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北17条から、地下鉄乗って。
落ち着かない気分でシートに座ったけど。
どんだけ窓見ても、まゆちゃんは見つかんない。
えー?
マジでー?
そんなのって、あり?
何かもうすっかりがっかりしながら、ジャンパーのポケットに手突っ込んだ。
周りには、近くの女子大の連中ばっか。
それがマジ香水くせーし。
うるせーし。
俺、だんだんイラっとして。
フテ腐れながら窓睨んでた。
せっかく決心したのに。
ちゃんと話すって。
いや。
向こうがどーかは知らないけど。
俺はとりあえず話す気マンマンで。
ヘンな汗かきながら、地下鉄乗ってんの。
でも。
大通に着いても。
どういう訳か、まゆちゃんは現れない。
てか。
現れるどころか。
気配すらない。
次第に不安に陥る俺。
とりあえず電車降りて、ベンチに座り込む。
隣の親子連れ、ヘンな顔して俺のこと見てんの。
だよねえ。
俺、明らかにヘンだもん。
一人できょろきょろしてて。
明らかにキョドーフシンだもん。
…。
……。
ねー。
ひょっとして。
またやっちまった?
嫌われちゃった、俺?
@ @ @
めっちゃ凹む。
てか。
俺っていっつもこういうタイプ。
遠足の前の日に腹壊したり。
運動会の前の日に足折ったり。
テストの前の日に風邪引いたり。
よく大学入れたなって、いっつもばーちゃんに言われる。
うん。
俺も実は奇蹟だと思ってんの。
入試ん時も、集合場所間違えて。
もうちょっとで間に合わないとこだったし。
女の子と遊びに行くって決めた日に限って土砂降りだったり。
もう、ね。
ちょい難しい言い方するなら。
枚挙に暇がないって感じ。
バスセンター前を過ぎると、電車はがらんとしちゃう。
これもいつものこと。
皆、ファクトリーに行くから。
俺、自慢じゃねーけど。
あそこにはまだ一回しか行ったことねーの。
友達がトイザらス行くっていうからついてって。
結局、電脳空間で待ってたの。
だってね。
そーゆー時に限って、参加メンバーすげーし。
絵梨ちゃんがいるし。
俺、勝手に憧れてたんだけど。
彼女、オタクは嫌いなんだって。
特に秋葉系。
それで、俺の夢はあっさりなくなっちゃったって訳で。
以来、女の子と歩いたこともなし。
同じゼミの奴とも特にしゃべんねーし。
サークルは野郎か、気味の悪い女ばっかだし…
あ、いや。
一回だけ、まともな女の子の入部希望者ってのがあって。
大騒ぎになったんだよな、確か。
…あれ?
ヘンタイ富樫に聞けば判るけど。
それって、
あれ?
…確か。
確かさ。
北見の子、
だったよーな…