7.シャッフルオールスターズ・時空間転移!!
――夕暮れの空はすっかり暗くなり、漆黒の夜空を他所に大阪の都市ではネオンと帰路に着く人々、飲み屋でのドンちゃん騒ぎで相変わらず活気に栄えている。
そんな街並みから遙か奥の山々に、人気が無いのを良いことに一隻の宇宙船が今、離陸準備に入っていた!
「……全員、離陸の準備は良いわね?」
「「「「「「オッケー!!」」」」」」
「了解。では『S.D.M.S-ベータ号』、次元断裂空間に向けて発進!!」
ルーラの応答によって巨大宇宙船は起動。後部に4つほどセットされたジェットパックが蒼炎の如し青い炎を発しながらエンジンを稼働。重量感のある宇宙船は無重力のように浮遊しつつ、徐々に飛行高度を上げていく。
さて、宇宙船が向かうべきは次元断裂空間。闇夜の空に次元の裂け目など何処にあるのかと眼を凝らして見てみれば……微かに黒く渦巻くブラックホールのような渦。
これぞ時空を超越し吸い込むものをも転移させる『ディメンションホール』の入口であります。
「皆、シートベルトはしてても席にちゃんと捕まっててね。ディメンションホールは物凄いGを発するから、首を持ってこられないようにね!」
「あ!? そんなジェットコースターみたいな注意されてもピンと来」
――――シュンッッッ
剣の異議申し立てをも断絶させる程の吸引力。彼らの乗った『S.D.M.S-ベータ号』はディメンションホールに吸い込まれ、同時に次元空間も消滅した。
▶▶▶ NEXT▽
「「「お゛お゛お゛お゛お゛ぉおおぉおおおぉおッッッ?!!??!!」」」
―――これぞディメンションホールの凄まじきG!! オールスターズ一同宇宙船に乗っても思うように正面を向けず、座席の背もたれに身体が密着して動かすこともままならない!
しかし操縦しているルーラは時空間転移に慣れているのか、凄まじい重圧にも平然としている。
コクピットのフロントを覗けば、そこはダークブルーな空間に小さな星や惑星らが弧線を描いて途方に暮れる。時空間を超光速の速さで超越する事によって起きる、SF名物・ワープ現象によるものだ。
「―――空間座標、時系列共に目的値に達成。ディメンションワープ解除します」
―――ピッ、グォオオンッッ
「おぶッッッ」
と、ルーラが宇宙船の転移装置なるスイッチを解除すると同時にワープ移動はストップ。それに影響された過度な重圧もようやく開放された。
「きっつぅ〜〜……完全に首持ってかれたわ」
仮想空間でも体験した事の無いGの重圧によって、異世界に着く前に身体はボロボロの剣達。ジェットコースターの事故の方がマシに思える様に同情しつつも、今我々が刮目すべきは人類が到達出来ない500年前の平行空間。
「―――! うわぁ、すげぇぇぇ………!!」
その次元の風景を見た剣は感嘆のため息。それもその筈。
ダークブルーの闇を光照らす一筋の青白き光、その先を辿れば無数に散らばる大中小の惑星、丸いものから歪なもの、虹色の大陸で彩られた惑星など俯瞰で拝見する者をも魅了する。
これぞ現実と未来が異なった平行世界が可能とした未知なる世界の数々! この中にゲームワールドの始祖とされる惑星【オリジンゲームワールド】がある!!
「これは……VRでも体験出来ない感動があるね」
「えぇ……、私達宇宙を飛んでるのでしょうか――?」
「これが平行世界における宇宙なのよ。現実世界じゃ太陽系の惑星から更に掛け離れた宇宙にも人類がまだ知られていない惑星があるんだけれど、平行世界では太陽系惑星の周囲に沢山の小惑星が散らばりあって平衡を保っているの」
「それって衝突しそうでメッチャ怖いんやけど……」
太陽から順に水金地火木土天海冥と平行に並ぶ太陽系の惑星に、更に大小異なる惑星らがあちこちに散らばってたら何れぶつかりそうでおっかない事になりそうですが……。
よく見れば金星と地球の間に小さな惑星【英雄惑星・ブレイドピア】があったり、他にも地球と類似した惑星らが割り込んで位置している。
もしかしたら今読者の皆様が読んでるライトノベルの異世界も、このようにすし詰め配置な感じで成り立ってるのかもしれませんね!
そして本題である【オリジンゲームワールド】は何処にあるのかと言うと……?
「―――彼処よ。平行世界の地球から南南東、6.5光分の距離に位置する虹色の惑星よ」
「『光年』の単位まで行くと余計訳分からんわ」
解説しておくと、『6.5光分』とは光の速さで6分半で辿り着く距離の事。光の速さですから当然日本から海外に行くとは話にならない程遠い距離なのです。
因みに地球から火星の距離は『13光分』、なので平行世界の地球からオリジンゲームワールドの距離は火星の半分ほどという訳です。分かったかな?
「一応オリジンゲームワールドに行くにも大気圏に突入する訳だから、摩擦を抑えるために宇宙空間を旋回しながら接近するわよ」
いきなり突っ込んだらそれこそ宇宙の塵となりてまっ黒焦げですからねぇ。そこは考えてるSFチック。
その時、まだ準備の猶予があると知った剣はルーラに問い掛けた。
「なぁルーラ、到着する前にちょいと聞きたい事があるんやけどさ」
「何かしら?」
「マンドラが奪った《サラ・チャンドレイユ》のカード、それと過失にもみのりを攫ったのには何か共通した理由があると思うんよ。ルーラは何か知ってんのか?」
その問いに対してルーラは一息入れて答えた。
「…………それは、貴方も勘付いたから私に質問したんじゃなくて?」
「今さっき思い出したんよ。マンドラもカードのサラも、同じ『チャンドレイユ』の名を持っていた。そしてみのりが落下しそうになった時にも咄嗟にアイツは『サラ』の名を叫んでいた。
―――まるで血の繋がりあった兄妹みたいにな。違うか?」
この剣の推理に他の仲間も『確かに……』と考察が波紋のように広がっていく。そしてルーラもこれには流石と言わんばかりに観念した。
「全く……何処の時代も騎士は頭も冴えるのね。そうよ、この時代における『マンドラ・チャンドレイユ』と『サラ・チャンドレイユ』は、固い絆で結ばれた兄妹なの。それが因果にも貴方の時代のカードゲームに反映されているの」
と言う事は、ひょっとしたら探せばマンドラのカードも手に入るのでは……? いやいやそれよりも気になるのは別の案件。
「……じゃみのりを攫ったのは、サラの面影があったから、って事なのか……?」
するとルーラは突然一層シリアスな顔になって語り始めた。
「――――この時代から更に10年遡った話。オリジンゲームワールド全土に脅かす正体不明の敵が現れた。
その敵は何とか全文明が一致団結して勝てたんだけど、その代償として修正しきれない程の多大な犠牲を払ってしまったわ。ある者は魔法と力を失い、ある者は大切な友を何人も失った。マンドラも例外じゃないわ」
「………………待てよ、まさかアイツ―――!」
「その犠牲の中には、サラ・チャンドレイユも含まれていたわ」
…………これは、外伝なのに途轍もなくヘビーな展開が待ち受けようとしております。その真実に、剣達はどう受け止めるのでしょうか……!?
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