6.オリジンゲームワールド
――大阪の都市部にSFチックな騒動を起こした漆黒の空。先刻ほど前まで二隻の宇宙船が上空を覆い、誰もが上を見上げ野次馬根性に群がっていた街並みもようやく落ち着いた。
……だが完全に修復した訳ではない。桐山剣の大親友、河合みのりが時空間からの訪問者・マンドラ率いるエレメンタルナイツらに意図せず攫われたのだ。
ゲームウォーリアー史上稀に見ない刹那な事件。色々聞きたいことツッコみたい所はあるが、先ずは各々の情報整理から。
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最初に聞きたい事は目の前の新キャラから聞くに限る。
エレメンタルナイツと同じく宇宙船に乗って追跡していた銀髪のハイテクノロジーな女性。一旦宇宙船は離陸させて剣達に状況を説明する事に。
「……さて、貴方達に何処から説明するべきでしょうか。信じて貰えるかさえも疑わしい所ですが」
近くに見て寄れば、剣らよりも若干大人びた身なり。更に精神面から見ても20代前半と言った感じか。それはともかく貴方はだぁれ? フーアーユー?
「自己紹介がまだだったわね。私は『超次元時空間管理局』の衛生管理教授を務めています、【ルーラ・ラ・ルース】(23)と申します」
(何か瞬間移動しそうな名やな……)
などと冗談を心の中で呟きながらも剣はルーラという女性に質問する。
「……で、あのマンドラとエレメンタルナイツって奴らは一体何者なんや。アイツら500年前のゲームワールドから来たってどーゆーこっちゃ?」
「その事については単刀直入に言うわ。――彼らはこの世界の人間じゃない」
その点については、一同『やっぱり……』と陰ながら核心に触れてはいた。ただ異星人と呼ぶには現実的な姿、ファンタジーの生物にしては非現実的な思い込みだ。
「アイツらもしかしたら、今WGCが完全閉鎖してるゲームワールドの住民とかちゃうよな?」
「まさか! VR側から現実に来るなんてあり得ないし、見たところブレスも使わずに魔法とか如何にもファンタジー的な技を使ってたぞ」
「500年前って言ってたから、やっぱ中世とかの時代からタイムスリップしてきたのかな?」
「過去の人間が宇宙船乗って来んのかよ」
「でもアメイジングを知ってたような素振りでした」
「分かった、ラノベのテンプレ要素でお馴染みの“異世界転生・転移”ってヤツやな!」
「残念だけど、全員論点が若干ズレてるわ」
「「「「「「あ、はい」」」」」」
シャッフルオールスターズの討論も虚しくルーラに一蹴された事で一同がっくし、苦笑の嵐。それでは彼女に正解を言って頂きましょう。
「マンドラ・チャンドレイユ率いる四人のエレメンタルナイツは――――貴方達の時代から500年前の、平行世界に創生された異世界【オリジンゲームワールド】から来た古のゲーム戦士です」
「「「「「「…………?????」」」」」」
答えを述べても尚、剣たちはなんの事やらちんぷんかんぷんワッツハップン。色んな要素がゴチャゴチャしたSFファンタジー要素を整理するには相当骨が折れるのです。でもご安心を、具体的にルーラさんがご説明してくれます。
「今貴方達が生存する時代・空間は、一つの“次元”として電脳世界や異世界に問わず様々な世界が隣接しあって成り立っているの。さっき言っていた『ゲームワールドオンライン』はVRMMO、つまり人類が創り出した仮想空間異世界も同じ次元だから実現した産物よ」
ゲームワールドオンラインのみならず、幾箇所で活動している名高いVRMMOの殆どは同一の次元がリンクして成立できる。異世界転移とは一つの囲いの中で成り立つシステムなのです。
「……ところが、その“次元”も唯一無二、単一な存在では無いわ。―――時間・空間の歪みから歩み始めた異次元なるものも存在する。それが私が言った『平行世界』と言われているもう一つの次元」
「……つまり、『パラレルワールド』か」
槍一郎さん御名答! ラノベ名物の『異世界』とはまた趣向の異なった『平行世界』なる存在がゲームウォーリアーには存在していたのです。
『平行世界』は前述したゲームワールドオンライン、現実世界、異世界等が同じように存在する。しかし同じ世界観であっても歴史が裏表と全く異なるのが大きなポイント。例えば今新型ウィルスで大変な事になってる我々の次元、異次元では早期警戒によって感染は一部分のみに留める事を成功した、とかとか。
「……このシリーズってSFチックなゲーム小説って枠になってるらしいけど、ここまで来ると本格的にサイエンスフィクションやね」
「そんな事よりもさっき言ってた【オリジンゲームワールド】って何なんだい? 僕らの時代のゲームワールドとの違いは……?」
