19.ワイより強い奴に逢いに行く
――さぁさぁ皆様方お立ち会い! 中盤ゲームの山場、シャッフルオールスターズの逆転劇で御座〜い!!
まずは高橋豪樹と、ノム・ジーで繰り広げられるぶっ飛び格ゲー、【パワーバーストファイター】決着です!!
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「―――PAS発動! 『アイアンフィスト』!!」
いざとなったら魂を込めろ! 筋肉の奥底に宿す紫の魂!!
◎――――――――――――――――――◎
・PAS【アイアンフィスト】確認。
◎――――――――――――――――――◎
豪樹のPASの形は即ち、“鉄拳”。巨大な拳が彼の闘志となりそれを発動させた時、凄まじき闘魂となりて格闘技術・攻撃力がぐーんと上がる!
「ほほぅ? “紫煙の鉄拳”て訳かぇ。じゃが今のワシはミクロサイズの隕石にも等しい。お主のPAS程度でワシを吹っ飛ばせるかいのぅ?」
等とミクロサイズの身体で巨漢の豪樹に煽るノムさん。だが覚醒した豪樹にはその煽りはそよ風に乗って受け流すだけ。
「ちっちゃい身体でチョコマカしてりゃ、そりゃ余裕だよなジーさん。だがゲーム戦士のPASは常識を極限まで超越する。ジーさんの頭じゃ、次にワイの出す技は波動拳か何かか思っとるとちゃうか?」
「んぁ? 格ゲー好きなお前さんならそれしか無いじゃろう」
何やら駆け引きを差し出す豪樹。わざわざ自分が出そうとする技を故意に暗示させる彼は、教えたとおりに腰に両手を構えての波動拳ポーズを取る。
「そんな波動、ちょちょいと回避して……」
「待てや。誰が出すって言った?」
………? いや、だって波動拳は波動を打ち出す飛び道具技でしょう? 受けるか避けられるかしかないですが……。
「ワイが今から出す技は、撃ち出す技ちゃうで。―――お前を吸い出す技や!!」
と腰に構えた両手の手砲を前に突き出すなら、おおっ!?
―――ギュオオオオオオオオオ!!!
「お、お、ぉぉぉおおおお?!!!」
何と豪樹の体内に秘めて手から生み出したのは波動ではなかった!! PASの力によって発生した黒い渦によってミクロサイズのノムさんが引き寄せられていく!
これは、ミクロサイズのブラックホールだ!!!
「バ、馬鹿な!? 相手を吸い出す拳法なんぞ聴いたことがないぞ!?」
「当たり前やがな! これはワイのPASだから可能にした奥義や! 名付けて【我頑巌・ブラックホール拳】!!」
何とか木々に捕まって吸い込まれんと耐えるノムさん。しかしここは吸引力の変わらないただ一つのブラックホール、狙った獲物は張り付こうとも吸い尽くす。とうとうミクロのノムさんは木から手を離して吸引の準備へ。
「ひゃあああああ〜! ブラックホール吸い込まれて何処へ飛ばす気じゃ〜〜!?」
―――キュポン☆
ブラックホールにノムさんが吸い込まれるのを確認した豪樹は間髪入れず……、
「勿論、場外じゃあああああ!!!!」
ドーーーーーーン!!!
手砲一発、凝縮したブラックホールを砲弾にして空の彼方に吹っ飛ばした豪樹! その時黒い渦は星となり、遠方でなにやらちっちゃいものがポイッと捨てられたようなエフェクトがあったが、ともあれ。
〔ノム・ジー 1-1 高橋豪樹〕
場外とみなし、豪樹にも点数が入った。これでイーブンとなりあと一点誰かが入れればゲームに決着が付く。これにはリードした豪樹も目付きが本気に変わっていく。
「……こっからが本番やな」
あとはノムさんが戦線復帰するのを待つだけ。豪樹は軽くウォーミングアップと調整を済ませる。その間もなく、最終ラウンドへ突入する……!
