8.エレメンタルナイツを追跡せよ!
――この世の中には、時空間を超越した者だけが辿り着けるもう一つの世界があるらしい……。
現実世界と並行しつつ、それらとは全く異なった歴史と環境によって成り立った異世界空間が存在する。【平行世界】、馴染みある言語で例えるなら『パラレルワールド』と呼ばれる世界だ。
平行世界は我々と住む世界と歴史が全く異なるのであれば、それは周囲のみならず宇宙を経て太陽系惑星に未知の惑星が存在する事だって不思議ではない。
その一つが平行世界の地球より南南東、6.5光年の距離に位置する16777216色に彩られた目がチカチカしそうな眩い色、早い話が“ゲーミングカラー”と呼ばれる煌めく惑星があった。
それが、ゲームの原点として幻の異世界と称された【オリジンゲームワールド】である!
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そんなオリジンゲームワールドの空に、一隻の巨大宇宙船が高度を下げつつ着陸態勢に入ろうとしていた。
アダムスキー型の円盤の両端にワープに使われる横長のジェットパック、まさしくこれはエンター◯ライズ……いや違った、『S.D.M.S-アルファ号』。
現実世界から過失にも攫った河合みのりを含めた謎のゲーム戦士軍団『エレメンタルナイツ』の乗る宇宙船だ。
「……何処も怪我はないか?」
「う、うん……でもマンドラくんの腕の方が……、大丈夫――?」
「こんなもの、治癒魔法使えば直ぐに治る」
横暴にも決闘に敗れた桐山剣の切り札である《サラ・チャンドレイユ》のカードを奪ったマンドラ・チャンドレイユ。それに怒ったみのりは単独で宇宙船に乗り込み取り返そうとしたが、不意に転落し地面に落ちそうになった所をマンドラの助けによって九死に一生を得たみのり。
……だがマンドラのノースリーブな服によって晒した腕からは深く抉られた傷があり、それが触ったのか若干ながら血が流れている。半ば跡が残る傷口を見る所、それはみのりの救出による傷ではないと見た。
「……全く、サラはホントに何回言っても俺の言う事を聞きゃしない。幾ら俺ら兄弟が炎の精霊サラマンダーに導かれたゲーム戦士でも炎どころか深淵の洞窟にも無謀に飛び込むくらい―――」
「ま、待って待って! 私『サラ』なんて名前じゃないし、マンドラくんと会ったの初めてだよ? 私は河合みのりって言うの」
「…………分かってる。俺の独り言だ」
マンドラの様子を見るに、みのりを自分の妹の生き写しのように見え、それが妹であるサラ・チャンドレイユの面影と重なったのだろう。
……既にその妹は戦争で亡くなっている事も承知であるから、尚更である。
「俺も出来ればお前を攫いたくは無かったが、アクシデントで仕方なく乗せたんだ。用が終わればちゃんと現実世界に帰してやるから大人しくしてろ」
「……だったら剣くんのカード返してよ」
「……要らなくなったらな。使い終われば直ぐに桐山剣の元に返してやる」
「そうじゃなくて今ここで返して! ……それと使うって何を使うのよ……?」
「お前に関係の無い事だ……」
「あ、待って! まだ話が――」
「来るなッッ!!!」
「―――!」
話を強引に終わらせ立ち去ろうとしたマンドラにみのりは静止しようとしたが、彼のいきなりの怒号にみのりはたじろいだ。
「所詮異次元で生きてる赤の他人に、俺の痛みが分かってたまるか……! 帰してやるからこれ以上余計な事はするな。個室から出て何かあったら俺は助けてやらんからな!!」
「……………」
一時的に憤り、自分自身に嫌悪感をも見せていたマンドラの立ち去る後ろ姿を見て、みのりは既に気付いていた。
(……マンドラくん、眼先が潤んでた。貴方と『サラ』って娘に何かあったか分からないけど、悲しんでるじゃない……!)
