21.北風と太陽、絆のコラボレーション!!
――さぁ、勢いというものは止まる事を恐れない!!
エレメンタルナイツVSシャッフルオールスターズのオリジンゲーム合戦、いよいよ最後の決着へと向かいます!
残すは槍一郎&倭刀VSシルヴィーのリアルエアホッケー、この先暴風注意!!
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――――ゴォォォオオオオオオオ!!!!!
ほらほらほら言わんこっちゃない!! 現在オリジンゲームワールドの渓谷シルフ・ウィンドバレーでは、台風・ハリケーンも真っ青の暴風が吹き荒れております!
その中で無謀にもリアルエアホッケーを繰り広げているのは槍一郎&倭刀ペア、そして対戦相手はお気楽極楽に空気となりて姿を隠しゲームするシルヴィー。嵐を呼ぶゲームで今どのように展開されるか確認するならば、のぉぉおお!?
「「だああああああああああ!!!!!」」
「キャッハハハハハハハハッッ☆☆☆」
これは何と表現して良いのやら……、足場が殆ど無い渓谷の下から吹き上がるは東西南北と強い風、それがエアホッケーのフィールドを中心に押し上げようとしている。つまりは風の力によって上昇気流が発生。故に三人は崖の足場も抜きにこの気流の圧力で浮遊状態だ。
そして驚くべきは、本来フィールドの地で風の勢いで滑っている筈のパックすらも宙を舞い、こちらもフワフワ浮かんでいる所を槍一郎が空を切りスカッと一発フライングスマッシュ。
〔シルヴィー 5―4 槍一郎&倭刀〕
こんな修羅場で良くぞ追い上げたものだ槍一郎! ……それともう一つ。これエアホッケーじゃないよね!? 空中で風に煽られながらラリーしてるだけですよねコレ!!?
「今更常識もテンプレもあるものか!! ここは時間も空間も異なった未知の世界だ、ここなら躊躇する気遣いも世間の眼も無い! ならば僕の赴くままに、風を吹き荒れさせるまでだ!!!」
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【ストームランサー】発動中
◎――――――――――――――――――◎
いざとなったら魂を込めろ! 槍一郎のPASは青い嵐の槍。発動と同時に彼らの背を押すように追い風の嵐を呼ぶ。
そしてシルヴィーも空気化して姿を隠してのトリックプレイ、更にシルフの魂印のこちらも追い風。これら2つの風がぶつかりあい、パックをも浮かせる上昇気流を呼んだという訳か。
槍一郎とシルヴィー、互いに質量の軽い分上昇気流に乗っての空中戦。浮かぶパックのスマッシュに打ち返しては止め、止めては打つの繰り返し。そしてそのデッドヒートに取り残されたのは、
「俺が重いって言いてぇのかよッッ!!!」
血の気が多い倭刀、槍一郎らのフォローに回るように珍しくアタッカー型がディフェンスに移ったようだ。
「まぁ確かに、槍一郎先輩吹っ切れちゃったしな。先輩ってば、日頃のストレス発散に張り切ってら!」
下手に出た倭刀は心の向くままにゲームに愉しむ槍一郎の様子を見て嬉しそうであった。
オフィシャルプレイヤーから転落した槍一郎の周囲を鋭く指す、陰湿な世間の眼もオリジンゲームワールドには無い。後ろ指を指されたような嫌な痛みに耐えてきた彼にとって、久々に晴れやかになるようなゲームを体感している。そしてシルヴィーも、
「イイねイイね、その顔! 貴方の魂も思う存分ゲームを楽しんでるのが分かるよ! それでこそ戦い甲斐があるってもんだよ!!」
シルヴィーも空気で見えないが嬉しそうなのが言葉だけでも良くわかる。
更に槍一郎も今まで戦ってきたゲームにいまいち乗れなかった事、辛い現実を突き付けられた事への苛立ちが暴風となりて、荒れに荒れた風で懸命にゲームに挑んでいく!
(あぁ、こんなに清々しく戦えたのは久々だよ。余程僕の魂が荒んでいたのか、本心が言えないジレンマみたいなものが心の風を止めていたのか。
……やっぱり心は素直なんだな。心の底から遊びたいって叫んでいたのが分かる……!!)
現実の波に飲まれて、好きなゲームに楽しめない自分に久方ぶりに気持ちが素直になりつつあった槍一郎。
このド迫力のオリジンゲームに挑む事によって、もう一度嵐のように颯爽と戦う自分に戻りたい気持ちにさせ、その万感の思いを込めて放つ遊奥義……!
「『烈・風・突』ッッ!!!!」
直型転じて乱気流、その勢いに任せてマレットに突かれるパックが稲妻の如くジグザグに軌道を変えて、ゴールへと綺麗にシュート!!
〔シルヴィー 5―5 槍一郎&倭刀〕
さぁ互いにマッチポイント、6点先取ですからどっちが取ればゲーム終了。土壇場の局面で最後に笑うのは誰か!?
「キャハハハハハハ☆☆」
いやシルヴィーさん、今笑う所じゃ御座んせんよ!!
「いやでもね、こんな時でも笑っていたいじゃない! ゲームだったら尚更! ……マンドラはあの日以来、全然笑いあえて無いから!! これが終わったら嫌でもアイツに笑って欲しいんだから!!!」
笑いのち涙、シルヴィーは空気現象から実態に戻るや否や、緑の瞳に潤む雫。
エレメンタルナイツのリーダー、マンドラに願う想いは秋風のように冷たく寂しいのか。仲間を思う気持ちは互いに譲れないものあり。だからこそ負けられない戦いもここにある!!
―――ラストパック、投下!!!
吹き荒れる風、振りかぶるマレットに荒ぶるパック!
