20.知能×絆+愛=???
――ノームの森による格ゲーバトルを制し、その情熱は遥か彼方の海底からも伝わった!!
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――海原エリア『ウンディーネ・マリン』。海底でパズル連戦をやること自体シュールであるが、第三者側に立って様子を見るならば、もっとシュールな展開が。
『ねぇねぇねぇねぇ私の事好きって言っちゃったら? 言っちゃいなよぉ、言わないと殺すッッ!!』
遂にエレメンタルナイツ・ディーナのPASに眠るウンディーネの意志がヤンデレへと本格的に路線変更してきた。かなり危険な状況な上羽交い締めにされて思うようにゲームが進行できないレミ。
更にディーナのPASは彼女の体を水で実体化させた分身体によって、シャッフルガールズは劣勢に立たされている。だが愛に飢えたディーナの傍若無人ぶりに、とうとうレミ&穂香は…………
「「うるさああああああああああい!!!!!!」」
憤るガールズのシャウトが彼女らの胸の奥に眠るPASの光を呼び、ディープブルーの深海に輝かせる。いざとなったら魂を込めろ! イエロー&グリーンのPASの閃光!!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【ブラックボックス】発動。
◎――――――――――――――――――◎
黄色いPASの波動はレミ、なんの変哲も無い箱の形だが中身は不可思議の構造で溢れたヒラメキの象徴!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【ソーサラーロッド】発動。
◎――――――――――――――――――◎
穂香は緑の波動、魔法使いの長い魔導杖が彼女の幅広いテクニックを象徴させる!
果たして、2つのPASの発動は何を意味するのか、もうゲームウォーリアーの特徴を理解した読者の皆様ならお分かり頂けたでしょうか!?
「レミさんから、離れなさいッッ!!」
―――ビシュンッ!!
「あっ?!」
遠方の穂香の指先から迸る閃光の弾丸が、レミにへばりつくディーナの手元に命中! そこで怯んだ隙にレミは束縛から開放された。
「今ですレミさん!!」
「オッケー、急いで攻略するよ!」
『―――デコード・スキャニング……!』
ディーナの妨害によって既にパネポンの画面はパネルで満帆のゲームオーバー寸前まで来ていた。
しかし、レミのPAS・ブラックボックスによる奥義【ナノテクノロジースキャナー】よってパズルの攻略方法を正確かつ確実に導き出した。その間僅か0.005秒の解読、スーパーコンピュータ並の知能だ!!
「うりゃりゃりゃりゃ〜〜〜!!!!」
これぞ、レミちゃん印の速攻パズル消去戦術! PASの能力でパズルの状況をスキャンした事により31.50倍(当社比)のスピードでパネポンを大幅消去、連鎖・6個同時消しも何のその、なし崩しの如くに埋まったパネポンフィールドを一掃させた!!
(は、早い……!!)
これにはディーナも一驚した。穂香はサムズアップの報酬、5巡目のパネポンを一気にクリアさせて気を良くするレミ。続く6巡目の『ヨッシーのクッ◯ー』へと進んでいく。懐かしいですな。
(……あれが畠田レミのPAS、最先端テクノロジーの無機質な魂が、人間の頭脳をも極限に近づけていくとは……!)
時空間の管理職を勤めてるだけあって、幾多のゲーム戦士を観察してきたルーラでさえも、レミのPASは類稀なる部類に入っていたようだ。
レミに話題を掻っ攫っているようだが、穂香も稀という意味では同類であろう。長年PASの研究を積み重ねていた穂香の父と母は、人間の遺伝子とPASを組み合わせる事によって家族の遺伝をそのままPASに融合させた【GNA】を開発。
それを引き継いだのは大森家唯一の生き残り、大森穂香。そのPASの凄まじさたるや。
「『セブンカラーアビリティ・赤』! 飛び散れ火花!!」
弾く火花は線香花火か!? 海底でも湿気ない高圧の火花がコントローラーを刺激し、若干ゲームをバグらせて一気にパズルを消していく荒業! これはゲーム戦士にしか出来ないので良い子は真似しないでね!!
「くっ……、貴方達のPASに常識なんて無いのかしら!? こうなれば――!」
そちらも色んな意味で風紀を乱しといて何を今更。等とボヤいてる間に、液体で出来たディーナの分身と本体が近づき合うなら……えぇ?!
「『真青融合!!!』」
個体と液体が一心同体、重なり合えばそこに立つディーナは突然変異で軟体、即ちプルンプルンのゼリー状態のディーナに融合された!
「何で?!!」
「何か色気スッ飛ばして美味しそうですね」
穂香さん、お願いですから食べないでください。
「バカね、姿に気を取られる暇があるならパズルに集中した方が賢明でしてよ」
とディーナが忠告し、パシャンッと水のうねりに身を任せて右手をコントローラーに振るうならば……!
「……はぁ?! パネポンが一振りでクリアしてる!!」
「あれが融合の力ですか!?」
この無茶苦茶な展開を説明するには……、ルーラさんの力を使うしかない! 何か知ってるんでしょー!?
