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ぶうぶう言う兄貴置いて、俺はまた地下鉄に乗る。
別にバスでも帰れるんだけど、それはまあほらつまりそのアレだから。
とりあえず、彼女に会いたかったのよ。
大通駅は、さっきより混んでて。
ぶっとい足の女子高生がたむろして、座席占領してんの。
ばーちゃん二人、座りたそうにうろうろしてんのにさ。
堂々と化粧してやがんの。
両脇にでかいバッグ置いたぐらいにして。
あー、やだやだ。
そういう無神経な女。
俺、大っきれー。
ムカつきながら窓見たら、そこにはユーカたん(←仮名)がいて。
俺のこと、じーっと見てる。
やべ。
不機嫌なとこ見られちまった。
なーんて思ってたら。
彼女、すうっと消えちゃった。
あれ?
何処行った?
俺、必死に探したけど。
彼女、いなくなっちゃった。
やだな。
嫌われたかな。
てか。
何でユーレイに嫌われたぐらいでさ。
俺、こんなん焦ってんの?
一人でキョドってんの?
ありえねー。
何やってんのさ、俺?
そう思ってたら。
ぶっとい足の女子高生が、ぎゃあっ! って叫んだ。
そりゃびっくりするよ。
声も象並みだもん。
「ちょ、何かここ冷たいんだけど?」
「はっ? マジで?」
「あんたオシッコ垂れたんでね?」
「垂れる訳ねーべさ!」
「マキだば垂れるがもしんねべさ!」
「はぁ〜? あんたら何言ってんの?」
ぎゃあぎゃあ言いながら、連中が立ち上がると。
ばーちゃんはその隙にちゃっかり座っちゃった。
よしよし。
札幌のばーちゃんはそんぐらいでねーと。
内心、にやにやしながら。
ふと窓見ると、彼女はまたそこにいて。
にこにこしながらウィンクしてくれた。
あ?
マジで?
今のって、そーゆーこと?
俺が目をまんまるにしてると、彼女はにっこりして。
それから、バイバイって手を振ってくれた。
開いたドア指差しながら。
あれ?
もう西28丁目かよ。
ありえねー。
このタイミングで着くか、普通?
車掌、空気読め。
@ @ @
家に帰ってからも。
何か、ボーゼンとしてる俺。
だってね。
ユーカたん(←仮名)が、俺のために動いてくれたんだもん。
いや。
俺のためじゃないかもしれないけど。
少なくとも、彼女もああいうのがキライな子なんだってのは判ったし。
そこがますます俺のツボにはま…
って。
何言ってんの、俺?
マジ意味判んねー。
あれがユーレイかどうかってことも微妙なのに。
しょーがないんで。
確かめましたよ。
ヘタレ卒業ですよ、こうなりゃ。
兄貴が元通り、ラップでぐるぐる巻きにしたカバン取り出して。
開けてみましたよ、久々に。
で。
何が入ってたかっていうと…
…。
やっぱ何もなかった。
どんだけヘタレだったの、俺?
はぁ。
疲れるね、マジで。
やっぱあれは気のせいだったってことにして。
それでもやっぱ彼女のことが気になって。
久し振りにテレビ点けて、ニュースなんか見てみた訳。
でもさ。
手がかりなんかある訳ねーのよ。
事故も殺人もしょっちゅうあんだから。
何日か前の事故なんかニュースになってる訳ねーの。
そんなもんよ。
だから。
しゃーないから。
明日、確かめてみようかなと。
ガッコの図書館で。
前の新聞引っ張り出して。
ん?
ネット?
お客さん、頭いいっすね。
その手があったよね。