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霊感がある2人が避暑地で見たもの  作者: きつねあるき
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第5章~中谷君が主体だった2日目

「もう今日はダメだな、このまま別荘に帰るのもなんだから雲場池(くもばいけ)でも行こうぜ」


 中谷君はそう言うなり、さっさと行ってしまいました。 


「おい!何だよ急に…、おい!待てって!」


 初めのうちは早足だったのが、先に行くに連れて()け足になっていきました。


 ぼくは付いて行くのがやっとでしたが、何とか中谷君に追い付いて雲場池に到着しました。


 雲場池とは軽井沢でも人気の紅葉の名所で、秋場に見頃の時期になると周辺は多くの人で(にぎ)わいます。


 春~夏の雲場池は、周辺をを歩くと新緑の美しさと木漏れ日の温かさを感じるので、森林浴をしたり野鳥観察をするのにはいい時期だと思います。


 ただ、ぼくにとっては訳も分からず走らされただけだったので、雲場池の水面(みなも)に新緑が鏡のように映りこむ水鏡(みずかがみ)堪能(たんのう)する事は出来ましたが、ただ只管(ひたすら)に汗をかいただけでした。


 しばらくして、やっと汗が引いたところで中谷君に不満を()らしました。


「待てって言ったのに何で無視して行っちゃうんだよ!」


「もうさぁ、旧軽井沢にいてもしょうがないと思ったからだよ」


「それだけ?」


「まあな」


「お前の気紛(きまぐ)れにも困ったもんだよ…、何でいつも勝手にどっかに行っちゃうんだよ」


「そういえば、昔から衝動的(しょうどうてき)に行動するなって何度も親に怒られたな…」


「それは分かったから、遠く離れた観光地で無言でいなくなるのだけは止めてくれよな、最低限一声掛けるか合図を送ってくれないと迷子になるだろ!」


「分かったよ、今度は気を付けるよ」


「これから、また走ってどっかに行ったりする?」


「いいや、この後は歩いてセブンイレブンに行って夕食を買って帰るくらいかな」


 高校で一緒の時はそこまで感じませんでしたが、中谷君の思考と行動が全く読めないのでこれからはよく注意する事にしました。


 コンビニで今日の夕食と明日の朝食を買い込むと、やっと別荘(べっそう)に帰ってきました。


「いや~、今日は朝早かったから(つか)れたな~」


「そうだね、これでやっと足が伸ばせるね~」


 座布団の上で30分以上まったりとしていると、中谷君が聞いてきました。


「あれさぁ、明日の予定は何か考えてんの?」


「それなんだけどさ、塩沢湖レイクランドなんかどうかな?」


「ん、ちょっと待ってくれよな、ガイドブックを見てみるから」


「実は、クレープ屋に行くのに道案内してもらった人から、明日塩沢湖レイクランドに10時に入園するから一緒に来ますかって誘われたんだよ」


「まさか、その子と2人で行くのかよ」


「いやいや、そこは4人で行かないとダメでしょ、恐らくは同じ組み合わせになると思うけどさ」


「マジか、俺の知らないところでそんな話しがあったのかよ」


「それで、行くかどうかは連れと相談して決めますってところで話が止まってんだよね」


「そうか…、俺と一緒だった子はすげえ変な人なのかと思ったら、どうやら男慣れしていないだけだったよ」


「あの反応にはぼくも驚いたよ」


「それで、あの子は面白い事を言うと割と笑ってくれるんだけど、途中からなかなか会話が(はず)まなかったし、目も合わせてくれなかったよ…」


「そうなんだ、ぼくと一緒にいた人はずっと(しゃべ)っていたなぁ、積極的な恋愛をするタイプで途中からはぐいぐい押されちゃったよ」


「女子校でもいろんなタイプがいるからな」


「ところで、中谷君は塩沢湖レイクランドに行った事はあるの?」


「去年の夏休みに行ったよ」


「ここからだったらどうやって行けばいいか分かる?」


「そんなの別荘の横にタクシーを呼べば行けるよ、それか安く行くんだったら軽井沢駅まで徒歩で行って塩沢湖方面行きのバスに乗るかだね」


「それで、ナンパした2人にまた会いに行く気はある?」


「いや、それはないな…」


「何でだよ!ナンパしたのはお前だろ」


「それがさ、最初はいいかなって思ったんだけど、あまりにも警戒(けいかい)されてるのが分かったからね」


「初対面だとそんなもんじゃないの?」


「いやいや、あれは俺を(いた)も嫌っている感じだったよ!」


「そんな風には見えなかったけどなぁ」


「ノリが悪いっていうか、後ろにいるお前らが楽しそうで(うらや)ましかったよ、それに、私に何かあったらお姉ちゃんが守ってくれるんだからねっ!とか言うんだぜ」


