7
本間まゆ。
変な語感。
だって。
"ほんままゆ"、だよ?
名字が"ほんま"なら、別に"みな"でもいいじゃん?
"みき"でも"みほ"でもいいじゃん?
何でわざわざこんな名前にしたの?
てか。
今時の親って、どういうネーミングセンスしてんの?
って、ごめん。
前置き長くて。
これが、ユーカたん(←仮名)の本名。
でもさ。
やっぱ、見なきゃ良かった。
見るもんじゃなかった。
俺、めちゃめちゃ凹んでる。
まゆタン。
いや、まゆちゃん。
北見の子だったさ。
頑張って勉強して、大学入って。
悩み事なんてのも特になかったらしい。
それが、何であの日に限って、線路のすぐ傍を歩いてたのか。
何で地下鉄が入ってくる直前、あんなとこに落ちたのか。
…。
まだ、19歳だよ?
俺といっこしか違わねーし。
何か、ひどくね?
あんまりだ。
だから。
今日はガッコ行くけど、往復バスにしたさ。
彼女、寂しがるかもしれないけど。
こんな気分で、彼女のこと見たら。
俺、泣いちゃうかもしれないさ。
そしたらまた、嫌われちゃうかもしれねーし。
それだけは避けたいから。
そんなんで。
また、ヘタレに逆戻りなの、俺。
ほっとけ。
判ってっから。
@ @ @
こういう日に限って、雨だったりして。
行きのバスは何だかもんもんとしてんの。
あ、こら。
てめー。
濡れた傘俺につけるなって!
でもって。
何故かこういうところでまた、富樫に会うし。
どいつもこいつも。
ちょっとは空気読め。
「おーっ! 三国!」
「あに?」
「ちょ。何でいきなり不機嫌?」
「別に」
「で、あのユーレイどうした?」
「んあ?」
「地下鉄の、ほら…」
こいつ。
うざ。
マジうざ。
消えて。
お願い。
ほら。
隣のにーさん、俺のことチラ見してるし。
惚れられたらどうしてくれる。
「いや、見えねーし」
「またまた! 嘘ばっか!」
「マジで。普通に見ねーし」
「何言ってんだって。本間まゆの幽霊だろう?」
…。
前言撤回。
こいつ、何様?
いや何者?
マジきもいんですけど?