風に煽られて時速130キロ級のパック返しを交互にラリーして数十回、どちらも瞬発力にして申し分無し。意地でもゴールラインを守護しようと必死ですが……、誰か忘れてません?
「…………いやえぇんやけどね、先輩楽しんでるし水指すんも野暮やろ」
ここまで来ると出番気にして空気を壊さんと自然とディフェンスに徹する倭刀。
しかしここは目立ちたがりの彼、何か槍一郎の勢いを崩さずに助太刀する方法は無いものかと考えて直ぐに閃いた!
「しゃーねぇ、やらねぇよりやるPASや!!」
続けて倭刀もいざとなったら魂を込めろ!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【ドラゴンブレード】発動。
◎――――――――――――――――――◎
倭刀のPASはオレンジの龍の刀、そしてその色は本人にも気付いていなかった真の力が隠されていた!!
――カァァァアアアアア………!!
「!!?」
「や、倭刀! そのマレット……」
「太陽……!?」
何と倭刀が握る手形サイズのマレットが、太陽の形の巨大シールドで大強化!
オレンジの色は太陽の象徴、龍刀に太陽の力も宿したPASに発動した本人もビックリ。これならゴールも気にせず存分に槍一郎は攻撃に専念出来る。
そしてもう一つ、太陽の盾の影響でゲームが一変。ジリジリと太陽熱を発するシールドに槍一郎の北風が熱気を運んで一気に夏風に変化。真夏以上の高温・高湿に襲われたシルヴィーはとうとう……
「暑っつ〜〜い!!! もう我慢できなーーーい!!」
暑さに耐えられなくなったシルヴィー、薄い羽衣を脱ぎ去って下着状態……あ、駄目ですよ凝視はダメ!!
「今だ!!」
そしてその隙を槍一郎は見逃さず、決死のフィニッシュへ!!
「『神風の裁き』!!!!!」
吹き荒ぶ風はまるで神からの鉄槌の如く、強烈にパックを押し寄せ、ノーガードのシルヴィーをも吹き飛ばすほどの風速。これが槍一郎の全力か、神風は勝利信ずる者にのみ吹くと言われているが、彼はそれに相応しき男だったのか!?
―――シュコンッッ!!
〔シルヴィー 5―6 槍一郎&倭刀 WIN!!〕
風の精霊を屈するには北風よりも太陽の方が有効的であったのか太陽の落とし子・倭刀、それをものにするように勝機へ導き出した槍一郎。
まさにゲーム戦士版『北風と太陽』の如く、精霊のエアホッケーを見事制した!!
――これを持ちまして、三大オリジンゲーム完全制覇!! 陸海空全てを制したシャッフルオールスターズの大勝利だ!!!
▶▶▶ NEXT▽
――戦い終えて熱気も冷めて。森に海底に渓谷と、それぞれ出し切ったパワーを癒やすように放心状態になりつつも勝ちの実感を味わい、片方は負けた悔しさを噛みしめる。
エレメンタルナイツ三人全員が、その敗北を魂に焼き付けていた。
「ほぇ〜、参ったのぅ……」
「やっぱり負けた時の悔しさは、変わらないですが……」
「それでも楽しかったよ! グッドゲーム!!」
等とゲーム戦士らしく勝者に称えつつも各々異なるリアクションで礼を交わす。
「それじゃディーナさん、私達をここから開放してくれますね?」
「そーよそーよ! 早くみのりちゃんを助けたいの!!」
「分かっているわ。貴方達もあの桐山剣と河合みのりって人が心配なんでしょう。私が直々に案内する」
途中乱心もあったりしたがようやく冷静になったディーナ。海底でのパズルを終えた今、ここに長居する必要は無い。
「これが終われば私も囚われの身ね。宇宙船を強奪し、時代改変にもなりかねない罪を犯したのだから。そうでしょう、ルーラ?」
「…………私が管理者の立場でこれを言うのは何だけど、貴方達はマンドラの為に片棒を担いだだけ。宇宙船の強奪程度で私は罪を問う気は無いわ」
「そうですか。……それでは後は、当事者同士の問題になるんでしょうね」
ルーラも無機質な感情でありながらも、情けは知っている様で。ディーナや他の同胞への罪は多めに見るとの事。当事者であるマンドラは、この後の行動次第でどうなるかである。
一方の『シルフ・ウィンドバレー』では、槍一郎がある問いを出そうとしていた。
「その前に教えてくれシルヴィー。君たちエレメンタルナイツはマンドラの事をどう思ってるんだい? 彼の事で今回の事件に加担せざるを得なかったのならば、彼の笑顔どうこうと口にしない筈。その辺を教えてくれるかな」
更に場面戻って『ウンディーネ・マリン』でも穂香が、
「貴方はマンドラさんを好きだと口語しました。彼を溺愛する故に事件に関与し、PASを暴走寸前まで追い詰めた心境に私もかつて似た経験があるのです。どうかそこを教えてくれませんか……?」
それらの問いに、何か仲間内でのチグハグからなる歪みが事件を起こしたのかと槍一郎と穂香は思ったのだが………それはとんだ考えすぎ。
『ノームさんの愉快な森』での豪樹とノムさんが答えを悟っていた。
「あんたら、相当マンドラっつー男を信頼してたんやな。ジーさんの本気から何となく読めたわ」
「…………それを言うのも野暮ってもんじゃろ」
「「「マンドラは、皆の大事な仲間だ」」」
―――たとえ時代も空間も違っても、見た目や価値観が違っても、仲間を思うその絆は決して変わらない。
シャッフルオールスターズはこの時改めて、ゲーム戦士の在り方に気付かれた。そんなオリジンゲームを経験したのでした。
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