「でも、ぼくと一緒だった人は2回会ってくれたら仲良くなれそうって言ってたけどね」


「だけど、俺の方ではうまくいかなかったし誘われもしなかったんだよ!」


「分かった分かった、要するにこっちがうまくいったのが面白くないんだろ!」


「そういう事じゃないよ!俺はもうクレープ屋の前で見切りを付けちゃたんだから、今更どの面を下げて会いに行けっていうんだよ」


「ふ~ん、じゃあせっかくのチャンスを自らぶっ(つぶ)すって事でいいんだね」


「むぅ~、でもさぁ、その話が真っ赤な(うそ)って事もあるんじゃないか?」


「もういいよ!こんな話するんじゃなかったよ」


「そう怒るなよ~」


「それなら、今日は中谷君のやりたい事をやったんだから、明日はぼくのやりたい事に付き合ってもらうからね」


「うん、俺はそれで(かま)わないよ」


「それじゃ、レンタサイクルのお店に行って1時間ばかりサイクリングをやりたいな」


「それはいいけど、何か伝手(つて)とかはあるの?」


「軽井沢本通りにレンタサイクル屋が2軒あるのは分かっていて、営業開始時間だけは覚えてきたよ」


「へ~、それって何時から開くの?」


「2軒共に朝8時からだよ」


「けっこう早いね、でも今回は朝飯を買ってあるから7時30分に出れば余裕でしょ」


「OK!それでいいよ」


「後でどの辺を走るか決めようぜ」


(ちな)みにだけど、軽井沢で自転車を借りた事ってあるの?」


「無いと思うよ、両親と来ていた時はずっと車で動いていたからね、だけど明日行ってみれば事情は分かるんじゃないかな」


「もし、自転車が借りられなかったらどうしようか?」


「そうだなぁ、だったらラケットとボールを借りてテニスなんていいんじゃない?確か国道沿いにレンタルコートが2ヵ所はあったと思うよ」


「じゃあ、明日はレンタサイクル店に行って自転車が借りられたらサイクリングで、ダメだったらレンタルコートでテニスをしようよ」


「よし、決まりだね!テニスだったら俺は中学までスクールに行ってたから得意だよ」


「だとしても、あんまり強い球を打ってくんなよ」


「うん、それは分かったよ」


「まあ、明日はサイクリングかテニスのどっちかだったら出来るんじゃないかな」


「その辺は分からないけど、どちらも営業前からお店に行くしかないよね、確かレンタルコートの営業は10時からだったと思うけどね」


「ところでさ、クレープ屋に案内をした女子高生2人組の事なんだけど、お腹がいっぱいって理由だけで去って行った訳じゃないんだろ?」


「まあね、本当の事を言うとあの2人は服装もいまいちだったし、あんまり可愛(かわい)くなかったからだよ」


「お前なぁ…、断られる前からいち早く撤退(てったい)するのは止めろよな、あの時はぼくの方に声を掛けてきたんだからさ」


「俺はな、何かこうズキューンとなって一目惚(ひとめぼ)れするような女じゃないとやる気が出ないんだよ」


「はぁ?それをナンパで求めるのかよ!だったら何で道案内を買って出たんだよ」


「それはあれだよ、俺の気紛れな部分もあったけど左側にいた子の声だけはめちゃめちゃ可愛かったからね」


成程(なるほど)ね、確かにそう言われればあの声には押された気がするよ」


「声優さんみたいな声だったけど、見た目はまるで(そそ)らなかったけどな」


「そこは単純に目を(つぶ)って妄想(もうそう)して楽しめよ」


「お前も割りと(ひど)い事言うよな」


「そうか~、中谷君には負けるけどね」


「あ~、結局はナンパ出来なかったか~!」


「そもそも、観光地まで来てナンパってどうかしていると思うんですけど~」


「まあ、いい経験だよ、ニヒヒヒ~」


 中谷君にはいいように茶化されたものの、明日はナンパしなくてもよくなったので、やっとぼくの(かた)の荷が下りました。


 (ただ)し、自転車を借りた場合、念の為に塩沢湖レイクランドの近くに行くのは()ける事にしました。


 中谷君が気難(きむずか)しい性格じゃなければ、もしかすると翌日の予定が変わっていたとは思いますが、いろいろあって原点に戻ってきました。


 ぼくは、中谷君のガイドブックをもう一回見せてもらって、明日のおさらいをしました。


 今日もあちこち回ったので、段々と周辺の道が分かるようになりました。


 ただ、明日は今日よりも早起きしないとならないので、ダラダラと起きているのは得策(とくさく)ではないので、早めに寝る事にしました。


 ここまでが、軽井沢旅行の2日目になります。

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