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――『S.D.M.S-アルファ号』は大型宇宙船である。
みのりに留まるよう指示された乗員らの個室、エネルギー格納庫、戦闘艦では無い為武器は積んでいないが、緊急時の退避による信号弾等の装備も保管している。
そんな宇宙船の長い廊下に佇むは、マンドラ・チャンドレイユ。過去のジレンマを抑えきれない自分に小さく舌打ちをしつつ、彼は仲間の元へ戻るべく操縦・司令室へと向かった。
「……どうだ? 周囲に何か異変は無かったか?」
「別にぃ? ルーラとかいう無機質姉さんと、アンタが攫った女の子の仲間の様子も無いよ。インベーダーがウヨウヨしてるくらい」
インベーダー浮遊してるって何気に危ないんじゃ……、とツッコミを入れつつもお気楽極楽マイペースにマンドラの報告をする緑の羽衣を来た女の子。
彼女は風の精霊・シルフを守護に持つゲーム戦士、『シルヴィー・テンペスター』である。
「しかし先程の無茶な運転のせいでアルファ号に若干不備が起こってます。着陸後のメンテナンスは必須かと」
「ルーラの姉ちゃんならチョチョイやろうがなぁ、そこは知恵絞ってやるんが効率的やがな」
そしてもう二方、水色肌にビキニスーツのインテリジェンス女子は水の精霊・ウンディーネを守護に持つゲーム戦士、『ディーナ・ウェーブプール』。
その横には土色の民族衣装とトンガリ帽子を被ったコテコテの関西弁を喋る、土の精霊・ノームを守護するゲーム戦士『ノム・ジー』。玄人感が漂ってます。
彼ら四人がオリジンゲームワールドの平和を守る騎士として崇められた『エレメンタルナイツ』の四人衆。
しかしこの時代より前に起きた強大な敵の出現が、彼らの威厳も大きく変化させたそうです。
「皆、ホントに済まない。三人にばっか面倒な事をさせちまって。俺が不甲斐ないばかりに……」
「こーら! リーダーのアンタがネガティブ出すなー! 幸せが逃げてくでしょーが!」
「我々エレメンタルナイツの中心はマンドラさんなんですよ」
「お前さんの誇りはワシらの誇りやがな。その弱気すら直してくれりゃ無償でも手伝ってやるさね」
「あぁ、そうだな……」
無機質な宇宙を流れ流れて、マンドラ達一行はオリジンゲームワールドへと帰還していく。このまま無事に着ければ本望……と思ったのだが、
――RED ALERT! RED ALERT!!
突如アルファ号に鳴り響く警報が、非常事態を知らせる。その直後にマンドラ達の顔が険しくなっていった。
「…………来たわねお邪魔虫!」
「今はオリジンゲームワールドへの着陸に専念しろ。アイツらとの決着は……我が聖地にて戦う!!」
何者かの追跡を察知したマンドラ達は、その尾行にも目にせず、ただひたすらにオリジンゲームワールドへの突入に集中した。
彼らを狙う相手、ご存知シャッフルオールスターズwithルーラ・ラルースの七人衆が『S.D.M.S-ベータ号』に乗って追跡する!!
「見つけたぜマンドラ!! みのりと、俺の切り札を返せーーーー!!!!」
「私達も行くわよ! 大気圏へ突入!!」
アルファ号とベータ号、オリジンゲームワールドへ突入すべく摩擦を最低限減らしながら、大気圏へと徐々に迫っていく――!
「―――――うぉぉおおお…………!!!」
ゲーミングカラー煌めく惑星の成層圏を二つの宇宙船が通過。全世界の一面が明らかになったその風景からはオープンワールドゲームも真っ青な、壮大かつ無限大の冒険へと誘うゲーム世界が剣たちを待ち構えていたのでした!!
――いよいよオリジンゲームワールドでの凄まじいゲームバトルが開幕! 乞うご期待!! 本日のゲーム、これまでッッ!!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