「語り部がゲストキャラに頼ってどうするの、一応知ってるけど。――あれはただ本体と分身を融合させた訳じゃない。あの融合は彼女の脳内に眠る計算プログラム【ディープブルー】を起動させる為の実行コードなのよ」
「ディープブルー……、もしかしてチェスの世界チャンピオンをも制したスーパーコンピュータですか?!」
穂香は意外にも知っていたようですが、読者の皆様の為に私からも説明を。
『ディープブルー』はIBMが開発したチェスの指し手を計算する専用スーパーコンピュータ。かつて1997年にチェスの世界チャンピオンであったカスパロフを僅差で勝利した事から話題を呼んだ。
当時の演算能力からして1秒に2億通りもの指し手計算が出来た程の知能を持ったと言われているが、時空間の異なるオリジンゲームワールドでは、その科学力をも軽く超越する。
「ディープブルーはこの時代では彼女一人で作り上げた学習プログラムなの。チェス等のボードゲームのみならず、パズルにおける計算能力の極限を脳内にラーニングさせる事すら、彼女には容易に可能にさせるのよ……!」
とすると、ディーナは紛れもなくエレメンタルナイツ随一の天才。しかし愛に溺れて、知能ばかり優れていても大事な人を救えない自分に自暴自棄になりかけていた。
その事にレミはPASの力で微かながら感じ取っていたのだろう。そんなディーナの姿を見て、覚悟を決めた。
「面白いじゃないの……! この勝負にあたし、やっと本気になってきたわ――!!」
さぁ、互いに勢いを見せた所でゲームは急展開。
6巡目以降のゲームも攻めつ受けつの攻防戦、『ヨッシーのクッ◯ー』『キャンディーク◯ッシュ』『ドクターマ◯オ』『もじぴった◯』と古今東西のパズルゲームを三人共ほぼ同じペースで進行していく!
そしてラスト、10巡目のパズルは!!
「何よこのルービックキューブ!!!」
「面が、細かすぎます!!!」
遂に平面パネルから立体の3Dで締めようと来たか! レミたちの眼前に立つ巨大ルービックキューブ、しかも100×100の超難関モード!!
これでは面一つ一つの色が細かすぎ、小さすぎて一部の人が集合体恐怖症だとしたらば鳥肌が立つほど緻密な作りだ!
「『ゲーム戦士の頭脳に不可能は無い! 友情も愛情もかなぐり捨てて、私はブレーンとしてエレメンタルナイツを支える役目があった!!
なのに私は、大好きなマンドラの妹を見殺しにしてしまった!! こんな立体をスライドさせても何も意味は持たないじゃない………ッ!!!』」
――軟体のディーナの瞳に溢れる純真な涙。そして口にした本音に対し、レミは呟いた。
「アンタ、好きな人居るんじゃない」
「『……!』」
「あたしもアンタも頭良いって肩書持っててもね、天災や人間関係でのアクシデントまで計算できる程都合良くは出来ないわ。どうしても困難にはぶつかるもの。
―――でもね、どんなに辛く苦しい事があっても、それを超えられる計算なら幾らでも出来るわ!」
レミは巨大ルービックキューブを冷静に解読しながら、ディーナに言い諭す。既にディーナの心を解読する計算は済んだようだ。
「『超えられる計算……? それはどんな計算式なの!?』」
「難しくないわよ! 小学校の子でも答えられるわ」
さて、その計算式は……!?
「【知能×絆+愛=サイキョー】!!」
「『…………????』」
数字と記号で頭を巡らすディーナの脳内に意外なワードの計算式に理解不能状態。
ならばレミちゃん直々に教えてしんぜよう、その計算方法を!!
「まず知能は勿論自分の頭! そして絆は、穂香ちゃんやみのりちゃんみたいに私のお友達! どっちも強ければ強いほど数値も高い、頭良くて友達も強ければ尚更!!」
「そういう事です! レミさん、私のPASパワー受け取って下さい!!」
穂香は強く念じて自分のPASの力をレミに放出、エネルギーを蓄電させてレミの頭脳も冴えるに冴える。
まさに計算通りの展開、ならば掛け算から更に足すことの【愛】やこれ如何に!?
「ゲームも、お友達も、だーーーーいすきな事!!」
「『……そんな、そんな単純計算で頭脳を超えられると言うのか……!?』」
「単純明快、即ちサイキョー! これほど清々しい計算も無いと思うけど? ……まぁそろそろラストだから、結論言うけど――――」
その時、レミの両手から迸るは高圧電流の弾ける音。それがバチバチッと鳴るならば、数刻後に轟く雷撃の合図なり!
「あたしの大・大・大・大好きなみのりちゃんを返せーーーーーーーーッッッ!!!!!!!!!」
ブラックボックスのPASから迸った雷神も驚く大雷撃! その雷撃は針のようになるかと思えば、ルービックキューブのスライドを遠隔操作、かつ正確に6面全ての色を揃える方程式を導き出し、勝利へと導き出した!
これぞレミの奥義・【カルキュレーション・ボルテックス】だ!!
「『…………繋がりましたわ。もやもやした私の心に対する最善の答え。
“自分に素直になれ”って事…………ですね』」
思考回路はガクッとショート状態。極限を超越したブレーン対決、心の強さを計算に置けなかったウンディーネの魂の最先端テクノロジーは畠田レミの前に屈したのでした……!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽




