18.発動せよ、逆転のPAS!!
――風に煽られ、水に翻弄されているオリジンゲームの佳境の最中。
土の精霊を守護に持つエレメンタルナイツ、ノム・ジーとのスマッシュ格闘でも……
――バシッ、ガッ、バキッッ!!
既にノムさんのPAS、土の精霊・ノームの魂を呼び起こしての【精霊憑依】。音だけ読んでいると今回はまともだろうとお思いでしょう。ところがギッチョン!
「 」
「あ!? なんつったジーさん」
「 」
何故にノムさんの字が小さいのか、お応えしましょう。
それはノムさんの身体が12センチしかないからです!
これも憑依による影響、ノームは小人の妖精であり手先は器用で知性の高いおじいさんなのですが、ノムさんの場合は反映されるのは身体のみ。という事はあの格闘能力が強いノムさんが小さくなるとどうなるか?
「 」
―――ドォォォオオオオオオン!!!!!
鉄拳一発で半径15メートルの隕石クレーター! 小さくなった分一発の拳の威力が凝縮された結果、ご覧のパワーを放つという。メテオインパクトとは言ったものか。
「 」
「聴こえねぇし読めねぇから普通に吹き出し作らんか!!!」
……はい、じゃボリュームを上げてもう一度。
「ワシの拳骨は隕石並み、いや手刀も蹴りも皆メテオ級のスマッシュじゃ! これぞノーム流・遊奥義『ガイアミニマム』なり!!」
(いや、ちっちぇからパンチもキックも無いやろ。体当たりでも隕石になるやん)
等と陰ながらツッコミを入れる関西人の流派の豪樹さん。とは言ってる場合じゃない!
12センチの身体になったノムさんは、巨漢の豪樹にとっては攻撃を当てることすらままならない! 回避と攻撃の頂点に、縮小化という概念はゲーム戦士とても考えられない理論となる。そして……
―――ドスッッ!!
「おおおおぉぉぉぉぉおおおお?!!!」
豪樹のみぞおちにクリーンヒットしたノムさんの一撃、フィールドから斜め上の空中にふっ飛ばされた豪樹。空中でもギリギリのラインまで留まった為ポイントにはならずセーフ。
しかし某ゲームのように、蓄積したダメージが溜まれば溜まるほど飛ばす時の飛距離も上がる。これをリアルにやるって訳ですから、オリジンゲームワールドの常識が益々問われる。
「痛……ぁ……!」
鍛えに鍛えた豪樹も溝を打たれれば悶絶もする。本当にあの一撃で場外にならずに住んだものです。持久力もも修行の賜物か。
「ここまで耐えるとは伊達に鍛えておらんのぅお主。……だが、その呼吸ではもうそろそろ潮時って頃かいのぅ?」
整える呼吸は乱れ、時に深く吸わないとペースを保てないほどに疲労の度が伺える豪樹。対して全くその様子も無いノムさん、これほどまで圧倒された彼は見たことがない。………しかし。
「……ジーさん。勝ち誇るにはまだ早いとちゃうか?」
「なぬ?」
「アンタのミョーチキリンな精霊のPASの力で強くなるんなら、ワイかてPASを持ってるで。聞こえてけぇへんか波動が強まる音が……!」
豪樹のPASの色は紫。紫煙の如し拳の形をしたPASの波動は徐々に強まってる事をノムさんは気付いていた……!!
▶▶▶ NEXT▽
シャッフルオールスターズは心を分かち合った仲間のチーム。故に豪樹が今まさに逆境に抗おうとしている同じ刻、海底パズルの百合現象でも……
『貧乳でも良いくびれしてるじゃない貴方ぁ。ポニーテールの髪もサラサラ、肌もスレスレ。食べちゃいたい♡ いやもう私がドリンクで良いから飲んで♡♡』
ヤンデレ気質と化した憑依ウンディーネに翻弄されるレミ。引っ付かれては突っついたり息吹きかけたりともう変な所一直線に進む始末だが、もう彼女の方は堪忍袋の緒が切れそうであった。
「いい加減にしなさいよアンタ……、さっきから聞いてれば自分の知力の浅はかさに嘆いてばっか。挙句の果てにはあたしに嫉妬して妨害だぁ……?
頭良くてもメンタル豆腐女子が甘ったれてんじゃないわよ!!!!」
レミちゃんを怒らせたら何が起こるか分からない。とはいえ彼女に妨害中である水没パネポンでは、あと数秒でパネルが埋め尽くされるという危険状態。もう成すがままにされては居られない!
「穂香ちゃん!!」
「はい、参りましょう!!」
もう出し惜しみはこれまで。レミは黄色、穂香は緑色のPASの波動を迸らせて、発動の構えへ……!
▶▶▶ NEXT▽
更に更にのシンクロニズム。シルフの渓谷でのエアホッケーでは、姿なきシルヴィーの囁きに戸惑う槍一郎。
「僕にゲームを愉しむ心が無い、ってどういう事だ?」
「貴方は誰かの命令にしか動こうとしない。自分の意志が見えないのよ。おそらくこれも仲間の為、自分よりも仲間の危機を救う事が優先して、使命に駆り立てるだけ。貴方自身が心からゲームを愉しむ様子が取れないの、分かる?」
「……………」
槍一郎はこのシルヴィーの問いに心当たりがあった。
以前までの彼は、ゲームワールドオンラインを管理する組織『WGC』が指揮する指折りの実力を持つゲーム戦士の称号『オフィシャルプレイヤー』のトップであったが、ゲームワールドの閉鎖と共にオフィシャルプレイヤーそのものが廃止となり、槍一郎はその称号をも剥奪された。
今回もその喪失感が拭えない中でのゲームに、槍一郎らしさが無かった事をシルヴィーは見透かしていたのだ。
「オイ空気女! そんな事言って、槍一郎先輩を惑わそうたってそうはいかねぇぞ! 先輩も落ち込む必要は無いですぜ、ここは時間も空間も違うオリジンゲームワールドや。世間体も他人の目も関係ない場所で、遠慮する必要はありませんぜ!!」
と、啖呵を切るように槍一郎を鼓舞する倭刀。それに受け止める槍一郎は……
(……時間も空間も違う世界に世間体も無い、か……! そういう見方もあるか!)
その時、槍一郎の無風の心の隙間に風が吹く。そして彼の眼鏡の奥から鋭い眼が渓谷の彼方に向けてギラリと輝く。という事は……!!
「これは普通じゃ体験出来ない冒険だったな。そこでしょぼくれてちゃ風の精霊も心配する。そういう事だなシルヴィー!」
――今ここに三つの場所から、5つの魂の輝きを見せる時が来た!!
「何をしでかすか分からないけど……」
「我々エレメンタルナイツに勝てる程の……」
「魂を持ってるんかいな!?」
三人のエレメンタルナイツの問いには、シャッフルオールスターズの答えは決まっていた!!
「「教えてやるよ」」
「「あたし達現世のゲーム戦士……」」
「もとい、シャッフルオールスターズは……」
「「「「「諦めが悪いんで有名なんだ!!!!!」」」」」
さぁ時期は熟した! 今こそゲーム戦士の魂を輝かし、勝利の旗を勝ち取るのだ!!
いざとなったら魂を込めろ! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