17.姿なき気まぐれ精霊!!
――エレメンタルナイツのPASによって、性格やら能力やら劇的な覚醒をもたらすという【精霊憑依】。
ウンディーネのPASを持つディーナは、知力が勝るレミに嫉妬した故にヤンデレ化したウンディーネに翻弄されるなか、同じく憑依覚醒したシルフの魂を持つシルヴィーはどうなったのでしょうか!? 百合展開も気になる所ですが一旦閑話休題!
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――さてシルフの魂と共鳴したシルヴィー、その変貌は如何なほどかと確かめれば…………、確かめるどころか姿すら見えない。
「何やアイツ……? PAS覚醒したと思ったら何処にも居らへんやんか。逃げたんか?」
「それはあり得ないぞ。エレメンタルナイツは僕らゲーム戦士と同じくゲームに誇りを持つ者。戦いの最中に敵に背中を向ける事はないだろう。―――まだ此処らに彼女の気配を感じるからね……!」
直感霊感第六感、神経を研ぎ澄まして気配を察する事も得意な槍一郎。対して何にも気付かない倭刀は警戒はしつつもキョロキョロ周囲を見るだけで特に意味は無い。
「そこは余計じゃ。……また吹いてきましたね風」
「そうだね。しかもこの風には香りも漂っている。シルヴィーと同じペパーミントの香水の香りが!」
嗅覚も優れた槍一郎を前にハッタリは効かない。倭刀もようやく相手はまだ近くに居ると察し、警戒を強めた所で相手からアクションを起こす。
『いやぁ〜ん! あたしの香水の香り知ってたのね、えっちー!!』
と、渓谷の吹き荒れる風の中で恥じらう声がエコーのように鳴り響く。能天気でお気楽な少女の声からシルヴィーなのは明らかであるが、肝心の姿はやはり見えない。
「やいやいやい! 声がするって事ぁ何処ぞに隠れてんやろ!? 出て来ーーい!!」
短気な倭刀は蛮声張り上げてシルヴィーを呼びかけるが現れる様子は無い。それどころか、
『そんな大声出さなくてもアンタの近くにいますよーーだ!!』
姿は見えなくても何となくアッカンベーしてるような言動が想像出来るシルヴィー。しかし先程より声のボリュームが大きくなったエコー。音の位置からしてだんだんと槍一郎と倭刀の元に近づいてると見た。
(……確かに気配は近くにある。しかし何故だ? PASの波動も、声も近づいてるのは分かるのに実体がまるで見えない……!!)
声はすれども姿は無い。それが相手にとってシルヴィーの現在位置の把握も出来ず、それらの実証すら幻では無いかと不安を煽り立てる。
シルヴィーは何処へ、実体か幽霊か? 二人の中で緊迫が強まったその刹那――――
『もっとあたしと、あ・そ・ぼ♡』
「ひゃいッッッ?!!!」
突如槍一郎の耳元から囁かれた誘惑の甘い声。突然の事で眼鏡イケメンが変な声を発した頃に、更に突然の出来事が!
―――シュコンッ!
〔シルヴィー 5―3 槍一郎&倭刀〕
「な、何や!!?」
槍一郎に気を取られていた隙、突風吹いた刹那にいつの間にかパックが槍一郎側にスライドし、そのままゴールへと突っ込んでの得点入り! これには二人は困惑の境地へと誘い込まれた!
「先輩! まさかシルヴィーが!?」
「どうやらそうらしい……、さっき僕の耳元で意味深な事を囁かれたよ。こそばゆいったらありゃしない!」
「はぁ!?」
「妙な気分だ、まるで僕を取り巻く空気や風そのものが、シルヴィーのような……」
「何すかその恋愛ファンタジーみたいな展開……」
見た所ゲームそっちのけでロマンス小説になりそうな所なので……、シルヴィーさんそろそろ種明かししちゃって下さーい!
『えー、仕方ないなぁー』
ご了承頂きありがとう御座います。それに応えるようにシルヴィー、槍一郎と倭刀の前に風の渦を巻いて、再び緑の羽衣を纏って姿を表した。
これを見た槍一郎、シルフのPASとその能力の詳細にようやく理解した!
「そうか……! 彼女は風を操るだけじゃなくて、空気そのものになって姿を隠せるんだ!!」
「何やねんそのチート!?」
チートというよりは、実際パラケルススによって定義されたシルフの能力の一つである。
“風”とは即ち『大気』『空気』にも似た元素。そのためシルフは風に乗って自由に素早く飛び回り、さらに風と同化しているため、その姿は透明で人間には目視できないとされる。
つまりシルフのPASを持つシルヴィーは、風と一体化する事によって空気のように軽く、我々の目から姿をくらます透明能力を持っているのだ!
「キャハハハ☆ そーゆーこと、ビックリしたでしょー!」
「……どーやら僕達、彼女におちょくられていたようだね」
「そうらしいすね先輩。だが、能力が分かれば対処も出来らぁ! 覚悟せぇよ!!」
「さぁ〜、そう簡単に対処出来るかしら〜?」
風の精霊が小悪魔な笑みを浮かべながら、再び風と同化して姿を隠すシルヴィー。そして再び風が気まぐれに吹き始めてゲームは続行された。
風圧が前よりも向上したエアホッケー、不規則に荒れる風にパックは踊り、フィールドの壁に反射してはマレットで打ち返し、防御しては反動で打ち返しとハイスピードなラリーを繰り広げている!
(やべぇ……! 何とか槍一郎先輩の瞬発力でガードは出来てるが……)
(風を読むだけでも苦労するのに、相手のアクションもジェスチャーも分からない状態じゃ突破口が読めない……!!)
見えない相手に翻弄される槍一郎と倭刀。ただ黙々と風に煽られフィールドを行き交うパックを相手にするだけのシャドウホッケーは、我々読む側が想像してもシュールな展開ですが……。
この時何を思ったか、シルヴィーは空気になりながらも再び槍一郎の耳元に囁く。
「……君は随分と僕に興味を持つね。今度は何だい?」
『どうして気になっちゃうの。青髪眼鏡のお兄さんの魂が寂しがっているのが分かったから……』
「……それはどういう意味かな」
『貴方の魂に、ゲームを愉しむ心が無い事よ』
槍一郎の心の髄まで響かされたシルヴィーの一声。それに対し彼の思う心境や如何に。
シルフ・ウンディーネ・ノームの魂を持つエレメンタルナイツの本領発揮に、窮地に立たされたシャッフルオールスターズ。
しかし彼等もまた、ゲームの中の逆境から立ち上がる力を持つ者。彼らとゲームでの激闘にて魂を響かせる瞬間は来るのでしょうか!?
揺るがせ魂、覚醒せよゲーム戦士! ――本日のゲーム、これまでッッ!!
▶▶▶ TO BE CONTINUED...▽