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30.伝えたいことがあるの

「みのり!? 何でお前こんな所まで来たん!!?」


 桐山剣、驚愕の極地。アメイジングの決闘真っ只中に現れたのはなんと宇宙船の着陸地からこの混沌の墓地のVRフィールドまで自分の足で走って辿って来た、河合みのりであった!


「え、えへへ……、すっごく迷っちゃったけど、やっと見つけたよ! 良かったぁ……」


 純真な笑顔を剣に魅せるも疲労困憊でよろめくみのり。すかさず剣がふらつく身体を支えこむ。

 無理もありませんよ、四次元の自然迷路だけでなく道中色んな魔境へとたった一人で向かって行ったんですから。身体中土や泥に塗れて脚の素肌は血だらけであった。ヒロインボロボロで痛々しい。


「―――何やってんだ、この馬鹿ァ!!!!」


 そんなみのりに怒鳴って叱咤するはマンドラ。


「外は危険だから大人しくしとけって言っただろうが、何で出てきたんだ!?」

「ご、ごめん……。でもどーーーしても、もう一回会いたかったの!!」


 みのりは一度決めた事はたとえ身体がボロボロになろうともやり遂げようとする強い心の持ち主。故に彼女も傷だらけになる事も顧みず、自らが伝えたい事があるが為にここまでやってきたのだ。


「……そんなにお前の親友の事が心配だったのか?」

「違うよ! 剣くんは私が心配しなくても大抵平気だから気にしてないもん! 私が会いたかったのはマンドラくんの方だよ!!」


(信頼されてるって事だろうけど何か複雑……)


 剣さん、あまりお気になさらずに。


「俺に会いに来ただと……?」

「そう、マンドラくんに大事な事を言い忘れてたから!」

「……!」


 この時、剣はみのりの真意を伝える前にその意味を悟った。


「……言ってやんなよみのり。コイツ今滅茶苦茶落ち込んでるからさ。存分に話しな」

「うん……!」


「チッ、ゲームを中断させといて説教か? 何なんだよ一体……?」


 マンドラは剣に代わってみのりが自分に言い諭そうとしているのかと考えていたが、それは大きな間違い。みのりは面と向かってマンドラの前に立ち、ペコリとその頭を下げた。



「―――――マンドラくん、さっき私を助けてくれて、ありがとうっ☆」



 ……当のマンドラは予想に反した対応にただただ目を丸くして、みのりの感謝を受け取られた。


「…………それだけ、なのか? こんな俺に感謝する為だけに、こんな所まで一人で来たのか……!??」

「『ありがとう』って言う事だけでも、とっても大事な事なんだよ。当たり前じゃない」

「俺はお前を攫ったんだぞ? それにお前の親友の大事なカードも奪ったんだぞ!? 俺を恨んだりしないのか………!??」


 私が云うのも何だかですが、その問いをみのりにする事すら野暮な話なのですよ。


「私はマンドラくんがどうしてこんな事をしたか分からないし、私の友達は剣くん達だよ。でも……


 ―――マンドラくんだって、私にとっては大事な友達の一人なんだから。剣くんも、マンドラくんもどっちも負けて欲しくないって思ったんだもん!」


「……………!!!」


 みのりのこの上ない優しさに、やさぐれていたマンドラの魂に潤いをもたらし、感慨無量。対して剣も親友の優しさに思わずドヤ顔。


「――――――ッ、お前……優しいんだな……、本当に――――!!」


 マンドラの乾いた眼にも潤みを見せるがギリギリ雫まで落とさず踏みとどまる。戦闘中に涙を流す事程無粋な様は魅せたくないのか、顔を強張らせて必死に耐えながらも彼はみのりの元へ駆け寄った。


「………それにしては無茶し過ぎだぞ、女ならもう少しお淑やかになれ。ほら俺が泥とか拭いてやるからじっとしろ」


 マンドラはズボンのポケットから真っ赤なハンカチを取り出して、みのりの汚れた土やら泥やらを優しく拭き上げていきながら、もう一度彼女に質問する。


「……なぁ、みのり。お前桐山剣は好きか?」

「うん、大好き! 普段はちょっとだらし無いけど、ゲームに強いしカッコいい所も私ちゃんと知ってるもん!」


 それを本人の前できっぱりと言う所が素晴らしい! 思わず後ろの剣も照れ臭そうに困惑する。


「……じゃ、もしもだ。その桐山剣がお前を守りきれなくても、お前は彼を許してやれるか?」

「? 何で私が剣くんに許しを出さなきゃいけないの?」

「何でって、それが騎士道ってものだろ」


「人は誰かを守らなきゃいけない、って法律も鉄則も何処にも無いのに、剣くんやマンドラくんは一生懸命私を守ってくれたじゃない。その許しが無いと騎士になれないってのはおかしいよ。