槍一郎は核心に基づく為の説明をルーラに求めた。
「貴方達の次元のゲームワールドは人類がインターネットといった電脳世界に創り上げた仮想空間。そして平行世界のオリジンゲームワールドは………実際に存在するゲーム異世界なのよ」
「なん……だと……!??」
歴史の歪みはこれほどまで奇跡を生み出すのでしょうか? 仮想空間の対義は実在する異世界空間、こんな真実を誰が知ったか? いや誰もが知らなかっただろう。
「そんな話……歴史とか資料にも乗ってないぞ!?」
「私も全く、夢物語でしか思いません……」
槍一郎も穂香も初耳と困惑する事態。だってね、
「無理も無いでしょう。第一平行世界を認知している別次元の人のが遥かに少ないもの」
それは剣達の次元のみならず、別次元側の優秀な科学陣達の研究を持ってしても、存在を知る者は極稀なものに過ぎないのだ。
「……待てよ、じゃあゲームワールドオンラインを創り上げた『クロスフォード教授』は、そのオリジンなんたらっての知ってゲームワールドを創ったんか……?」
「それは分からないわ。そのような資料は未来まで辿っても存在しない。真相は謎のままよ」
世界最大規模を誇るゲームワールドオンラインを創り上げたのは『クロノスフォード教授』という一人の男であった。だが完成した直後に転送した矢先、データ粒子の欠片となって消滅した為に創生の真意は未だ明らかになっていない。人の頭に描いた構想は資料とて完璧に刻むとは限らないのだ。
「私達『超次元時空間管理局』が設立したのも貴方達の時代から遙か未来の事。次第に平行世界の存在に気づいた天才科学者が開発した“時空間転移宇宙戦艦”が無ければ他次元への転移は不可能よ」
それがマンドラらとルーラが乗っていた宇宙船、『S.D.M.S-アルファ号』と『S.D.M.S-ベータ号』である。
「略して『エンタープ○イズ』と『ホワイト○ース』って事か」
全然違います。てか略してないし。
「私がオリジンゲームワールドの時代でパトロールしていた所をエレメンタルナイツに強奪されて、私は彼らを追ってきたのよ」
名前を聞く限り“騎士”ですから、宇宙船を奪うなんて阿漕な事はしないと思いましたが、何故にこのような事をしたんでしょうねぇ?
「なぁ、話が尽きねぇのも分かるけどさ。のんびりしてる場合とちゃいまっか? みのりさんが攫われてんすよ、早いとこ追いかけねぇとマンドラだかに何されるか分からねぇぜ」
倭刀が率先して剣達に行動を促そうとするが、みのりが攫われ一番衝撃を受ける筈の剣は至って冷静であった。
「……いや、アイツはみのりに何もしねぇよ」
「何でですの?」
「アイツは俺より真っ先にみのりを落下から助けた。宇宙船を強奪したのは頂けんが、奴にも騎士道ってものは失ってねぇと思うんや」
その確信は正しいとは分からないが、剣が感じた彼の正義から導いたものなのは確か。ルーラは何も言わなかったが、その答えに意味深な表情を浮かべていた。
「……本当にあなた達には迷惑を掛けたわ。本当はマンドラも正義感が強く熱い男だったのに、どうしてあんな事をするようになったのか……」
「………………」
ルーラの憂いに満ちた顔に剣の胸に宿る魂が反応し、そのレッドハートは着火した。
「だったらその真相、俺達が確かめてやろうぜ」
「……え?」
「俺だって紛いなりにも“切り札騎士”と名乗ってんねん。アイツにやられたプライドは倍にして返さなアカン。それにマンドラも騎士を語ってんなら、今度が俺がその性根叩き直してやらァ。
――――今度は俺がみのりを助ける番だ……!!」
鋭い眼光から滾るは熱き情熱! 桐山剣の決意表明が、仲間達の心にも感化されて6人全員が同行を決意した!!
「……分かったわ。私はこの時代のゲーム戦士の熱意に買い、『オリジンゲームワールド』へ同行を許可します。巻き込んでしまってごめんなさい」
ルーラは剣達の心意気に押され、6人全員を宇宙船に同乗し平行世界・オリジンゲームワールドへ向かう事となった!
「ヒャッホゥ☆ これで真のゲームワールドへ遊びに行けるぜ〜♪」
「ずっと筐体と相手じゃつまらなかったからな」
「俺達が異世界への第一歩を踏み出すんやな!」
「何かドキドキしますね!」
「ねぇねぇあっちのパズルゲームってどんなのだろう?」
「異世界のファイターと試合出来るんかいな?」
……まぁ決意だけは格好良かったのですが。遠足気分ですかアンタら!!
(ホントに彼らで大丈夫かしら……)
ルーラの心配が平行世界で現実のものとならない事を祈りつつ、次回よりはいよいよ真のゲームワールド、『オリジンゲームワールド』へと舞台を移しましてゲームウォーリアー外伝、急発進致します!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