『――――ォォォオオオオオノレェェェエエエエエエエ!!!!!!!!』
木霊のようにエコーと地響きが起こりそうな咆哮を放つ声に、何事かと辺りを見渡すならば……、わぉ。
土や木々で身体を大きく覆われたノム・ジーが、ミクロ転じて巨神となりてアイルビーバックだ!!!
『よくもワシをゴミのように吸い取って、ポイ捨てなどしおったなぁあああ!! 年寄りは丁重に扱わんかい若造めえええええええ!!!』
やり方もやり方であるだけに、ポイ捨てされた事に腹が立ったのか、逆上するノムさん。血圧が気になる所でしょうが今は正念場、豪樹も弁解する前にやる事がある。
「悪ぃなジーさん! ワイもゲームの土俵に立ったからにゃ、ジーさん相手でも勝たにゃならんのや! アンタが大きくなろうとも、ワイは一歩も引かへんで!!」
独特の構えを取って豪樹は臨戦態勢を整えた。身体の大小関係無しに本気で挑む、男意気が垣間見える!
『口の減らん奴じゃな。ならばワシも徹底的に叩き潰してやる! 覚悟せ―――――』
バシュ―――ッッ!!
ノムさんの説教をも打ち破る豪樹のハイキック炸裂!! 5メートルはある巨体に跳躍を付けての顎にクリーンヒット、これもPASの覚醒あっての身体能力だ。
「覚悟せぇ、はこっちの台詞やでジーさん」
豪樹の明るい声から一変、ドスの利いた声。その刹那に見せた鋭い眼光からは、格闘精神に命を掛ける豪樹の憤りにも似た凄まじい覇気が見られた!!
「余裕ぶっこいて小さくなって、追い詰められたら巨大化だぁ……? それでフェアに闘うてるつもりか!!!」
バシッ、ガッ、バキッ! ドゴォッッ!!
目にも留まらぬ正拳・烈脚との連携コラボレーション、まるで鉄拳の軽やかな10連コンボを見ているかのような華麗な乱舞。これには巨大なボディに絶え間ない攻撃の連続に、ピンポイントでヒットするノムさんに確実なダメージが与えられていた!
「シュッッ」
―――SMAAAAAAASH!!!!!
おおっと!? ここで集中して狙ったノムさんの右膝辺りの土で覆われた巨大脚が崩壊した! これによりバランスを崩すノムさん、豪樹の快進撃は終わらない!!
「オラ、もう片方も喰らえや!!!」
――――BREAAAAAAAK!!!!!
更に今度は餓狼◯説級のパワーダンク宜しく、上から振りかぶる剛拳にもう片方の脚も崩れ落とす。もう巨体は立ってはいられない所まで追い詰めた!
『な……何故じゃ、何故お主にそんな力が残っておる!? 何がお主をそうさせたのじゃ!!?』
予想外の展開に困惑するノムさん。その問いに答えるのも滑稽ではあろうが、それでも豪樹は答えた。
「……ワイはただ、己よりも強い奴と戦いたいだけや。そんな土や森で体を覆って大きく魅せるのよりも心構えが違う。―――格ゲー、舐めんなよジーさん!!」
格闘に命を燃やすゲーム戦士は清く正しく美しく、過信もせず己の力を磨きかける事に誇りを持つ。自然の恩恵を頼って優越を付けようとしたノムさんのやり方に、一片を喝を入れてやろうと豪樹は本気で戦う事を決めていたのだ。
――そしてそのゲームは決着の時を迎える!!
『ならば……これならどうじゃあああああ!!!』
山々の岩石で作られたジャイアントブローが豪樹に迫ろうとする中で、対する豪樹は止めの技を放とうとする。
巨人よりも数十倍巨大な、流星群の如し鉄拳の雨が。
「『我頑巌・ 巨龍星弾』ッッ!!!!!!!」」
大巨人に、拳のビッグバァァァァァァァン!!!!!
横殴りの鉄拳流星群に、大地の巨大鎧は総崩れされ、ノムさん本体もその波に飲まれて場外一直線に突っ込んでいった。もうこれで結末は分かったでしょう!!
〔ノム・ジー 1-2 高橋豪樹 WIN!!〕
「――――――押忍ッッッ!!!!!」
――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