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2.シャッフルオールスターズ、ここにあり!

 

 ――興奮冷め止まぬ決闘ゲームの一興。

 剣と倭刀はゲームを終えても暴れ足りないのか、ヤイヤイと口で言い争ってそれを抑制するはみのりと穂香の女子勢。


 楽しいゲームも体力切れれば永遠に続く訳がない。一旦休みにとテーブルやら自販機が並ぶ休憩エリアに向かい、さっきからずっと寛いでた槍一郎の元へ。


「また負けたんだな倭刀。剣のPASに用心しろってあれ程言っただろう」

「ちゃいますって槍一郎先輩! 黒龍の攻撃コマンド打とう思ったら例のサラなんちゃらに焼かれて……」

「それを不用心って言うんだよ」


 倭刀は剣や槍一郎よりも一つ下の後輩。反論しようにも御尤(ごもっと)もな意見で何も言い出せなかった。


 剣、倭刀、槍一郎、みのりに穂香はゲームで繋がりあった親友同士。騒がしくも和気藹々な風景には私を含めた周囲をも元気にさせる魔力がある。……だが、仲間は彼らだけではない。


「皆〜! お待たせ〜!!」


 向こうから剣たちの元へと駆け寄る黒髪ポニーテールの女の子。こちらも剣たちの仲間、ブラックボックス思考に長けパズルゲームが得意な『畠田(はたけだ)レミ』だ。


「あっ、レミちゃんやっと来た!」

「課題片付けるのにどんだけ掛かっとんねん!」


「だってぇ〜面倒くさいんだもんッ!!」


 メンバーより頭の回転が早いことで定評のある彼女だが、学校の勉強やら課題だけは嫌いな変わった女子なのだ。更に続いて登場したのは7人目の仲間。


「おーぅ可愛い教え子の諸君! やっとるなぁ!!」


 活力溢れて威勢も良い、豪快な蛮声を上げて呼びかけるはおおっ!?っと、誰もが見上げりゃ驚く大巨漢にスキンヘッドの男。気は優しくて力持ちとはこの御方の事、このギャラクシーの館内でゲームジムを経営するインストラクターの『高橋豪樹(たかはしごうき)』だ。


「ありゃ豪樹さん、仕事は大丈夫なんすか?」


「何言うとんねんなもう昼の12時やで。昼休憩ってヤツやがな。そんでもって……ほれ! 皆の分も飯買うてきたで!!」


 豪樹はテーブルの上からドサッと置いたのは、別階の飲食店コーナーから買ってきたハンバーガーやらポテト・シェイクとジャンクフード三昧な7人分。早い話が仲間への奢り、懐の深いお兄さんですこと!


「「「「わーーーーい!!!」」」」


 剣ら5人が高校一年、二年の年代に対し、この男は26歳と立派な大人。ゲームジムの店長を務めてるくらいですから羽振りも良い。そして剣たちにとってはメンバー兼保護者な立場なのだ。



 これぞ主人公格、桐山剣率いるゲーム戦士で編成されたゲームチーム。みのり、槍一郎、倭刀、穂香、レミ、豪樹に剣と合わせて7人。七色の魂を翼に自由の象徴である不死鳥のエンブレムを背にゲーム時代に名を馳せる。


 名付けて【シャッフル・オールスターズ】、ここにあり!!


 ▶▶▶ NEXT▽


 ――やはり育ち盛りか、剣ら男子勢はジャンクフードを豪快に貪り食い、女子勢は食べながら談話を嗜む。



「……まぁあれやな、『ゲームワールドオンライン』が閉鎖してもう半年になるが、これだけゲームが溢れとるんや流石に皆暇はせぇへんわな」

「でもWGC側にしてみれば赤字らしいですよ豪樹さん。提供してるソシャゲやらアーケードやらの利益だけじゃ焼け石に水、って感じだそうで」


「だから再建準備には手間が掛かるやろ。あれだけ立て続けに事件が起きたんやしな」



 実は今日における超次元ゲーム時代では、現実世界と電脳世界をリンクした世界最大規模のVRMMO【ゲームワールドオンライン】なるものが出来ていたのですが……。

 このゲームと現実を共有した時代を良しとしない者達によるテロ活動や人害被害が起こった為に責任を感じた管理組織機関の【WGCワールド・ゲーム・コーポレーション】は、一旦管理を見合わせるべく一年の目処に完全閉鎖・再建を目指してメンテナンス中。


 そうでなくてもこの時代には、『AMAZING』やら他にも最先端ゲームは数多くあるのだが、ゲームワールドの壮大感には劣るようで内心皆も退屈しているようだった。


 そんな中である奇妙な噂が飛び交った。その発端はハンバーガーを口に頬張りながらしゃべくる剣から。


「……あ、そうや槍ちゃん。お前ここの辺りで()()()()()()()に絡まれたって話聞いた?」


「変なのはお前だろ、その口の中の飯飲み込んでから話せよ」


 一旦飲み込んで、剣は再び話を持ちかける。


「……いやな、何でも『変わった服装した男』にいきなりゲームを挑まれては全く見たこともないカードを使われて惨敗したって話」

「負けたら何か金とか強奪とかしてくるのかい?」


「それがそーじゃないらしいんだわ。何か奪うって訳でもなくて、疾風のようにゲームして疾風のように去って行くんだってさ」


「それは……ただゲームしたいだけじゃないのかな」


 確かにこれだけでは悪い噂には聞こえづらい。だが剣がこの話を持ち掛けたのには一つの理由があった。


「その全く見たこともないカードっての聞いたらさ、そいつはゲームワールドの大いなる遺産【Gパーツ】の聖剣と瓜二つなんだって」


「何……?」


【Gパーツ】とは、ゲームワールドオンラインの平衡を保つ為に生まれた強大な力を持つ神器の事。それらは皆サイコロやゲームに使われる道具のような形をしていて一つのみならず複数存在する。

 半年前に大森賢士朗(おおもりけんしろう)の手によってGパーツの一つである『Gパーツ・トランプ』が強奪され、聖剣としてアメイジングカードに変換された。現在は力を失われつつもWGCの手によって保管されている。


「……まさかお前、そいつに挑戦しようって考えてるんじゃ?」


「俺だって切り札騎士(エースナイト)語ってんねん。聖剣紛いのカード使って調子ブッこいてるアイツとやり合う手はねぇだろ」

「またそんな事言って! 後で返り討ちにあっても知らないぞ僕は」


「世間はゲームを機会均等に見られる時代だぜ、やり合っても文句は言われねぇさ。槍ちゃんもさ、たまにゃ俺らだけじゃなくて他の奴らとも話してみたらどうよ?」


「…………僕は良いよ。会っても誰も喜ばれないだろうし」


 等と剣とは対等に消極的な槍一郎。そんな釣れない彼に剣も溜め息。


「よっしゃ腹ごしらえ終わり! 剣さんもっかいアメイジングやりましょうぜ、リベンジや!!」

「またやんのかよ! お前これで12連敗やで」

「私違うゲームが良い〜」

「あたし来たんだし次パズルやらない?」

「私は何でも良いですよ」

「あ、豪樹さんご飯御馳走様でした!」

「おぅ、一杯遊んてこいよ〜!」


 現代と比べて治安にも不安な所はあれども、仲間達の交流はいつの時代も温かな温情が溢れている。



 今日は遊びの絶好日和な日曜日。剣たちは日が暮れるまでギャラクシーで存分に遊び尽くすのだった。


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