 ――それだったら私は、いつまでも皆が笑顔でゲームしていてくれる方が私は嬉しいな☆」


「……………………そうか」


 本当に、この世に“天使”というのがいたんですねぇぇぇぇぇぇぇ(号泣)


「……よし、取れたぞ。もう大丈夫だ」


 みのりの顔の泥も消えて綺麗な女の子に戻った中、さり気なく脚には複数の絆創膏も貼ってあった。マンドラさんジェントルマンじゃないですか。


「……あの、みのり? その……なんだ。――俺の方こそ、“ありがとう”な。お陰で少しだけ心が楽になった」


「―――うん、良かったっ!」


 マンドラの表情に少しだけ笑顔を取り戻させたみのり。それを見て彼女も満面の笑みで返した。


(………やっぱスゲェよ、みのりは。アイツの湿気った魂にまた火を灯してくれてやんの! 俺にはそう見えたぜ――!!)


 剣も改めて、親友の偉大さを魂の髄まで噛みしめ、己自身の奮起にも繋げていった。


「さぁ、今は決闘中だ。みのりは下がってお前の親友を応援してやれ」

「え、私はマンドラくんも親友だよ……?」

「分かってる。今は居ないが、俺を応援してくれる味方はちゃんと居る事がやっと分かった。もう、大丈夫だ」


「……分かった。それじゃマンドラくんも頑張って!!」


 ここまで来たらもうこの戦場に敵味方は関係無し。マンドラにもしっかりとエールを送りつつ、みのりは剣サイドに帰還した。


「みのり、おかえりぃ。そこでじっくりと見てなよ、久々にマジで燃えるゲーム魅せたるからな!」

「でもそうなっちゃったら、やっぱり最後まで戦うんでしょ、剣くん?」

「俺はそうしたいけどさ、マンドラの奴がゲーム放棄みたいな態度取ってたしなー」


 等と故意にマンドラの体たらくな所を皮肉って指摘したが、もう彼はその必要が無いようだ。


「残念だったな、気が変わったから俺は最後までやり通すぞ! お前とケリ付けたくなってきた!!」


「……だそうだ」

 と言いながら、心做しか嬉しそうな笑みを浮かべる剣であった。


「剣くん、私が居てよかったでしょ〜?」

「当たり前や、流石俺の親友! 帰ったらたこ焼き奢ってやるよ」

「きゃ〜い♡」


 コラコラ、イチャイチャはゲーム終わってからにしなさい!!



「……さぁゲーム続行するけど、どうするよこの状況! 俺はGXキャリバーを装備していてユニットも3体召喚されてる。それに引き換えお前は聖剣二本刺さったまんま! このままボッコボコにしてやれば俺の勝ちだぁ!! HAHAHAHAHAHAaaaaa!!!!」


 ―――わざッッッとらしい煽り!!


「何勘違いしてんだ?」

「……hai?」


「お前が故意に俺を戦わせようとしてんのは分かってんだよ。余計な芝居は必要無い」


「……何や、やっとやる気になったか!!」



「……俺が使っていた聖剣も、俺の妹ももう亡くなったけど、俺はまだ誰かの()()()()()()()()!! 俺の魂はまだ燃えている!!!


 ――――俺だって、ゲーム戦士なんだァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!」



 ――マンドラ・チャンドレイユ、復活ッッ!! 燻られた魂の炎が再び息を吹き返し、胸の内に燃え盛るはサラマンダーの炎か!?


 次に魅せるであろう逆転劇を魅せるのは、マンドラの方だったのかも知れない――!!


「もう過去に立ち籠もるのは止めだ!! 俺はお前を超えて、俺の脚で前に踏み出す!!! 行くぞッッ、桐山剣ッッッ!!!!」


 ―――本日のゲーム、これまでッッ!!



 ▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽

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