22.時空間転移・さすらいの真意
――渓谷・海底・森林と、陸海空備わったオリジンゲームワールドの聖地にて、ゲーム戦士とエレメンタルナイツが織りなした三つのゲーム。
それもとうとう決着が付き、その報酬としてエレメンタルナイツ直々に仲間のマンドラの元、そして離れ離れになった桐山剣と合流するために案内する事となった。
……しかし中編小説とはいえ、ここまで辿り着くのに何十話か掛かっちゃった。という事はメインパーソンの剣とマンドラ、更にはみのりの姿も様子もなーんにも映さないで字数だけ過ぎる始末。
『いい加減に出せー!!』なんて言われない内に出してあげましょうと言いたい所なんですが、物語には手順というものがあります。
何故エレメンタルナイツの四人が、現代を生きるゲーム戦士達を巻き込んでタイムスリップし、剣達に戦いを挑もうとしたのか? その詳細を確かめてからにしましょう。舞台袖待機みたいな感じになっちゃいますが。
そうと決まれば、閑話休題!!
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――戦い終えて、三つの聖域から目的地へ向かおうとするエレメンタルナイツとシャッフルオールスターズ。
その道中をただ進むのではなく、やはりシャッフル側で気になるのは桐山剣・河合みのりの状況、それとこの事件を引き起こした張本人、マンドラ・チャンドレイユの動機であった。
「マンドラはとにかく活発で、私達仲間にも優しくて……、エレメンタルナイツのみならず他の戦士達の人気者でもあったわ」
と、ウンディーネは本性を語り、
「じゃが10年前にこのオリジンゲームワールドで災厄が起きてのぅ。正体も素性も分からん連中が攻め込んで大戦争を起こし、その犠牲にマンドラの妹・サラちゃんが死んでから、アイツは完全に塞ぎ込んじまった」
と、ノムさんは悲劇を嘆き、
「でもね、マンドラは全文明の為に精一杯戦ったの! それだけどうにもならなかった戦争だったし、誰もマンドラを責めなかった。
……でもマンドラは自分を許せなかったんだと思う。妹が、サラがマンドラにとって大事な家族だったから尚更に」
……と、シルヴィーはその後悔。誰もがマンドラを思う故に起こした動機と因果を語っていた。
――そして超次元時空間管理局のルーラ・ラ・ルースは、マンドラ達によって自分らの宇宙船を強奪した事を知った時、管理局で記されたオリジンゲームワールドの歴史の中での戦争の災厄を知っていた。
故に暫くは追う事が出来ず、最低限でも時空間転移による歴史改変等を避ける為の監視だけに留まった。これに対してルーラはこう語った。
「マンドラ達が時空間転移した理由として挙げられるのは、きっと実力の証明。彼は時間や世界の異なるゲーム戦士達と決闘を挑むことで、彼なりに自信を取り戻して立ち直ろうとしている」
そしてマンドラの仲間もまた、彼が立ち直れるならば歴史を捻じ曲げてでも成してやろうとその意志に乗った。
ルーラが管理する時間や空間を超えてまで、マンドラの失った戦意や魂を取り戻さんと共に付いて行ったエレメンタルナイツの絆に感服せざるを得なかった……。
そして彼らは、ネクストゲームに向けて新たな舞台へと一つになるように移動していく。
その場所とは、遥か東の地形にて深淵に飲まれそうな程の闇と、地平線の彼方に差し込む光が混じり合った混沌の平野。
―――そこは無数の墓石が埋められた、戦没者が眠る慰霊墓地であった。
「…………………………」
やっとの登場した桐山剣でさえも、場所が場所であって無言のままシリアスを突き通す。
見渡す限り並べられた墓石、その土には戦争で命を落としたオリジンゲームワールドの住民や戦士達が数多く眠る。中には戦い抜いた者への墓標として墓石の代わりに剣が地に刺さったものから歪な石に花飾りを乗せたものまである。
更にその奥には、マンドラ・チャンドレイユが剣を待ち伏せていた。
「遅かったな、桐山剣」
「あぁ、作者が散々茶番回したからな」
それは言わんといて上げてください!!!
