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翌朝。

俺はとりあえず、さっさと兄貴を叩き起こして。

ぶつぶつ言うあいつに、カバンを突きつけた。

その時にはもう、動いたりはしてなかったけど。

念には念を入れないとね。


「何、これ?」


「いーから」


「何で俺がこんなの開けなきゃなんねーの?」


「ま、深く考えず」


「意味判んね。テメーでやれよテメーで」


などとぶつぶつ言いながらも。

兄貴はさくっとファスナーを開けやがる。

俺は反射的に、背中を向けたけど。

背後から聞こえてくるのは、ズームインの音声のみ。


…?


何で?

何も起こらんの?





恐る恐る振り返ると。

兄貴はあぐらをかいて、こたつに潜り込んでる。

さっきとおんなじ格好で。

あー?

ちょ、テメー。

ちゃんと見たのかよ?



「…兄貴」


「ん?」


「何、入ってた?」


「何って。心理学の本と、ペンケースと、英和辞典」


「……」


「それがどうしたんだよ?」


「…いや。何でもないっす」



すっかり意気消沈した俺。

じゃああれは、単なる通りすがりってこと?

それとも、何かの間違い?



…ま、いっか。




そう言いながら道新見てる俺。


ほっといて。

所詮、乙女座Bだから。





今日は講義なし。

だから、兄貴に付き合って大通まで出ることになったんだけど。

地下鉄にはやっぱり、優香タン(←仮名)の姿。

昨日とちょっと服が違う。

ゴスロリっちゅーの?

これがまためっちゃ可愛い。


しかもね。

今日、気付いたの。




彼女、絶対俺に惚れてるさ。




何で判るって?







だって。





彼女のこと見てるの、俺しかいねーし。



彼女が見てるの、俺だけなんだもん。












…単純?






     @  @  @






大通で降りるまで、俺は何だか妙にテンション上がってたけど。

兄貴と一緒に地上に上がった途端、がっくり落ち込んじゃった。

だってね。

冷静に考えると、やっぱありえねーもん。

地下鉄でしか見えないユーレイなんて。

実用価値ゼロじゃん。



とは言うものの。

PARCO行って、洋服見てる間も。

タワレコ行ってる間も。

俺はどーもガラスばっかり見ちゃう。

ひょっとして、ユーカたん(←仮名)がいるんじゃないかって。

でも、やっぱりそこに彼女はいなくて。

変な話だけど。

何となく寂しかったりする。



兄貴は何も入ってねーって言ってたけど。

あの時俺はばっちり感じたんだよね。

何かをお持ち帰りしちゃった気配って奴を。

だから。

多分さ。

見えなくても、彼女は意外と近くにいるんじゃねーかって。

そんな風に考えたらさ。

エロ本手に取るのもためらう訳よ。


やーね、俺ってば。

何でそんな可愛いの?

てか、判り易いの?




・・・やってらんねー。





こいつ置いて、さっさと帰ろうっと。

 

 

 


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