでした。


 そこから徒歩3分位の所にある、もう一軒のレンタサイクル店にも行きましたが、対応は全く同じで全ての自転車が予約済でした。


 要は、ツアーで来ている観光客がレンタサイクルをオプションで付けた場合に、その日の申し込み数だけを(さば)いている状況でした。


 それでも、どうしても自転車に乗りたいというお客さん向けに普通の自転車(ギア無し)が売られていましたが、どれも10万円を超える金額で最高額は15万円でした。(勿論(もちろん)この当時は電動自転車なんてありません)


 2軒目のレンタサイクルの店員さんは、9月になれば閑散(かんさん)とするのでその時期にまた来てねとか言っていましたが、何の(なぐさ)めにもなりませんでした。


 ぼくは、ガッカリしたのなんのって、頭の中が真っ白になりました。


 その当時のテレビでは、軽井沢といえばサイクリングをしよう!というキャッチフレーズをメインに売り出していて、その次にテニスを楽しもうでした。


 それが、1日に何回もCMで流れていたので、人気の事柄に有り付くのはそんなに甘いものではありませんでした。


 現在よりもずっと情報が少ない社会では、常連(じょうれん)以外は(はじ)かれた存在でした。


 かくいう常連の方々も誰かの紹介でないと知り得なかったり、自分で何度も走り回ってやっと利用出来るか出来ないか…、という状況でした。


 レンタサイクルがダメなら、次はレンタルコートに行こうと思い中谷君はガイドブックを開きました。


 その時点で8時25分でした。


「ここから歩いて10分位の所にレンタルコートがあるよ」


 そう言われ、国道沿いに向かって歩き出しました。


「営業が10時~だから多分大丈夫だろう」


「だと、いいけどね…」


 サイクリングのあまりの人気を目の当たりにして、テニスでも同じような事が起こるような気がしましたが、こっちは大分事情が違いました。


 何と!行った先のレンタルコートは営業すらしていませんでした。


 入り口付近には、営業開始は来週の金曜日からと書かれていました。


 そこでも、ぼくらと同じ事を考えていたお客さんが次々に来店しましたが、その看板を見てしおしおと項垂(うなだ)れていました。


「レンタルコートはもう一か所あるよ!そこに行こうよ」


 中谷君から案内されたレンタルコートは、先程のテニスコートから5分位で着きましたが、運悪く定休日の案内板が掛かっていました。


「クソッ、何だよ!」


「楽しみにしていた事がダメになっただけじゃなく、もうやる事が無いじゃんかよ!」


 この時点で、まだ8時45分でした。


「2日連続で旧軽井沢に行くのも能が無いし、他に何かいい案は無いもんかね?」


 ぼくが自棄(やけ)になって言うと、中谷君はしばらく(だま)って考え込みました。


 その間、ぼくはガッカリしながらも、はたと妙案(みょうあん)が浮かびました。


 サイクリングもテニスも出来なかったので、行き先を塩沢湖レイクランドに変更したらどうだろうか?


 今から軽井沢駅に向かってバスにさえ乗れれば、10時には余裕で間に合いそうでした。


 ただ、2連荘(れんちゃん)で予定が流れた(あせ)りから、この際あの2人が来なかったとしても何としても遊ばないと気が済みませんでした。


 そこで、ぼくがその事を話そうとしたところで、中谷君が突然何か(ひらめ)きました。


「そうだ!離山(はなれやま)に行こうぜ」


「今から山に行くのかよ…」


「俺は中学生の時に登った事があるんだけど、離山ハイキングコースは登山道が整備されていて歩きやすいからお(すす)めだよ、ガイドブックには約1時間で登れるって書いてあるよ」


「ぼくは塩沢湖レイクランドがいいかなって思っていたけどね」


「今からだと、もろにあの子に会いそうだから俺はパスするよ」


「そうだろうな…、まあ、この際どこでもいいか…」


 中谷君は、残念そうにしているぼくを見てこう言いました。


「今日は天気もいいし離山の景色はけっこういいぞ!山頂からは浅間山や北アルプスが展望出来るし行く価値はあるよ!下界は真夏でも頂上は初夏の気候で色々な植物が花を咲かせているからね」


 それを聞いて、ぼくはやっと(しず)んだ気分を切り替えられました。


「とりあえず、ここから10分位の所にコンビニにがあるから昼飯を買ってこようぜ」


 中谷君に言われるがまま、コンビニに行って昼飯を買い込むと、


「離山は別荘の先だから一旦帰ろうぜ」


 と、言ってきました。


 汗だくで別荘に戻ったら、その時点で9時10分でした。


「よーし、20分休憩(きゅうけい)したら離山に行くからな!」


 それまでにトイレや水分補給をしていると、中谷君は(おもむろ)に立ち上がりました。


 そして、外に出るなり庭にある物置きの(かぎ)を開けました。


「ゴ、ゴゴゥー」


 (いきお)い良く扉をスライドさせた瞬間(しゅんかん)、落胆の声が聞こえてきました。


「もしかしたら、物置に自転車が入っているかも知れない」


 それを期待していたようですが、実際のところシャベルと掃除(そうじ)用具しか入っていませんでした。


「おーい、そろそろ9時30分だよ~」


 ぼくがそう呼び掛けると、


「分かったよ、荷物だけ持ったらすぐに行くよ」


 と、若干不機嫌そうに答えました。


 ぼくらにとって、ここから先は自然の驚異(きょうい)さえ無ければ何の障害も無いと思っていました。


 考え方によっては、サイクリングがハイキングになっただけだし、高原の自然を満喫(まんきつ)する事なんて普段ではなかなか無いと思います。


 ぼくは、フィルムカメラの残り枚数を確認しましたが、まだまだ撮れそうでした。


 別荘から十数分歩いて行くと、離山登山道の看板が見えてきました。


 この時点で9時45分でした。


「よし、今から1時間ちょいで頂上なら、初心者でも11時過ぎには着けるかな」


 中谷君はそう言うと張り切って歩き出しましたが、その先には予想だにしない事が待ち受けているのでした。

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