「しかしまぁあれだな、エゲツねぇ光景や。これ全部10年前の戦争で亡くなった人の墓か?」
「……その戦争もどうせ歴史オタクのルーラなんたらって奴に聞いたんだろう」
歴史オタクって……一応時空間の衛生管理教授なんですがあの方。
「正直言って、時空間を飛び越えて思い知らされたよ。違う歴史の、違う世界で生きるゲーム戦士達の幅広さってのを。改めて俺の浅はかさを思い知らされた」
「…………だろうな。俺も仮想の世界と思っていたゲームワールドが存在した事にも驚いたし、異世界のお前とゲームで戦える事すら違和感MAXやったわ」
「…………」
一旦、沈黙に包まれる混沌の墓地。そして何を思ったか再びマンドラが口を開く。
「俺はもうこの場で野垂れ死んでも良かったんだ。時間や空間を超えたところで、妹が帰ってくる筈も無い。
シルヴィーや他のお節介が言うからもう一度エレメンタルナイツとして戻ろうと気になったが……、大事なもん守れない者が、ゲーム戦士に戻れる資格は無い」
マンドラは己の未熟故に宇宙船を強奪し、時空間転移して幾多の世界に住むゲーム戦士達と片っ端にゲームに挑んだが、今ひとつマンドラの魂を蘇らせる事は叶わなかった。
「どいつもこいつも見た目は一級品な魂を持っている筈なのに、蓋を開けば見かけだけの三級品ばかりだ。そいつらと戦った所で、俺の魂に響くはずも無い」
「そして今度は、俺に挑戦してきたって訳か」
するとマンドラ、何を思ったか剣から奪い取った《サラ・チャンドレイユ》のカードを取り出した。
「さっきは勢いでやったが、本気でお前のカードを奪うつもりは無い。俺はお前の他に異世界のゲーム戦士が所有している《サラ・チャンドレイユ》を奪い取ってきた。……だがそのカードを持っていた所で、本物が出る訳でもない。結局は面影を追い求めていたに過ぎなかったんだ」
「……………」
この時、剣が思い浮かぶ彼の心境に合点が行った。
マンドラが時空間転移をし、数多くのゲーム戦士と戦った共通点に《サラ・チャンドレイユ》のカードを持つ者に限られていた。
亡くなった妹の証であるカードを求め、生き返らせようとしていたのだろうか。しかしその行為すらも無意味に感じたマンドラは自棄にも似た悟りで語る。
「炎の精霊サラマンダーを守護に持つゲーム戦士など、所詮この程度だったんだ。……お前には悪い事をしたな桐山剣。もうこのカードは要らん、返すからそのまま元の世界に帰るんだな」
「待てや、じゃお前はこの後どうするんだよ」
「知らねぇよ。もうゲーム戦士を諦めて、それなりに余生を過ごすだろうよ。お前には関係のないことだろ、分かったらさっさと帰れ」
「アホ、カードも返して欲しいけどもう一つあるの忘れてへんか?」
「もう一つ……、あぁ強引に付いて行ったみのりって女か。船が直ったらちゃんと返してやるから、ルーラの乗ってた型じゃ狭いだろう」
「いや、みのりも返して欲しいよ。忘れた訳じゃねぇけど返せよ。じゃなくて! ―――もう一つ、お前の中にある大切なもんあるだろうが、分かんねぇか?」
「………お前、何が言いたい? 勿体ぶってないでちゃんと言え!」
何を言っても返す言葉に答えは無し。とうとう桐山剣の堪忍袋の緒が切れた!
「―――――己を見損なうんじゃねぇよボケェ!!!!!」
混沌の地平線に木霊する剣の怒号。更に続けて剣は豪語する。
「お前が奪い取ったサラのカードの数以上に、世界にゃゲーム戦士は星の数ほど居るんや。異世界の連中と戦って強くなってる気がするんじゃお前はまだまだ甘い!!」
「分かんねぇよ、結局お前は何が言いたい!?」
「てめーで奪っといていらねーから返すみたいな勝手で切り札返されちゃ沽券もクソもねぇだろ。俺が取り戻すのはサラのカード、河合みのりともう一つ!!
―――ゲーム戦士のPRIDEってもんも取り返したる。リベンジマッチ、受けて貰うぜマンドラ!!!」
大変長らくお待たせしました! いよいよ剣・マンドラとのリベンジバトル、開始へのゴングを用意せよ!!
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




